魔法少女リリカルなのは〜生まれ墜ちるは悪魔の子〜 五話
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 フェイトたちと手を組んでから幾ばくかの日が流れた。

 

 調査を開始したもののジュエルシードを見つけるのは魔道師にしか分からないらしかった。

 

 しかも、カリフには魔力もなにもなく、調査はフェイトに丸投げするしかなかった。

 

 少し話が変わってしまうのだが、元々は野宿で済まそうかと思っていたときにフェイトから一緒に住まないかと誘われていた。

 

 そんないきなりの提案に当然カリフもアルフも驚いた。いくらなんでも知り合ったばかりの不審人物を自宅に招くなどどうかしている。

 

 だけど、流石に屋根付きの家にも愛着があり、正直整った環境で生活はしたかった。

 

 カリフからしたらフェイトの優しさが眩しすぎた。

 

 そこでアルフも賛成しているわけだから断りきれなくなっていき、結局折れてしまった。幾ら欲を前提に行動するカリフにも人間らしい仁義と誰かにたよる羞恥心は持ち合わせていた。

 

 カリフは泊めてもらう代わりに全力でフェイトの安全を保障した。

 

 その際にフェイトは顔を紅潮させたのは謎であったのだが……

 

 兎も角、そんなこんなで今ではすっかりフェイトとアルフとの生活にも慣れていったのだった。

 

 そして、そんな彼にやっと待ち望んでいたことが起こったのだった。

 

「ジュエルシードが見つかっただと?」

「うん。ここからちょっと距離はあるけど海鳴っていうところでジュエルシードが発動しそうだから」

「それは確かか?」

「そりゃそうだよ!! フェイトの情報網は本物だよ!!」

 

 ソファーに座ってテレビを見ているカリフの横でアルフがドッグフードを貪りながら自慢げに言う。

 

「そうか……やっとジュエルシードをこの目で見られるのか……楽しみだ」

「でも、扱いを間違えると危険だから気を付けてね?」

「ふん。恐れるに足りんな」

「そんな自身はどこから来るんだい……」

 

 カリフの自信にアルフはどことなくため息を吐く。

 

「じゃあお昼になったら出発するけど……いいかな?」

「それはお前が決めるがいい。フェイト」

「うん……じゃあお昼食べたら行こう?」

「分かったよ!! なに食べようか!?」

「じゃあバーミヤンに行くとしようか。久しぶりに中華が食いたい」

「いや、なんでカリフが決めるのさ。ここはビッグボーイでしょうが」

 

 いつもより賑やかな日常にフェイトも少し微笑む。

 

 こうしてフェイト一行の昼は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、……あれは……」

「た、多分……あの猫の大きくなりたいって願いが正しく叶えられたんじゃないかと……」

 

 私、高町なのはは極々平凡な小学三年生です……ついこの前までは……

 

 どういうことだか今は魔法少女なんてやっちゃってます……

 

 きっかけはユーノくんの部族が発掘したというジュエルシードを集めています。

 

 そして今日はというと、お友達のアリサちゃんと一緒にすずかちゃんの家に遊びに来ていたのですが、なんとそこでジュエルシードが発動してしまいました!!

 

 私とユーノくんはすぐにその場へと向かったのですが、そこにはなんとおっきな猫がいたのです。

 

 多分あの猫はすずかちゃんの猫なのでしょう。

 

「と、とにかくあのままじゃあ危険だから早く封印しないと」

「そ、そうだね……あのままだとすずかちゃんも困っちゃうだろうし」

 

 それに幸運にもこれまでと違って襲ってくる様子もない。

 

 このままレイジングハートで封印しようとした時だった。

 

「え!?」

 

 背後から音と共に閃光が頭上を通過して巨大な猫に当たった。

 

―――ニャアアアァァ!

 

 閃光を喰らった猫はよろめく。

 

 慌てて閃光が飛んできた場所へ目を向けるとそこには黒を強調した金髪の綺麗な女の子。

 

 そして、鋭い目で羽織っているボロボロのマントを風にたなびかせた男の子がそれぞれ木の枝の上から私を見下ろしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、なんでアルフじゃなくてオレなんだ?」

「え? 何が?」

「何って……アルフを別のジュエルシ?ド捜索にあたらせてオレはお前とジュエルシード捕獲」

「え? だめだったの?」

「そういうことじゃなくて、こういうのはあまり信用できる奴を同行させると思うんだが?」

「うん。だからカリフと一緒に……」

「……」

 

 猫を見つける数分か前にカリフとフェイトはアルフと別れてジュエルシードを目指していた。

 

 アルフも嬉々としてカリフにフェイトを任せて行ってしまった。

 

「よくこうもアッサリ人を信用できるな……」

「え? でもカリフは約束……してくれたから……」

「……お前の安全を絶対に保障するってのか」

「うん……」

 

 フェイトは言ってて恥ずかしいのか頬を朱色にほんのりと染める。それに対してカリフは態度も表情も変えずに続ける。

 

「こういう時の“絶対”とか“約束”ってのは嘘つきの常套句だろうが。一番信用しちゃならねえ言葉だ」

「え……じゃあ護ってくれるって言葉は……」

「いやいや、オレのは本当だ。ウソは嫌いなんでな」

「そうなの?……よかった……」

 

 急に泣きそうになったり機嫌なおしたりと忙しい上に世間知らずな奴だ……

 

 ……なんであんなこと軽々しく言ってしまったのか……久しぶりに自分の行いに後悔してしまったのは誰にも言えない。

 

 そんな感じで感傷に浸っていた時だった。

 

「!……カリフ」

「なんだ?」

「あれ見て」

 

 フェイトが指を指す方向を見てみると、そこの風景から段々と色彩が失われていた。

 

 色を失った灰色の光景はカリフたちの元にまで達した。

 

「なんだこれ?」

「広域結界……辺りの空間との時間軸をずらす魔法……」

「つまりどういうことだ?」

 

 カリフが尋ねると、フェイトは手の甲の三角の水晶体からバルディッシュを取り出す。

 

「ここに私と同じ魔道師がいる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、カリフは持ってきていたマントを羽織り、できるだけ姿を見られないようにした直後に二人の少女は相見えた。

 

「どうする? 状況から見るに奴等の獲物も同じようだが?」

「何とかしてみる」

「やれそうか?」

「うん。ここは私一人で充分だよ」

 

 そう言ってフェイトは白い奴の方へと飛んでいった。

 

「魔道師とやらの戦いか……これも一興か」

 

 自分とは違った新たな闘いの形を目にできると疼く好奇心を胸に傍観しようとしたのだが……

 

「……あのネズミ……気がでかいな……」

 

 やっぱり体を動かしたかったからネズミの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子、僕と同じ世界の子か!」

 

 不味い……まさかこんなことになるなんて……

 

 さっきの攻撃からしてあの子は闘い慣れている!

 

(いくらなのはに才能があっても技術や経験じゃあ歯が立たない!)

 

 明らかに分が悪すぎる。今のなのはは例えるならまだヒナ鳥だ。

 

 そう思いながらなのはを援護しようとした時だった。

 

「待て、ネズミ」

「!!」

 

 突然、僕の前に一人のマントを羽織った少年が舞い降りた。

 

「お前……喋るのか? 珍しい生き物だな」

「き、君は……」

 

 ユーノはカリフの値踏みするように探られる視線を受けながら気丈に返す。

 

「まどろっこしいのは嫌いだから直接言おう……何故貴様等はジュエルシードを集める?」

「何なんだ君たちは!! どうしてジュエルシードのことを知っているんだ!?」

「……あ”?」

「!!」

 

 ユーノの返答にカリフの表情が歪み、ユーノもその変化に圧される。

 

「チッ……まあいいか、クソネズミと会話できるとは期待してなかった……それ見てみろ。お前のパートナーももう限界だな」

「え!? なのは!!」

 

 カリフの言葉に視線を戻すとその先にはフェイトと鍔迫り合いするなのはの姿があった。

 

 だが、その時だった……ユーノは背後から悪寒を感じた。

 

「………ジュル」

「へ?」

 

 首をギギギと後ろに振り向かせると、そこには口からよだれを垂らすカリフがいた。

 

「……お前はどんな味がするんだ?」

「……は?」

「これだけ流暢に喋れるんだ……頭のミソもタップリ詰まっているのだろう?」

 

 カリフはよだれを手で無造作に拭き取り、クラウチングスタイルをとる。

 

「少し小腹がすいてたんだ……オレに会ったのが運の尽きだったなぁ?」

「え、ちょっ……待って……!!」

「……この世の全ての食材に感謝を籠めて……」

 

 カリフは足に力を入れ……

 

「いただきます」

 

 そう言った瞬間にユーノの元へと足のバネを最大に活かしたロケットダッシュを決めた。

 

「うわあああああぁぁぁぁ!!」

 

 固まっていたユーノは命の危険を感じ、すぐに魔法陣を形成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ!! なんでこんな事するの!?」

 

 ユーノが己の全てを賭けて闘っている間、なのはとフェイトも互いに火花を散らせていた。

 

(なんでこの子……こんなに寂しそうなの?)

 

 つい先程、間近でフェイトの目を見たなのははそう思った。

 

 その目は紅く、他の人を魅了させるほど綺麗なのに……どこかに憂いを帯びていた。

 

「答えても……きっと意味がない」

 

 そう呟くと、フェイトとなのはは互いにデバイスを相手に向ける。

 

[フォトンランサー、ゲットセット]

[ディバインバスター、スタンバイ]

 

 そして、二人が勝負を終わらせようとした時だった。

 

―――にゃ?……

「あ……」

 

 フェイトに倒された猫の鳴き声になのはの気が逸れた。

 

 その一瞬が命取りだった……

 

「……ごめんね」

 

 相手の隙を見逃さず、フェイトは本当に小さな謝罪を口にすると同時に金の魔力弾をなのはへ放った。

 

 なのははそこでやっと攻撃に気付き、気付いたと同時にその視界は金の世界に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのは!!」

 

 必死にカリフから転移魔法で逃げ回っていたユーノは打ち上げられたなのはを目にした瞬間、自分が追われているのを忘れて彼女の元へと方向を変えた。

 

「なんだ……もう終わったのか……残念だ」

 

 カリフは意識をユーノ(おやつ)から外し、残念そうにしながらピシュンとその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュエルシ?ド、封印」

 

 そう言って猫から出てきた青い宝石……ジュエルシードをバルディッシュのコアへ収納した。

 

「どうだ? ちゃんと止めはさしたか?」

「カリフ……そんなことしないよ……」

「軽い冗談だ。なら、もうここには用はないな?」

「うん。今日はもう終わり」

 

 カリフの冗談に苦笑しながら、共に空へ飛び立とうとすると、カリフは背後にいるであろうユーノに振り向き……

 

「今日は……運が良かったなぁ?」

「ぐっ!」

 

 Sっ気溢れる笑みをプレゼントすると、ユーノは体毛が逆立ち、小さく悲鳴を上げた。

 

 その様子を見届けた後、カリフたちは空の彼方へと飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのネズミ……次こそは確実に……」

 

 カリフは時間切れとなってユーノを食べそこなったことを空を飛びながら後悔していた。

 

 幾ら切り替えが速いと言っても、あのタイミングはないだろうと……

 

「……」

 

 そんな愚痴を続けるカリフの横でフェイトはただ無言だった。

 

 どこか、元気を失くしたかのように。

 

(ジュエルシードの幾つかはあの子が持っている……)

 

 そう思い、フェイトは悲しみの色をより一層濃くさせる。

 

「……」

 

 そんなフェイトの様子にカリフも何も言えないままマンションにまで帰っていった。

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白い魔導師
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