おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 第7話 刻を越えて
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(木之子学園中等部・校舎玄関前)

 

 ミキを加えた一行は、高等部を後にして、道沿いに進み、木之子学園中等部の玄関前にたどり着いた。

 

 シーン

 

ミキ:玄関・・・閉まってますね

升太:バケモノの声もしないし、ここはパスかな

デス:・・・うむ。確かに私のセンサーにも引っかからない。次に進むか

テト:電源室で私たち、高等部でミキさん、つまり、こっちに人間が来た箇所だけ、バケモノが襲っているように感じるね

 

 そのとき、道の先から女の子と男性の叫び声が聞こえてきた!

 

女の子の声:こらぁぁぁ、こっち来るなぁ! リンゴ爆弾! リンゴ爆弾!

男性の声:こいつ! 生徒に近づくな! チョコスラッシャー!!!

 

ミキ:一大事! 確か声の場所は・・・初等部!

デス:小学生が狙われているとすると、男性は先生か! まずい、急ぐぞ!

 

 ザザザザッ

 

 一行は道沿いに走って声のする地点まで急行した!

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(木之子学園初等部・校舎玄関前)

 

女の子:こっち来んな! えいえい!

 

 ひゅーん、どかーん! ひゅーん、どかーん!

 

 ランドセルを背負った赤い服の女の子はミキと同じように手から赤い大きなリンゴを出現させて、怪物に投げつけていた。どうやらこのリンゴ、爆弾のようだ。

 

男性:チョコスラッシャー!! テルテル爆弾!! はぁはぁ、きりがない・・・・

 

 チョコ色の背広を着て眼鏡をかけた長身の男性は、風貌から先生のようだった。右手から四角いチョコの刃物を出現させて怪物を追い返したり、同じく左手からテルテル坊主を出現させて投げつけ、爆発させていた。

 

 いずれも怪物を倒すに至る攻撃ではなかった。

 

升太:おーい! 助けに来たぞ!

デス:我々は救助隊だ! こちらも魔法で応戦するから、コチラを攻撃しないでくれ!

ミキ:こっちも頑張るから、あなた達も頑張ってね!

 

女の子:うん、ユキ、頑張る!

男性:わかった、出来るだけやってみる!

 

 こうして、デスとテトと人間達vs怪物の戦いは数分続いた。さすがに量がいたため、デスやテトも手こずっていた。ほとんど戦力にならない升太と、女の子と男性を守りながらの戦いだったためだ。

 

 ようやく怪物を全て退治し、場が落ち着いたのを確認したので、ミキが女の子に駆け寄った。

 

女の子:うわーん! 怖かったよー!

ミキ:はいはい、よく頑張った!!

 

 ミキは女の子の頭をなでなでしてあげた。女の子もようやく落ち着いたようだ。

 

ミキ:お姉さんに名前を教えてくれるかな?

女の子:ぐすん、うん。私、“河合ユキ“(かあいユキ)っていいます。突然外が真っ暗になったら、クラスの友達がドンドン消えていって、氷山先生と私だけになったと思ったら、今度は怪物が襲ってきて・・・

男性:私は初等部教師でこの子の担任の“氷山清輝”(ひやま きよてる)っていいます。何故か“不思議な力”を使えるようになっていたので、この子と一緒に怪物から逃げながら、玄関までたどり着いたのですが、学校じゅうの怪物が集まったのか、応戦仕切れなくなって困っていました

デス:そうですか。あ、私はデスと申します。こっちが娘のテトで、こっちが大学の生き残りの升太です

ミキ:で、私が高等部の生き残りの古河ミキです

 

氷山:そうですか。初等部も怪物の動きから考えて、おそらく私たちだけ・・・

ユキ:う・・う・・消えちゃったお友達・・大丈夫かな・・・

氷山:きっと大丈夫だよ。それより僕たちが生き残らないと行けないよね。頑張ろうね?

ユキ:うん

 

デス:さすが先生ですね。冷静沈着だ

氷山:今はこの子を守ることが僕の仕事です。皆さんと一緒に行動させていただきます。ここから脱出しましょう!

ミキ:そうですね!

ユキ:ユキも頑張る!

 

デス:ところで先生、どこか“情報”を入手できそうな施設はありませんか? 電源室前でマップを確認できただけで、有力な情報がありそうな所がどうにもないんですよ

氷山:そうですね・・・

 

 ぐ〜

 

ユキ:・・・ごめんなさい、ユキです・・・

氷山:そうか、こっちに来る直前が4時限目で給食食べてなかったな。すいませんが、食料を調達していいですか? この先に学生食堂がありますから

升太:そうですね、僕も少しお腹がすきました

デス:(死神だから基本は腹が減らないので)私は大丈夫だが、他のメンツもそうらしいので、食堂に寄りましょうか

氷山:助かります。私が案内します

ユキ:やったぁ! ユキね、おっきなりんご食べるの!

 

 こうして一行は氷山先生に案内されて学生食堂に移動したのだった。

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(学生食堂)

 

 食堂は当然の如く、誰もいなかった。ドアは施錠されてなかったので、普通に開けて内部に侵入できた。

 

氷山:教師として、お金を払わずに食料を持っていくのは気が引けるが、致し方ない。元の世界に戻ったら、募金箱に大体の金額を寄付しておくよ

升太:さ、さすが先生ですね

ユキ:氷山先生は、世界一の先生なんですよ! だって、ユキが出来ない、二桁のかけ算ができるんだから〜☆

氷山:ははは、ちょうど算数の問題をやっていた時にこうなったので

ミキ:面白い子・・・・

 

テト:じゃあ、食堂のケースから、頂いていこうか。私は・・・フランスパンがいいかな

升太:あれ? そういえば、君はアレだから、お腹空かないんじゃないの?

テト:お父様は完璧だけど、私はこの服装のモードになっていると、人間と同じでお腹空くの!

 

 ユキは大きなリンゴをかじりながら、ミキはプルーンをツマミながら、氷山先生はチョコレートを食べながら、不思議そうにその光景を眺めていた。

 

 升太もお腹が空いていたので、保温室で保温されていたハンバーガーとポテトを食べた。

 

升太:不謹慎だけど、ドキドキしていて、こういうメシもなかなか感慨深いなぁ

氷山:心の不安要素や高揚ですね。同じような恋愛の心境変化を“吊り橋効果”っていって、吊り橋を一緒に渡っているカップルはより惹かれ会うという効果があってね、例えば一緒にアクションとかホラー映画とかそういうのを見ているカップルは、それと同じ心境になっていて、効果があるそうですよ

ユキ:そっか! じゃあ、先生とユキはラブラブに慣れるんだぁ! やったぁ!

氷山:ははは

テト:な、なんて恐ろしい子・・・

升太:せ・・せんせいも大変だなぁ・・・・

 

 デスと升太とテトは、片隅にあった“連絡掲示板”を見つけたので、食事をしながら眺めていた。

 

デス:ふむ。『鏡へ レポート見せて by 此方』か。これは学生同士の連絡か

テト:えーっと。『見える 私にも見えるぞ! by 社亜』。・・・単なる落書きね

升太:なになに。『ちょっと差幻 レポート薄いよ なにやってるの! by 無頼斗教授』。・・・・これは先生と生徒の連絡か

 

 いろいろ書いてある中で、デスは奇妙な張り紙を見つけた。

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 <事務より>

 

 ボ ラー事故に り、消息 明に っていた遊休施 の部室棟周辺 、再び不 定な状態になって ります。

 

 非常に 険です で、立ち らないようにして下さい。

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テト:お父様、これ・・・。

デス:うむ。部分的に文字が不自然に消えているが、意味はわかる。そして人間が消した形跡ではない。どうやら、私たちが知っている事情と現状、そして、ここに来る直前までに学園で起こっていた事の、ちょうど中間の状態で、学園は冥界に飛ばされたらしい

升太:え?

デス:つまり、これは、“ボイラー事故で消息不明になっていた部室棟周辺が不安定になっているから、立入禁止”という事務連絡だ。文字で100%そう書かれていたのが、学園がここに来る前。君が部室棟の律をいろいろ乱していた事は、現世の学園の施設にも、徐々に影響を与えていたのだな。リンクされていたということだ

テト:でも、学園がここに来たこと、文字が不自然に消えている事、ボイラー事故そのものが今は無いこと、これを結ぶと1つに繋がるのよ

デス:この張り紙の事例そのものが“消去か変更されてしまう予兆”ということだ。おそらく、ボイラー事故関係の連絡は1つも無くなってしまうのだろう。事故がなかったという条件で学校と1つになれるのはいいのかもしれないが、問題は2つある。1つは冥界で完全に1つになる可能性が高いこと。もう1つは、部室棟と学園には“20年”の時間差があること。やたらに“20年の差があるのにくっつける”と、矛盾により、学園全体が消去されるかも知れん

升太:・・・・いずれにしても、あまり時間はないんですね

テト:そうね。でももうちょっと情報が欲しいな

 

 さらに3人は目を凝らしながら、連絡掲示板を眺めた。

 

デス:・・・・ん? この張り紙は・・・・・・・・・な、なんだと!!!!!

 

デス以外全員:びくっ!

 

氷山:デスさん、どうされたんですか!?

ユキ:な・・なんか怖いこと!?

ミキ:え? なになに? 面白いこと??

升太:ん゛―ん゛―ん゛―!!!!

 

 トントン・・・・ポロン

 

 テトは升太の背中を叩いて、詰まったハンバーガーを取ってあげた。

 

升太:げほげほ! ど、どうされたんですか!?

 

デス:・・・またもやだが、升太君、君にも関係がある事だ。この張り紙を見て欲しい。あ、升太君と娘だけでいいですよ

 

 テトと升太はデスの指先の張り紙を見ることにした。

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 <生徒会より>

 

 以前より問題だった体育館裏の桜の木を、老朽化により、伐採する事にする。

 

 施行日時:○○/○○ △△:△△〜

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テト:な、なんですって! あそこは冥界の部室棟と学園を繋げる接着剤のような場所。今は両方ともに冥界に来ているけど、あそこがなくなってしまうと、部室棟と学園の関連性が断ち切られて、部室棟だけが完全に“消去”されることになる! 学園だけはもしかすると現世に戻れるかもしれないけど、おそらく部室棟に関係していた人物や施設は、完全にオミット・・・・

デス:もしかすると、部室棟に関係していた“私や娘”、我々に接触した“氷山先生、ユキちゃん、ミキ君”も可能性はある。そして100%だと言えるのは、当然、升太君、君だ

升太:名前が書かれたページが燃やされて存在消去ってケース・・そういう事ですか

デス:まぁ例えるならそうだろう。しかし、最大の問題は、“作業者”だ。1名だけで行うそうだが。これは全員見てくれ

 

 全員は、“作業者”の項目を見つめた。

 

***

 

 作業者:墓火炉 升太

 

***

 

升太:な・・・・・・・なんじゃこりゃあああああ!!!!!

氷山:君が君を消去する!?

ミキ:いや、同姓同名なのかも?

テト:残念だけど、それはないのよ。私が持っているあのときの名簿に、升太以外の升太はいなかった

ユキ:こ、怖いよ・・・・

 

デス:・・・・これは推測なのだが、この“作業者の墓火炉 升太”は、君が部室棟に行った時から学園がこっちに来る前の期間に、学園に誕生していた“代理の君”なのかも知れない。“君がいない”という“矛盾”を解消するために、次元そのものが生み出した“解消方法”。それがこの代理の升太なのかもしれない。そしてこの升太は当然意志を持っている。だから、オリジナルの君を消去し、代理だった彼が“オリジナルの君”になるために、学園関係者を犠牲にしても構わない覚悟で、“最後のシメ”を行おうとしている・・と

升太:氷山先生! 今何時ですか!?

氷山:え・・あ、時計が止まっているけど、ここに書かれた時間の1時間前です!

 

デス:学園がここに来てから計算しても、ギリギリ間に合う時間か・・・。急ごう! 氷山先生と娘よ、体育館裏の桜の木へ急行する!あれを斬らせたらダメだ!

 

 全員、食べかけの食料をテーブルに置き、出来るだけの近道を使って急いで、あの“最初にテトに会った場所”である“体育館裏の桜の木”に向かった!

 

升太:間に合ってくれ!

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(体育館裏の桜の木の前)

 

 升太は到着したものの、息が上がって、しばらく下を向いて息をしていた。

 

升太:はぁ・・・はぁ・・・桜の・・・木・・は・・・無事・・・か・・・はぁはぁ・・・・

デス:・・・・・・・確かにすんでのところだった・・・・・

テト:しかし、次元って生物でもないのに、こういう補正措置を取れるのね・・・・

升太:え?

 

男子:間に合って良かったのか、悪かったのか、それはこれからの展開次第、そういう事だよ、オリジナル君

 

升太:そ・・・・その聞き覚えのある声は・・・・・オレか!!!!!!!!!!

 

 升太は顔を上げた。

 

 桜の木の横でチェーンソーを地面に刺して、腕を組んで、上から目線で睨んでいるのは、全体に影がかかっているが、まさに、

 

 墓火炉 升太

 

 その人であった。

 

影の墓火炉 升太(以降、マスタ):やっとこラスボスにたどり着けたな、オリジナルよ

 

 そこにユキをおんぶして走ってきた氷山先生とミキが到着した。

 

氷山:な、なに!? 升太君が二人!

ユキ:凄い! イリュージョン!?

ミキ:い、いえ、片方は“影”がかかっていて、いかにも悪そうだね

 

マスタ:どっちが悪い、というか、そもそもの原因を作ったのはどっちか。それはオリジナルに訊いた方が早いと思うぞ

 

 ザッ!

 

 モゾモゾモゾ

 

 マスタが右手を挙げると、地中から服を着たゾンビが数体はい上がってきて、マスタの横に並んだ。

 

ユキ:せ、先生、怖い・・・・

氷山:先生の後ろに隠れていなさい

ミキ:趣味悪・・・

テト:あれは確か・・・前に挑戦に失敗した人たち! ということはあいつが召還できるのは、冥界の怪物だけでなく・・・

デス:部室棟に関係した死者の肉体も操れるということだな。冥界の王の前で死者を冒涜するとは、いい度胸だ。こんな事をすれば、どういう末路が待っているか、解っているんだろうな?

マスタ:冥界の王“デス”さんよ、ここは冥界にある“学園”。この学園の律はな、学園がここに来るきっかけになった“オレ”なんだよ。今のオレは、あんたと同等、いや少なくても人間化して力を抑制されているあんたら以上の力があるんだよ。ここまでの観察から考えて、オリジナルは戦闘力0。同じ姿で言いにくいが、カスだな

デス:張り紙は見てきた。そしておまえは観察していたということは、私の予測も聞いていたわけだな。あれでご名答という事か?

マスタ:だいたいあってる。最後にこの木を切り倒すことで、部室棟関係者、つまりオリジナルを消去し、これからの“墓火炉 升太”という人物はずっと、お前のピンチヒッターで誕生した“オレ”になるわけだ。学校だけは勿論、冥界との関連性を0に出来るから、現世に戻れるし、これで一件落着というわけだ

デス:ここにいる我々は部室棟関係者と関連を持ってしまったから、一緒に消去される。私とテトはともかく、ミキさんやユキちゃん、氷山先生まで消去して、それで何が一件落着なのだ!!

 

マスタ:運が悪かった・・・それで十分な理由だろうが! どっちみちデス達に会っていなければ、冥界の怪物に喰われて死んでいたわけだ。少しでも寿命が長くなっただけでも運が良かったと思って貰いたい物だ

 

 升太の両手は、小刻みにプルプル震えていた。下を向いて、ワナワナしながら、自分の分身であるマスタの話を聞いていた。

 

マスタ:さーて、雑談はもういいだろう。では最後のシメをすることにする。お前らは邪魔だから拘束させてもらう

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 シュバシュバシュバシュバ!!!!

 

デス:!!!

 

 デス達は全員、マスタから超高速で飛び出した“コの字型の拘束具”で、体育館の壁に手足を打ち付けられ、動きを封じられてしまった。

 

マスタ:ついでに呪術も使えるデスは、口も塞がせて貰うぞ

 

 シュッ!!

 

 マスタの手からさらに特殊なマスクが飛び出し、デスの口に被さった!

 

デス:!!!!

 

マスタ:さてこれで準備完了。では、斬るぞ!

 

 マスタはチェーンソーのスイッチを入れて構えた。

 

 ビィイイイイイイン!!!!!

 

マスタ:さーて、ショーの始まりだ!!

 

 バキッ!!!!

 

マスタ:ん?・・・・な、なに!?

 

 拘束具を蹴り上げと背筋力だけで無理矢理引き抜き、マスタに近づく者が一人だけいた。

 

 升太

 

 である。彼はうつむいて、じわりじわりとマスタに近寄ってきた。

 

マスタ:!? な、何故だ! 戦闘力0のはずだ! こんな事できるはずが・・・。い、いけ! ゾンビ達!

ゾンビ達:ヴァァァァァ・・・

升太:邪魔だ・・・・

 

 バキッ!

 

ゾンビ達:オゴォオオオオ・・・・・・

 

 バタン・・・・・シューーーーーン

 

 ゾンビ達は、升太から頭部に一撃ずつパンチを貰い、機動停止して倒れ込み、消えていった。

 

升太:部室棟の最後まで到達できなかった未熟な魂で出来た肉体で勝てるわけなかろう

 

升太はさらにマスタに近づいていった。

 

 ビィーーーーン・・・・ビッ、ガシャン!!

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 マスタは動揺してチェンソーを落としてしまった。チェーンソーは衝撃で故障し、止まってしまった。

 

マスタ:そ、そんなことがあるはずが・・・

升太:おまえよ・・・自分の話の矛盾に気づかなかったか? ここに来た原因がお前だろうが何だろうが、お前に力があるって事は、オリジナルのオレにも力があるってことだよ。学園だろうが部室棟だろうが、同じ“冥界”に来た事で力を持ったのなら、オレにも力が備わらなきゃ、おかしいだろうが

マスタ:し、しかし、私のスキャンでは、お前の戦闘力は0だった・・・な! こ、この数値は・・・私以上!!!!!

升太:簡単だよ。今ここで、お前の外道な話に“キレて”、覚醒したって事だな。しかも“出し惜しみ”する事なく、100%以上を引き出しているわけだ

 

 ジワリ

 

 マスタは両手を平手にして前に出して、命乞いした。

 

マスタ:ま、まて、自分が自分を殺すなんて、それそのものがおかしいだろうが! オレはお前なんだぞ!

升太:そもそもお前がやろうとした事だろうが。・・・じゃあ、オレも外道になってやるよ。お前だけを消去して、この世にいる“墓火炉 升太”を、オレだけにしてやる

 

 ジワリ

 

マスタ:ま、まt

 

升太:オレの顔で、電波な話をえらそーに語るんじゃねえええええええええええええええええ!!!!!!!!!

 

 バキッ!!!!!!!!!!

 

 升太の渾身の右手アッパーが、マスタの顎にダイレクトヒットした!

 

マスタ:ウゴッ!!!! オレの出番これだけぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・・・・ キラッ☆

 

 マスタは空中にぶっ飛び、そして凄まじい勢いで空のかなたに飛んでいってしまった。

 

 デス達の拘束具もマスクも全て消えて無くなった。

 

ユキ:凄い! お兄ちゃん、めっちゃ強かったんだね!

氷山:渾身のジェットアッパーだなぁ

ミキ:あー、あいつ、星の彼方に飛んでっちゃったわ

テト:す、すご・・・

デス:覚醒した力を全て使ってのアッパーカットか。升太君、あの方角だとアイツが到着するのは、現世でも冥界でもない“地獄”というところにある“無限地獄”、つまり、一生出られない場所だ。よって、“この世”で“墓火炉 升太”という存在は、再び君だけになったわけだな

 

 ゴゴゴゴゴ・・・・・

 

テト:ま、また異変!?

 

升太:・・・この学園と部室棟が両方、現世に戻る音ですね?

デス:そうだ。おそらく君が一人になったことで、冥界と繋がっていた最後の留め金がはずれたのだろう。ただし、20年のブランクがある関係で、部室棟は20年前の学園、学園は来たそのままの時間に戻るだろう。この20年のタイムシフトで、何が起こるかは私でもわからん

ミキ:あの〜

ユキ:ユキ達はどうなるの?

氷山:ちゃんと元に戻れるのでしょうか?

デス:大丈夫だ。升太君も含めて学校関係者は全員、矛盾を生じることなく戻れるだろう。戻った後、怪物に寄る損害とか異変の記憶なども多少残るから、学校全体がガサガサすると思うが、氷山先生、ユキちゃん、ミキさん、くれぐれもココでの事は口外しないように。記憶に残っているのは、ここにいるメンツだけになるからね

氷山:わかりました。僕の方でも話を合わせることにします

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

デス:振動が激しくなってきたな。さて。最後に升太君だけど、すまんが、娘のお世話を当分してくれないか?

升太:え? だって、テトは直接学校に関係があるわけじゃないから、デスさんと冥界側に残るメンツなんじゃないの?

テト:・・・・・・・

デス:うーん。実は電源室からここまで移動している間に、娘から頼み込まれたことなんだよ。20年のブランクがある部室棟の事もあるし、それらの片が付いたら、戻るかも知れない、と

テト:・・・・お願い

升太:うーん、仕方ない。確かに部室棟の事は僕一人じゃ解決できないかもね。わかった。なんとかするよ

デス:すまないね。くれぐれも必要以外に“力”を使わないように言ってあるから

テト:有り難う

升太:いやいや、乗りかかった船だ、最後までやるよ

氷山:うむ! 偉い! なかなかの責任感だ! 君は教師に向いているぞ! 4年次に教職課程を取って、是非とも教師を目指して欲しい!

升太:ははは、考えておきますね

 

 キーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

デス:明るくなってきたな。現世に帰るときだ。升太君とは部室棟屋上からここまでの短いおつきあいだったが、なかなか楽しませて貰った。助けられもしたしね。簡単な言葉で悪いが、“ありがとう”、を言わせて貰うよ

升太:冥界の王様からもったいない言葉ですよ。こちらこそ、“本当に有り難ございます”!

デス:うむ。では氷山先生、ユキちゃん、ミキさん、無事を祈ります

氷山:有り難うございます

ユキ:おじちゃん、又会おうね!

ミキ:いろいろ有り難うございました

 

 ピカッ!

 

デス:では、さらばだ

 

氷山先生、ユキ、ミキの順に消えていった。そしてテトと升太だけになったとき、デスは真の姿に戻った。それは、王冠をかぶり杖を持ちマントを羽織った巨大な骸骨だった。

 

デス:これが私の真の姿だよ。さすがにあの3人には刺激が強いと思ったので、見せるのは君だけにしておいた

升太:さすがですね。また、どこかで会いましょう

 

 シューーーーーーン!!!!

 

 全員の目の前が真っ白になり、そしてブラックアウトしていった。

 

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(現世・体育館裏の桜の木)

 

 倒れていた全員が目を開けて、立ち上がった。

 

 青い空、白い雲、美味しい空気

 

 まさしく、“帰ってこられた”、わけである。

 

氷山:・・・・よかった、生きてる・・・。ユキちゃん、大丈夫かい?

ユキ:うん、大丈夫

ミキ:ふぅ〜、助かった・・・

 

升太:なんとか、無事帰ってこられたな。テト大丈夫か・・・・い?

 

 テトはさらに別の服装で、より大学生っぽい姿に変身していた。

 

テト:前の姿は見られているからね、服装はまた変えたよ・・・・似合う?

升太:似合うよ。凄く

 

ミキ:ひゅーひゅー、ラブラブぅ〜!!

ユキ:お幸せに〜☆

氷山:青い春だなぁ

 

 ワーワー

 

升太:それはさておき、やはり各所で問題が発生しているみたいですね。人身関係はないからいいけど。

氷山:それでは、私とユキちゃんは学校に戻ります。この子の給食もあるし、問題への対処もありますし。それでは

ユキ:お姉ちゃん、じゃーねー!

テト:ばいばーい♪

 

 氷山とユキは初等部校舎へ向かって歩いていった。

 

テト:ミキさんはどうするの?

ミキ:あー、私、半ドンだったのよ。で、下校時の準備中にあーなったから。私はあなた達と一緒に、その“部室棟”の事を調べてみようかな

升太:それじゃ、ミキさん、これからも宜しく

ミキ:改めて、宜しくね

 

升太:それでは行こう! 僕たちの戦いは、これから始まるんだ!

***

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???:なーに格好つけてるんだか

升太:・・・え?

 

 いつのまにか体育館の入り口の方から、数名のおじさんとおばさんがやってきた。

 

テト:え???? あの、どちら様で・・・???

ミキ:私は初見だからいいよね

升太:・・・・その声・・・その茶色い髪に赤い服・・・もしかして・・・!?

 

メイコ:そ、咲音メイコよ

ミク:とは言っても全員、20年経っちゃったけどね

ルカ:はは、あなた達はそのままでいいよね。私なんて、お肌が気になる、おばさんよ・・・

海斗:でも、僕のアイスへの愛は、20年経っても変わらないけどね!

リン:海斗さんは相変わらずですね

レン:おいおい、皆さん、“久しぶり!”の一言はないんですか? 20年ぶりだってのに・・・

めぐみ:升太さん、テトさん、お久ぁ!!・・・キラッ☆

升太:めぐみさんは歳取らないですね

学歩:めぐみさんはヒミツの化粧水と薬で、歳を取らないのだよ

 

テト:え・・っと・・・ということは・・・・?

 

メイコ:私たち全員、部室棟と一緒に無事20年前の学校に戻ってきたのよ。でもってあなた達を待っている事もできるから、卒業後、助手とかいろいろ経験して、全員ここの教授になっちゃったのよ。ちなみに私は、歴史とかの部活動を延長させて『理工学部・考古学科教授』よ

ミク:ミクは、ネギと料理と化学を研究したいから、『工学部・生物化学科教授』

レン:僕は、芸術じゃないんだけど、作ることが好きだから『建築学部・建築学科教授』

リン:私もなんとなくレンに流れで、同じく、『建築学部・建築学科教授』

海斗:僕は、経済とアイスの関係を研究するために、『経済学部・経営学科教授』だ

ルカ:私は、ジャングルの生態系とか研究したいから、『工学部・植物科学科教授』

 

めぐみ:私は、アイドルとかの歴史を研究したいから、『社会学部・人文歴史科教授』よ♪ アイドルでなくて残念だった?

升太:あ、いや、別に・・・

学歩:最後に私は、予想通りだと思うけど、ナスを研究したいから、『農学部・農学科教授』だ

 

升太:み、皆さん、頭良かったんですね・・・

 

メイコ:でもね、それだけじゃないのよね。なんと、あの部室棟、一部補強されたけど、あのままなのよね。使い方がちょっと変わったけど

ミク:あの世界の部室で出来ていたことはさすがに出来なくなっちゃったから、部室棟は、あくまで“会議目的”だけに使うことにしたのよ。それぞれ、部室の活動は、別の場所でやっているわ

 

升太:え? 20年経過で、教授になって・・・・え、もしかして、今も・・・・

 

メイコ:そ。教授になったあと、各自、それぞれいた部活のそれぞれの“顧問”になったのよ。ちょっと無理矢理のお願いになったけどね

めぐみ:でも、私は永遠のアイドルだから、今でもアイドル研究部で歌っているけどね♪

学歩:私もナスノヨイチに跨って、レースをしているぞ

 

ミキ:あ、あのー、話が凄いことになっているのは分かるんですが、一応、自己紹介させて下さいね。皆さん。初めまして。あの世界の学校で仲間になりました、高等部3年の古河ミキ、と申します。宜しくです。予定ではそのまま、推薦でこの大学に入学する事になってます

 

めぐみ:あら、可愛い子ね。卒業したらうちのアイ研のアイドルにならない?

ミキ:楽しそうですね

ミク:ミク! だめですよ〜、有望な人は公平に、“新入生歓迎挑戦ゲーム”でちゃんと意見を聞かないと!

 

升太:え・・“新入生歓迎挑戦ゲーム”?

テト:あ・・あのね升太・・・。実はお父様と私で始めた、あのゲームの出所ね。実は元々、この部室棟にあった“習慣”から作ったの。それが、“新入生歓迎挑戦ゲーム”なの

升太:ま、まさか“原型”があったとは・・・

ミク:ミクぅ。まぁ、“死ぬまで挑戦させる”ってのは、テトちゃんとかが付けたルールだけどね。それと、ミキちゃんの挑戦は大学に入ってからとして、ミク達が20年も待っていたのは、升太さん、あなたの事ミク

 

升太:え? 僕?

 

めぐみ:あのときは非常事態で“中止”になっちゃったけど、今なら“再開”できるよね、形は変わるけど、“新入生歓迎挑戦ゲーム“♪

学歩:私の“ナスノヨイチ研究部”のレースも同様だよね。20年も間があいたが、挑戦、きっちり最後までやってもらうよ

ミク:“再開”ルールだから、仲間は私、レン教授、リン教授、メイコ教授、海斗教授、ルカ教授だけで、更にルカさんの部活の続きで、めぐみさんの“アイドル研究部”から、やってもらうミクよ

テト:皆さん・・・・

 

升太:とほほ・・・部室棟の謎は終わったし、皆さんと再会できたし、ほっとしたのに、“あの続き”がちゃんとあるのか・・・

 

ミキ:わ〜! 楽しそうですね♪ 私も飛び入りで参加していいですか?

めぐみ:勿論! 出来ればうちで、歌って欲しいのよね。升太さんのピンチヒッターで

学歩:そうだな。升太殿や、めぐみ教授以外で20年経過しているメンツで、“アイドル”は厳しいしな

ミキ:有り難うございます! ワクワク♪

 

めぐみ:そんじゃま、アイ研の活動場所の“記念大講堂”で、派手に“ライブ”やっちゃおうかね! はい、来た来た

 

 ズルズル・・・・

 

 めぐみは、無理矢理升太の手を持って、引きずっていった。

 

升太:ああああああ・・・・・

 

 升太の挑戦は、20年の時を越えて、“再開”、されたのだった。

 

(続く)

 

CAST

 

主人公・墓火炉 升太(ぼかろ ますた)=升太:とあるボカロマスター

 

案内役 兼 格闘研究部部長・重音テト:重音テト

 

工学部・生物化学科教授(料理研究部顧問)・初音ミクさん:初音ミク

建築学部・建築学科教授(技術研究部顧問)・鏡音レンさん:鏡音レン

建築学部・建築学科教授(模型研究部顧問)・鏡音リンさん:鏡音リン

 

理工学部・考古学科教授(温泉&お酒研究部顧問)・咲音メイコさん:MEIKO

経済学部・経営学科教授(アイス品評研究部顧問)・工藤海斗さん:KAITO

工学部・植物科学科教授(バトルマスター研究部顧問)・巡音ルカさん:巡音ルカ

 

社会学部・人文歴史科教授(アイドル研究部顧問兼永遠のアイドル)・勇気めぐみさん:GUMI

農学部・農学科教授(ナスノヨイチ研究部顧問)・神威学歩さん:神威がくぽ

 

木之子学園高等部3年生・古河ミキ:miki(SF-A2 開発コード miki)

木之子学園初等部教師・氷山清輝:氷山キヨテル(ボカロ先生)

木之子学園初等部4年生・河合ユキ:歌愛ユキ(ボカロ小学生)

 

デス(死神)、ゾンビ達:エキストラの方々

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第8作目の”おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪“シリーズの第7話です。
☆初めて、ボカロキャラ以外の“ボカロマスター”を主役に、UTAUのテトをヒロインに持ってきました。
○ノリはいつもの通りですが、部室棟という今までと違った場所での対決をメインにしているのがウリです。
○部室棟や大学のモデルは、私の母校です。

☆前回起こった“異変”の理由と結果がこの話になります。この理由のため、かなりむちゃな異変を起こしました。
☆残りの部活挑戦をお楽しみ下さいませ。
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