IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第三十三話 〜表の顔、裏の顔〜
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〜学園・生徒会室〜

 

クロウとセシリアはあの後、楯無に連れられるがまま、生徒会室と書いてある部屋に通されていた。さすがにあの状況からは逃げることは叶わず、今は“生徒会長”と役職名が書かれた机に楯無が、その対面のソファにクロウとセシリアが並んで座っていた。

 

「さて、いくつか聞きたい事があるんだけど」

 

楯無は順番に二人を扇子で指しながら質問する。

 

「まず、一つ。あなた達、何であの場に来たの?」

 

「本気で言ってんのか?そりゃ学園に侵入者が来たら撃退するに決まってんじゃねえか」

 

「わからないのはそこよ。私は学園にこう言われたわ『出せる戦力が無いから迎撃に当たってくれ』って。でも何であなたたちが来れるの?」

 

「そりゃ簡単だろ。学園側としては俺たちみたいな一般の生徒を戦力として数えられる訳がない。あれは俺たちの独断だ。まあ、許可はとったがな」

 

とクロウが淡々と説明する。セシリアは一言も喋らず、クロウに任せたようだ。

 

「はあ、まあそれはいいとするわ。私も援軍が来て助かったし。次に」

 

クロウを指さして言い放つ。

 

「貴方のIS、どうなってるの?」

 

「・・・どういう意味だ?」

 

クロウは内心では質問の意味を理解しているがあえて聞き返し、楯無は質問を再び繰り返す。

 

「言葉通りの意味よ。あの((剥離剤|リムーバー))が効かないってどう考えてもおかしいわよ」

 

「今回はたまたま不良品だったんじゃないのか?」

 

クロウは白を切る事に決めた。どうせ目の前の女は状況証拠でクロウを疑っている。正確にはブラスタの事を疑っているのだが、クロウにしては変わらない。このまま白を切り通せるはずだ、とクロウは考えていた。クロウの返答を聞いて、しばらく黙っていた楯無だったが諦め顔で口を開いた。

 

「・・・はあ、分かったわ。今日の所はこれでおしまい。二人とも帰っていいわよ」

 

「そ、それでは 「先に外に出ていてくれ、セシリア」・・・え?」

 

セシリアは立ち上がるが、クロウはソファに座ったまま、動こうとはしなかった。そんなクロウを見て楯無は笑みを浮かべる。

 

「ふふ、おねーさんに聞きたい事があるのかな?」

 

「ク、クロウさん!?一体どういうことですの!?」

 

「・・・あんた、俺の女嫌いを加速させたいのか?」

 

とクロウが呆れた声を出す。セシリアは何か勘違いしているらしく納得していなかったが、クロウが頼み込むと渋々出ていった。部屋に残されたのはクロウと楯無のみ。楯無は笑顔でクロウに問いかける。

 

「ふふっ、それでこのおねーさんに何が聞きたいのかな?」

 

クロウはひとつの質問をした。今回の襲撃者の事を聞いてもよかったのだが、そちらよりこちらの方が大事だったからである。

 

「・・・何であんた、あの襲撃事件を知っている?」

 

「女にはいろいろと秘密があるものよ?」

 

と笑顔で言い放つ楯無。その答えに構わず、クロウは言葉を続ける。次の質問の解答がクロウにとって本当に聞きたい事だった。

 

「当てて見せようか。あんたは裏の人間、今は片足を突っ込んでる状態かな?」

 

次の瞬間、楯無の出す雰囲気が今までは“陽気な年上の人間”だったものが、“冷徹な目を持つ大人”に変わっていた。クロウの疑念はこの瞬間、確信に変わる。

 

「さあ、それはどうかしら?」

 

「そんな殺気を出しておいて、言い逃れが出来ると思うか?どうやら俺の予想はあたっているみたいだな」

 

「・・・理由を聞いてもいいかしら?」

 

「語るに落ちてるぜ。それよりあんた、仮面をかぶって楽しいか?」

 

クロウの言葉により、楯無から出る殺気が更に鋭さを増す。クロウにとってはそよ風の様な物だったが。

 

「・・・何の事かしら?」

 

「まあ、あんたがそれでいいなら俺は何も言わない。俺の話はこれで終わりだ。じゃあな」

 

とクロウがソファを離れ、生徒会室から出ようとする。しかし直前で楯無が呼び止めた。

 

「待って」

 

「何だ?」

 

「・・・もう一度、名前を聞いてもいいかしら?」

 

「クロウ・ブルーストだ」

 

「・・・そう、ありがとう」

 

「ああ、それと一つ言っておく」

 

クロウは出口の直前で足を止め、体は出口の方へと向けたまま呟く。彼女が裏の人間である事を確認出来たからには言っておかなければならない事があった。

 

「・・・」

 

「俺自身を調査するのは構わない。だが織斑先生や一夏、俺の仲間に危害が及ぶような事があれば、」

 

クロウはそこで一旦言葉を切り、楯無の方に振り返り言い放つ。“本物”の殺気と共に。

 

「俺は容赦しない。覚えておけ」

 

「っ!!」

 

その言葉を置き土産にして、クロウは部屋から出ていった。後には、苦虫を噛み潰した様な顔をした、更識 楯無ただ一人。

 

「・・・クロウ・ブルースト。その名前、覚えておくわ」

 

〜廊下〜

 

「クロウさん!」

 

廊下で待っていたセシリアが近づいてくる。クロウは軽く返事をしながら歩き出す。

 

「待たせたな、セシリア。一夏達の事は何か知っているか?」

 

「ええ、先程鈴さんから通信が入りましたわ。皆さん保健室にいるとのことです」

 

「そうか、じゃあ俺たちも合流するか」

 

「はいっ!」

 

クロウが歩き出そうとすると、いきなりセシリアがクロウの腕に抱きついてきた。慌ててクロウは引き剥がそうとする。女嫌いのクロウにとっては全力で回避したい事例である。

 

「おい、セシリア!離せ!!」

 

「それが、先程の戦闘で少々足がふらつきますの。クロウさんに支えてもらおうかと」

 

セシリアはイイ笑顔で言い放つ。対してクロウは渋面をしていた。

 

「くっ・・・」

 

そう言われると、クロウには返せない。なにせISが完全に修復されていない状態で、戦闘に参加してもらったのだ。その状態で体調が悪い、と言われれば無碍に扱う事も出来はしない。結局、保健室に着くまでセシリアはクロウの腕にしがみついたままだった。

 

〜廊下・保健室前〜

 

クロウとセシリアが保健室の外にたどり着くと、そこには一夏、箒、鈴、シャルルがいた。何故かシャルルだけはクロウの腕に抱きついているセシリアを見て、顔をひきつらせていたが・・・。

 

「クロウ、どこに行ってたんだ?」

 

「ああ、ちょっと事情聴取にな」

 

「???」

 

頭に疑問符を並べている一夏を尻目にクロウは面々を見渡す。どうやら傷を負っている者はいないようだった。

 

「みんな、怪我はないな?」

 

「うん、大丈夫だよクロウ。それよりセシリアはいつまで抱きついているのかな?」

 

とシャルルが笑顔のまま言う。しかし、その言葉の裏には強烈な怒気が込められており、クロウは一瞬でヤバイ、と悟った。

 

「(マズイ、何かはわからないがマズイ!!)・・・おいセシリア、頼むから離れてくれ」

 

「え?なんでですの?」

 

「うん、僕も離れた方がいいと思うな」

 

とシャルルは笑顔を崩さずに言う。セシリアもやっとシャルルが放っているものに気づいたらしく、慌てて離れる。開放されたクロウはあの後について尋ねる事にした。

 

「あの後どうなったんだ?」

 

その質問に答えたのは鈴だった。スラスラと淀みなく話し続ける。

 

「あの後、一夏が敵のISをぶった斬ってあの女を助けたわ。クロウの言った通りちゃんと無事でね」

 

「そうか、良くやったな一夏」

 

とねぎらいの言葉を一夏に掛けるクロウ。しかし次に一夏から放たれた言葉はクロウに衝撃を与えるものだった。

 

「ああ、さすがに負けたら明日以降俺とクロウが女子の制服で通え、なんて言われたら失敗するわけにはいかないからな」

 

「・・・何だと??」

 

「(ギクッ!!)」

 

とクロウが訝しむと同時に、シャルルが体を震わせる。一夏は無事に勝利した事による余裕故か、全く意に介していないようだが。

 

「もう一回言ってくれ一夏。俺とお前がどうするって?」

 

「ああ、シャルルがな“負けたら明日以降俺とクロウが女子の制服で学校に通う”って言ったんだよ」

 

「ほう・・・シャルルがなあ」

 

とクロウはゆっくりとシャルルに顔を向ける。シャルルの方は完全に固まってしまっていた。クロウは至って普段通りの口調でシャルルに話す。 もっとも、その変わらない口調が恐怖なのだが・・・。

 

「・・・ シャルル」

 

「な、何かなクロウ??」

 

シャルルが笑顔のまま聞き返す。額には冷や汗らしき物が浮かんでいるが顔は全く崩れない。

 

「部屋に帰ったら覚えておけよ?」

 

シャルルは苦笑いを浮かべながら、首を何度も縦に振る。クロウもやっと普段通りの雰囲気に戻り、廊下は平穏な空気になる。

 

「そういえばお前ら、何でまだここにいるんだ?」

 

「ああ、まだ千冬姉が保健室の中にいるんだよ。あとラウラも」

 

「なるほどな」

 

と言いつつ保健室のドアに手を掛けるクロウ。その様子を見て、一夏が慌てて止める。

 

「ダメだぞクロウ!千冬姉が中には入るな、って」

 

「いいだろ?千冬の話も聞いておきたいし、何よりボーデヴィッヒの体調も気になるしな」

 

クロウは一夏の制止に構わず、保健室のドアを開け、一人中に入っていく。

説明
第三十三話です
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タグ
IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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