IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第三十四話 〜改心〜
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〜???〜

 

・・・お前にとっての強さとは何だ?

 

『強さってもんは心のあり方だと俺は思ってる。目的を持ってそれに全力で向かっていけるかどうかだ』

 

・・・意味がわからん。

 

『そんなんじゃ人生損するぞ?もっと楽しめよ』

 

・・・ならば何故お前はそこまで強い?

 

『俺は強くなんかないさ。それは強くなろうとしているだけだ』

 

・・・違う。事実、私はお前に負けた。

 

『そうだな、俺が強いっていうのは・・・やっぱり目標があるからかな?』

 

・・・目標?

 

『ああ、ある人に追いつきたいんだ。そんでいつか隣に立って同じ景色を見てみたい。今は守られてばかりだけど、いつか肩を並べて戦ってみたいから』

 

・・・その人間とは誰だ?

 

『クロウさ、俺が世界で尊敬する二人の内の一人だ』

 

・・・クロウ・ブルースト。

 

『お前も守ってやるよ、ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

・・・え?

 

『誰かを守るために戦う。俺もあの人の様になりたいから、俺自身が守りたい人を守る。だからお前も守ってやる』

 

・・・

 

『守ってやる』

 

・・・そうか、だからお前は。そして私はそんなお前に・・・

 

〜保健室・ラウラside〜

 

「う、うぁ・・・」

 

「気がついたか」

 

目が覚めると、私は医務室の様な所でベッドに横たわっていた。横を向くと、織斑教官とクロウ・ブルーストが並んで座っていてブルーストは心配そうに私の顔をのぞき込んでいる。

 

「(先程のは夢か?しかし夢にしてははっきりしていたが・・・)」

 

「無理に起き上がるなよ。さっき織斑先生に聞いたが、全身が筋肉痛と打撲だそうだ」

 

そういうと、私の体をベッドに押し付けるブルースト。私は記憶が途切れる前の事を教官に聞いてみた。

 

「何が・・・起きたのですか?」

 

教官は渋っているようだが、ブルーストが肘で突っつき、催促すると、話してくれた。

 

「ふう・・・。VTシステムは知っているな」

 

「はい、過去のモンド・グロッソの((部門受賞者|ヴァルキリー))の動きをトレースするシステムです。しかし確かあれは」

 

「そう、条約で研究はおろか、開発・使用が禁止されている。しかし何故かお前のISにそれが積まれていた」

 

私はその話を聞いて愕然とした。ドイツ軍が私のISにそんな物を載せていたとは・・・。

 

「巧妙に隠されてはいたが、解析は出来た。搭乗者の精神状態、機体のコンディション、そして搭乗者の意思・・いや願望か。それらが揃った時に発動するようになっていた」

 

そうだ、あの姿は私が望んだもの。貴方の様になりたい、と。

 

「私が望んだから、ですね・・・」

 

そこまで言うと、ブルーストが口を開き、私に問いかけてきた。

 

「なあボーデヴィッヒ、お前は誰だ?」

 

「・・・わ、私は・・・」

 

「お前を否定する人間はここにはいない。だからお前は“ラウラ・ボーデヴィッヒ”になればいいんだよ」

 

そこまで言われても私にはまだ信じられなかった。

 

「だ、だがしかし私は戦うために作られた。この瞳も、この体も戦うためのものだ。そんな私が・・・」

 

「そんな自分が嫌いか?」

 

「・・・好きではない。しかし私には選択肢は無いのだ」

 

そう、私には選ぶべき未来などない。この瞳も、体も、全てが戦いのために生み出された。そんな私にはもとより選択肢などあるはずが無かった。

 

「だったらここにいて選べばいい。幸い時間はたっぷりとある。少なくともここにいる三年間はな」

 

「・・・お前は怖がらないのか?」

 

「ん?何がだ?」

 

「私の事だ。戦うために生み出された存在。この瞳もその象徴だ」

 

私はこの瞳が嫌いだった。戦いのためにありながらも自分で自由に使う事が出来ない。教官に救われたとはいえ、“出来損ない”の烙印のようで。

 

「ああ、どこが怖いんだ?それに綺麗じゃねえか、その目」

 

「・・・え?」

 

「俺自身もたまに目の色が変わっちまう事があるし、一夏達もそんな事気にしないと思うぞ?」

 

「確かにな。あいつらも同じように“綺麗な眼だ”とか言いそうだからな」

 

と教官も頷く。初めてだった、私自身を肯定してくれる人間に出会ったのは。

 

「気にしない、か・・・」

 

そんな私の頭には一人の男の顔が浮かんでいた。あいつも私を肯定してくれるのだろうか、守ってくれると初めて言ってくれた人間。

 

「それでは私達はもう行くぞ」

 

そう言うと、席を立つ教官とブルースト。二人はドアの前で立ち止まって、言葉を投げかけられる。

 

「ああ、それからお前は私にはなれないぞ。こう見えて私は心労が絶えないのさ」

 

「じゃあな、ボーデヴィッヒ。養生しろよ」

 

そう言うと二人は部屋から出ていった。私はベッドに倒れ込み、一人考える。頭に浮かぶ二つの顔は守ってくれると言ってくれた少年と、私を肯定してくれた大人だった。

 

〜食堂・クロウside〜

 

クロウとシャルル、一夏は食堂で夕食を取っていた。あの後、保健室の前で別れシャルルの提案で食堂に向かったクロウ達だが、その口からは不満が漏れていた。

 

「ああ〜、トーナメントは中止かあ〜」

 

と一夏が愚痴をこぼす。ラウラのVTシステムの事故により、あのあとの試合は全て中止となってしまったのだった。

 

「でも一回戦はやるらしいよ?全員のデータを取りたいからだって」

 

「まあ、そうしなきゃトーナメントの意味がなくなるしなあ」

 

クロウ達は夕食をとりながら談笑する。ふとクロウが人の視線に気づき、そちらの方向を見ると、数十人の女子がこちらを見ながら落胆していた。

 

「優勝・・・チャンス・・消えた・・・」

 

「交際・・・無効・・・」

 

「・・・うわああああん!!」

 

といきなり、泣きわめいたかと思うと走り去っていった。訳がわからない一夏は頭に疑問符を浮かべる。クロウとシャルルは知っていたが。

 

「???何なんだ?」

 

「多分、例の噂だよね・・・」

 

「ああ、そうだろうな・・・」

 

そして走り去った女子達の後を見ると、一人ぽつんと残っている人間がいた。この噂の大元、篠ノ之 箒その人である。一夏もその姿を認めた様で席を立ち、箒に近づいていく。

 

「あ、そうそう箒。あの約束だけどな?」

 

「な、何だ?」

 

「付き合ってもいいぞ?」

 

その言葉を聞いた瞬間、クロウ、シャルル、箒は一様に驚きの表情をした。

 

「(ね、ねえクロウ!何が起こってるの!?)」

 

「(俺にもわからん!まさか俺の願いが届いてとうとう一夏も鈍感から抜け出したか!?)」

 

と外野が勝手な意見を述べている。当事者である箒は、一夏の首を締め付け、前後に振り回していた。

 

「ほ、ほ、本当か!本当に本当の本当なのだな!!」

 

「お、おう」

 

「な、なぜだ?理由を聞こうではないか・・・」

 

箒は顔を真っ赤にしてうつむいている。クロウとシャルルはそろそろ二人きりにしたほうがいいんじゃないか、という気遣いをするため、食器を持ち席を立とうとしていた。その間にも一夏と箒の会話は続く。

 

「そりゃ幼馴染の頼みだからな。付き合うさ」

 

「そ、そうかそうか!!」

 

「買い物くらい」

 

「・・・・・・」

 

その言葉を聞いた箒は無表情になり、クロウは頭を抱えていた。

 

「(あいつは本当に・・・)」

 

数秒顔を俯かせ、固まっていた箒だが、ゆっくりと顔を上げた。

 

「・・・だろうと」

 

「お、おう?」

 

「そんな事だろうと思ったわ!!」

 

そして箒が一夏に正拳を食らわせ、一夏はその衝撃で一瞬宙に浮いた。次は箒のつま先が一夏の鳩尾に綺麗に入る。衝撃で一夏は床に崩れ落ちる。

 

「ふんっ!!」

 

「ぐ、ぐ、ぐう・・・」

 

箒はその場を立ち去り、残されたのは屍と化した一夏とその周りに立っているクロウとシャルルだけであった。

 

「な、何でだ・・・」

 

「一夏って、わざとやってるんじゃないかって思うときがあるよね」

 

「一夏・・・俺はあきらめないぞ。いつかお前が気づくって信じてるからな・・・」

 

とクロウとシャルルが屍同然になっている一夏に声を掛け、食堂を出る。一夏は一人食堂に残され、最後につぶやいた。

 

「り、理不尽だ・・・」

 

〜翌日・教室〜

 

教室には、いつもの面々が((SHR|ショート・ホーム・ルーム))を前に席に付いていた。しかし、そこにはシャルルの姿が無かった。

 

「(どうしたんだシャルルの奴?何かあったのか?)」

 

今朝、二人で食堂にて朝食を取った後シャルルは「先に教室に行ってて」と言い残し、クロウと別れた。何か関係があるのだろうか?とクロウが一人思索にふけっていると、教室のドアがあいた。顔を出したのは、妙に元気が無い山田 麻耶だった。ふらふらとした足取りで教卓に向かう。

 

「み、みなさんおはようございます。今日はですね、皆さんに転校生を紹介します。でも皆さんは既に知っているというか・・・」

 

歯切れが悪く、おどおどした調子で話す麻耶。クラスメイトは再びの転入生を喜んでいるのか、次第に騒がしくなる。

 

「そ、それでは入って下さい」

 

麻耶が外にいるらしい転入生に声を掛ける。

 

「失礼します」

 

「(ん?今の声って??)」

 

教室の扉が開くと、一人の女子生徒が入ってきた。しかし、その姿を見たとたんクラスの全員があんぐりと口を開け、固まってしまった。なぜならそこに居たのは、

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

女子の制服に身を包んだシャルル、いやシャルロットがいた。

 

「ええと、デュノア君はデュノアさん、という事でした。はぁぁ・・・また部屋割りを変えなきゃ・・・」

 

麻耶がため息と共に愚痴をこぼす。

 

「(そうか・・やりたい事ってこれだったのか)」

 

クロウは一人納得していた。あの時大浴場で言っていた事、それはこの事だったのだろう。

衝撃を受けていたクラスだったが、回復し騒ぎ始める。

 

「え、デュノア君って女の子だったの?」

 

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったのね!!」

 

「ってブルースト君、まさか同室だったんだし知らなかったって事は・・・」

 

「ちょっと待って!確か先月辺りから男子が大浴場使い始めてたよね!?」

 

そして騒ぎは収まる事を知らず、話題の矛先は段々と一夏とクロウに向けられる。一夏とクロウはどうやってこの場を乗り切ろうか考えていると、いきなり教室のドアがものすごい勢いで開けられた。

 

「一夏ぁぁーー!!」

 

そこにはISを装着した、鈴の姿があった。入ってきたと同時に肩の龍砲を一夏に向ける。

 

「死ねぇぇぇ!!!」

 

どうやら一夏がシャルロットと一緒に風呂に入った、と勘違いしているらしい。実の所は、わざとシャルロットが時間を外して入ったり、クロウが一夏を引き止めたりして、シャルロットは一夏と風呂には入っていないのだが・・・。鈴はそのまま龍砲を最大出力で発射する。

 

「一夏、避けろっ!!」

 

ズドドドドォン!!

 

「ふーっ、ふーっ、ふーっ!!」

 

鈴は怒りのあまり、肩で息をしている。その姿はまるで毛を逆立てている猫のようだった。クロウが一夏の方へと目を向けると、もう一機のISがそこにはいた。そこには漆黒のIS“シュヴァルツェア・レーゲン”を纏ったラウラ・ボーデヴィッヒの姿があった。龍砲をAICで防いだらしく、右腕を上げて一夏と鈴の間に立ちはだかっている。

 

「助かったぜ、サンキュ」

 

と一夏がお礼の言葉をラウラに投げかける。その間にクロウは鈴の勘違いを正すべく、声をかけた。

 

「おい鈴、一夏はシャルロットと風呂には入っていないぞ?」

 

「え、ええっ!・・・そ、それじゃあ」

 

と鈴はISを解除し、気まずそうに教室から出ていく。教室では一夏とラウラが会話している。そしていきなりラウラが一夏の胸ぐらをつかむと・・・、

 

「はぁー、こりゃあまた・・・」

 

「!?!?!?!?!?」

 

ラウラが一夏の唇を奪っていた。その光景を見て、教室の全員が固まる。ラウラは一夏以外目に入らない様で、一人で言い放つ。

 

「お、お前を私の嫁にする!決定事項だ、異論は認めん!!」

 

ラウラはそう言うと、今度はクロウの方に近づいてくる。嫁宣言をされた一夏は何が起こっているのか把握しきれず、フリーズしていた。

 

「そして貴方は今後“教官”と呼ばせていただきます」

 

「・・・教官だと??」

 

いきなり言われて訳がわからない、という顔をするクロウ。ラウラはクロウには構わずに喋り続ける。

 

「はい。教官に言われた言葉の数々、そして教官は私を肯定してくださった。その言葉は私の胸を打ち、教官には感謝してもしきれません。以降、教官にはご指導ご鞭撻の程をお願いしたい所存であります!」

 

とラウラがビシッと見事な敬礼をする。クロウは返答に困り、黙っていたがラウラをこのままにしておく事もできず、とりあえず声を掛ける。

 

「あー、まあ、何だ。とりあえず席に戻れ」

 

「はっ、了解であります!」

 

ラウラはクロウの声に従い、自分の席に戻る。騒動は収まり、SHRが始まる時に、その声は響いた。

 

「少しよろしいですか、クロウさん?」

 

クロウの背後から、セシリアの声が響く。その声は感情が無く、とても恐ろしいものだった。クロウはゆっくりとセシリアの方を向く。

 

「な、なんだセシリア?」

 

「一夏さんはデュノアさんとはご入浴なされていないというのはわかりましたわ。それではクロウさんはどうですの?」

 

「!!(ギクッ!!)」

 

「どうしましたの?それとも言えない様な事ですの?」

 

セシリアはゆっくりと立ち上がり、クロウの方へと接近する。対してクロウはセシリアが近づいてくる分だけ、教室の前の方へと下がっていった。

 

「逃げないでくださいまし、クロウさん。私、実はクロウさんとお話したい事がございますの。急を要すことですので逃げないでくださるとありがたいのですが?」

 

おほほほほ、と笑いながらセシリアはISを展開、右手に“スターライトmkV”を構える。

 

「(マズイ、逃げなきゃ命が危ない!!)」

 

クロウが窓から逃走を図る。ブラスタを展開する準備をしつつ、窓枠に足をかけるが、その時教室のドアが再び開き、般若が現れた。

 

「ほほう、クロウ。一体何処にいこうと言うのだ?」

 

そこには出席簿片手に仁王立ちしている織斑 千冬がいた。クロウには、その出席簿が断頭台のギロチンに見える。

 

「な、なんでしょうか織斑先生?(千冬の奴、いつもの口調になってやがる!何でだ!?)」

 

「いや、少しばかり話したい事があるのでな?とにかく大人しくしてもらおうか?」

 

と言いつつ無表情でクロウに迫る千冬。クロウは身の危険を感じ、即座に窓から飛び降り、ブラスタを展開、そのまま逃亡を図る。同時に頭上から怒りの声と“スターライトmkV”から放たれる銃弾が同時に降ってくる。あろう事か千冬に至っては生身で飛び降り、クロウを追いかけてくる始末。

 

「待て、クロウ!!!」

 

「待ちなさい!!!」

 

「くっそぉぉぉ!!これだから女って奴はぁぁぁ!!!」

 

クロウの悲痛な叫びは学園全体に響く・・・。

説明
第三十四話です。
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タグ
IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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