真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[プロローグ] |
真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜
[プロローグ]
「はぁ〜……」
小春((日和|びより))と云うに相応しい今日この日。
気持ちの良い午後のひと時に相応しく無い溜め息を、ボクは吐き出していました。
(これから、どうして行けば良いのかなぁ〜……)
ボクは自分のこれからを考えて、余計に憂鬱になっていくのでありました。
ここで何故、ボクがこんなにも憂鬱に成っているのかを、詳しくお話しさせて頂きたいと思います。
ボクの姓は((劉|りゅう))、名は((璋|しょう))、字は((季玉|きぎょく))。そして、真名は((刹那|せつな))。
そうです。
“あの劉璋”です。
某ゲーム会社の三国志シリーズでワーストスリーにいつも輝いている、“あの劉璋”です。
《大事なことですから二回言いました》
まだ幼い頃、外で遊んでいたボクに雷が当たったそうでした。
その時の事はあまり覚えていないのですが、名医と云われている医者から、手の((施|ほどご))しようが無いから助からないと見放されるほどの危篤状態だったらしいのです。
ですが、不思議と体に火傷などの異常は無く、意識の無い高熱に浮かされた状態が、ただ続いているだけだったみたいでした。
だから余計に、医者は意識の無い状態が続く事の原因が分からずに困惑したみたいです。
でも周りの人達は、それでもボクの生還を信じて熱心に看病をし続けてくれたそうでした。
そんな献身的な看病のお陰なのか、それから三日三晩を高熱に浮かされ続けた後の四日目の朝、急に熱が下がり出して峠を越えたらしいのです。
ボクの意識は、その時はまだ((朦朧|もうろう))として居たらしいのですが、容態を確認した医者が回復に向かうと太鼓判を押してくれたそうで、それで胸を撫で下ろす事が出来たという事のようでした。
でも、それから暫く経った、ある日の事。
雷の直撃を受けた事が直接的な原因なのか、それとも死出の旅路を経験した事が原因なのかは分かりませんが、過去なのか未来なのか良く分からない記憶が、ボクの頭の中に蘇って来たのです。
もの心ついてからの劉璋としての記憶も、ちゃんとありました。
ですが、明らかに劉璋自身のでは無いのに、自分の記憶だと分かる記憶がどんどん((溢|あふ))れ出してくるのです。
男であったり女であったり、人種・年齢・時代などの統一性も無い。そんな何人もの記憶が、次から次へと認識できるように成っていったのでした。
そして記憶だけでは無く、『そうだ。○○の情報が欲しいなぁ〜?』と意識を外に向けて注文すれば、すぐに欲しい情報がやって来るのです。
ですが、記憶の方はともかく、何故か普段の意識状態では欲しい情報はやって来ませんでした。
何で? と思って試行錯誤を繰り返していたら、謙虚な心の状態じゃ無いと駄目であると気づいたのです。
例えば、『好きな女の娘のスリーサイズは?』とか、『嫌いなアイツの弱みは?』といった、我欲まみれな問いかけには答えが帰って来なかったのでした。
まったくもって、残念であります。
それからボクが意識を取り戻して二、三年経ったくらいのある時、自分の部屋でその日の課題が終わった頃に、いきなり頭の中に“声”が聞こえて来ました。
それは、『やあ!こんにちは(嬉)』と云うような陽気で暖かい感じのする声でした。
ボクは誰だ? と思ってキョロキョロ辺りを見回しましたが、周りには誰も居ません。
誰も居ない事を確認したボクは、気のせいか? と思って気にするのを止めました。
すると、また同じ感じのする“声”が、頭の中に聞こえて来たのです。
『これこれ、無視されると泣くぞ(涙)。言葉のキャッチボールは心の潤滑油です!』と。
さすがに不審に思ったボクは思わず、
「誰ですか?」
と、問いかけました。
ですが、頭の中で聴こえてくる“声”は『フフフッ……(微笑)』といった感じで黙して語らず、中々要領を得ない始末。
それに((業|ごう))を煮やしたボクは、
「何か用でも、あるのですか?」
と、再び問いかけました。
すると、二度目のボクの問いかけに答えるかのように、“声”との対話が始まっていったのでした。
対話を要約してみると、“声”はエネルギー体であり、私たちのような物質的な肉体を持たない存在であるとのこと。(俗にいう龍神さまらしいです)
この世界は“ネガティブ”な想念によって満たされてしまい、世界が耐える事が出来なくなったとの事。
世界の均衡を保つ((為|ため))に、“ポジティブ”の想念を広げる手伝いを希望するとの事。
以上の事を、 “龍神さま”は切実な感じで訴えてきたのでありました。
要件を聞き終えたボクは、『なぜ、それを自分に言うのか?』と問いかけました。
そうしたら、高祖・劉邦を始めとした劉氏の「前漢」は五行説で云うところの”水徳”であったが、「新」・「後漢」と時代が下っていくうちに、いつの間にか”土徳”を経て”火徳”にされてしまったらしいのです。
それゆえ、本来の((祭祀|さいし))を((司|つかさど))るべき「前漢」の皇族であるボクを、“龍(劉)の眷属”と見込んで話しているとの事。
後は、銀色のストレートな髪と蒼色のつぶらな瞳、美女と見紛うほどのボクの容姿、頼み込めば聞いてくれそうなお人好な性格が気に入ったと、そうぬかしてくれやがりました。(怒)
ボクは“龍神さま”が話しを終えた時、正直な話し『なんじゃそりゃああー?!』と叫びました。
だって、ボクは“あの劉璋”ですよ?
親である((劉焉|りゅうえん))の後を継いだは良いけれど、統治している領土では反乱ばかり起こされ、信頼していた部下には裏切られ続け、仕舞いには助けを求めた劉備にまで地位を取り上げられて国を追われた。そんな弱者中の弱者、ワーストキングの“あの劉璋”ですよ?
時の権力者に((媚|こ))び打ってでも、どうやって生き伸びようかと考えているのに。
『世界救済?』
『お前しかいない?』
って、やってられっかぁああー!!
そんなボクに、“龍神さま”は真面目な感じで告げてきました。
水徳の祭祀が((為|な))されない今の漢王朝では、大地への潤い、つまり水の循環が無くなっているから世界の終りは近いと。
そして、その((為|ため))に天変地異・((蝗害|こうがい))・((旱魃|かんばつ))・疫病などが多く起こって来て、人の営みが((潰|つい))えてしまうと、そう言うのです。
ボクは、それを聞いて((唖然|あぜん))としてしまいした。
だって。まさしく、行くも地獄・引くも地獄。前門の虎・後門の狼だったからです。
でも、そんなボクに“龍神さま”は、『今いる世界は本史では無く、真・恋姫†無双という外史の後漢末期。だから、多少の救いはあるよ』と、軽く言ってきました。
ボクはそれを聞いて『そうか、そうだったのかぁ』と、自分の今迄の人生で感じて来た違和感にやっと気がつくのでした。
――何故、名のある武将や文官たちが女性なのか?
――何故、史実と違う年齢の人達が一同に会しているのか?
――何故、今の時代にはあり得ない武器や衣服があるのか?
などの事を、今迄ずっと疑問に感じて答えを探し求めていたからです。
探し求めている過程で、大切なものだとは気づかず、許されてもいないのに他人の真名を呼び、その人物に殺されそうになった事も今では良い思い出です。(泣)
それなりに出来る事はサポートすると“龍神さま”が((仰|おっしゃ))って下さるので、ボクも『どうするかは分からないけれど、やってみます』と答えて交信を終えたのでした。
そうして、冒頭の溜め息になったという訳です。
分かって頂けたでしょうか? ボクのこの切ない気持ち。
(でもですよ? 良く考えてみると、それなりじゃ無くて不可能な事が起こったら、どうなるですかね……? それってやっぱり、安心できないって事になるんじゃないでしょうか……?)
これからの事を考えれば考えるほど、ボクの悩みはより深くなって憂欝になって来るのでありました。
「はぁ〜……。やっぱり、なんか泣けてくる……」
(グスンッ)
説明 | ||
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。 皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。 でも、どうなるのか分からない。 涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。 『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。 *この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。 |
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