武装神姫「tw×in」 第二話 二人目×一人目=
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「やりましたねマスター! すばらしい勝利でした!」

「エンルのおかげだよ」

「ふふっ、ありがとうございますマスター。ですが…」

さっきもこんな会話したな、と思いながらオレ達は真南と別れて家に帰ってきた。

「ただいま」

と言っても、両親共に働いていて今は家を出てるから、言葉が返ってくることは…

「おかえりなさい、マスター!」

…まぁ、あるんだよね。

家から返ってきた声の主が走って玄関へやって来た。

黒い髪に橙の瞳、その人間離れした瞳の色でだいたい分かってると思うけど、彼女も神姫だ。

「ただいま、ルミア」

ハウリン型のルミア、彼女もまた、オレの神姫である。

携帯電話を1人で一台以上持つ人がいるように、1人に一人の割合で持っている神姫を、一人以上同時に持つ人もいる。オレもそんな1人だ。

だがライド出来るのは一人ずつという決まりなので、ゲームセンターには基本一人だけ連れていき、後は留守番してもらっている。たまには複数人でも行くけど。

「次はわたしを連れて行って下さいね、マスター!」

「うん、分かったよ」

靴を脱ぎ家の中へ入ると、ルミアは肩の上に乗ってきた。

ルミアはオレにとって二人目の神姫、もちろんバトルの経験もあり、実力はエンルと同じか、それ以上だと思う。

「ルミアさん、ただいま帰りました」

「おかえりなさい、エンルさん」

そしてエンルはオレにとって……三人目の神姫だ。

まぁ何が言いたいのかと言えば……

「おっ、お帰りなさい、マスター」

リビングに入ったところで、テーブルの上にいた彼女に声をかけられた。

赤いロングヘアーに濃い青の瞳。真紅のボディが特徴的なアーク型の神姫で、名前は、

「ただいま、スレイニ」

「今日も勝ったんですか?」

「うん、真南に一回と、ゼルノグラード型に一回ね」

「そうですか、良かったですねマスター」

スレイニはオレにとって一人目、つまり最初の神姫だ。

その頃はまだバトルに興味は無かったけど、真南からの誘いとそれを受けろと言ったスレイニにより神姫バトルを始めることにした。

当初はライドの感覚に慣れるのに苦労して、スレイニには何回も負けを味合わせてしまった。

だが、今では慣れたもの。小さな大会に出場して優勝した事もある。

スレイニとバトルの腕を磨き、それからルミアと出会い、そしてまた時が過ぎて、エンルと出会って、今日に至るという訳だ。

「スレイニさん、ただいま帰りました」

「お帰りエンルちゃん。さぁ、こっちにおいで」

スレイニはテーブルの上でエンルを手招きして呼ぶ。

「? はい」

呼ばれた通りにエンルがテーブルに向かうと、ガッ! と腕を捕まれた。

「え! ど、どうしたんですか?!」

あー、この流れは。

「どうしたって、いつものクリーニングに決まってるじゃない」

「あ……あの、今日はそこまで汚れてはいないと思いますけど、なるべく気をつけて動いてましたし…」

「ダメよ!」

「ひいっ!」

スレイニの一喝にエンルは短い悲鳴を上げる。

「今日は大丈夫だと思うその気持ちが故障の原因に繋がる事だってあるんだから! 帰って来たら毎回クリーニングしなくちゃ!」

「そ、それは確かにそうですけど、す、スレイニさんのは少々過保護過ぎ…」

「さぁそうと決まったら行くよ! マスターも、ちゃんと手洗いとうがいしてくださいね!」

「はいはい」

「ま、マスターーー! 助けてくださーーーい!」

助けを呼ぶ声も虚しく、エンルはスレイニに引きずられて行ってしまった。

ゴメンよ、エンル。でもスレイニの言うことも正しいんだ。

ただ少し、過度なクリーニングではあるとはオレも思うけど。

「あぁ……エンルさん、大変ですね」

「明日は多分、ルミアの番だけどね」

「えぇ!? あ、でもそうか、マスターと一緒に外へ出ればバトルの後帰ってきて今みたいな状況に……」

「今の内に覚悟しとくといいかもね」

「うぅ……それはそれで悲しいですよ……」

とりあえず、オレも手を洗って来よう。

 

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「ま、マスタぁー……」

手を洗ってからしばらくルミアと話していると、エンルがクリーニングを終えてスレイニと共に戻って来た。

元々白いボディが更に真っ白く見えるほどきれいに、言い方を変えれば新品並みにピッカピカだ。本人の表情はとても疲れてるけど。

「きれいになったね」

「はいぃ……」

「さぁエンルちゃん、後はバッテリーの充電よ」

「え、ですが、まだ半分も残ってますけど……」

「まだ半分、じゃないの、もう半分、よ。常に半分以上はキープしないといつ何があるか分からないんだから」

「は、はい、分かりました」

言われたエンルは机の上に置いてあるクレイドル―――神姫のバッテリー充電器兼ベッド―――の中へ。

「それではマスター、少し失礼しますね」

「うん、ゆっくり休んで」

「はい」

エンルは目を閉じ、スリープモードへなって充電を開始した。

呼べばすぐに起きるけど、今は休ませてあげよう。

「マスター、明日はどこに行きますか」

ルミアが話を続けてきた。

「そうだね……真南がまた誘いに来るかもしれないけど、ちょっとショップにも行きたいから、神姫センター辺りかな」

「ショップですか?」

スレイニも会話に参加する。

「何か新しい武装でも買うんですか?」

「うん、ほら、エンルはまだリアパーツが無いから」

「あー、そうでしたね」

神姫の武装には武器パーツと防具パーツがあり、その中でまた幾つかに別れている。

防具はヘッド、ボディ、アーム、スカート、レッグ、シューズ、シールド、そしてリアパーツ、背中につけて防御と共に神姫の飛行や滑空を助けるブースターのようなパーツだ。

神姫にはそれぞれ神姫を作った会社が自社の神姫に合わせたカラーリングや形状で作った防具が売られている。

けど、神姫ポイント―――神姫バトルをする度に貰える特別な通貨、パーツはそれで買える―――が足りずに、しばらくはスレイニとルミアのパーツか、神姫共通型のパーツをつけていた。

それでバトルを続けて、ポイントが貯まる度に一つずつエンルの、アーンヴァルMk.2型のパーツを買い、ついにリアパーツを残すだけとなった。

ただ、そのリアパーツが高いんだ、多分防具の種類の中で一、二番に。

でもその分性能が上がるから、値段に見合ってはいるんだけど。

「もう買えるんですか?」

「いや、後一戦くらい分は必要かな」

「リアより先に武器を揃えるからですよ。確かに武器の方が安かったですけど、防具が揃うまではアタシのを使ってれば良いのに、マスターってば」

「あはは」

相変わらず手厳しい、正論だけどね。

「でしたら!」

ルミアがぴょんぴょんと跳び跳ねて主張し、止まって胸をぽん、と叩いた。

「わたしが明日のバトルでその分を稼ぎますよ!」

「まぁ一回でもバトルすればいいならそうなるね」

「そうだね、明日はよろしく、ルミア」

「もちろんです!」

「バトルか……そういえばしばらくやってませんね」

スレイニが呟いた。

そういえば最近はエンルの武装の為にバトルしてるから、エンルが主で、たまにルミアにお願いされて連れて行ったくらい。スレイニとはしばらくバトルをしていなかった。

「じゃあ、明日はスレイニが一緒に行く?」

「え……? あ、その」

聞こえていたとは思わなかったのか、答えが返ってきて目を丸くした。

「い、いいですよマスター、気にしなくても、明日はもうルミアちゃんと行くって決めたんですから」

「けどさ、スレイニもバトルしたいでしょ?」

「そ、それは……まぁ……ここのところご無沙汰でしたし……て、そ、そうではなくてですね」

「あ、だったらマスター、全員で行けばいいじゃないですか!」

ルミアが提案とばかりに主張した。

「ちょっ、ルミアはそれで良いの?」

「もちろんです! みんなでお出かけは楽しいですよ絶対!」

「それはそうかもだけど……」

「大丈夫だよスレイニ、神姫センターなら神姫を何人も連れてる人は珍しくないし、別に一回しかバトルする訳じゃないんだからさ」

「……仕方ないですね。なら、明日は皆で行きましょうか」

「わーい!」

両手を挙げて喜ぶルミア。

「もちろん、帰ってきたらクリーニングだけどね」

「ひぃ!」

キラリ、と光らせたスレイニの瞳を見てルミアは手を挙げたまま固まってしまった。

「……でも、明日が楽しみだな」

そのスレイニの呟きは、また聞こえてないようで、ちゃんと聞こえていた。

 

説明
これは、武装神姫の中で、ゲーム「武装神姫BATTLE MASTERSmk.2」をメインに作っている物語です。
知っている方は分かると思いますが、バトル方法はライドバトル、一人で神姫を何人も持っている所などです。

メインとなるのは今回出た三人の神姫とそのマスターである主人公、上木宗哉。彼らとその周囲の人物達との、日常を書いたもので、特に事件が起こったりはしません。
多分、おそらく……きっと…………うん。

まぁとにかく、次はまた少ししたら投稿します。お待ちのほどを。
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「tw×in」 武装神姫 BattleMasters 

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