IS インフィニットストラトス〜騎士を駆る少年〜
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唐突に申し訳ない。俺の名前は晃。草薙晃だ。現在更識家でお世話になっている新高校一年だ。まあ、それはいい。お世話云々は置いといて、だ。

 

「どうしてこうなった…。なんで男である俺が女の園、IS学園に入学せにゃならん」

「仕方ないじゃない。さすがにロシア側でもこれ以上は秘匿するのが難しい。でも貴方がデータを開示する気がないって言うんだから」

「…大丈夫。他の人が見ても晃のそれは理解できないだろうから」

「慰めには感謝するよ。楯無、簪。ところで、楯無はそろそろ行った方がいいんじゃないのか?」

「え?あ、ホントだ!それじゃあ行ってくる。…簪ちゃん、手を出したら容赦しないから」

 

この2人は更識家の息女で、姉であり更識家党首である更識楯無とその妹である更識簪だ。ちなみに楯無はロシアの国家代表で、専用機【ミステリアス・レイディ】の保持者。このISの前の名は【モスクワの深い霧(グストーイ・トゥマン・モスクヴェ)】。

 

更に余談であるが、簪も日本の代表候補生。その為のISも同時進行で製作中だ。あの研究所、確か倉持技研だったか?たかだか第三世代型程度のISの骨格を作るのにどれだけ時間をかける気だ。

 

「さてと、俺は…1組か」

「4組」

 

どことなくしょんぼりしてるな。そんなに同じクラスで無かったのがショックだったのか?

 

「簪、クラスが違うとはいえ同じ学年だ。そこまで落ちこむ必要はない」

「分かってる。でも」

「簪、我が儘を言ってはいけない。自分の思い通りにいかないのも、また現実なんだ」

「…分かった。ごめんなさい」

「分かってくれればいいんだ」

 

俺が1組の自分の座席に着くと、見慣れた姿が見えた。小学校の間よく遊んだりした。

 

「おい、一夏。織斑一夏」

「へっ?…まさか、晃の兄貴?」

「ああ。大体3年ぶりか。だるそうだな」

「兄貴、急に引っ越しなんかするなんて水くさいじゃないか」

「俺にも目的があるからな。しょうがないだろ?…っと、もう時間が。また後でな、一夏」

 

そのすぐ後に、副担任がやってきたんだが。山田真耶って洒落でも狙ってるのか?と言わんばかりのふざけた名前だな。親は何を考えてそんな名前にしたんだ?

 

って、一夏の奴ぼけっとしてやがる。イラついたから消しゴムの小さいやつをデコピンで頭に直撃させた。痛がっているが知るか。大声出して先生を驚かすなよ。

 

「お前もやり過ぎだがな」

「誰かと思ったら、千冬さ…じゃなかった織斑先生ですか。攻撃なんて俺には当たりませんよ?」

「ふん、まあいい。

諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる」

 

相変わらず傲慢なお言葉だな。…大量殺人者の分際で大きな口を叩くなよ。色々な意味でおこがましいんだよ、あんたは。そんな冷めきった俺とは対極に女子のテンションはすこぶる高かった。

 

「ずっとファンでした!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

喧しいな…。こんな女にそこまで熱くなる意味が分からない。まあ、うっとうしいと感じているのはあちらも同じらしく。

 

「…毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

自意識過剰かと思ったが嘘ではなく、本当に毎年この規模の騒ぎになるらしい。まったく中々に度し難いものだな。

 

「きゃああああああっ!お姉様!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾して〜!」

 

なんなんだ!?この学園にはそういう趣味の生徒も数多く在籍しているのか?今更だが、ちょっと自分の貞操が守れるか不安になってきた。

 

その後は滞りなく進み、一夏が叩かれるのと金髪のイギリスの代表候補生に絡まれるくらいならあったが、授業も終わった。食堂にて一夏は俺のブローチを指差した。

 

「あれ?兄貴ってアクセサリーなんか付けてたっけ?」

「あのな、俺は特別待遇の専用機持ちなんだよ。だからここでも寮じゃなくて、小さいプレハブ小屋で生活するんだ。家というよりも工房だな」

「え?マジで?」

「まあ、飯はここで食うから変わらねえよ」

「へ〜。やっぱり兄貴はすごいよな。箒」

「そうだな。それで今までどちらにいらしたんですか?晃さん」

「あのな、俺らは同年代だろ?敬語もいらないし、さん付けもいらん」

「まあまあ、それでどこに行ってたんだ?」

「色んな処に行ったよ。アメリカ、イギリス、中国、フランス、ドイツにロシア。有名どころだとこんなものか」

「相変わらずフットワーク軽いな、兄貴は。それじゃあどうして兄貴はこの学園に?」

「それは」

 

ピンポンパンポーン!

 

この糞ふざけた音楽…あいつか。

 

『はろはろ〜?皆のアイドル、篠ノ之束だよ〜』

 

「あの馬鹿は今度会った時に潰す」

「あ、兄貴そこまで怒らなくても…」

「あいつが電波をジャックしてまでやる事にろくな事はない」

 

『ここで皆に大ニュース!実は、世界にもう1人ISと同じコアを作れる人がいます!』

 

「やっぱりろくな事をしない」

 

『し・か・も、新たにISとは別系統の物を作り上げた!その名も』

 

『KMF、通称ナイトメアフレーム。その最新鋭機は現行ISのスペックを軽く凌駕する。そんな機体を造ったのは』

 

『IS学園一年一組草薙晃博士なのでした!』

 

今からあいつを潰してやろうか。この情報を開示する気はさらさら無いってのにバラしやがって。そんな事をすれば、各国が俺を求めに来るに決まってるだろうに。ちょっとしてそれが目的なのか?

 

『KMFのスペックをみんなに知って貰うために、約3百発のミサイルをIS学園に向けて放ったよ』

 

俺はそれ以上放送を聞くのを止めて、外に出た。総数は分からないが確かに大量のミサイルが此方に飛んできている。

 

「ランスロット・アルビオン、起動」

 

すると、俺のブローチが一瞬輝きスマートなフォルムの白と黄金の色を纏う騎士になった。

 

「これがKMF」

『下がってろ一夏、篠ノ之。こいつの加速は半端じゃないからな』

「わ、分かった」

 

俺はエナジーウィングを展開すると、瞬時加速(イグニッションブースト)の数倍の速度で飛翔した。最早、光速と言っても過言じゃないからな。絶対防御もこの機体には搭載されているから、意識がブラックアウトすることもない。

 

「さてと…とりあえずこれでいくか」

 

エナジーウィングが横に広がり、マシンガンのように弾を射出しミサイルを破壊する。これを5秒間続けると、全体の2割を破壊。

 

そしてランスロット・アルビオンの前世代機、ランスロット・コンクエスターの射撃武器ヴァリスをハドロンブラスター形態に変更した。

 

「吹き飛べ!」

 

これで全体の6割を撃破。ってあれはまさか…核弾頭!?ちっ、ふざけやがって。俺は周りにビットを展開、核弾頭の組織が構成されきる前にすべて破壊した。

 

そして俺の視界には【ALL TAGET DFEAT】と表示された。俺のシールドエネルギーは1割も減っていなかった。俺は地面に降り立つと、KMFを解除した。

 

「怪我はないか。一夏、箒。それに皆も」

 

俺を迎えたのは歓声だった。あれ?俺の所為で死にかけたのに罵声の声の1つもない?

 

「すげぇよ、兄貴!あんだけの数のミサイルを物ともしないなんて!」

「本当ですよ!それにすいません。私の姉が…」

「篠ノ之、お前が謝る必要はない。謝罪の言葉は本人から直接訊くからな」

 

『これで皆分かってくれたかな?それとこれは余談だけど、このKMFは男性でも操縦出来るんだって。それじゃあ、バイバーイ』

 

天才もとい天災と称される研究者は最後の最後までろくでもなかった。確かにKMFは男性でも操縦出来る。だが、今コアは1つしかないし、女性でも操縦出来る。

 

「そういえば、一夏。今度弾と会えるか?」

「会えると思うけど…なんで?」

「あいつはKMFのとある機体と相性抜群だから」

「そういえば兄貴の機体って何世代機なんだ?」

「ランスロット・アルビオンか?あの機体は第9世代型のナイトメアフレームだよ」

「だ、第9世代!?」

「元々ISは宇宙、KMFは陸上での運用を目的にしているんだ」

 

来るべき未来、世界は宇宙に進出することになるだろうと造られた物がIS。来るべき未来までの自衛手段として造られた物、それがKMF。

 

「やっぱり一般人が関わるとここまで開発が遅いんだな。KMFは純粋な兵器だった筈なのに、まさか宇宙進出まで視野に入れなければならないとはな」

 

確かに女性にしか使えないISはKMFを除けば現行兵器の中でも最強の兵器。だが、男性も女性も使えるKMFを世の中に発表した今では女尊男卑の世は崩れた。一体何を考えているんだ束は…。

 

「なんて考えていたんだがな…」

「うん?どうかしたの?あっくん」

「あっくんじゃねぇよ。なぁ、束。何考えているんだ?ISが最強でなくなった今、お前はいつ命を狙われてもおかしくないんだぞ?」

「そうだね〜。でもでも、あっくんが日陰に埋もれる意味もないと思ったんだ」

「各国が俺の能力を求めてやってくるだろうな。…そうだ。束、全世界のニュース系の番組のデータジャックは可能か?」

「それぐらい昼食前だよ」

「意味分からん。まあ、それは別にいい。俺が記者会見擬きで全世界に響かせてやるKMFと俺を怒らせたらどうなるかをな」

「ひゅ〜ひゅ〜、あっくん格好いいよ」

「あ、お前は折檻な」

「へ?」

「人が頼んでもいないことをしたんだから当然だろう?」

「ちょ、ちょっと待って!」

「駄目♪」

「い〜や〜!」

 

 その夜、女性の悲鳴がIS学園の夜に響き渡った。…なんでばれなかったんだろう?

説明
とある秘密を抱えた少年が政府の命令により、IS学園に入学する事になる。波乱万丈な予感を感じながら……。そんなお話です。
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タグ
騎士 少年 IS KMF 

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