魔法少女イレギュラーなのは〜14〜 貞明「温泉かぁ」
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「……むぅ」

 

とあるマンションの一室にて、治りかけの右腕を色々動かしてみて、たまに無茶をして悶絶している男子がいた。

 

いやまあ、俺こと、千丈貞明ですけども。

 

……おかしい。

何かおかしい。

 

あの時、もしかしたら転生仲間かもしれない奴につけられた斬り傷。

非殺傷設定だし、まあ問題は無い、だのとぬかしていた俺自身が言うのもなんだけど……傷の治りがちょっと速すぎる。もうちょい時間はかかるもんだと思ってた。

 

……おいおい、いよいよ俺の身体が人間止めたものに近いよね説が濃厚になってんじゃないの。こんなのって無いよ。吸血鬼なので誰かの血を吸わなきゃいけません的なオチは勘弁ですよ。フェイトとかの血を吸わなきゃいけないとか、マジで止めて欲しい。

 

と、そんな感じで色々悩みながら日々を過ごしていた訳ですが。

ある日。

 

 

 

「温泉?」

 

 

 

フェイトの言葉に、俺は首を傾げていた。

 

「そう、温泉。その近くで、ジュエルシードの反応があるみたい。だから、土曜日にでも行こうかな、って思うんだけど。ジョジョの傷はだいぶ治ってきたみたいだけど……どう?」

 

一緒に来るか、ということか。

ふむ。

そういえば温泉って、怪我に効用があるのもあるって話だっけ。

傷の治りの速さはちょっと不思議で不安だけど、でも早く治すに越したことはない。

 

問題はジュエルシード……原作でも旅館でなのは陣営とぶつかってたような……。

前戦ったあいつがいれば、フェイト1人じゃかなり厳しいところだ。俺がいても、悔しい事に何とかなるかどうか……。

なら、余計ついて行かざるを得ない。左腕はまだあるし、時止めも使える。緊急時とかには役立てるはず。

 

「……解った、ご一緒させて貰うね。んじゃあ、今から準備始めとこうか」

 

うん、と頷いて嬉しそうに笑うフェイトを見て、心の中でガッツポーズ。

 

早速俺の家に帰り、色々と準備を進める。

親はあっさり俺の温泉行きを承諾、準備も手伝ってくれた。ほんともう、何と言うか……ま、今はありがたく思っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わお」

 

という訳で、旅館である。

なかなかに立派なところだ……って、フェイト、俺達こんな所に泊まってほんと大丈夫?

 

まあ、そんな疑問は余所にして、荷物を部屋に置いて、3人で少々くつろぐ。

 

と、おもむろにフェイトが立ち上がった。

 

「?どしたん?」

 

「ジュエルシード、探してくるよ。アルフとジョジョはここで待ってて」

 

「1人で大丈夫かい?」

 

アルフが少々不安げに言うが、フェイトはそれに微笑んだ。

 

「ありがとう、でも大丈夫だよ。それじゃ」

 

パタンと音をたて、扉が閉まる。

 

 

 

 

 

「「……」」

 

 

 

 

 

そして何故か訪れる、微妙な空気。

……気まずい。ガチで気まずい。

そもそもアルフとあんまり話す事なんざ無いよ!どうすんのよこれぇ!?

 

なんて、頭を抱えていると。

 

「……ねえジョジョ」

 

向こうから話しかけてきてくれました。助かった……のか?

 

「何?」

 

「フェイトの事……本当によろしく頼むよ」

 

「へ?」

 

思わずアルフの顔を凝視する。

彼女の顔は……悲しみや優しさ、怒り、苦しみ……それだけじゃない、ほんと様々な感情をごちゃ混ぜにしたような……そんな感じだった。

 

「ど、どうしたのさ急に」

 

軽く動揺してしまう自分が少し情けない。

 

「フェイトは、優しい子でさ……でも、あたしの口からじゃあまり言えないけど……色々、苦しい目に遭っちまってるんだ。友達だっていないようなもんさ……あたしだけじゃ、多分足りないんだ」

 

……そんな事はない、って言えない俺は何なんだろう。

アルフは、立派にフェイトの友達……いや、それ以上、家族をも務めているはずなのに。

 

「……あんたが来てから、あの子の笑顔を拝める回数がまた増えたんだ。あんたは、フェイトの友達にきっともうなれてるんだよ……だから、お願いだ。あの子を……頼むよ」

 

「……ああ。このジョジョに、任せとけ」

 

やっとの事でこれだけを言って、とんとんと自分の胸を叩く。すると、相手もホッとしたような表情を見せた。

……もっと気の利いた事、言いたかったけど……無理か。

 

「ありがとう、ジョジョ。さて、湿っぽい話は終わり!退屈だし、外でもぶらつかないかい?」

 

「お、さんせー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、旅館の中をしばらくぶらついていると。

 

「げ」

 

「?どうしたんだい?」

 

思わず口から出た言葉に、アルフが怪訝そうにする。

が、そんな事お構いなしに俺はすぐさまフードを被り、顔の上半分を隠す。……パーカー着といて良かった。

 

 

理由は簡単。

 

 

目の前に、高町なのはとその一行がいたからだ。

 

 

いちおー、俺はなのはさんとクラスこそ違ったりするものの、同学年なのだ。今は見えないけど、なのは側にもやたらと強い奴がいる以上、バレない方が良いに決まってる。

……最初に戦った時、顔見られてただろ、なんてツッコミは無しで。

 

あ、アルフも気付いた。

 

「あー……君かね、ウチの子をアレしちゃってくれてる子は……。あんまり賢そうや強そうには見えないけど?」

 

ちょ、わざわざ話しかけるんすか。

とはいえ、俺は様子見だ。下手に目立ちたくない。

 

いきなり話しかけられて困惑気味のなのは、笑顔で不思議なプレッシャーを放つアルフ。

 

 

…………。

 

 

……やめてー!?この微妙な雰囲気やめてー!?

 

念話でアルフに訴えようとした、その時。

 

「……あっはっはっは!ごめんごめん。人違いだったかな?知ってる人によく似てたからさ」

 

アルフが沈黙を破ってくれました。お陰でなのは達の緊張がほぐれ、俺の精神的ライフも事なきを得る。

 

 

(今の所は挨拶だけ。でも忠告しておくよ。子供は良い子にして家に居ることだね。おいたが過ぎると……ガブッといくよ)

 

 

ちょっとー!?挑戦状叩きつけらしき事やっちゃったよ!?

まあ……あの強い奴がいないのが幸いかな……あいつにはこれ聞かれたら駄目な気がする。

ていうかその念話俺に聞かせる意味有ったのか?

 

「さーて、風呂でも行こうかねー」

 

(行くよ、ジョジョ)

 

(ういうい〜)

 

なのは達に少し頭を下げてから、アルフを追いかける。

……バレてないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

「!ジュエルシードの気配!」

 

フェイト、アルフが同時に起き上がる。

俺も感じた。身体の調子を確認し、頷き合う。

 

さあ……ショータイムだ!

説明
コレは、転生者たちが、リリカルなのはの世界で転生生活を頑張るお話。

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