IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第三十一話 〜襲撃者〜
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〜管制室〜

 

≪ああああああああ!!!!≫

 

モニターには、変形しつつあるISに包まれているラウラの姿が映し出されていた。まるで粘土の様な物がラウラのISを包み込み、再構成されていく。変形が終わった時、そこに立っていたものは、黒い((全身装甲|フルスキン))の女性の姿をした“何か”だった。

 

「何なんだあれは・・・」

 

クロウは訳が分からずただ呟き、部屋の全員は何が起こっているのか理解できずにただ画面を注視するだけであった。しかし千冬には見当が付いているようで一つの単語を発する。

 

「ヴァルキリー・トレース・システム・・・」

 

「おい千冬、何か知っているのか?」

 

「過去のモンド・グロッソ大会においての((総合優勝者|ヴァルキリー))の動きを((模倣|トレース))するシステムだ。しかし、あれは国際条約で研究・開発が禁止されている代物なのだが・・」

 

「で、でも今現在確かにあそこにあるじゃないですか!?」

 

シャルルが悲鳴まじりに言う。代表候補生という立場上、そのシステムがどの様な危険性を孕んでいるのか理解している様だった。

 

「ああ、恐らくはどこかの馬鹿がボーデヴィッヒのISに組み込んだのだろう。山田先生、至急来賓、及び生徒の避難と教師部隊による鎮圧を」

 

千冬が麻耶に指示を出していると、モニターに動きがあった。変形しきったISを見て、呆然としていた一夏だったが、いきなり声を上げ、雪片弐型を振りかぶり、ISに向かっていったのだ。

 

「一夏!!何してるっ!!」

 

クロウの声も届かない様で、そのままISに突っ込む一夏。しかし、振り下ろした雪片弐型はISが持っている刀に弾き返され、敵はそのまま一夏に向かって斬り付ける。

 

≪くそっ!!!≫

 

一夏は前方にスラスターを全力で吹かして回避行動をとる。上手く敵と距離をとれたものの、白式は解除されてしまった。どうやら今の回避行動で((S・E|シールド・エネルギー))が切れたらしい。

 

≪それが・・それがどうしたああああっ!!≫

 

しかし一夏は白式が解除されたにも関わらず、敵に向かって行こうとする。慌てて鈴が止めに入った。

 

≪何やってるのよ!死にたいの!?≫

 

≪離せよ鈴!!あいつ、千冬姉の技を使いやがって、ぶっ飛ばしてやる!!≫

 

一夏の叫びは管制室にまで届いてくる。今は飛び出そうとする一夏を鈴が必死で止めているといった様子だ。

 

「そうなのか、千冬?」

 

「ああ、確かにあの剣技は私が現役の時に使っていたものと酷似している。」

 

モニターの中では、箒が生身のまま、一夏と鈴に近づいて、口論に加わっている所だった。しばらくすると、箒が一夏の頬を思い切り、ひっぱたく。一夏も落ち着いた様で、動きを止める。

 

≪まず説明しろ!!何をそんなに怒っている!?≫

 

≪あれは・・あいつは千冬姉のデータだ。あれは千冬姉のものなんだ。それをあいつは!!≫

 

「まったく、あいつはどうしてこう・・・」

 

「つまり、一夏はあのシステムに千冬のデータが使われているのが我慢出来ない、と」

 

「どうやらそのようだな。全くあの馬鹿は・・・」

 

その間にも、一夏は喋り続ける。敵のISらしき物は一夏には攻撃してこなかった。どうやら攻撃してきた者を敵と認識して、無力化するような物らしい。

 

≪それにラウラが気に入らねえ、あんな力に振り回されやがって。あのISとラウラ、両方ともぶん殴ってやらなきゃ気がすまねえ!!≫

 

と言うと、一夏は敵を睨みつける。クロウは全てを聞くと、アリーナ内のスピーカーを使用して、一夏に話しかけ始めた。

 

「一夏、それで終わりか?」

 

≪クロウか!止めないでくれ!!≫

 

「いや、言わせてもらう。お前は間違っている」

 

≪・・・どういう事だ?≫

 

「まず、お前は千冬のデータが使われていることに対して怒っているようだが、それはお門違いだ。上手くなりたければ、誰かのマネをするのは当たり前だ。千冬はモンド・グロッソの優勝者なんだろ?そんな人間のデータだったらどこに使われていても不思議じゃあない」

 

≪・・・≫

 

クロウの言葉を聞く一夏は黙り込む。それは、心のどこかで一夏自身が考えていた事でもあったからだ。一夏には構わず、クロウは言葉を続ける。

 

「しかも今のお前は白式も展開出来ない。戦うための手段がないんだ。大人しく諦めろ。教師部隊もそろそろ準備が終わるから、そっちに任せてお前たちは退避だ」

 

クロウがそこまで言うと、モニターの中の一夏は顔を伏せる。しかし次の言葉には、揺るぎない信念が宿っていた。

 

≪違う、違うんだクロウ。“やれない”なんかじゃないんだ。これは俺が“やりたい”事なんだよ≫

 

「・・・何が言いたい?」

 

≪俺がここで引いちまったら、俺が俺じゃなくなる。だから俺はやる。やりたいんだ≫

 

そこまで言うと、一夏は再び敵を睨みつける。既に教師部隊は戦闘準備が整っており、一夏と敵を取り囲んでいた。

 

「・・・分かった。だが少し待て、こっちで作戦を立てる」

 

≪ありがとう、クロウ!!≫

 

そこまで言うと、クロウはスピーカーを切り、一同に話しかける。

 

「さて、そういうことだ。今から作戦を話す。よく聞いてくれ」

 

「待て、クロウ!一夏を死なせるつもりか!?」

 

千冬は納得がいかない、といった様子でクロウに食いつく。弟を危険な目に合わせる、と言っているのだ。これが当然の反応だろう。

 

「いいや、大丈夫だ。シャルル、一つ聞きたい事があるんだが」

 

その言葉を聞くと、シャルルは戸惑った顔で静かに前に出る。

 

「う、うん。何かな?」

 

「お前のISのエネルギー、一夏に渡せるか?」

 

その言葉を聞くと、シャルルは大きく首肯する。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「なら、急いでアリーナに行って一夏にエネルギーを渡してやってくれ。一夏に“絶対に、ボーデヴィッヒを助けろ”って伝言を頼む」

 

「分かった!」

 

そう言うと、シャルルは駆け出し、管制室から出ていく。クロウは次にセシリアに問いかける。

 

「さて、次にセシリアだが、お前のISはもう大丈夫か?」

 

「ええ、ビットは使えませんが」

 

「じゃあ、お前もISを展開して一夏の援護に──」

 

「大変です!!」

 

管制室内に麻耶の声が響きわたる。一番に反応したのは千冬だった。

 

「どうした!!」

 

「学園に侵入者です!現在、更識さんが応戦中!!」

 

「何っ!このタイミングで侵入者だと!?」

 

このタイミングで侵入者。どう贔屓目に見ても、このアクシデントが起こると予期した上の襲撃としか考えられなかった。

 

「・・・どう考えても騒動にあわせて来た、としか考えられないな」

 

そこまで言うと、クロウは作戦を変更。セシリアに役割を伝える。

 

「セシリアは俺と一緒に来て、侵入者の迎撃。援護射撃だけでいいから頼む」

 

「わかりましたわ!!」

 

「クロウ・・・すまない」

 

千冬は悔しそうにクロウに謝る。自分のISがあれば、すぐさま飛んで行きたいだろうに、それを見ている事しか出来ない自分を責めている様だ。

 

「気にすんな、教師部隊の方は、万が一の時に備えて一夏の方に回ってもらうしかないからな。それにせっかく弟分が頑張ろうとしてんだ、無粋な横槍を入れる訳にはいかねえ。じゃあ行ってくるぜ」

 

そう言うと、クロウとセシリアは管制室から出ていく。後に残された千冬と麻耶はこれからの事を指示していく。

 

「教師部隊に告げます。織斑 一夏が対処するので、指示があるまで待機していて下さい」

 

「織斑、デュノアからエネルギーを譲渡して貰った後に、零落白式で攻撃を仕掛けろ」

 

〜グラウンド〜

 

クロウとセシリアは襲撃者がいる地点まで到着したのだが、そこではすでに二機のISが戦闘を行なっていた。

 

「ははは!そんなもんかぁ!?」

 

「まさか、舐めないでくれる?」

 

片方のISは背後から、クモの手足の様なマニピュレータが展開されており、その先端は鋭利な爪の様になっている。今はその爪の先端から実弾による射撃を行なっていた。ISを装備している女性は髪をストレートに伸ばしている。

そしてもう片方のISは、まず目に付くのは装甲の薄さだった。ISにしては、大丈夫なのか?と思う位に装甲が薄い。そしてその体を包む様にヴェールが形成され、体の左右両側には一対の水色のクリスタルがあった。こちらは、両手にランスを展開して、そこから銃撃を加えている。クロウはどちらが敵か判断しかねていた。

 

「さて、どっちが敵かな?」

 

「・・・あの蜘蛛の様なISは確か、アメリカの第二世代型IS“アラクネ”ですわ。でも、あれは確か少し前に強奪された、という話でしたが・・」

 

「じゃあ、あっちが敵か。もう片方のISは知らないか?」

 

もう片方の女性は水色の髪の毛をショートカットにして、戦闘中にも関わらず笑顔を浮かべていた。

 

「ええ、あちらはロシアの代表操縦者でもあるこのIS学園の生徒会長、更識 楯無さんですわ。おそらく学園からの要請で戦っているものかと」

 

「よし、セシリアはISを展開して上空からの援護射撃、俺はあの更識とか言うのと共同戦線を敷く。いいな?」

 

「はい、ブルーティアーズ!!」

 

その言葉と共に、セシリアはISを展開。すぐさま上空へと飛翔する。

 

「さて、俺も行くか。行くぜ、ブラスタ!!」

 

クロウもブラスタを展開、バンカーを体の前に構え蜘蛛の形を模したISに向かって突撃を開始した。

 

〜楯無side〜

 

私は今、“亡国企業

ファントムタスク

”のエージェント、オータムと戦闘中だった。まったく、戦闘を始める時は大声で名乗ってくれちゃって。そんな事知ってるのに。まあ、ともかく、今は銃撃戦になっていて、私はランスからのガトリングを相手に向かって連続で放つ。対して敵もアラクネの八本のマニピュレータから、射撃をしてくる。

 

「ははは!そんなもんかぁ!?」

 

「まさか、舐めないでくれる?」

 

決定打が打てる様になるまでこのままかな、と思っていた矢先、私の後ろから声が聞こえた。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

次の瞬間、私の横を一機のISが通り過ぎ、そのままオータムへと突撃していった。敵もいきなりの乱入者に驚いた様で反応が遅れている。謎のISはそのまま敵の腹部に攻撃を仕掛ける。

 

「この野郎っ!!」

 

オータムはすぐさま反撃に入り八本の足を乱入者に向ける。そのISは向かってくる攻撃に気づくとすぐさま離れ、私の隣に来た。

 

「加勢するぜ。生徒会長さん」

 

「あら、その前にあなたは誰かしら?」

 

私は内心とても驚いていた。なぜなら私の隣には今、裏世界においての時の人がいたのだから。

 

「俺はクロウ・ブルースト。この学園の生徒だ」

 

〜クロウside〜

 

「俺はクロウ・ブルースト。この学園の生徒だ」

 

クロウは隣にいる相手に話しかける。相手はいささか驚いた様で目を見開いてクロウの顔をまじまじと見る。

 

「・・・そんなに俺が珍しいか?」

 

「いいえ。ふーん、あなたがこの間の襲撃を退けたっていう子ね」

 

今度はクロウが驚く番だった。あの事件、一般人は知らないはず。なのに何故、目の前の生徒会長とやらは知っているのだろうか?

 

「・・・何であんたがそれを知ってる?」

 

「後で話してあげるわ。それよりも」

 

二人が正面を向くと、敵も体勢を立て直していた。八本の足をこちらに向けてくる。だが何故か攻撃のかわりに敵はクロウ達に向けて言葉を投げかけてきた。

 

「おい、お前まさかクロウ・ブルーストか?」

 

「ああ、そうだが?」

 

クロウが返答すると、敵は何故か高らかに笑い出す。

 

「ははははは!!こんなに早く有名人と出会えるとはなあ!嬉しいぜ、まさかターゲットが自分から来てくれるとはな!!」

 

言うが早いか、敵は再び射撃を開始。クロウと楯無を分断する。クロウは敵に向かって再び突撃を仕掛ける。何故か敵は回避行動を取らず、そのまま防御する。

 

「(何で避けないんだ?)」

 

「ありがとよ、わざわざ来てくれて!!」

 

敵を見ると、片手でなにやらエネルギーの塊の様な物を持ち、もう片方の手には何かの機械があった。楯無がそれを見ると、顔色を変えて、叫ぶ。

 

「あなた、早く下がって!!」

 

「ハハハ!!もうおせえ!!」

 

そう言うと、クロウめがけてそのエネルギーの塊を投げつける。ブラスタの装甲に触れたかと思うと、それは一瞬で全身に絡まった。クロウは絡まってしまい、その場に倒れる。

 

「くそっ、何だこいつは!?」

 

敵はクロウに近づきつつ、手に持っている四本脚の装置をブラスタに取り付けると、少し下がり、笑い続ける。

 

「終わりだ、自分のISとお別れしな!!」

 

「・・・??」

 

しかし、十秒たっても、二十秒立っても何も起きない。しばらくしてクロウがバンカーでエネルギーの網を切り裂き、立ち上がって敵と距離を取る。二人の顔をみれば敵と見方、両方の表情は一致していた。その表情に浮かんでいるのは驚愕だった。

説明
第三十一話です。
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タグ
IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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