魔装機神インフィニット・ストラトス〜 |
第八話「クラス代表就任パーティー」
クラス代表決定戦から翌日、朝のSHR。
「では、一年一組の代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
真耶ちゃん発想が子供っぽいぞ。
喜々として喋る真耶ちゃんに呼応しクラスの女子(唯依、箒、クリスカ、イーニァをのぞく)は大いに盛り上がっている。唯一人、俺の隣にいる暗い顔をしている幼馴染み一夏を除いて・・・。
「先生、質問です」
「はい、織斑くん」
「俺は昨日の試合に負けたんですが、何でクラス代表になってるんですか?」
そう、昨日の試合一夏はオルコットに負けたのだ。しかも、前半かなり一方的であと少しファーストシフトが遅れていたらそこで試合終了になっていたらしい。理由は唯依との試合で惨敗したオルコットが密かに特訓していたので油断も慢心もなく、初っ端から全力全開で叩き潰しに来たらしい。
で、後少しの所まで追いつめたんだが止めを刺す前に一夏の専用機『白式』のシールドエネルギーが先にゼロになり試合終了でオルコットの勝ちとなった。
まあ、ゼロになった理由は白式の((単一仕様能力|ワンオフアビリティ))が原因で負けたと聞いた時は流石に呆れたけどな・・・・。
「それは―――」
「それは私が辞退したからですわ!」
がたたっと立ち上がり腰に手を当ててポーズを取るオルコット。アイツはアレか?ポーズを取んねぇと喋れねェのか?つーか何でコイツこんなに上機嫌なんだよ?
「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかし考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手でしたのだから仕方のないことですわ」
よく言うぜ、唯依には手も足も出なかったくせに・・・。
「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして」
あ、なんか展開が読めて来たぜ、ようするに・・・
「"一夏さん"にクラス代表を譲る事にしましたわ。やはりIS操縦には実戦がなによりの糧。クラス代表ともなれば戦いに事欠きませもの」
こいつも一夏に惚れたのか。
「じゃ、じゃあ!俺以外に勝った雅樹や唯依はどうなんだよ!?」
一夏の奴よっぽどクラス代表になりたくないのか今度はこっちに矛先向けやがった。
「篁のISはダメージレベルがCを超えている。故にしばらくの戦闘は無理だ。龍見の場合は専用機をもう少し調査するので公式戦に出せん」
「マジか・・・?」
「マジみたいだぞ」
一夏の問いに俺はガクッと項垂れた。
周り(主に箒とオルコット)が誰が一夏の教官になるかで騒いでいるが今の一夏には聞えていない様だな。
それより、一夏の事もそうなんだが俺は誰に教えて貰おうかな?
唯依はISが壊れちまってるし、クリスカは何か後が怖いし、イーニァに教えてもらうのは兄貴としてのプライドが許さねぇ。
「どうすっかな〜」
そんな俺の呟きは教室の喧騒に消えていった・・・。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、龍見ためしに飛んで見せろ」
四月も下旬、遅咲きの桜が丁度無くなった頃。俺達は今日も鬼教官こと千冬さんの授業を受けている。
「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開に一秒とかからないぞ」
急かされて意識を集中し始める。
ISは一度フィッティングしたら、ずっと操縦者の体にアクセサリーの形状で待機しているらしい。因みに俺のは銀の翅を模したペンダント、セシリア(名前で呼んでいいと言われたので)は左耳のイヤーカフス、唯依は山吹色の徽章、一夏のは右腕のガントレット。・・・アクセサリーか、それ?
と、そんな事を考えている間にいつの間にか俺の全身をサイバスターの装甲が覆っていた。
何でか知らねぇが俺はこのIS展開時間が0.5とかなり早い。しかもそれだけじゃ無く、武装の展開、飛行など教えられてないことも難なく出来ちまう(現に一夏は今でも悪戦苦闘しているのに)。この事にコーチ役をしていた唯依とクリスカはかなり困惑していた。いくらなんでもこの上達スピードは以上だと。ただ、イーニァだけは二人とは違ってこう言った。
「まさきは、このこにあいされてるんだね?」
と綺麗な笑みで言われ何でか、その言葉がかなり心に残った。
ふと、隣を見ると一夏がようやく白式を展開したようだ。
「よし、飛べ」
言われると同時に俺はサイバスターの飛翔させた。
「うおっ!?」
相変わらずものすごい加速で体にかかるGに若干驚きながら俺はあっさりセシリアに追い抜き空中で制止した。
あぶねぇ、あぶねぇ気を抜くとまた遮断シールドにぶつかっちまうからな・・・。この前それで大騒ぎになったし・・・。
「なにをしている。スペック上ではサイバスターはともかく白式の方が上なんだぞ」
千冬さんの声が聞こえ下を見ると、なんつーかかなり遅かった。
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」
「そうはいわれてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。そう言えば、雅樹はどうやってんだ?」
「あ?あ〜なんつーか、体が覚えてるというか、動かし方を知っているつーか・・・」
「なんだそれ?」
「いや、俺に訊かれてもわかんねェンだけどよ・・・」
ホント俺自身どう答えたらいいのかわかんねぇ・・・でも唯一つ言える事は俺はサイバスターの事を知っている。それも随分と前から・・・でも、そんな事はありえねぇはずなんだが・・・。
と考え込んでいると、
「一夏っ!いつまでそんな所にいる!早く降りてこい!」
突然、通信越しから箒の怒鳴り声が聞え下を見ると、箒が真耶ちゃんのインカムを奪って怒鳴っていた。
「何やってんだよ、箒」
呆れながら頭を抱えると、箒は千冬さんに出席簿で頭を叩かれた。
「織斑、オルコット、龍見、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表10センチだ」
「了解です。では、一夏さん、雅樹さん、お先に」
言って、セシリアはすぐに地上へと向かう。段々と小さくなる姿に俺と一夏は感心した。
「うまいもんだなぁ」
「だな、流石は代表候補生って感じだな」
「なぁ、雅樹。どっちが上手くできるか賭けないか?」
唐突に一夏がそんな事を言ってきた。
「おっ!いいじゃねぇか。じゃあ、負けたら三日間学食奢りでどうだ?」
「よーし、乗った!」
こんなこと唯依や箒に訊かれたら、大目玉だが幸いアイツ等は地上だ。
「んじゃあ、レディ・・・」
「ゴーッ!!」
ギュンッ!!!
俺と一夏は一気に加速させ、そして・・・
ズドオォンッ!!!!
「馬鹿者。誰が地上に激突しろといった。龍見も地表十センチと言ったのに着地してどうする。まあ、そこのグラウンドに穴をあけている奴よりはマシだが」
「・・・・・すみません」
「あれ?っかしいな〜」
一夏は墜落し、俺は地面に足が付いてしまった。・・・まあ、一夏よりマシか?
「情けないな。アレだけ練習したのにその様か」
「まだまだ鍛錬が足りないぞ、雅樹」
「ぐっ・・・いや、それはよぉ」
「「言い訳するな」」
いつの間にか隣に来たクリスカと唯依が手厳し言葉を貰っちまった。相変わらずきつ過ぎるぜ・・・。というより、
「お前ら本当に何時の間に来たんだよ?俺が着地した所とお前達がいた所じゃ結構離れてるんだけどな」
「え・・・・い、いやその・・・」
「そ、それはだな///!」
「あのね、クリスカとゆい、いちかがついらくしたときにマサキがしんぱいになってそれで「い、イーニャ!?なにいってるの!!?」「しぇ、シェスチナ!余計な事は言わないでいい!!」むぐっ!?」
クリスカの隣にいたイーニァが最後まで言い切る前に唯依とクリスカが慌てて口を塞いだ。
心なしか頬が赤いけど、どうしたんだ?
「おい、どうしたんだよ?」
「う、うるさい///!さっさと整列しろ!!」
「は、早く、一夏達の所へ行け///!」
「な、なんだよ・・・んな怒鳴んなくたっていいだろ?」
唯依とクリスカに怒鳴られとぼとぼと一夏達の元に向かった。
「よし、では織斑、武装を展開しろ。それぐらいは自在にできるようになっただろ」
「は、はあ」
「返事は『はい』だ」
「は、はい」
「よし、では始めろ」
そう言われると一夏は横を向き正面に人がいないことを確認し、突き出した右腕を左手で握った。
段々と右手に光の粒子が集まり、『雪片弐型』の形になった。
「遅い。0.5秒で出せるようになれ」
うわっ相変わらず厳しいな・・・。
「次は龍見、お前だ」
「はい」
千冬さんに言われ俺はすぐさま右腕を前に付きだした。イメージするのは剣。全てを切り裂く剣のイメージ。
イメージは簡単に固まると爆発的に光ると、俺の右手にディスカッターが握られており、感触を確かめるために数回振るった。
「ふん、まあまあ及第点だな」
おお、結構うまくできた見てぇだ。あの千冬さんに褒められた(?)ぜ。
「セシリア武装を展開しろ」
「はい」
セシリアは左手を肩の高さまで上げ真横に付きだす。俺の様に一瞬光が爆発的に光るとその手には狙撃銃『スターライトmkV』が握られていた。
「流石だな、代表候補生。ただし、そのポーズは止めろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」
「で、ですがこれはわたくしのイメージを纏める為に必要な――――」
「直せ。大体、初心者の龍見ですらお前と大して変わらない速度で展開できるのだ。お前もそれくらいできなくてどうする」
おおっなんか引き合いに出されたぞ?
「――――。・・・はい」
流石に初心者を引き合いに出されてはプライドに障ったのかセシリアは今度は大人しく引き下がった。
「セシリア、近接用の武装を展開してみろ」
「えっ。あ、は、はいっ」
おそらく頭の中で文句を言ってたんだろ。急に話を振られびっくりして反応が鈍るセシリアは銃器を((収納|クローズ))して新たに近接武装を((展開|オープン))した。
が、手の中の光は中々像を結ばずくるくると空中を漂っていた。
「くっ・・・」
「まだか?」
「す、すぐです。―――――――ああ、もうっ!『インターセプター』!」
ヤケクソ気味に武器の名前を叫ぶ。確か『初心者用』の手段だったよな。代表候補生のセシリアにしたら恥しいよな。
「何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」
「じ、実戦では近接の間合いには入らせません!ですから、問題ありませんわ!」
「ほう。同じ代表候補生の篁にあっさり近接に持ち込まれ、あまつさえ初心者の織斑 に簡単に懐に入られた様な気がしたが?」
「あ、あれは、その・・・」
ごにょごにょとまごつくセシリアは歯切れが悪い。そりゃあそうだろうな、唯依にコテンパンにやられ負けたとはいえ、負けたとはいえ一夏にあっさり懐を許したんじゃあ何も言い返せねェよな・・・。
?なんか今度はキッと一夏の方を睨みだしたぞ?
「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドは片付けておけよ」
千冬さんの言葉に一夏は絶望した様な顔を浮かべた。ついで箒とセシリアの方を向いたが二人は無視してさっさと教室へ戻ってしまった。
ガシッ!
「ま、雅樹〜」
「なんて目で見てきやがるテメェ・・・」
俺も頼まれる前にさっさと退散しようかと思ったが、一夏の奴にいつの間にか肩を掴まれ、振り返ると捨てられた子犬の様な目で見てきやがる。イーニャならいざ知らず男のコイツがやっても気もいだけなんだが・・・。
「ったくしょうが「マサキ!はやくいこ?」うおっ!?い、イーニァ!!?」
「ったく、何をしている。早くしないと次の授業に間に合わないぞ」
「く、クリスカ!?お、お前まで引っ張んな!」
っつーか胸が当ってんだが!?
俺は二人に腕を組まれたまま引きずられていった。
「おーい・・・・」
一夏を残して・・・・。
「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!」
「おめでとう〜!」
ぱん、ぱんぱ〜ん!
クラッカーの音が鳴り響き、紙テープが一夏の頭に乗っかった。
「・・・・」
「おい、大丈夫か一夏?」
「大丈夫そうに見えるか?」
「・・・・ワリィ」
あまりの悲壮感たっぷりの顔に思わず謝ってしまった。
因みに現在は夕食後の自由時間で場所は食堂、一組のメンバーが勢ぞろいなんだが、クリスカとイーニャはここにはいない。クリスカは元々こういうのは好きじゃないし、イーニァは来たそうだったがクリスカが心配で付いて行った。・・・あとでお菓子でも持っててやるか。
「人気者だな、一夏」
「・・・・本当にそう思うか?」
「ふん」
何やら隣では箒がかなり不機嫌になっている。
「(コソッ)おい、唯依。箒の奴、何であんな機嫌がワリィんだ?」
「(コソッ)・・・本気で訊いてるのか?」
「(コソッ)え、何でだよ?」
俺がそう訊くと唯依はハァとため息をついた。
・・・何なんだよ一体?
「はいはーい。新聞部でーす。話題の新入生達にインタビューに来ました〜!」
そういいながら一夏の所にきて一枚の紙を渡した。
「あ、私二年の黛薫子。よろしくね。新聞部の副部長やってまーす!はいこれ名刺」
「あっ、どうも」
一夏は名刺をまじまじと見ていると今度はこっちにも名刺を差し出してきた。
「二年の黛薫子だよ。よろしくね」
「あ、どうも」
差し出された名刺を見ると新聞部副部長黛薫子と簡潔に書いてあった。
「んじゃあ写真撮らせてもらっていいかな?」
「あれ?インタビューしねぇのかよ?」
そう言って黛は首に下げているカメラを持ち上げた。
「いいのいいの。後で勝手に捏造するから」
それでいいのか、新聞部。
「んじゃあ、織斑くん、龍見くん二人とも並んで〜。あっそれと、セシリアちゃんと篁ちゃんの二人も一緒に取ろうか?」
「えっ?」
「な、何でですか?」
突然名前を呼ばれた唯依とセシリアは驚きながら尋ねてきた。
「どうせなら、専用機持ち全員を撮っちゃった方がいいかな〜って思ってね。さあさあ、二人とも並んで並んで!」
黛に急かされセシリアは一夏の、唯依は俺の隣に並んだ。
「・・・ちょっと近くねェか?」
「そ、そんな訳無いだろう////」
いや、ンなわけねぇって・・・。
実際肩と肩が触れ合って、唯依から女性特有の仄かな香りが鼻腔を擽り少し気恥ずかしい。
「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は〜?」
なんだそりゃあ?
「え?えっと・・・2?」
「ぶ〜、74.375でしたー」
「って、2じゃないのかよっ!」
パシャッとデジカメのシャッターが切られる。・・・ってオイコラ。
「なんで全員入ってるんだ?」
いつの間にか背後にクラス全員が集まっていた。箒なんて一夏の隣にきてるし・・・・縮地?
と、何だかんだで一夏の就任パーティーは十時過ぎまで続いていたが、俺と唯依は先に上がらせてもらった。
「しっかし、今日は楽しかったな。あんなに騒いだのは久しぶりだぜ」
「ああ、そうだな。シェスチナ達も来ればよかったのに・・・・」
唯依は残念そうに呟いた。
「あ〜・・・まあ、仕方ねぇよそりゃあ・・・」
「なんでだ?」
「何でってそりゃあ・・・・」
「雅樹・・・?」
言い淀む俺に唯依は不思議そうに覗き込んできた。
「い、いや、アイツ等は何だかんだで恥しかったんだろうな。ああみえて人見知りが激しいからあの二人」
「そうなのか?」
もちろん嘘だ。いや、まるっきりウソという訳じゃないがアイツ等のは人見知りというレベルじゃ無くほぼ対人恐怖症に近いんだが、今ここでいう話じゃないな・・・。
「それよりも、明日の休日、お袋に呼ばれてたよな?」
昨日、久しぶりにお袋から電話が来て、唯依に久々に家に来ないかと誘われた。
「ああ、小母様も久々に顔を見せてくれと言われてな・・・」
「あ〜・・・なんつうか、ご愁傷様」
あのお袋の事だ。絶対唯依の奴を着せ替え人形にするな・・・実際千冬さんはその犠牲者だし・・・。
「そういう雅樹は家には帰らないのか?」
「あ〜・・・俺は明日中学の頃のダチに会うんだ。それより家の場所覚えてるか?忘れちまったならクリスカとイーニャは一度家に戻るらしいし、丁度いいからアイツ等と一緒に家まで行ったらどうだ?」
「・・・そうだな」
「何不機嫌になってんだよ?」
「別に・・・」
「?」
どうしたんだ急に?
突然唯依の機嫌が悪くなったが、それ以上聞くと噛みつかれそうだったのでそれ以上追及するのは止めた。
因みに、帰りに二人の部屋に行き、パーティーで写真を撮ったことを話したらイーニャが突然写真を撮りたいと言ってきたので、俺と唯依、クリスカとイーニァの四人で記念写真を撮った。
説明 | ||
女性しかISを稼働できなかったのが、突然男でISを稼働できるのが同時に二人も現れた!?その二人の名は織斑一夏と龍見雅樹。 この物語の主人公である龍見雅樹が女尊男卑の世の中に疾る『風』・・・その名はサイバスター!! |
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