オトギバナシ『白雪姫』 |
むかしむかし、あるところに凄まじくイケメンな王子さまがおりました。
品行方正で民からも慕われておりましたが、ひとつだけ困った性癖を持っておりました。
王子さまは死体愛好家だったのです。
きっかけは従姉妹の葬式でしょうか。その従姉妹は、さえずる小鳥のように甲高い声でおしゃべりばかりしていて、王子さまはウンザリしていました。そんな従姉妹が突然死んでしまいます。昨日まで元気だった従姉妹に死なれ、王子さまはショックを受けますが、葬式で変わり果てた姿を見て新たにショックを受けます。何も言わずに永遠の眠りについた従姉妹はぞっとするほど美しく見え、若くして死んだことへの同情から、この上なく愛おしく思えたのです。
それ以来、王子さまは生きた娘に興味が持てなくなってしまいました。だからといって、自ら死体を作り出したくなるような畜生道に落ちる気もさらさらありません。心優しき王子さまは、誰の死も望んではいないのですから。
そんなある日、森に散策に出かけた王子さまは、悲しみに暮れる7人のコビトに出会います。話を聞くと白雪という名の美しく幼い姫が毒リンゴを食べて死んでしまったとのこと。
雪のように白い肌。血のように赤い唇。コクタンのように黒い髪。ガラスの棺に入れられた白雪姫はまさに世界一美しい死体でした。『ツインピークス』のローラ・パーマーなど足元にも及びません。ただでさえ禁欲的な生活を余儀なくされていた王子さまは、美しすぎる死体の白雪姫に心を奪われ、思わず恋人にするようなキスをしてしまいます。
するとなんということでしょう! 死んでいたはずの白雪姫が息を吹き返したのです! 王子さまのキスにはミラクルパワーが秘められているのでしょうか? 残念ながら、そんなことはありません。
「……まさか、謀られた?」
そう。全ては父である王さまの仕掛けた罠だったのです。
いつまでも生きた娘に興味を持たない王子さまに、業を煮やした王さまとお妃さまは、娘に死んだふりをさせて王子さまに興味を持たせ、『既成事実』を作ってしまおうと考えました。そのためには美しいだけでなく、死んだふりが得意な娘でないといけません。父王は大陸中を捜し回り、ついに見つけたのが近くの森に身を隠す白雪姫でした。
そのあまりの美しさから継母から疎まれた白雪姫は、幼い頃から逃亡生活を続けておりました。死んだふりをすることで自分の気配を消し去るスキルは、逃亡生活の中で身につけたものだったのです。唯一の問題は幼すぎることでしたが、これ以上の逸材は他に無いと確信した父王は、姫とコビト達に縁談を持ちかけます。もちろん、白雪達にそれを断る理由などありませんでした。
父王の罠と気付いたときには後の祭りです。人前で唇を奪うなどという破廉恥な行いをしてしまった以上、言い逃れも出来ません。王子さまは、泣く泣く責任を取って白雪姫と結婚することとなりました。
結婚の際には、王子さまは軽蔑の眼差しを浮かべるかつての仲間達に、とても見苦しい言い訳をしていたと聞き及んでおります。
「ぼ、僕はただの死体愛好家なんです。間違ってもロリコンなんかじゃありません。本当です! 信じてください!!」などなど……。
ですが、その後の夫婦生活は意外にも円満だったそうです。白雪姫の死んだふりがあまりにも見事でエロ可愛かったので、王子さまが死体の娘に浮気することは一度もありませんでしたとさ。
説明 | ||
王子さま視点から話を膨らませてみました。題材的には微エロ微グロなのかな? 特殊な性癖を持っていると難儀しますねってお話(約1400文字) | ||
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