真恋姫†夢想 弓史に一生 第三章 第六話 森を見て木を見ず
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〜聖side〜

 

しばらく、部屋の寝台で寛いでいると扉の前から数人の声が聞こえてきた。

 

「ねぇ、ここだよね?」

 

「やっ…やっぱり、こんなこといけません。」

 

「そういうわりには、結構ノリノリで付いて来られましたよね?」

 

「…身なりを整えてる。」

 

「ううっ…。」

 

「なんだかんだ言って…一番…期待してるよね?」

 

「なんでよ!! わっ…私はそんな痴女みたいな…。」

 

「そっ!! そこまでは… あうぁぅ…。」

 

「と・に・か・く♪ 行くよ?」

 

「待って!! まだ心の準備が…。」

 

バタンッ!!

 

「徳種さ〜ん!! お手伝いに来ましたよ〜!!」

 

扉が開いたかと思えば、そこから五人の少女が部屋に入ってくる。

 

しかも皆、何故か侍女服を着て…。

 

「…何か用かな??」

 

「水鏡先生より、世話係を仰せつかって参りました。」

 

「世話係…。 確かに寄こすとは言ってたけど…5人全員??」

 

「きゅ…急に押し入ってすいません。本当は、誰か一人だけということで皆で話し合って決めていたのですが…。」

 

「…なかなか決まらない。」

 

「そこで…どうせなら…その…全員で…やれば良いかなって…。」

 

「…成程ね…。」

 

「…ご迷惑でしたか??」

 

「迷惑なんかじゃないよね?? こんなに可愛い女の子五人に世話役をやってもらえるんだもん♪」

 

「自分で自分のことを可愛いと言うやつがあるか!!」

 

「…その自信は凄い。」

 

「なによ〜!!!」

 

なにやら、揉めてるみたいだが…。

 

すると、孫乾が傍に寄ってきて、お椀に水差しから水を汲んで俺にくれる。

 

「ありがとう。 …はははっ、皆仲良いんだね。」

 

「はい…。ここでは…皆家族の一員ですから…。」

 

「一つ屋根の下で生活してれば当然か…。」

 

「その…今日は…すいません…でした…。」

 

「ん?? 俺は別に気にしてないよ。 寧ろ答えられなくてごめんね。」

 

「いえ…。 でも…答えられない…と言うことは…。」

 

「うん…。事実だよ…。」

 

「詳しく…お話して…いただけませんか?」

 

「ゴメンね…。まだ、俺の中で整理がつかないんだ…。」

 

「そう…ですか…。 詳しくは分からないですが…何か…徳種さんは…考え過ぎな気がします…。」

 

「どう言うこと??」

 

「森を見て木を見ず…。 大志が大き過ぎて…その…基盤が脆いと言いますか…。 徳種さんの理想は…素晴らしいものです。この世人が…皆…手に手を取って生活できるなら…それはとても良いことです…。 しかし、それは理想でしかありません。もっと、現実を…見なくてはいけません…。国家がいくら尊い理想を掲げ、その為に尽力しようとも、必ず小さな犯罪は起こるものです。 その犯罪に対して、あなたは処罰をしなくてはいけません…犯罪をより減らすために見せしめとして…。国家がもし、そこを軽罰で終わらしてしまえば、犯罪者が蔓延ってしまいます。そうすれば、より一層国家は荒れるでしょう。 頭の良い徳種さんなら分かるはずです。そう…これは必要なこと…。今後のことを考えるならば必要な犠牲なのです…。そう言った必要悪の排除こそ、基盤の作成には必要なこと。基盤がしっかりしてこれば、大志も安定することは自明の理です。ならば今回、徳種さんの行ったことも必要だったのではないでしょうか……はっ!!…すいません…。 つい…その…語って…しまって…あうぁぅ…。」

 

必要悪…。大志の為の基盤の確立…。

 

確かに、俺の理想は非現実的であるとは思ってる…。でも、それに近い様にしないといけないのも事実…。近づけるためには…必要悪の切捨ては必要ってことか…。

 

「……。」

 

「あの…また私は…失礼なことを…。」

 

「…あっ!! ゴメンゴメン。ちょっと考え事してた…。 ありがとう、なんだか少し気分が楽になったよ…。」

 

「へへっ…お役に立てたなら…良かったです。(ニコッ)」

 

「……。」

 

「どっ…どうしましたか!? 顔が…真っ赤ですよ…。」

 

「…いやっ、ゴメン。 あまりにも笑顔が可愛くて…。見惚れてた…。」

 

「えっ!! いやっ、そんな…。わっ…私の笑顔など…可愛くも…なんとも無い…でしゅから…。( ///)」

 

「ちょっと〜!! そこで、二人の世界を作ってないでくれる!?」

 

「「えっ!?」」

 

「そのとおりです。私たちが揉めてる間に…!!」

 

「それに孫乾ちゃんも…。」

 

「…大胆。」

 

孫乾の、既に真っ赤だった顔から、今度は湯気が出ているような気がした。

 

なんだか、その光景が可愛らしくて笑えた。

 

「「「「「……。( ///)」」」」」

 

なんか、皆が俺の顔をじっと見つめてるんだが…。

 

「…どうしたの…皆?」

 

「いっ…いえ、何も!!」

 

「徳種さんが気にすることじゃないよ!!」

 

「そ…そうですね。 …気にするようなことは何も無いと思いますわ。」

 

「…気にしない。」

 

「…あうぁぅ…。」

 

「ん〜?? まぁ、良いや…。」

 

「そうだ!! お茶にでもしませんか?? 時間的にもその頃ですし!!」

 

「良いね。そうしようか。」

 

「じゃっ…じゃあ私、用意してくるね〜!!」

 

「いやっ…皆で行きましょう!!」

 

「…それが良い。」

 

「じゃあ、少し…お待ちください…。」

 

そう言って、彼女たちは慌しく出て行った。

 

「う〜ん…皆のど乾いてたのかな…。あんなに早足で出て行くなんて…。 それにしても、孫乾の笑顔可愛かったな〜…。」

 

ゾクゾクッ!!

 

「っ!! キョロキョロ…。 誰も…居ないよな…。 おかしいな…何か寒気がしたんだけど…。」

 

その頃。

 

「何か〜…。今聖様が、新たに女の子に手を出そうとしそうな気がしたんですが〜…。」

 

「あぁ、何かあたいもそんな気がしたよ…。」

 

「私もです…。まぁ、それなら生きているだろうから良いのですが…。」

 

「確かにね…。 消息がつかめないまま、今日で三日目。正直生きてるかどうかも怪しいからね…。」

「奏!!馬鹿なことを言うものではないですよ。 …聖様…あなたは今、一体どこにいるのですか…?」

 

「つり橋から落ちて、下にあった川に流されたとしたら、多分ここら辺りに流れ着いてると思うんですが…。」

 

「でも、この辺りの村人に聞いても、そんなやつは来てないって話だったぜ?」

 

「う〜ん。行商人にでも助けられて、一緒に旅でもしてるんでしょうかね〜…。」

 

「私たちを置いてかい? そんなことをお頭がするとは思えないけどねぇ〜…。」

 

「そういえば、ここから少し行った所に、私の学んだ塾がありますです。 そこで話を聞いてみたらどうです?」

 

「そうですね〜。今は少しでも情報がほしいですからね〜。行ってみる価値はありますね。」

 

「でも、今から行って大丈夫なのかい?」

 

「今から行っても着くのは夜中って所です…。それなら、明日の朝出発、お昼ごろ着にした方が良いと思うのです。だから、今日は早いですが、休むことにした方が良いと思うのです。」

 

「じゃあ、そうしましょうか〜。」

 

芽衣と奏、藍里は、聖が落ちたつり橋から川沿いに進み、近くの村を訪れては聖が居ないか探し回っていた。

 

彼女たちにとって、聖は大切な存在。

 

一刻でも早く見つけたい彼女たちだったが、なかなか成果は出ていなかった。

 

 

〜水鏡塾生side〜

 

彼女たちは今、厨房でお茶の準備をし終わった状態で会議をしていた。

 

「予想以上でしたね…。」

 

「うん…。 天の御使いだって言うのに偉ぶってもないし、寧ろ私たちと、対等に話しがしたいって感じだったね。」

 

「今までの役人たちは、その権力や名声を良いように使っていましたが…どうやら、あの方は別人のようですわね。」

 

「…あれこそ天下人。」

 

「徳に厚く…義を重んじる。そして、その理想は高く、それを為す智を持ってる。高祖劉邦のような方…ですね。」

 

「その上にあの顔立ちでしょ〜…。本当にずるいよね〜…。」

 

そう馬謖が言った瞬間。皆、頭の中で聖の先ほどの笑顔を思い出し、皆その顔を真っ赤にするのだった。

 

「あっ…あれは…反則です!!( ///)」

 

「そっ…そうですわね。あれは不意を衝かれたからであって…。( ///)」

 

「…凄く眩しかった。( ///)」

 

「…あうぁぅ…。( ///) 何か…胸の奥を…キュッて…摘まれた様な…。」

 

「何か心苦しいような…。」

 

「それでいて、なんだか温かくて。」

 

「落ち着くような笑顔。噂は伊達ではないってことですわね。」

 

「あらあらっ、もう既に全員彼の虜なのかしら?? ふふっ。」

 

「「「「「すっ…水鏡先生!!!」」」」」

 

「何時からそちらに…。」

 

「たまたま通りかかったのだけれど…なんだか面白いことになってるわね。」

 

「こっ…これは…その…。」

 

「…あうぁぅ…。」

 

「だっ…だったら凄いなって言う話で…。」

 

「あらっ? でも、さっきのは事実でしょ?」

 

「事実じゃないです!!」

 

「じゃあ、簡擁ちゃんはお世話係から外しても良いわね?」

 

「そっ…そんなぁ〜…。」

 

「ふふっ、本音が出ちゃってるわよ?」

 

「…あっ。」

 

「これは…。」

 

「…言い訳出来ない。」

 

「あうぅぅ〜。」

 

「他のみんなは? 何か言いたい事でもある?」

 

「「「「(フルフルッ)」」」」

 

「じゃあ皆、彼の虜ってことで良いのかしら?」

 

「「「「……コクッ( ///)」」」」

 

「そう。 御使いさんは人気者ねぇ〜。それはそうと、皆ここにいて良いの? 御使いさんが寂しがってるわよ?」

 

「「「「「っ!!!?」」」」」

 

「すっ…すいません。失礼します。」

 

「ありがとう〜先生♪」

 

「すいません先生。失礼いたします。」

 

「…先生、また明日。」

 

「しっ…失礼しましゅ…いあぅ!! …噛んじゃった…あうぁぅ…。」

 

少女たちは、茶器を抱えて急ぎ足で厨房を出て行った。

 

「案外皆、積極的なのねぇ〜…。 ふふふっ、これは、本当に関係を持っちゃうのかしら?」

 

 

〜聖side〜

 

部屋で待っていると、茶器を抱えた彼女たちが、慌てた様子で駆けて来る音が聞こえる。

 

バタンッ!!

 

「もっ…申し訳…はぁ…ありません…はぁ…。」

 

「ちょっと…はぁ…準備に…はぁ…時間がかかってしまいまして…。」

 

「はぁはぁ…ごっ…ゴメンね…ふぅ…待たせちゃったかな?」

 

「…はぁはぁ…怒ってる?」

 

「ふぅ〜…すいません…その…あうぁぅ…。」

 

「皆、大丈夫!? とにかく、一旦落ち着いて、呼吸を整えよう。 はい、吸って〜…。はいて〜…。」

 

「「「「「すぅ〜…。ふぅ〜…。」」」」」

 

「どう? 皆落ち着いた?」

 

「はい。重ね重ねすいませんでした…。」

 

「良いよ、それに俺は怒って無いから…。」

 

そう言って、俺は簡擁の頭を撫でてあげる。

 

「っ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

 

簡擁は顔を真っ赤にさせて俯く。

 

「あぁ〜ず〜る〜い〜!! 簡擁ちゃんだけ〜!!」

 

「何故、簡擁ちゃんだけなんでしょうか!? 徳種様!?」

 

「…皆にも。」

 

「平等が…良いです…。」

 

残りの四人から不平不満が飛び交う…一体何故…??

 

しょうがなく、みんなの頭を撫でてあげると、皆顔を蕩けさせて微笑むのだった。

 

畜生!! 可愛いじゃねぇか!! 中学生は最(以下略)

 

その後、みんなでお茶を飲み始め。まったりとした時間を過ごす。

 

すると、急に思い出したかのように、いくばくか顔の赤みが取れた簡擁が話を始める。

 

と言っても、まだ耳は真っ赤だったりするが…。

 

「ごっ…ごほん。 え〜、実は徳種さん。あなたに私たちの仕事を決めてほしいのです。」

 

「ん?? どういうこと??」

 

「つまり〜私たちが貴方の為にする仕事を貴方に決めて欲しいの〜。」

 

「貴方様が決めたことなら私たちは素直に従いますから。」

 

「いやっ、でも…。」

 

「…お願い。」

 

「今は…貴方様付の…侍女ですから…。」

 

「う〜ん…。とは言われても…。 俺は、君たちがどんなことが出来るのか良く知らないしな…。」

 

「じゃあ!! 私たちが得意なことを教えれば万事解決ってわけね♪」

 

「そっ…そうい…『分かりました。』…。」

 

「私簡擁は、掃除や生理整頓が得意です。」

 

「そうだよねぇ〜。簡擁ちゃんの身の回り、凄く片付いてるもん♪」

 

「几帳面な性格ですものね。」

 

「…そういう馬良も部屋綺麗。」

 

「馬良さんのお部屋…綺麗過ぎるほど…です…。」

 

「わっ…私は中途半端は嫌いなだけですわ。やるなら、徹底的にやらないと気がすまないの。」

 

「…はぁ、仕方ない…。じゃあ、二人には部屋の掃除をしてもらおうかな。」

 

「はいっ!!お任せください!!」

 

「ふふっ、腕が鳴るわね。」

 

「じゃあ、後三人だけど…。」

 

「はいはいっ!! 私は洗濯する〜!!! こうみえて洗濯好きだから♪」

 

「うん。じゃあ、洗濯はお願いしようかな。」

 

「うんっ♪」

 

「さて、残り二人は…。」

 

「あっ…あの〜…。 私は料理が得意なので…その…伊籍ちゃんに手伝ってもらって…料理係をします。」

 

「ふむっ…。伊籍ちゃんはそれで良い?」

 

「…料理は好き。」

 

「じゃあ、これで決定かな?」

 

「はい!! では、明日からそのようにさせて頂きます。」

 

「よろしくお願いしますね。」

 

「洗濯物は纏めておいてね♪」

 

「私たちは…今から夕御飯の準備を…伊籍ちゃん、行こ?」

 

「…。(コクン)」

 

彼女たちは、各々部屋を出て行った。

 

 

寝台に寝そべりながら、これからのことを考える。

 

「俺は…このままここにいるつもりは無い…。早く、みんなと合流しないとな…。 でも、まだこの傷が治ってない…か…。大体1週間くらいかかるのかな…。 はぁ〜…。 しかし、明日から俺つきの侍女が5人って…。皆って確か学生だったよな…良いのか、学生がそれで…。 いやっ…でも、この世界ってそんなものなのかな…?」

 

剣の腕に磨きがかかり、剣筋は鋭くなったと言っても、人の気持ちにはまだまだ鈍い聖なのであった…。

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。

一週間ぶりですが、新話を投稿したいと思います。

前話では。

五人の女学生と先生が住んでいる塾に、傷が治るまでお世話になることになった聖。

女学生の一人からの質問は、今の聖には答えづらくて…。どうするべきか一人悩むのであった…。って所ですかね。


次話の投稿は、水曜日くらいになると思います。お楽しみに…。
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