乱世を歩む武人〜第十二話(表)〜 |
〜都のとある一室〜
徐栄
「さて・・・と、これであっちとあわせて丁度10人か?やっと鎧が脱げる・・・」
張遼
「すまんな徐栄。こんな仕事手伝わせてしもうて。」
徐栄
「いえいえ、副官なんてこき使われるのが仕事ですから。この程度であればいつでもどうぞ」
張遼
「この程度ってなぁ・・・コレでもこいつらお偉いさんだったんやで?」
徐栄
「そういやそうでしたね。でもまぁ私にとっては動く塵芥と大して変わりませんから。」
張遼
「・・・たまにウチはお前が怖いわ」
賈駆
「そう・・・虎牢関は連中の手に落ちたのね」
徐栄
「仕方ありませんよ・・・全軍今ここにいる状況であそこを守れるわけないのですから」
陳宮
「そうなのです。ですが月殿に何事も無くて一安心なのです」
月
「みなさん・・・ありがとうございます。」
ココは都洛陽。董卓さんによる非常招集により全軍が今集結している。
皆董卓さんが心配だったのだろう。何事も無くてとりあえず一息といったところだ。
撤退した軍を城にいれ一仕事終えたあと皆が中庭に集結していた。
張遼
「せや、みんな月が好きなんやから気にせんといてええ。・・・で、徐栄は何やっとるん?」
徐栄
「何と言われても・・・それはむしろ呂布さんに言うべきでは?」
呂布
「zzz・・・」
そして私の膝には何故か呂布さんの頭。帰ってきて董卓さんを確認したらいきなり座ってときたもんだ。
張遼
「全く・・・徐栄、ウチと詠はちょっと話してくるさかい。何かあったら月を頼むで」
徐栄
「了解です。まぁ掃除|(・・)は終わってますしなんにも起きはしないでしょうけどね」
賈駆
「じゃあ行ってくるわね・・・」
そういって張遼さんと賈駆さんはあちらへと向かっていった。
話・・・か。間違いなく先ほど殺した十常侍の件の報告だろう。
私にとってはただの老人だがこの国にとっては違う。それこそ都の最大権力者だ。
それを殺したとなればもう戻れない。ほんとうの意味で滅びるかのし上がるかの二者択一だ。
流石にここで死ぬ気は私にも毛頭ない。とりあえずこの戦を脱出したら一度揚州の隠れ家にいって姉の連絡がないか確認したいものだ。
そのためには絶対に生き残る。まず生き残るために今やることはといえば・・・
徐栄
「すまないが張遼隊に伝令を。門周辺に集合し華雄さんが来たら全力で止めろと伝えてくれ。あと俺か張遼さんに連絡をすること。」
味方の暴走を止めることだった。
〜篭城が始まり数日後〜
徐栄
「弓隊もうちょっと引きつけて・・・よし、ここ!」
私は城壁に上り迎撃の指示を出していた。
兵士
「しかし連合も一体何なのでしょう・・・ここ数日延々と攻めつづけてきてますね」
徐栄
「こっちの疲労を誘ってるんだろ・・・お陰で眠れやしねぇ」
そう、ここ数日の間連合軍は部隊を小分けにし一日中間断なく攻め立ててくるのだ。
やられているこちらとしてはたまらない。一日中戦の音が聞こえているのだ。一部例外を除く全員が疲労の色を隠せていない。
徐栄
「しかし・・・どこの誰だこんなえげつない策を思いつくのは?」
こんな嫌がらせのような効果的な策を思いつく・・・考えられるのは
徐栄
「やっぱ姉貴いんのかなぁ・・・せめてどこにいるかわかればいいんだけど・・・」
張遼
「おっす。徐栄。」
徐栄
「おはようございます、張遼さん」
張遼
「ホンマご苦労さんや。けどもうそろそろ休んでええで」
徐栄
「・・・決戦・・・ですか?」
張遼
「ああ。明日や。まだ士気が何とかなってるうちにうってでる」
徐栄
「・・・・・・まぁそれしかないでしょうね。では私は一度引いておいしいものでも作りましょうか。」
張遼
「頼むわ。今蔵にあるもん全部使ってええからな。ほんでな徐栄。一個聞いときたいことがあるんや。」
彼女がいつもよりさらに真面目な顔で聞いてくる。
徐栄
「・・・伺いましょう、なんでしょうか?」
張遼
「・・・ここではなんや。ちょっと移動すんで」
徐栄
「了解です。」
私たちは決戦準備をしている反対側の城壁の上にいる。見張りの兵も今だけ下げさせ人払いも頼んでおいた。
徐栄
「・・・ここなら邪魔も入らないでしょう、それではなしとは・・・?」
張遼
「率直に聞くで。徐栄、この戦のあとどうするつもりや?」
徐栄
「・・・・・・」
私は押し黙ってしまう。こんな質問が出るということは彼女にはわかっているのだろう。
この勝負。こちらの勝ちはすでにないことを。
そして私が彼女達と運命を共にする気が全くないことを
徐栄
「・・・・・・ふぅ、そうですね。特に宛はないので適当に逃げ延びるつもりですよ」
張遼
「そうか・・・なぁ徐栄、もし良かったら・・・ウチとこないか?」
徐栄
「え?どういうことです?」
張遼
「ウチもな・・・この戦が終わって逃延びた後のことは考えてへんのや。どっか適当に探して士官でもしよかとは思っとるんやけどな。
その時に徐栄、お前についてきて欲しいんやわ。」
張遼さんは続けて語る
張遼
「別に書類云々のだけの話やない。なんだかんだでお前とウチの付き合いも結構あるからわかっとる。ちょっとおかしいところはあるけどええやつだと思ってる。だからな、このあとも一緒に来て欲しいんよ。お前に姉ちゃんがおってそれの手伝いをしたいというのはわかっとる。やけど・・・それでもウチはお前がいて欲しい。」
徐栄
「・・・どこの誰とも分からない私でもあなたは必要だと。」
張遼
「せや」
徐栄
「姉が敵にいるとわかればいつ裏切るかわかりませんよ。それでも・・・必要だとそう言うのですか?」
張遼
「ああ。
徐栄は今まで見てきたやつのなかで一番信頼出来る奴や」
ここまで・・・・・・・・・ここまで私を信頼してくれる人なんて姉貴以外にいただろうか。
いたとしても私は知らない。この人は「本当に信頼して良い人」だと・・・そう思った。
徐栄
「・・・・・・そうですね。まずはひとつあやまっておきましょうか」
張遼
「・・・偽名のことか?」
徐栄
「知ってたのですね。」
張遼
「バレバレや、こんだけ優秀な奴が今の今までなんも話を聞いたことないなんておかしいやろ」
徐栄
「ふぅ・・・なるほど、ね。私としては大したことはしていないのですがね・・・そしてコレに関してはまだ明かすことが出来ない。コレをあやまります。
本名を明かせば姉に迷惑がかかるかもしれませんので」
張遼
「わぁっとるわ。そんなことはどうでもええ。徐栄は徐栄やからな」
徐栄
「ありがとうございます・・・しかし、私もここまで信頼してくれる人に対して何も返すものがない。ですから・・・」
少しの逡巡のあと私はこう続けた。
徐栄
「真名を受け取っていただけませんか?」
彼女は非常に驚いている。彼女には私が真名を伝えるその意味を知ったう上でこその驚きなのだろう。
張遼
「・・・・・ええんか?」
徐栄
「当然。これから先も一緒に行くのでしょう?命を預けあう身としては十二分です。そしてこれは私なりの「儀式」です。アナタを「守る人」と決めるための。
アナタに「殺される覚悟」を決めるための、ね。・・・よろしいですか?」
張遼
「・・・わかった。アンタの真名預からせてもらう」
ニコリと笑って深呼吸。さて・・・何年ぶりだろう。こうして真名を他人に預けるのは。だが・・・覚悟もできた。守る人にも入れた。
そして・・・
桂枝
「私の真名は「桂枝(ケイシ) 」これからもよろしく頼みますよ。張遼さん」
霞
「ウチの真名は「霞」や。改めてよろしゅうな。桂枝 」
新しい一歩も踏み出した。あとは明日を生き残るだけだ。
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決戦前夜。 | ||
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コメント | ||
>> shirouさん ボンちゃんさん 桂枝の姉・・・いったい何者なんだ・・・?的な感じでお楽しみください^^(RIN) >> アルヤさん 「信用した」の理由で真名をあずけるのはすごく珍しいことなんですよ。一応ですが(RIN) た、確かにアノヒトは最初袁家に仕えていたが・・・・・・。(shirou) そうか・・・あの人の弟か(#^.^#)(ボンちゃん) あれだけ重要視してた真名を預けるか(アルヤ) |
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