青いチビの使い魔 第12話
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 キキSide

 

はぁ〜、決闘はつつがなく終わった。まあ、ちとせが最後にでしゃばったから一発かまして黙らしたけど、・・・・・・アレ大丈夫だよな? ギャクキャラだし大丈夫だと信じよう。おっと話しがズレた。で、俺があの決闘で心配なのはリオンがデルフリンガーを手に入れるかどうかだ。もしもの時は俺が買って何とかしよう。さて、俺は今タバサと一緒にシルフィードに乗って任務とやらに向かう途中だ。

 

「きゅい〜♪シルフィード?シルフィード?私の新しいお名前なのね〜♪きゅいきゅい。」

 

今回の任務はとある村に出現した吸血鬼を倒す事らしい。

 

「きゅい〜、ねぇねぇ、お話ししようなのね。シルフィお話がしたいのね!」

 

そんで、正式な指令書とやらを貰うためにお城に行く事になった。

 

「もーう!!お兄様だんまりは無いのね!シルフィ寂しくて歌っちゃいそうなのね!」

 

さっきから喋り捲っているイルククゥ改めシルフィードの頭をガンッ!と、タバサが持っていた大きな杖で叩いた。そして

 

「うるさい。」

 

と一言文句を言う。

 

「きゅい〜。痛いのね〜。なにするのね、このチビ助!私はただお兄様とお喋りしようとしてただけなのに。」

 

あの時、こいつを使い魔代理にするために色々と吹き込んだら、こんな感じの関係になってしまった。でも、なんやかんやでタバサとシルフィードはそこそこ仲良くはやっているみたいだ。ちなみに、シルフィードと言う新しい名前はタバサが考えたものだ。風の妖精って意味らしい。閑話休題。しかし、まあ、なんというか・・・、

 

「この、私が大人しくしていればいい気になって〜!誰のおかげでこうやって移動出来てるとおもってるのね!きゅい!」

 

こいつ結構うるさいな。ってかよくこんなに喋れるな・・・羨ましい。

 

「くぅ〜何か言ってみるのねチビ助!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・なんで何も喋んないのね!お兄様!このチビ助に言ってやるのね。この偉大なる風韻竜のシルフィが頑張って飛んでるのに優雅に本なんか読んじゃって。きゅい!」

 

シルフィよ、もういってる事がメチャメチャだぞ。このまま無視し続けるのもアレだな、タバサも俺の事ジッと見てきてるし。

 

「お〜い、シルフィ〜」

 

「きゅい!お兄様やっとお喋りしてくれるのね。そうだ、お兄様さっきの決闘凄かったのねあの仮面の人がこう・・・剣でゴーレムをスパパーンってバラバラにして・・・・・」

 

「あ、うん、そうだな。」

 

とりあえず声を掛けたら勝手に喋り出した。相槌打って、適当にに喋らしておこう。で、そんなこんなで、お城・・・プチ・トロワに着いたので俺は事前に決めていた通りに姿を隠し、シルフィは使い魔として振舞う、もちろん韻竜であることは隠して。そして城の庭に着くと兵士が近づいてきて

 

「イザベラ様がお待ちです。」

 

そう言った。

 

「わかった。この子にご飯をあげて。」

 

タバサは兵士にそう言って返事も聞かず、スタスタと城の中に入っていった。俺はその後を変化の術でネズミとなり、ついて行く。タバサには待ってるよう言われたけど・・・・イザベラを見てみたいという気持ちが強すぎてついね。さぁ、噂の性格捻くれ美少女デコ姫をご拝見。

 

「え?」

 

と、中に居た青い髪の少女が声を出し呆けた顔をしていた。たぶんこの娘がイザベラだろう、意外と可愛かった。イザベラはしばらくすると怒ったような表情になり、

 

「きちんと知らせたはずよね?今回の相手。」

 

と、訊ねてきてタバサは表情を変えずに頷く

 

「その相手の名前を言ってごらん?」

 

「吸血鬼」

 

イザベラが顔を引きつらせながらタバサにさらに問いかけてもタバサは淡々と言葉を言う。ああ、さっきの呆けた表情はタバサが恐怖で顔を青くしてると期待してたからか?

 

「だったらわかるだろ?ピクニック気分で出発できる任務じゃないよ?」

 

イザベラが負けじとさらに嫌味な感じでタバサを小突きながら言うがもうタバサは何も言わず、イザベラを見つめ続けるだけ、イザベラは反応を見せないタバサを憎々しげに睨みつけるが、しばらくするとタバサの圧力に負けしたイザベラが苛立たしげに目的地などが記された書簡を投げ渡す。

 

「ふん、それが最後の任務にならなきゃいいね。せいぜい、無事を祈らせてもらうわ、シャルロット。」

 

イザベラは皮肉気にそう言って、タバサは無言のまま一礼して部屋を出て行った。俺は・・・

 

「はぁ、ホントに無事で・・・」

 

なんか面白そうな呟きを聞いたのでもうしばらくイザベラ観察。イザベラはさっきまでの気丈さなぞまったく無くなり、そのまま窓の方へ歩いて行く。

 

「へぇ、あれがあの子の使い魔か・・・私と違って才能あるあの子にピッタシじゃない」

 

アンニュイな感じで外のシルフィードを見ながら言う。

 

「今度は吸血鬼。お父様はシャルロットに何故こうまでして危険な任務を押付けるのかしら」

 

イザベラは独り言を言いながらベットに倒れこみ、

 

「何も出来ない無能な私は祈る事しか出来ないけど・・・今度も無事に帰ってきてちょうだい」

 

・・・・・うん、たいして面白いことにならなかった。俺はその後、僅かに開いていた窓から外に出て、タバサより先にシルフィの所に戻り、術を解いて元に戻る。

 

「・・・あれ? 今なにか白いのが・・・まさかネズミ!? ちょ、メイドたち!」

 

上からイザベラの声が聞こえる。すまない、メイドさん達よ。で、城から出てきたタバサと共に任務先の村へと飛び立つのであった〜。そして、しばらくして、

 

「サビエラ村、首都から500リーグほど南東にある山間の村。アレだな。」

 

俺は飛んでいるシルフィの背から目を凝らして村を発見する。

 

「見えない」

 

「まぁ、普通の視力じゃ無理な距離だからな」

 

タバサも同じように見ようとしたらしいがまず無理だろう。まぁ白眼もってる日向一族の特権だよな。見えるぜぇ〜。

 

「降りて」

 

「きゅい」

 

タバサがシルフィに命じて村から少し離れた丘に着陸させる。

 

「で、俺が騎士のマネして、タバサとシルフィが従者のマネと」

 

ここに来るまでにタバサが色々と作戦を立てて説明してくれた通りに準備をする。まずシルフィを人間に化けさせる。

 

「え〜、あの姿は動きにくいから嫌なのね」

 

「化けて」「化けろ」

 

シルフィがわがままを言うのでタバサと俺が同時に言った。

 

「うっ、うう〜、わかったのね・・・。ただし後でいっっっっっぱい、ご飯貰うんだから!」

 

俺達の威圧的な視線に観念して、シルフィは渋々承諾した。

 

「我をまといし風よ。我の姿を変えよ」

 

シルフィがそう呪文を唱えると、しゅるしゅると風がシルフィの体にまとわりつき、青い渦となって包む。そして渦が消えると・・・・・・・・、同年代位のマッパの美少女がいた。

 

「・・・・・・(ニタリ)」

 

「・・・ッ!!」

 

ブゥン!とシルフィを見てにやけたらタバサに顔面を杖で殴られそうになったので、難なく攻撃を防ぐ。が、その後、睨まれたので、しょうがなく後ろを向く。しかし甘いぞ。白眼で視界はほぼ360度良好だ。

 

「・・・?何やってるのね?って、きゅい!?」

 

ブゥン!と後ろで全裸のシルフィに対し、俺と同じ様に杖を振るい殴りにかかるタバサ。なんか楽しそうだねぇ〜。

 

「お〜い。なるべく早くしてくれよ〜」

 

「・・・・・・わかってる」

 

タバサの声が背中に掛かった。なんだろ?妙に冷たいというか・・・・まあ、いいか。しばらくするとゴソゴソと服のこすれる音がして、

 

「もういい。」

 

「あー、もう!この服ごわごわしてやな感じなのね。きゅい。」

 

OKを貰ったので振り返るとそこには、服を着たシルフィとマントを取ったタバサがいた。

 

「貴方も着替える。」

 

と、俺もヒラヒラ(?)した服とマントを渡されたのでしょうがなく着替える。・・・面倒臭いなぁこの服。・・・・・・・・で、騎士(俺)、従者×2(タバサ&シルフィ)の一行が村に入った。

 

 

 

 

 

 タバサSide

 

私達はそれぞれ変装をし、ザビエラ村に入る。私とシルフィードはキキの後ろに荷物を持ってついて行くと、

 

「今度の騎士様は大丈夫か?」「女子供を連れてくるなんて」「前に来た騎士も偉そうにしてたけどすぐ殺されちゃったのに」

 

遠巻きに見ている村人がひそひそと私達の陰口を言う。キキは周りを軽く見渡して、

 

「何見てんだ〜お前ら? 殺すぞ」

 

何でもないような平坦な声で村人達に言う。

 

「な、なんだあの騎士は・・・」「最悪じゃ」「はぁ、もう騎士なんて当てにできねぇ」「俺等で吸血鬼を倒すしかない」

 

キキの態度に村人達はさらに不信感を募らせて白い眼で私達を見ながらヒソヒソ話しを続ける。

 

「う〜〜もう!なんなのねあいつ等!お兄様を悪く言うなんて。ほらチビ助もなんか言ってやるのね」

 

シルフィードが村人の態度に文句を言う続けながらしばらく歩くと村の奥にある段々畑の一番高い所に建った村長の家に着くと、

 

「村人の態度が悪い。気分を害したから頭を床に擦り付けて謝ってくれよ」

 

村長に会うなりキキはそう言った。

 

「は?そ、それはその・・・なんていいましょうか・・・・」

 

「ん〜、なんだ?この俺がこんな辺鄙な村まで着てやったてのに酷い村だよな。こんな小さな村、無くなったって誰も困りゃしないよな。・・・・・・帰るか」

 

「そ、そんな!お願いします騎士様!この村を吸血鬼から救ってください」

 

「あ〜?だったら、それ相応の態度ってのがあるたろ?平民」

 

・・・・・・・・・・・キキには無能なメイジを演じるように頼んだが、これではただの悪人にしか見えない。確かにこうゆう態度をとるメイジがいる事は否定しないが。村長はキキの前で膝をつき頭を床につけて

 

「ど、どうか・・・お願いします」

 

「うん、しょーがないねぇ。この蒼炎のカイト様が吸血鬼を焼き殺してやる。感謝しろよ平民」

 

蒼炎のカイトとはキキの偽名だ、なんでも昔キキが好きだった物語の人物の名前らしい。しかしキキが妙に活き活きしてるのは私の気のせいだろうか?

 

「きゅ、きゅい〜。お兄様・・・怖いのね」

 

シルフィードが顔を青くしながら小声で呟く。その後キキは村長から吸血鬼についての詳しい情報を聞いたがそれは報告書とたいして変わりなく、二ヶ月に少女が犠牲になったのを皮切りにもう九人の犠牲者が出ているのこと。

 

「二人ほど犠牲者が出たあと、夜出歩く村人はいなくなったんですじゃ。でも・・・・・」

 

村長がそのあとも村で起きた事を話してくれた。キキは黙ってずっと話を聞き、シルフィードはさらに顔を青くしてガタガタと震え

 

「こ、怖いのね〜」

 

と、言いながら私にしがみついてきた。

 

「そうです。しかし、一番怖いのは吸血鬼が操る((屍人鬼|グール))の存在ですのじゃ」

 

村長は悲しそうな顔でそう言った。((屍人鬼|グール))、それは吸血鬼が操る死体のことだ。吸血鬼自体はあまり強くは無いが屍人鬼(グール)違う。その力は人間のそれを大きく超え、しかも死んでいるからいくら攻撃を加えても怯むことなく相手に襲い掛かるためメイジには天敵である。

 

「村人達も互いに((屍人鬼|グール))じゃないのかと疑い始めてしまい、村を捨てる者もおりますのじゃ」

 

村長は話してる内に悲しくなってきたのか表情が暗くなっていってしまった。すると、

 

「((屍人鬼|グール))には、吸血鬼に血を吸われた傷があるはずだわ」

 

シルフィードがそう言い、皆の視線を集める。村長はそれを聞いてさらに話しを進める。

 

「私等も調べたんですが、なにせこんな田舎ですから仕事中に虫や蛭に刺される者が多くて・・・。首に傷がある者だけでも、七人ほどおりましたわい」

 

と、だから吸血鬼につけられたかどうかは分からないと村長は言った。キキは話は終わったとばかりに椅子から立ち上がり、

 

「話は分かった。それじゃあ疲れたから俺は夜まで寝るな」

 

「へっ? 吸血鬼退治は!?」

 

「へ? 吸血鬼ってのは夜活動するもんだろ。こんな昼間っから探したって見つかるわけないだろ。分かったら部屋に案内しろ」

 

キキはそう言って村長に案内をさせる。私達もキキの後について行こうとすると、

 

「・・・? なんだあのガキは?」

 

「・・・ッ!!」

 

キキがそう言って廊下の奥を見るとそこには10歳ぐらいの女の子がいたが、キキと目が合うと逃げてしまった。

 

「すいません騎士様。あの子はその・・・メイジを怖がっておりまして・・・」

 

「あ〜悲しいねぇ。まあ、子供一人に嫌われたところでなんとも思わないから安心しろ」

 

そして私達は村長に部屋に案内されて

 

「では、何かありましたらお声をおかけください。」

 

そう言って村長はリビングの方に戻っていった。部屋に入った私達はそれぞれ荷物を置いて、

 

「・・・やりすぎ」

 

「あはは。いや〜、分りやすい悪人貴族を演じたつもりだったんだけど。ダメだった?」

 

「きゅい。お兄様怖かったのね」

 

まぁ、キキはそのまま演技を続けてもらって、これからの事を話す。

 

「キキはここで待機、私とシルフィードで村を調査して来る」

 

「お〜。わかった」

 

「えっ、私も行くのね?!」

 

そう言ったシルフィードに私とキキが呆れたような視線を浴びせると、

 

「うっ・・・行きますなのね」

 

怯みながら答えた。そして、私達は村に調査をしに向かった。

説明
吸血鬼退治の話。その1
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