いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第三十七話 ビジュアル系って、何ですか?
「初めまして八神はやてといいます」
「アリサ・バニングスよ。アリサでいいわ」
「高町なのはです。私もなのはでいいよ」
「クロウ・ブーストだ」
「フェイト。…テスタロッサです」
今日はすずかちゃんが図書館でよく会う女の子。八神はやてちゃんのお見舞いに来ています。
…大人数で来ても大丈夫だったかな?
(…フェイトちゃん、大丈夫?)
(う、うん。大丈夫。だよ)
フェイトちゃんはここ三日でいろいろあった。
プレシアさんが生きていたり、アリシアちゃんが生き返ったり、そして…。
友達になろうとした高志君がその二人を助けたという事を知って、昨日からぽけーとすることが多かった。
「うん。フェイトちゃん?…アリシアちゃんやのうて?」
その高志君もデバイスであるガンレオンの損傷が激しく、また、フェイトちゃんのようにリンカーコアは奪われていないもののフェイトちゃん以上にリンカーコアが疲弊しているので今日はアリシアちゃんとプレシアさんと一緒にアースラの皆さんと一緒に話し合いをするそうです。
「っ。アリシアを知っているの?」
「うん。二、三日ぐらい前かな。この病院に来てなかったん?あ、でもアリシアちゃんはフェイトちゃんみたいに大きくなかったしな…。妹さんなん?」
「うん。そういうもの…かな」
「あ〜、もしかして聞いちゃいけなかったことやった?」
「そんなことないよ。ただ、ちょっと…」
フェイトちゃんの表情が暗くなったのを感じたのかはやてちゃんの表情も曇ってきた。
それを感じ取ったのかアリサちゃんがパンパンと手を叩きながら鞄からトランプを取り出しながら場を明るくする。
「あ〜、もうっ。こんなところで暗くならない。ほら、クロウッ、皆にジュース買ってきて。私はホットアップル」
「じゃあ、私はウーロン茶」
「わかった。なのはとフェイト。はやてはどうする?」
「じゃあ、うちはホットミルクで」
「私はレモンティー」
「え、えと、と」
「と?」
「豆乳っ」
「「「「「いいのっ、それで?!」」」」」
フェイトちゃん。もしかしてまだあのお弁当の事を気にかけているのかな?
「だ、駄目だったかな?」
「い、いや、駄目じゃないと思うが…。まあ、買いに行ってくる」
皆からお金を受け取るとクロウ君は病室から出ていった。
「それじゃあ、クロウが言っている間にみんなでポーカーでもするわよ。ルールは分かっているわね」
こうしてアリサちゃん指導の下、皆でポーカーをやり始めた。
ちなみに、このトランプ。病院に設置されたお店で購入したそうです。
飲み物も一緒に買ってこればよかったのにと言ったらアリサちゃんに頭をぐりぐりされちゃいした。
「てなことがあってな。いやー、シャマルと入れ違いになってもうたんよ。みんないい子やったで」
「そうですか、それはとても残念です」
「クロウ君もなかなかのイケメンさんやったで。将来有望や」
ごめんなさい。はやてちゃん。
実は私、ずっといました。
はやてちゃんの所に行ったときにはその子達はいてクロウ君という男の子が病室から出ようとした時には慌ててその場を離れちゃいました。
それを思うと…。
「…シャマル?どうかしたん?」
「い、いえ、なんでもありませんよ」
「ほうか?それならいいんやけど。…みんなはどうしている?ここんところ皆忙しそうやけど。…あっ、そうや。イケメンで思い出したで。もう一人すんごいビジュアル系の兄ちゃんがいたんや」
「へー、そうなんですか」
イケメン。というのは格好いい男の人のことを指しているのだというのはわかりますがビジュアル系って、何ですか?
「全身、まっ黒の服装だったんで最初は死神?!と、思ってしまったんやけどこれがまた格好良い兄さんでな。たしか…アサキム。そう、アサキムいうっとたで。いやー、写真を撮れなかったのが惜しいと思うほどの、シャマル?どしたん?」
「は、は、はやてちゃん。その人に何かされませんでしたか!」
はやてちゃんからアサキムという人の名前を聞いて私ははやてちゃんの肩を掴んで聞き出す。それと一緒にはやてちゃんの体に何かされていないかの診断をするために魔法を使って検査してみる。
「お、おおお。どうしたんシャマル?落ち着いてえなっ」
ビジュアル系ってもしかしてあのチクチクツンツンした鎧を着た人の事を云うんですか?!
それからはやてちゃんから聞いた話だと普通の人。と、判断したかったけど…。
彼はまた会いに来ると言っていた。
はやてちゃんとの話し合いもそこそこに家に帰った私はシグナム、ザフィーラ、ヴィータちゃんと話し合いをすることにした。
「…主はやての護衛に誰かをつけるべきだろうか?」
ザフィーラの言葉に私は反対する。
「それは危険ね。変身魔法を使っていなかったのがネックよ。私達の素性は既に割れていると思うわ。だから、私達がはやてちゃんと一緒にいることで逆にはやてちゃんを巻き込んでしまうかもしれない」
私の意見にシグナムも同意した。
「…なら、これまで通り蒐集活動を続けるべきか。むしろこれは良かったのかもしれないな。迂闊に主はやての元に寄れば感づかれることになっていた。…これからは戻る時にも神経を削ることになるな。ただ、他に問題があるとすればやはりアサキムとかいう奴だな」
「仮面の奴の事もそうだぜ。なんであいつ等私らに協力するのか訳が分からない」
ヴィータちゃんがシグナムの言葉に同意して気がかりになることを提示する。すると、今度はシグナムがその意見に意見を述べた。
「…いや、アサキムの狙いは闇の書の完成だけじゃない。と、私は思う」
「どういうことだ?」
「あいつは闇の書だけではなく。…その黄色の機械人形。いや、ガンレオンとかいう奴と戦うことを望んでいるようでもあった。しかも、あのガンレオンが変貌するのをまるで楽しみにするかのように…」
シグナムはレヴァンティンをテーブルの上に置いてその時の映像を空中に映し出す。
そして、シグナムとレヴァンティンが最後に見た映像からはじき出された攻撃力はヴィータちゃんのギガント。シグナムのファルケン並の攻撃力を持っていることが判明した。
「…あいつ。私とやりあっていた時は手加減していやがったのか」
ヴィータちゃんは恨みがましくガンレオンの映像を見ていた。
「そうか?俺にはそうは思えん。ガンレオンはあの力を使うことを躊躇っているかのようにも見えるぞ」
「どういうことだよ、ザフィーラ?」
「奴はアサキムと戦う前にシグナムと戦っていた。シグナムを捕獲しようものなら最初からあの姿に変貌して叩くのが一番だったはずだ。それなのにしなかった。つまり、あの姿になるにはデメリットがあったという事だ」
つまり、シグナムを確実に捕まえるよりも変貌しないで逃げられるかもしれない方を取った方が彼?にメリットがあったという事か。
「…だったらますます訳が分からねえ。管理局やガンレオンが私らを捕まえたがっているのはわかる。だけど、ガンレオンと戦うアサキムの狙いは?闇の書が狙いなんじゃないのか?」
「…シグナム。アサキムは何と言ったの?」
「ん。そうだな。奴は『僕は僕の理由で君達を手伝う』とか言っていたな。あと、闇の書を完成させるのが目的だとも言っていたな」
つまり、彼には彼の目的があって私達に接触している。
だけど…。
「仮面の奴はただただ俺達の援護をするだけでそれ以上は何も言っていなかった」
「そもそも闇の書はその主にしか使えないはずだぜ。仮面の野郎にしてもアサキムにしても使うのは無理だ」
「…だけど、そうなるとますます訳が分からないわ。仮面の男もアサキムという人も」
彼等についての情報の少なさと目的が分からない。
「…なあ、これではやては助かるんだよな」
そう、ぽつりとヴィータちゃんが呟いた。
はやてちゃんが助かる。それははやてちゃんの動かない足に由来している。
「闇の書が完成すれば、はやての脚は治って、また笑って暮らせるんだよな」
その動かない足。その麻痺は闇の書が原因。
闇の書が今の主、はやてちゃんの所に転生してきたことではやてちゃんは両足が動かなくなった。
この世界の病院では麻痺と診断されているけど本当は闇の書の力が強すぎてはやてちゃんの脚の麻痺として現れた。
「…無論だ、だから我等が動いている」
そして、はやてちゃんの誕生日。
私達、闇の書の守護騎士が現れたことによりその麻痺の強さは私達が気づかない程緩やかに、だけど確実に進行していて、気が付いたころには残り半年の命だと知った。
「闇の書が完成すれば、主はやても偉大な力を手に入れる。闇の書も制御しきって足の麻痺も治るだろう。その為の不忠。蒐集だ」
はやてちゃんは私達に魔力を集める作業。蒐集活動を禁じた。
他の人や生き物に迷惑をかけてまで足を治したくない。私達と暮らしていけるだけでいい。だから、収集は駄目。それがはやてちゃんが私達に言い渡した初めての命令だった。
とても優しくて嬉しかったその言葉。
それを破ってでも私達ははやてちゃんに生きていて欲しい。
だから私達はその命令に反して蒐集活動をしている。
「シグナムやザフィーラが言う通りよ。ヴィータちゃん。らしくないわよ」
「それは分かっているんだけど、違う気がするんだ。いつもこうじゃなかった。そんななんていうか、胸の中がもやもやするというか」
ヴィータちゃんは何か引っかかるような物を感じているようだった。
だけど、私達には迷っている時間すらもないのだ。
「それでも私達はやるしかない…っ!?」
私がそう言い切ると同時に私は広域結界を張った。
そして、シグナム。ザフィーラ。ヴィータちゃん。私も含めた全員戦闘態勢に入った。
ドガン。
と、同時に私達は家の壁を壊しながら表に出ると向かいの家の屋根の上に黒い鎧。アサキムが佇んでいた。
「…へえ、僕に気づくとはなかなかやるね。湖の騎士」
私の行動をまるで覗いていたかのように感嘆の声をこぼすアサキムに私達は戦闘意識を高める。
「てめぇ、何しにきやがった!」
「ここを知られたからにはただでは済まさんぞ」
ヴィータちゃんとザフィーラが前に出てアサキムと対面する。が、それをシグナムが止める。
「待て!お前達っ、奴に近寄るな!」
「「…シグナム?」」
シグナムは唇をかみしめながらアサキムを睨む。
それは目の前の彼に恐怖しているのかもしれない。
「烈火の将は分かっているようだね。だが、僕は君達と戦う為にここに来たわけじゃあない。少し調べ物をしに来ただけだ」
「調べものだと…」
「まあ、証拠を確かめに来たといったところだ。あと、忠告に来た。『傷だらけの獅子』に手を出すな。それだけだ」
『傷だらけの獅子』?
ガンレオンのこと?
「な、ま、待て」
シグナムがアサキムを引き留めようとしたけど彼はそれに耳を貸すつもりはないらしく、そのまま言いたいことだけを言い切ると魔力を高めた。そして、
ドオンッ。
と、小さな爆発をたてたかと思うとアサキムは私の張った結界を軽々と打ち破り違う世界へ転移していった。
「…アサキム。何をしに来たんだ?」
言葉だけならあのガンレオンには手を出すな。と、忠告に来ただけ。よね?
「私の結界を簡単に打ち破るだなんて…。て、皆急いでここから離れるわよ!さっきの騒ぎで管理局に気づかれるかもしれないわ」
「げっ、それは勘弁してほしいぜ。シャマル、ジャミングを頼む」
もうやっているわよ。
はあ、今日は皆の休息日だったのに…。
「愚痴を垂れるなヴィータ。…いつもの無人世界でいいかシグナム?」
「…ああ、それでいい。では、皆。道中気を付けるんだぞ」
「ヴィータちゃん。無理しないでね」
「わーってるよ」
アサキムが現れた理由が分からないまま、私達はその場から別世界へと転移した。
ギィンッ。
私がロッテから聞いた情報を整理していると突如張られた圧迫感を関いる魔力の結界に思わず腰を上げる。
「…やあ、闇の書の主を支援する人間は君であっているかな?ギル・グレアム?」
黒い鎧が目の前に現れると同時に先程照らし合わせた声紋の声が一致した。
「…何の用だ?アサキム・ドーウィン」
アリアから聞いた通りの情報では彼に逆らうのは無理だ。だが、ここで倒れてしまってはクライドの仇も取れないまま終わってしまう。
「君にいろいろと聞きたいことがあったからここに来たんだ。君は闇の書。いや、『悲しみの乙女』をどこで手に入れた?」
「…何のことだ」
「っ」
キィイイイ。
アサキムの操るシュロウガの目が怪しく光ると同時に私の体が緑色の光を放つ。そして、
あの苦々しい((事件|・・))が脳裏にフラッシュバックする。
これは!?
「…なるほどね。これが『闇の書』か。…くだらないな。こんなくだらない事で取り込まれていたというのか『悲しみの乙女』は」
「貴様っ!」
これが報告書にあった『知りたがりの山羊』の力か!?
奴が知りたいと思った対象の記憶やその正体を見破る力。まさか、常時張っている魔力障壁をやすやすと打ち破るとは…。
私は護身用のデバイスを起動させて奴に砲撃を放とうとしたが彼の動きはそれ以上だった。
ドンッ。
と、鈍い音を立てて私の腕を彼の剣が貫いた。
「…ぐっ」
「へえ、ここで悲鳴を耐えるとは老いた体とはいえ流石は提督と言ったところか」
当然だ。私の戦友を!弟子の父親を奪った『闇の書』がくだらない。と、言った貴様相手にそのような態度をとるものか!
「…まあ、いい。これで僕が知りたいことは知った。後は時が来るのを待つとしよう。失礼するよ、ギル・グレアム」
アサキムはそういうと結界を解除するとともにどこかの世界へと転移していった。
「提督っ。グレアム提督!」
この異常事態に気が付いたクロノと他の武装局員が私の部屋に来るころには私は出血多量で意識を失っていた。
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