IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「・・・・・はい。それじゃあ」
織斑家のリビングの入り口で俺は楯無さんに状況の報告の電話を終えて、息を吐いた。
「報告は済んだか?」
リビングからラウラが出てきた。
「ああ。事後処理については任せておけってさ」
「そうか」
「・・・・・で、そっちの方はどうなんだ?」
俺はリビングの方を見た。ソファにはマドカが横たわり、その傍で一夏はマドカが目を覚ますのを待ち続けている。
「今のところ問題はない。眠っているだけだ」
ラウラの言葉に、俺は安堵した。
「それにしても・・・どうするんだ?」
「何がだよ?」
「アイツのISだ。いつまた今回のようなことが起こるか分からないぞ」
「大丈夫だ。それについては俺に考えがある」
「考え?」
「そうだ。けどその為には少しばかり準備が――――――――――」
「お前たち、何をしている?」
「「!」」
振り返ると、そこには織斑先生がいた。
「せ、先生・・・・・!」
「教官・・・・・!」
俺たちの狼狽ぶりに織斑先生は目を細めた。
「もう一度聞くぞ。ここで何をしている?」
こ、怖い・・・・・。完全に目が攻撃色だ・・・・・!
「い、いや実は――――――――」
「千冬姉! 帰ってきたのか!?」
俺が口を開くと、一夏がそれを遮るようにリビングから出てきた。
「ああ。で、一夏。こいつらは何でここにいる?」
「そ、それよりマドカが!」
一夏の言葉を聞いて、織斑先生はリビングに入った。
「・・・・・・・・・・・」
先生は無言のままマドカの傍に行き、こっちに背を向けずに声を出した。
「桐野・・・・・・・」
「は、はい・・・・・」
「答えろ・・・・・・・。何があった・・・・・!」
振り返ったその目は、今まで見たことがないほどの怖さだった。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
日が少し傾きだした頃、俺とラウラは学園への帰路についていた。
織斑先生に学園に戻れと命じられたからだ。
しかし、荷物が一つ増えている。俺の右手には箱が入った紙袋が提げられている。
ただ、その箱の中身が問題だ。箱の中には、何とISのコアが入っている。
「なあ、瑛斗」
「なんだよ」
「・・・・・そんな風に運んでいいのか? 仮にもISのコアなのだぞ?」
「いいんだよ。こんな紙袋の中にコアが入ってるなんて誰も想像しねえって」
ちなみにこのコアはサイレント・ゼフィルスのコアだ。
どうしてこうなったのかというと・・・・・・・・・
〜数十分前〜
「あの・・・・・織斑先生」
俺は、状況を聞いて一夏とともにマドカの目覚めを待つ織斑先生に遠慮がちに声をかけた。
「なんだ」
「この状況で言うのもアレなんですが・・・・・・」
「どうした? 言ってみろ」
「・・・・・篠ノ之博士と連絡を取ることって、できますか?」
「・・・・・・・・・」
先生が目を細めている。ヤバい、背中の冷や汗が半端ない。冬なのに汗がだらだら出る。
「・・・・・できるが、なぜだ?」
「さ、サイレント・ゼフィルスをイギリス政府は破壊しようとしました。ということは、向こうはサイレント・ゼフィルスを切り捨てたと考えていいはずです。このままマドカが危険に晒される前に、サイレント・ゼフィルスのデータに細工をしておきたいんです」
「・・・それとアイツがどう関係する?」
「博士はISの開発者です。あの人に頼みたいことがあるんです」
「・・・・・・・・・・・・」
織斑先生は沈黙した。
「千冬姉。俺からも頼む」
「一夏?」
一夏も頼んでくれた。
「瑛斗はISには詳しいし、きっと何か考えがあるんだ。だから、頼むよ」
一夏に言われ、織斑先生はため息をついた。
「・・・・・仕方ない。ちょっと待っていろ」
織斑先生は携帯電話を取り出し、カチカチとボタンを押し、俺に渡した。
「アイツのことだ。私からの電話なら出ないことはないだろう」
「ありがとうございます!」
俺は深く頭を下げて携帯を受け取り、リビングから出た。
数回の呼び出し音の後、電話は繋がった。
『やあ! やあやあやあ! ちーちゃんから電話なんて束さん、うーれーしーいー!』
う、うおお。出出しから面倒くさい・・・・・。
「あ、あの、博士。俺です。桐野瑛斗です」
『ふえ? ちーちゃんじゃないの? がっかりぃ〜』
「無礼は承知の上です。ですが、少し急を要しまして・・・・・」
『急を要する? えっくんが慌ててる? 慌てえっくんだ〜!』
「隠れなんとかみたいに言わないでください。それより、頼みたいことがあるんです」
『なにかな? えっくんの頼みごとなら聞いてあげるよ!』
おお、どうやら聞いてくれるみたいだ。
「サイレント・ゼフィルスってIS、ご存知ですか?」
『サイレント・ゼフィルス? ・・・・・あー、あのイギリスが造ったポンコツだっけ? ふっつーのISだね』
俺たちが苦労した相手を、ポンコツって・・・・・・。まあ、それはそれとして。
「そのISのデータを、博士側から消去することってできますか?」
『おやおや・・・、束さんを誰だと思ってるんだい? 束さんだよ?』
「知ってますよ。で、できますか? できませんか?」
『んー、できることにはできるよ』
「マジですか!?」
『だ〜け〜ど〜、どうしてそんなことする必要があるのか〜? 束さん知りたいなぁ〜』
俺はビシリと凍りついた。しまった。この人にどうやって説明しよう・・・・・!
「・・・・・・・・・・・」
『・・・えっくん?』
「・・・・・・・・・写真」
『うん?』
「うちの学園の写真部が激写した箒の霰もない姿の写真! それあげますから、どうか、どうか理由は聞かないでいただけませんか!?」
『ほ、箒ちゃんの霰もない姿の写真・・・・・?』(ゴクリ)
「はい。写真です。ピー!で、ズキューン!なやつ」
『ぴ・・・ピー、で、ズキューン・・・・・・・』
しばらく沈黙が続いた。もしかして、ダメなのか・・・・・?
「はか――――――――――」
突然、視界の端をまばゆい光が覆った。
(リビングから!?)
俺が慌ててリビングに入ると、マドカの耳のイヤリングが光を放っていた。
その光が収まると、キューブ状の物体がマドカの頭の傍に落ちていた。
そう、ISのコアだった。
『・・・これで箒ちゃんの写真が・・・・・!』
「博士・・・・・」
『それじゃえっくん! 今度受け取りに行くから、忘れないでね!』
「あ、はか――――――」
プツッ
電話はそこで切れた。
「「「・・・・・・・」」」
一夏と織斑先生とラウラの目が俺に向けられる。
「あー・・・えっと・・・・・やりました!」
俺はやや引き攣った笑みを浮かべ、親指をグッと上に向けた。
・・・ってなわけで、データを消去されたサイレント・ゼフィルスはコアに戻り、俺の手中にあるわけだ。
「・・・・・それで、この後はどうするつもりなのだ?」
「ん? どうもこうも。学園に戻る」
「そうではなくてだな。コアの話だ」
「ああ、これ。こっちは俺が新しいISに生まれ変わらせる」
ラウラは驚いたように俺の顔を見た。
「そんなことができるのか?」
「できるともできるとも。俺を誰だと思ってるんだよ。この冬休みの間にぱぱーっと終わらせてやるさ」
ISが初期状態ならば、特定信号の発信パターンも変えられる。そうすればマドカが追われることもないだろう。
「・・・・・・・・・時たま、お前が恐ろしい・・・」
「ん? 何か言った?」
「い、いや! 何でもない!」
ラウラを不思議に思いつつ、俺たちは学園へ戻った。
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さらば、サイレント・ゼフィルス? | ||
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欲望に忠実な束さんgood job!(剣バカ) | ||
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