魔法使いの大家族 第4話:屋上
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夏希の挨拶はごく普通でどこにでもあるようなどんな学校にでもあるような挨拶だった

だがその普通の挨拶でさえ夏希はもてはやされていた

秋にはただ単に普通の挨拶、答辞を述べただけだと思っていたが

終いには拍手を送るべきではないと言っては可笑しいが

講堂中の人間が夏希の挨拶に温かい拍手と歓声を浴びせていた

今頃桜は教職員の皆様方にお灸を据えられている所だろう

木野村にいたっては終始そわそわして落ち着きがなかった

「基本的に」「産まれた時から」「人とは努力で」

そういうような事を夏希は述べていた

そのような発言と凛々しい顔立ちそしてなんとも言えない優しさ

そこから滲み出る何かがさらに夏希の事を好きになってしまう女性が

増えてしまうのだろうと秋は思っていた

棘もありつつも新入生、二等生達に希望を持たせる事を言っていた

その後、講堂から全校生徒が散り散りに自分のクラスへ向かって行く中

秋は単身屋上のテラスに向かいそこのベンチで寝ころんでいた

クラス分けは事前に済ませているそれに秋の荷物は全て教室に置いてある

そしてクラスに入るまでの数分、秋は暇をもてあましていた

「機動」

秋が小さな声でそう呟いた

すると秋の右肩に備え付けられていたMHDに触れると

MHDがそれに反応して青い光を放ち輝いた

「あぁめんどくさいのだけれど仕方ない」

秋は立ち上がって右手で握り拳を作り胸の前に掲げた

「我が命によって貴殿を召喚する

誓約と契約の名の元に召喚され現れよ

伊邪那岐」

秋の号令とともに屋上を強大かつ膨大な魔法陣が覆う

魔法陣が赤色に光りそこから銀色のローブを纏い背中に刀を携えた人型の何かが現れる

下駄箱に入る生徒を何人か秋は見つけたが彼らは魔法陣などまったく気づいていない

それ以前にテラスの方向にすら視線を向けない何も起こっていない

まるで何も感じない何も見えないかの様に

そして魔法陣から人型の何かが顔まで出すと秋に向かって跪いた

「どうされました?マイマスター秋・雁間」

「そういう重っ苦しい挨拶は嫌いだってこの前言わなかった?

僕は相手が召喚者だとしても人間と同じ扱いをする

だから秋でいいよ」

秋の謙虚に溢れる発言に伊邪那岐は声を上げて大笑いをした

ローブから見える瞳からは若干、涙を浮かべている

「秋は本当におもしろい事を申すな

そこまで謙虚な所と性格があればお前の兄や弟の様に

異性に好かれる事もあろうではないのか?」

「あのな伊邪那岐

僕は春樹や夏希の様に顔もそこまで良くない

それに冬貴みたいに人当たりが言い訳でも無い

だから僕は二等生になっている訳ではないけれど」

「それはお前が]の階級でもか?」

伊邪那岐は少し黙ってから口を開いた

秋はその発言に耳を傾けながら黙り込んだ

「秋よ

世界というのは理不尽で溢れていたりする

お前みたいな本当の実力があっても隠したり公開機密にされたりする

それに比べて実力が認められ公になり評価される者もいる

私は前の主とそう言う人間を見て回った

世界を眺め、人を知り、魔法を知った

私自身でも魔法を使う事も出来る

神たる存在にも出会う事が出来た

私もお前の家族もお前に魔法の才能が無いとは微塵にも思っていない

寧ろ才能にありふれている

ただ単に普通の魔法が使えないだけだろう?

普通の魔法が使える人間は何百、何千と居ようと

お前の使う魔法だけは限られた人間かお前にしか使う事は出来ない

魔法の能力だけでも無くゲームなどで使われる様なMPみたいな魔法力もお前は兼ね備えている

最初の勇者に持たされるMPが15と考えるとお前は999以上はあるな

それがお前の最高の才能だよ

生まれついての才能の持ち主ただ謙虚なだけだ]」

そう言って伊邪那岐はローブから歯を見せて笑った雰囲気を醸し出した

秋は伊邪那岐を見て照れくさそうに笑っている

「本当にお前は召喚者か?

と疑うほど口数も多いし良く喋る

それに魔力の消費も抑えられるし話し相手にはちょうどいいよ」

「そうか?

秋の魔力がおかしいのだろう

常人には私を召喚しようとする魔力だけで限界の者もいるからな

お前は才能のある人間だよいい加減に認めろ」

「それもそうだね

でも認めたら負けだと思っているから」

二人の笑い声が屋上のテラスで響き渡っていた

そんな二人を見つめる影が秋の後ろに忍び寄る

伊邪那岐はその存在に気づいたのか背中に携えた鞘から刀を抜いた

秋も一歩退き相手が誰かを確認しようと目を細めた

「おもしろい魔法を使うのね

とても二等生とは思えない魔力だわ」

「お褒めの言葉ありがとうございます」

秋は屋上の水槽タンクが配備されている場所を見上げる

水槽タンクの隣には学校一のアイドル的存在、神ヶ原葵が腰掛けていた

秋は一瞬、葵もサボリやらクラスに入るのが面倒だのがあるのかと思っていたが

学校一のアイドル的存在であるはずの葵がこの場に居るはずは無いと解釈した

ただ、秋も伊邪那岐もそれを怪しく感じた

ただ単に学園一の以下省略が二等生の溜まり場とも言える屋上に来るはずが無い

(おもしろい魔法・・・・・・?伊邪那岐は普通の人間や魔力の低い人間には見えない筈・・・・・・)

「伊邪那岐という名前かしらとっても良くて良いフォルムをしている

世界でも召喚者はたくさんいるけれど男子高校生が召喚者を召喚するなんて

それも一等生でもなく魔道士や魔術師でも無くこの学校の二等生だなんて

どうやら貴方の妹さんは嘘は言っていなかったようね」

「そこでずっと見ていたのか?」

「えぇ」

堂々とした態度で葵は首を縦に振った

だが顔は若干笑みを隠せずにいる

この学校では一般的には二等生と呼ばれる人間は魔法を学校内で使う事は少ない

それ以前に魔法の技術があまりにも無いが為、使用を禁止されている魔法もある

移動には空間転移魔法陣と呼ばれる物がどの施設でもどの校舎にも配備されていて

空中移動、歩行移動などは最低限必要の無いものとなっている

その為移動魔法を使う事も無く、元素魔法と言われる魔力で炎や水を生み出す魔法も使う事はない

だが一等生は魔法が喧嘩や争い事で使われる事も多々ある

一等生同士の喧嘩や争い事は教師またはMHDを所持する生徒の了承と周囲の同意が必要なのである

そこまで徹底されたこの校で秋は魔法使っている

「結界はちゃんと張ったはずなのに神ヶ原はどうやって僕の伊邪那岐を見た・・・・・・!」

秋が話ている途中で葵は伊邪那岐が反応出来ない程の速さで秋に近付きナイフを口の中に突き付けた

伊邪那岐はその行為を止めようと動いたがすでに遅く彼女の手に握られている鋭利はナイフは

秋の口の中に入ってしまっていた

「ふがっ!」

「喋らない方がいいわ

口が裂けてしまいたくなければね

それに伊邪那岐、貴方も動かない方が主人も助かるわよ」

主人を助けようと刀を抜いた伊邪那岐はその発言に刀を鞘に戻した

葵は何の躊躇いも無く秋の口の中にナイフ入れっぱなしのままソックスをあげる為に

片手を足もとまで落としソックスをあげた

「あがあが!」

秋はナイフが当たらない位置で口をなんとか動かして言いたいことを伝えようとしている

「何を言っているかわからないわ

ナイフをもう一本追加してほしい?

だったらもっと良い物があるわよ?」

葵は右手を天に掲げる

葵の右手を中心に青白い魔法陣が展開され中央から持ち手の部分が現れる

そらを長細い葵の手が掴み魔法陣から引きずり出す

引きずり出した物はチェーンソーだった

「伊邪那岐、翻訳しなさい

哀れで可哀想な彼がなにか話したがっているから」

そう言って葵は伊邪那岐が秋に近付くのを許す

チェーンソーを持ったまま眉をピクリとも動かさず

「ふがふがふが!」

「神ヶ原!お前は何が目的なんだ!」

「目的なんてないわ

ただ屋上にいたらあなたがきて勝手に伊邪那岐を召喚したのを見ただけ

それ意外に何の理由があるのかしら?」

「ふがっ!ふがふが!」

「お前はなんで僕の口の中にナイフを入れた!

僕が一体なにをしたっていうんだ!」

「私の事を直視したからよ

いい加減に黙らないと口の奧にナイフ押し込むわよ

それと私の事を気安く呼ばないでくれるかしら?

それともこのチェーンソーで切り裂かれたいのかしら」

「ふがふがふが」

「じゃあなぜ僕に話しかけたりしたんだ」

「またへらず口を叩くようね

決まっているじゃない

貴方の事が好きだからよ」

秋は何を言っているんだこの女と思いながら口を開けたまま唾を飲み込んだ

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