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『名前を聞かせて?』

 

そんなこと、聞かれたことがあっただろうか。

 

少なくともここ一年間はない。

 

なぜならあの日から、自分以外は全て「敵」なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 第二次世界大戦が終結して50年。戦争と呼べるものは宗教が絡むもの以外はなくなりつつあった。紛争や独立戦争、労働環境に対するデモ等は依然として熱くなるが、強大な国家同士が潰し合う様な大規模なものはない。

 

 否、出来ない。

 

 原爆、水爆、長距離ミサイル。この三つが先進国で必須と言われる「抑止力」である。

 先進国同士で戦争が起きれば、最終手段でこれらが使用されることになり、核兵器の打ち合いに発展するそうなれば放射能汚染により敵国だけでなく自国も死滅することになる。

 

 

 だからこそ、先進国は武力で戦争に介入しない。ペンで介入する。

 

 

 そして去年、どこかの半島からミサイルが発射された。

 世界地図を当時まだ見たことがなかったので、アジア地域のどこか、ということしかわからない。

 それらのミサイルは世界各地に散らばり、迎撃ミサイルで破壊((されなかった|・・・・・・))。

 どういうわけか一基も撃墜できず、ミサイルはその猛威を振るった。

 東京、大阪、福岡、北海道、ソウル、ペキン

 地名だけだとここまでしか覚えていないが、ほかにもアジア、インド、アメリカ、ロシアでも被害があり、ヨーロッパ、南アメリカ、アフリカ方面では数カ所が爆撃された程度だったそうだ。

 

 日本は主要都市が、とりわけ関東地方ほぼ全てが焼け野原になったことで行政機関が完全に停止。

 生き残った金持ちはヨーロッパへ逃げ、無法地帯になるだろう日本への武器輸送ルートを確立させる。

 そうでない者は搾取するか、されるかしかなくなる。

 

 

 

 

 そんなことがあって一年。金持ちの予想通り日本は完全無法地帯となった。

 無事だった原子力発電所を解体して原爆の保有国にもなった。

 

 

 そして治安が最悪になった。

 

 

 周りに目を向ければ必ず武装した者はいる。ある意味個人個人の「抑止力」でもある。

 一年前なら物騒で仕方がないが、今では必需品だ。なければ問答無用で拉致されるか殺される。

 俺も銃とナイフを常時手元に置かなければいつ死ぬか分からない。

 日本が平和を掲げていた時期が懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 そんな安全など全くない国。

 

 ふと刃物を首からジャラジャラといっぱい下げた女の子が

 

『名前を聞かせて?』

 

 と言った。

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