コードギアス 帝国の黒鳥 ―第二話―
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「遅かったな」

 

 

これが、自室に備え付けられているシャワーから上がったクレイの耳に聞こえてきた言葉。

声がした方に目を向ければ、そこにはクッションを抱きしめる少女がいた。

 

シャワーに入っていたとはいえ、無断入室。それも機密もあるだろうナイトオブラウンズの私室である。

本来なら即刻拘束されてもおかしくはないが、クレイは溜息とともに頭をおさえる。

 

 

 

「((C.C.|シーツー))、なぜお前が((まだ|・・))いる?」

 

 

 

十分に間をおいてでた言葉。それを聞いても、少女…C.C.は聞いていないと言うように冷蔵庫からミネラルウォーターをとりだし口をつける。

C.C.の行動がある程度予想できていたのか、もう一度溜息を吐いて髪に残った水気をタオルで拭う。

そして自身の机に山積みされている書類の内、早めに処理しなければならない物に目を通しだす。

 

片手でタオルを使い髪を拭い、もう片方の手で書類の必要箇所にサインを入れていく。

 

 

 

 

「…この戦場唯一のラウンズが、こんなにのんびりしていてもいいのか?」

 

 

 

書類作業の音と、それに伴う沈黙を破ったのはC.C.の言葉だった。その内容は、そこに誰か他の者がいてもしたであろうものだった。

しかし、クレイは彼女の質問にジト目で返す。

 

 

 

「ここに残ったのはその質問をするためだったのか?」

 

「まさか。だが、先の戦いで手痛い反撃を受けたのだろう? こんな時こそラウンズの出番ではないのか?」

 

 

 

C.C.の即答に、顔が引きつりそうになる。それは別として彼女の言い分は分かる。

先の戦闘は結果的には勝利したが、それは自身の…ナイトオブラウンズの介入があったからだ。

 

あり得ないであろう策…所謂奇策を行った指揮官は、未だに確保できていない。それは今後もその者の指揮する敵と戦う可能性があるという事に他ならない。

そして今回の事で、その者の戦略がブリタニアに通用する事が証明された。

 

彼…ないし彼女は今後、戦場に出る可能性が高くなったと見るべきだろう。

 

 

 

 

 

「まぁ確かに。この侵攻戦に派遣されたのが他のラウンズなら、な」

 

 

 

クレイの言葉にC.C.は、なるほどと一人呟く。

 

 

 

―――――ラウンズの戦場に敗北はない

 

 

いつからか言われ始めた、文字通りの言葉。圧倒的な実力と味方の士気の上昇。

ラウンズが一人でもいれば、その戦場は瞬く間に勝利する…なんてこともよくあること。

 

しかし、この言葉にはもう一つの意味もあった。

 

ラウンズの影響が、戦場に限定されるということだ。

いくら圧倒的な実力があろうと、ラウンズはあくまで個人。しかも移動するとなれば、KMFも輸送するため時間がかかる。

結果的に、ここぞという時に投入しなければ、戦場でこそ敗北はしないが戦線は押し負けることもある。

もっとも、その『時』を間違えるような無能はラウンズにはいないが…。

 

 

 

だがそれも、((他の|・・))ラウンズ…つまりクレイ以外のラウンズという前置きが存在する。

 

 

 

知っての通り、クレイの専用KMFメリオダスは可変型である。本来KMF単体では不可能な航空能力を持ち、その速度は戦闘機を超える。弾薬さえ補給していれば移動先でエナジーフィラーを交換し、即刻戦闘に移る事も出来る。

現にそう言った戦闘を行い、たった二週間で侵攻戦を終わらせた事もあるのだ。

 

そんなことからクレイのいる侵攻戦は、どの戦場においてもラウンズが現れるかもしれないという恐怖と戦うことになる。

逆に言えば、クレイがいれば侵攻戦そのものの士気が向上するのだ。

 

 

 

戦場での圧倒的な力だけではなく戦略的な意味合いも持つ、それがクレイ・アッシュフォードという存在だった。

 

 

 

「それに先ほどの戦いで防衛の要は制圧した。私がいるというプレッシャーとコーネリア殿下の実力があれば、一週間ともたんよ」

 

「なんだ、結局変わり映えのない侵攻戦か…」

 

 

 

彼女のつまらないという雰囲気を全面に出した言葉に、頭を抱え一言。

 

 

 

「ならなぜここに来た」

 

 

いくら人知の範疇を超える時間を生きているとはいえ、この物言いはないんじゃないだろうか。この少女と出会ってからというもの、この思考がよく頭をよぎる。

 

C.C.は膨大な歴史を誇るブリタニアにおいて、初期よりその存在が記されているという正真正銘の不老不死である。

長いという言葉では表現しきれないような時間を生きてきた少女は、その経験と知識、積み上げてきた功績で皇帝すら無下にはできない立場にいる。

そして長く続いてきたブリタニアの歴史に、侵攻戦という単語は常に付き纏っている。

彼女からしてみれば飽きてしまっているのかもしれない。

 

おそらくそれが、彼女が戦場に来ても戦闘は行わない理由の一つなのだろう。

 

 

 

だが、それで自分たちに面白みを求められても困るというのが本音だった。

 

 

 

「決まっているだろう」

 

 

 

 

そう言ってクレイに視線を向けて、一溜め。

 

 

 

 

 

 

 

「ピザを食べ―――――」

 

「いや、帰れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリタニアの古くから生きる、不老不死の魔女。好物はピザである。

 

 

 

 

 

 

説明
ようやく第二話…。
最近パソコンが使えないから遅れてしまった。
申し訳ないです。
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コードギアス ご都合主義 オリキャラ 可変はロマン 

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