魔法少女リリカルなのはStrikerS〜二次創作〜 第9話 「逃走!機動六課内」 |
「ああ・・・またかよ・・・」
目の前に広がる光景に、俺は溜め息をついた
あの時の公園
場所は違うものの起きている現象は同じだった
周りの色は変化し、ホログラムのようなもので再現された はずの壁からは赤黒い液体が流れている
だが、今回はそれだけではなかった
構造までもが変化したのだ
壁の一部が飛び出し、床が一部盛り上がり、ヒビが少し入 った
たしかに、ホログラムなら理解はできる
だがそれは、誰かが操って初めてできるもの
今回は、自分以外の気配はしない
まるでこの建造物自体が意思を持ち変化したような
そんな感じがする
それともう一つ恐れていたのが・・・
「な・・・!おい!何処へ行った!」
「ダンテ君!?皆!手分けして探すんや!」
「あー、ここにいますよー」
俺の目には、体が半透明になって透けている八神さんたち が俺のことを必死になって探している姿が見えた
そう、俺が恐れていたのは俺以外の人が今の俺を見たとき どんな反応をするのかということであった
「ダンテ君!・・・どうしたの、その体・・・」
高町さんが俺に駆け寄り、まるで信じられないようなもの をみた表情でそう言った
「な・・・!体が・・・透けている・・・!」
「お・・・おい・・・」
「ダ・・・ダンテ君!大丈・・・」
八神さんもシグナムさんもヴィータさんもテスタロッサさ んもあの教え子の四人組も困惑した表情で近寄り、八神さ んは俺に触れようとしたがその手は俺の体をすり抜けただ けだった
「と、とりあえずこのまま待っててや!今シャマルに連絡 を・・・!」
「ダンテ君!大丈夫だから落ち着いて!」
八神さんはシャマルさんという方に連絡を、テスタロッサ さんは俺に落ち着くように語りかける
だが今は・・・そういうわけにはいかないようだ
「な・・・!」
「・・・!?ダンテ君!?どうしたの!?」
「逃げてください・・・!早く!」
困惑する高町さんたちの後ろには、またまた同じようにあ のときの・・・
化け物が姿を現した
姿形は変わらないものの、数が以前より増えている
十、いや十二か・・・?
「どうしたの!?何かいるの!?」
高町さんは俺が見ている方向に目を向けるが、どうやら見 えていないようだ
一体どうなって・・・って!
「逃げろってどういうことや・・・ってダンテ君!?」
どうやら、『そちらの世界』には音は聞こえるらしく、剣 で切り裂く音だけが無情にも響いていた
ーーーーーーーーーー
目の前の光景に、私は何も言えなかった
あの人の戦闘力は昨日少々騙すようなことをしたが知るこ とができた
だけどこれはなんや?
ダンテ君はいきなり半透明になり、おそらく・・・私たち の知らない場所で、知らない敵と戦っている
この世界でしばらく暮らしてきたがこんな出来事は初めて や
いや、私たちが知らないだけか?
ということは、この現象に何も抵抗できずダンテ君みたい な戦闘力も持たない一般の人たちが巻き込まれているかも しれないっていうことか?
でも、そんな事例も一切ないし・・・
ダンテ君、あんたほんまに何者なんや・・・?
ーーーーーーーーーー
目の前の敵を倒すため剣を振るうものの、数が多いためか 一向に減らない
四方八方に散らばるため、決まった敵にダメージを与える ことができない
鎌や斧に変化し切り裂いてはいるが、注意が全ての敵に向 いているため落ち着いて狙うことができないのだ
「・・・くそっ!」
そうしている間に全方向を囲まれてしまっていた
いくら臨機応変に戦えると言ってもこの数はさすがに・・ ・
「ダンテ君!大丈夫!?」
ふと横を見ると、高町さんたちが悔しそうな表情をして俺 を見ていた
「いや、どうもダメみたいです・・・」
多分・・・悔しいのだろう
実力は申し分ない、戦闘のこととなれば尚更だと思う
そんな人たちが目の前で一人必死になって戦っている人に 、一切手助けできないのだ
今にも死ぬかもしれない人に何もしてやることができない のだ
「・・・」
俺は何も言えなかった
死ぬかもしれないと思った
この世界に来てから何回目だ・・・?
まだ三日くらいしかこの世界にいないのに
シャム・・・ごめんね・・・
敵はそんな俺のことなどお構い無しに、一斉にかかってき た
もうダメだ・・・と思ったそのとき、一つの戦術が浮かん だ
ーーーーーーーーーー
「ダンテ!」
一瞬浮かんだのはあのときの出来事
頭の中に残り続けているあの惨劇
守りきれなかった仲間
あいつが放った『もうダメだ』という言葉で次に何が起こ るのか簡単に予想がついた
何とかしたかった
あたしのことを唯一大人扱いしてくれたあいつを
でもどうすることもできないのだ
触れることすらできない
「・・・!」
また惨劇が起こるのか・・・と思ったその時、あいつの姿 が変わった
ーーーーーーーーーー
(とにかくやってみるしかないか!)
敵に全方向を囲まれるという危機的な状況で唯一浮かんだ 戦術
これで切り抜けられるなんて全くわからない
方法は簡単
剣に力を込め地面に突き刺すだけ
本当にこれだけなのだ
だけどこれをやらないと確実に死んでしまうだろう
(そうだ・・・何もしないで死ぬよりマシだ!)
そう思い俺は戦術通り、剣に力を込め地面に突き刺した
するとどうだ、その場にいた全ての敵が空中に舞い上がっ たではないか
地面から赤黒い炎のようなものが相手の下から吹き出て、 それにより舞い上がった敵が空中に浮いているのだ
そして周りの風景も変わった
白い霧のようなものが広がり、それが左回りにぐるぐると 回っている
そして俺の格好、黒だったはずのコートは赤色になり髪は 銀髪になった
それとなぜだか、普段より力が溢れてくるような気がする
なんでも倒せるような、そんな錯覚さえ覚えてしまう
だが今はそんな場合ではない
これは絶好のチャンスだ
俺は一体に、鎌をワイヤーのように伸ばし相手に近づいた
どうやら鎌を使えるときはワイヤーを使うと、その物体に 近づくことができるようだ
「おりゃ!」
俺は近づいた一体を鎌で切り刻み、次に同じように違う一 体に近づいたあと鎌から斧に変化させまた違う一体にワイ ヤーを引っかけこっちに引き寄せた
どうやら斧が使えるときにワイヤーを使うと、その物体を 引き寄せることができるようだ
そして、近づいては引き寄せてまとめて剣か斧か鎌で切り 刻む、そしてまた違う一体に近づき引き寄せ切り刻むと言 った戦法を繰り返し、最後の一体は鎌で地面に叩き落とし たあと斧に切り替え、地面にいる一体に向かって振り降ろ し文字通り粉々に粉砕した
その際、相手から飛び散った血のような液体が全身にかか る
この化け物たちも、こんな形ではあるが生き物のようだ
「ダンテ君!」
戦闘が終わり地面にへたりこむ俺に、八神さんたちが駆け 寄ってきた
その表情は、そうとう切羽つまったものであるのがわかる
「今のはなんや!何と戦ってたんや!」
八神さんは俺に掴みかかろうとしたが、それが叶わないこ とを思い出し声を荒らげて迫ってきた
「それが・・・まだ俺にもわからなくてですね・・・」
「まだってことは前にもあったのか!何故言わなかった! 」
シグナムさんは俺を睨むような表情で迫ってきた
業務上でも偽りでも何でもなく、一人の人間として心配し てくれていた
「ダンテさん!大丈夫ですか!?」
ルシエさんを筆頭にあの四人組も駆け寄ってくる
「とりあえず今度は会議室に来てや・・・ここにいたら何 が起こるかわからんし、もう訓練どころの話やないしな・ ・・」
八神さんの言葉に他の皆も頷く
八神さんはそのあと皆に、この事はここにいるメンバーだ けの秘密、絶対に外部には知られないようにと念を押した
確かにこの事が外部にバレたらパニックどころの話ではな くなってしまう
「じゃあ次はダンテ君がどうやって戻るかだね。ダンテ君 、何かわからないかな?」
高町さんが尋ねてくる
何か・・・
前に公園でこの状況になったときにどうやって戻ったのか
可能性があるとしたら・・・
「・・・コウモリ」
「コウモリ?」
「はい、確かコウモリが・・・」
あの時、公園で襲われたあの時
空中を飛んでいるコウモリに気がつき、それを撃ち抜いた ら元の世界に戻ることができた
ということは・・・
「あ、あれじゃないですか!?」
赤髪の少年がとある場所を指さした
そこにはあの時と同じコウモリが、空中を飛びながらまる でこちらを監視するように見ていた
ん?待てよ・・・赤髪の少年にも見えていて俺にも見えて いるということは、あのコウモリはこっちの世界でもあっ ちの世界でも見えているということか・・・
「で、あのコウモリをどうするんや?」
「はい、あのコウモリを・・・」
何でもいいので倒してくださいと言おうとした時だった
『ダァァァンテェェェ!!』
・・・聞こえない
聞こえない聞こえない
そんな地獄の奥底から聞こえてくるような声なんて何処か らも聞こえない
「ダンテ君どうしたの?そんな驚いたような顔して、・・ ・まだ敵がいるの!?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。なーんにもないです、なーん にも」
ほら見ろ、テスタロッサさんにも聞こえてないじゃないか
だからあれは幻聴
いきなりの戦闘のあと、案外簡単に脱出する方法が見つか ったから安堵のために聞こえたもので
『ダァァァァンテェェェェ!!』
「あ、コウモリが逃げました!いいんですか!?ダンテさ ん!」
どうやらこちらの世界にいる時は、たとえ敵を殲滅させた 後でも決して油断してはいけないようだ
その証拠に出入口の反対の方向にある壁が、まるでテーブ ルの上にある消しゴムのゴミを落とすかのように、みるみ るうちに迫ってくる
それも・・・無数の針のオマケつきで
ーーーーーーーーーー
驚いた表情をしてダンテ君は、私たちとは反対の方向を見 ている
あの戦闘を見て、一人で戦っているダンテ君を見て、私は 一瞬昔の自分と重ねてしまった
一人で戦っていたあの頃、そんな私に手を差し伸べてくれ た今では大切な友達
だけど今のダンテ君には、手を差し伸べるどころか触れる ことすらできない
そんな現実が、私は凄くもどかしかった
「ダンテ君どうしたの?そんな驚いたような顔して、・・ ・まだ敵がいるの!?」
だけど、語りかけることはできる
それもなのはから学んだ
そう自分に言い聞かせダンテ君に話しかけてみたら、なん でもないの一点縛り
だけどそんな言葉とは裏腹に明らかに表情が焦っている
まるで大きい何かに怯えているかのように
「・・・てください」
「え?」
「あのコウモリ倒してください!あー来たー!」
「え!?ってダンテ君!」
ダンテ君は何かから逃げるように一目散に訓練場の出口へ 飛び込んだ
何が起こったのかはわからないけど、とにかくあのコウモ リを倒さないとダンテ君が危ないらしい
「エリオ、キャロ。訓練で得た技術の見せどころ、行くよ !」
「「はい!」」
「スバル、ティアナ。私たちもだよ!」
「「はい!」」
「よし、私たちも行くで!」
「はい、主」
「ああ!」
ダンテ君!なんとか持ちこたえて!
ーーーーーーーーーー
訓練場を出た俺は、機動六課の中を走りに走り回っていた
それはというのも
『ダァァァンテェェェ!』
この声から逃げるためであった
正しくは『この世界』からか
訓練場の壁は出入口まで迫ってきて止まった
どうやら、動いたのはこちらの世界の壁だけらしくあっち の世界には影響はないようだ
そして俺は確信した
この声はこの建物・・・いや、この街自体の声だというこ とを
ということは、この街自体が俺を殺そうとしているわけだ
「おいおい、そりゃないぜ・・・ってうわ!」
そんなことを考えているのもつかの間、T字路に差し掛か りそのまま前進しようとしたが壁が床から生え行き止まり になってしまった
その壁にスクリーンが登場し、赤くおぞましい文字で『ダ ンテ』とこっちの言葉で書いてある
どうやらこっちの街はとことん俺のことが嫌いなようだ
俺は仕方なく左に曲がり、次々と周りの壁やら床やらが変 化していく中を早く逃げようと走り続けた
「え?うわー!」
突如、奥まで一本道だった通路に壁が出現したかと思うと
『フォール』
とおそらく書かれたスクリーンが登場し、その直後に床が 崩れ落ちて下に落ちてしまった
「いてて・・・食堂?」
落ちたところは食堂へ向かう真っ直ぐな通路
俺も朝通った道だった
「一体なぜ・・・ってやべやべやべー!」
考える時間もなく、後ろからは訓練場と同じように壁が迫 ってくる
もちろん針のオマケつき
「ダンテ君!」
隣から聞こえたのは高町さんの声
よく見たら訓練場にいたメンバー全員が高町さんの後ろに いる
皆一生懸命探してくれたのか・・・
「なんとか食堂に追い詰めたで!もう少しや!」
反対隣からは、はやてさんが声をかける
どうやらあのコウモリを食堂に追い詰めたらしい
いずれにせよこれで脱出できる
俺は勢いよく食堂へと飛び込んだ
?食堂?
「よっと!ってうわ!」
壁の襲撃をギリギリで避け、俺は食堂へと飛び込んだ
壁は食堂の入り口でつっかえもう追ってくることはない
あのメンバーたちがいる世界では壁は迫ってきていないた め、壁をすり抜けてきたような感じで食堂に入ってきた
「なんとか助かっ・・・た・・・」
顔を上げたときに飛び込んできたのは、とても食堂とは言 えない変わり果てた風景だった
壁全体は血の色のように真っ赤に染まり、天井からは血の ようなものが滴っている、ここで食事をしたいですかと問 えば千人中千人がノーと答えるようなそれはそれはひどい ものだった
「ダンテ君、どうしたんや?何か見えるんか?」
ええ、ぜひぜひあなたにも一度見せてあげたいですよ・・ ・ってそんなこと考えてる場合じゃない
「コウモリは!?コウモリはどこにいます!?」
俺は食堂に追い詰めたというコウモリを探した
あれがこの世界を脱出するための唯一のキー
公園のときは偶々見つけることができたがそれはあくまで 偶然
ここで逃がしたらもう捕まえられないかもしれない
「あれじゃないですか!?」
オレンジ色の髪をした少女が指を差した先には、食堂の天 井付近をパタパタと飛んでいるコウモリがいた
こんな絶好のチャンスを見逃すわけにはいかない
「よし、あれを倒」
『スイミングタァァァイム!!』
「・・・は?」
またどこからか声が聞こえたかと思うと
「な!?むぐ・・・!」
いきなり食堂の天井が開き、そこから全体をうめつくすぐ らいの血のような液体が流れてきた
いや・・・正確には『落ちてきた』が正しいか
「むぐ・・・!が!」
もちろんそんな中で正確にコウモリを捉えられる筈もなく 、俺はただもがくだけだった
「むぐぐ・・・む?」
意識を失いかけ朦朧としていたその時、桜のような色をし た不思議なボールのようなものが目の前を飛んでいった
「ぐ・・・ああ!」
それがコウモリに命中し、俺は血の液体から解放された
周りの風景も元に戻っていく
「う・・・ゲホッゲホッ!」
俺は床に手をつき、必死に咳き込んでいた
あやうく溺死してしまうところだった
もしかしてこれを狙って・・・?
「ダンテ君!」
顔を上げると、さっきの食堂のような風景はなく
食堂という名にふさわしい風景へと戻っていた
そして目の前には、手を差し伸べてくれている高町さんと 、若干顔を青くしているメンバー数人がいた
俺は高町さんから差し伸べられた手を今度は取ろうとした が
俺の意識はそこで途絶えてしまった
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