リリカルなのは×デビルサバイバー |
「僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウン! 話を聞かせてもらう!」
黒い杖と服をを纏った少年クロノ。その少年の出現に一番慌てたのは、狼だった。
「管理局!? 管理局が介入してきた……不味いよフェイト! 一旦退かないと!」
「……くっ!」
『フェイト』そう呼ばれた、黒い少女は一瞬カイトを見る――否、睨みつけると――その場から狼とともに立ち去ろうとする。
「逃すとでも――!」
クロノはその手に持った棒を振りかざし、何かをしようとするが、鈍く、低い音が何処かからか聞こえ、"何か"がクロノへと向かう。
クロノはそれに気づき、プロテクトを張ことによりやり過ごすことに成功する。
「ほぉ? やるねぇ! さすがは、管理局の執務官殿……といったところかな?」
一人の男が宙に浮いていた。
その右手には、銃のようなものを持っている事から、先ほどの音はこの男の銃から放たれたものなのだとわかる。
男は左手を上に向け、指をパチンッとならした。すると、巨大な物体が、空から降ってくる。
その物体は、フェイトとクロノの間に割り込み、クロノの行く手を阻んだ。
更に落ちてきたのは、一つだけではなく、一つ……また一つと落ちてきて、なのはとカイトの前に立ちはだかった。
「これは……ゴーレム?」
フェレットが、なのはの方へと移動しながらつぶやく。
なるほど。確かにこのフェレットの言うように、石でできた人型の物体は、ゴーレムと呼ばれるにふさわしいかもしれない。
「にんぎょ……ではなく、フェイト。と言ったかな? 君は先に行くがいい」
「でも!」
「これは君のお母様の命令さ。それとも、母親の命に従えないのかい?」
"母親"
フェイトはこの単語に弱いのか、言葉をつまらせたあと、男を睨みつけると。
「母さんの言うことだったら聞く。でも、嘘だったら許さない」
まるで、呪怨のような言葉ではあるが、その言葉を言われた本人は「お〜こわいね〜」等と、意に介さない。
次にフェイトが視線を向けたのは、カイトだ。
「……もし、貴方が母さんを殺すと言うなら」
それは、子供の目ではなかった。
瞳から色が消え、カイトを唯"敵"として、認識した彼女は殺気をもったその目で、声で、カイトに告げる。
「私が貴方を殺します」
言い終わるとフェイトは、物凄い速さで、狼とこの場を立ち去った。その場に残ったのは、男を含め四人と一匹と、三体のゴーレム。
「さて、私も去るとしよう」
「待てっ」
背を向けた男を、クロノが呼び止める。
止まる。とは思っていないだろう。だがそれでも、止めるのが彼の仕事。
「お前は何者だ! 彼女と、お前は一体……!」
「ふふふ……ハハ」
男は笑い始めた。
愉快そうに、腹の底から笑う…まさに"大笑い"というやつだ。
「何がおかしい!?」
クロノが噛み付くように言う。
男はクロノを気にかける様子もなく、唯こう言った。
「フハハ! 今それを、君たちが知ることは無意味さっ! さぁ、管理局の執務官! 魔法少女! そして……悪魔使いっ!! 私の作りし無機物共を退けることができるかッ!」
「さぁ、やれ!!」と、男がゴーレム達に命じる。
ゴーレムは男に命じられるがままに、カイト達にその魂なき拳を振り下ろした。
「……悪魔使い? くそ、待てっ!」
「ハハハ! では、さらばだっ」
この場を去ろうとする男を追いかけようと、クロノは動くものの、それを妨げるように、ゴーレムがクロノの前に立ちふさがる。
「くそっ、邪魔だァ!」
クロノは魔力を篭った弾を撃つと、ゴーレムは避ける動作もせず、その攻撃に当たる。
「――ォォォォォ!!」
だが、その攻撃を物ともせず、ゴーレムはクロノに対して、その拳を振るう。
「くそ、生半可な攻撃は通用しないか……っ」
忌々しいやつだ。そう思いながら、クロノはゴーレムと対峙するのだった。
一方、なのはもまた一体のゴーレムと対峙していた。
「ディバイーン……バスター!!」
ピンク色の砲撃が、ゴーレムの身体を包み込む。
その一撃は、決して威力の低いものではなかったが、ゴーレムを打ち倒す程ではなかった。
「気をつけてなのはっ。このゴーレム……すごい硬いみたいだ」
なのはの援護をしているフェレットが言う。
しかし、その事は少女にも分かっていた。自身が"今"使える魔法の中で、最も攻撃力の高い砲撃魔法――ディバインバスターを受けたゴーレムは、効いていないとまではいかないが、腕がもげた。とか、足がもげた。とかいうダメージまでは受けていなかったから。
「でも……早く倒さないとカイトくんが…!」
少女の視線の先には、ゴーレムの攻撃を避けている一人の少年が居た。
見たところ、自分と同じように、デバイスを持っておらず、魔力も感じない、そんな少年。
だからこそ、急ぐ。目の前のゴーレムを倒して、少年を救うために。
だが、その考えはいとも容易く打ち砕かれる。
カイトは目の前のゴーレムと対峙しながら、とある事を考えていた。
『果たして、彼女たちの目の前で、悪魔という力を使っていいのか?』
小牧翠という前例がある。
この少女はとても正義感が強く、周りに困った人が居たら助けるという、正義感を持つ少女だ。……その服装には少々難があるが。
そんな少女とカイトは、東京封鎖の中で初めて出会った。
その中で色々とあったものの、ミドリという少女はCOMPを手に入れ、悪魔使いとなった。
その理由は唯一つ、父親の想いを継ぐ。というものだった。
彼女の正義感も、親切心も、父親の『正義はどんなことがあっても貫くもの』という想いを受け取ったから。
これだけであれば、美談となった。
東京封鎖という極限状態。それだけでなく、自身が理解できない、悪魔という存在と、魔法という超常現象。
その中で、悪魔の力を振るい、人々を助けようとする彼女を、周りの人々はどう見るだろうか?
答えは簡単、"拒絶"だ。
その正義感で、彼女は死にかけた。自身が守ろうとした、人々の手によって。
その時の記憶があるから、カイトは悪魔使いの力を振るうのを、躊躇してしまっていた。
『何をやっている』
「(うる、さいなっ!)」
攻撃を避けながら、ベルに言葉を返す。今のカイトの状態を、ベルは良しとしていないのだろう。
『何をやっているっ。このような無様な姿を……!』
「(五月蝿いって、言ってるんだっ!)」
自身の中に眠る、ベル達をその強靭な意志でもって抑えこむ。
『(……無駄なことを)』
『ベル』はカイトと共にある。
だからこそ、分かるのだ。
どれだけ、カイトが力を拒絶しようとも、力はカイトを捉えて話さない。と――。
「きゃぅ!」
なのはの悲鳴が上がる。
自身の最強の魔法が効かず、ジリ貧となっている以上……疲れがたまり、隙を作ることになる。そしてその隙を、ゴーレムは逃さない。
無機物であるがゆえに、プログラムのように正確に動くそれは、単純であるからこそ、逃さないのだ。
そして、カイトは見る。
なのはに近寄り、とどめを刺そうとする、ゴーレムの姿を。
ドクンッ。
心臓が跳ね上がる。
それは恐怖だ。死に対する恐怖だ。
だがそれは、自分が死ぬことが怖いのではない。
誰かが死ぬことが怖いのだ。
「ぅ、あ……」
呻くような声がでる。
恐怖で手が震える。足がすくむ。
そして思い出す、自身のせいで死んだ……あの人のことを。
「くそっ……たれッ!!」
カイトは左手でポケットを探る。そして掴んだ。
自身の力となる物。悲劇の元凶。
見た目はゲーム機。されどそうではないもの。
カイトは高らかに叫ぶ。全ての切掛となったその手にある物の名を。
「『COMP』……起動ッ!!」
COMPを起動すると同時、そのCOMPの画面から、眩い光が放たれる。そして画面には文字が書かれる。
――CommunicationPlayer
――プログラムを再起動します
そして様々な文字が表記されていく中で「OK」とメッセージが表示され。
――アクマ・ショウカン・プログラム起動OK
――アクマ・ショウカン・プログラムを起動します
――Peaceful days died……Re Survive!!
「ウああああァァッッッ!!」
勢い良く走りながら、カイトは跳躍しその拳をゴーレムの顔面へと叩きこむ。
「―――ォォォォォォ……」
元々魔速タイプの悪魔使いであるカイト。それに加え今は神のリミッターが存在し、本来の力を半減させている。それでも、人を超えた力をの一撃は、ゴーレムに確かなダメージを与えた。
「ふぇ? カイトくん……?」
当然、カイトの様子になのはは困惑する。自身が苦戦したゴーレムに、拳でダメージを与えた。それは驚きで――畏怖でもある。
ブォンッ!
風を切る、鈍い音がカイトに襲いかかる。
だがカイトは避けることはせず、手を前に出し、一言コマンドスキル名を言う。
「…護りの盾」
カイトを守るために出現した盾は、ゴーレムの一撃を受け四散する。
ゴーレムの一撃を受け、四散したのではない。
護りの盾。それは、使用者と使用者の仲間を一度だけ護る、そんな盾。
「……召喚」
カイトを中心に魔方陣が描かれる。
そこから漂う気配は普通のものではなく、異質なものと感じさせる何かがあった。
「ケツアルカトル、キクリヒメ」
白い羽根のようなものが生えた大蛇の姿を持つケツアルカトル。
女神キクリヒメ。黒い肌に、赤い服が彼女の見栄えを更に良くしている。
二柱の神が、現世に降臨した。
「フム。久しぶりじゃのぉ。王……いや、悪魔使い。カイトよ」
「ホント。もう召喚されることは、ないと思ったんだけどね〜」
妙齢の老人のような声のケツアルコアトルと、今時のギャルの様なキクリヒメ。対照的な二柱ではあるが、頼りになる仲魔であることは、間違いない。
「召喚する事がないのが、一番なんだけどね……。まぁその話はあとにするとして、ケツアルコアトルは、その巨体を生かし攻撃を、キクリヒメは後衛で、補助と隙を見て攻撃を」
「では、まかせてもらおうかの。ここは一つ『あばれまくってみる』かの?」
「今は補助いらないよね〜。それじゃ、マハラギッ!」
ケツアルコアトルが、ゴーレムに対して暴れまくり、それに追撃するかのように、キクリヒメが炎を放つ。
二柱がゴーレムを抑えているのを確認して、未だ座り込んでいるなのはに手を伸ばす。
「立って、早く」
「あ、うん……」
なのはの手を掴み、立たせる。
だが、忘れてはならない。もう一体ゴーレムが居ることを。
「危ない! 後ろだっ」
フェレットの声を聞くまでもなく、カイトは後ろを振り向き、右手を前に出す。
「『氷の乱舞』」
ゴーレムの足元から、無数の氷の柱が出現する。出現するだけでなく、石でできたゴーレムの身体を、貫いていく。
「……? 意外と脆いのか?」
ゴーレムの身体を、貫けたことに違和感を覚えたが、今はよしとするべきだ。そう考え、カイトは再び氷の乱舞を使用する。
だがいくら身体を貫いても、ゴーレムは動きを止めない。
生物とは違い、無機物であるゴーレムだからこそ、例え腕がもげようと何されようが、動くのだ。
さて、どうするか?
カイトは打開策を打ち出すため、考え始める。
その時だった。クロノの声が辺りを響かせたのは。
「顔だ! そのゴーレムの核は、顔面にある!」
既にゴーレムを撃破していたクロノが言う。
その言葉を信じ、カイトもまた顔面へと攻撃を始める。
だが、顔面への攻撃を防ぐようにプログラムされているのか、中々攻撃が当たらない。
「……ならっ」
氷の乱舞が当たらないのなら、顔面へあたるような、効果範囲の広いこうげきをすればいい。
「『メギド』」
ゴーレムの頭上で発生した、強力な魔力の渦は、ゴーレムの身体を包み込み……特に顔面を中心に破壊しつくした。魔力の渦に近かったのが、原因なのだろう。
「決めてよっ! おじいさん!」
「年寄りをこきつかうでないわっ。フンッ!」
ケツアルコアトルの一撃が、頭部を破壊した。それと同時にゴーレムは動きを止めたようだ。
戦いが終わった。その事に安堵しつつ、カイトはため息をついた。
「えっと、カイトくん?」
「ん?」
困ったような、そんな声でなのはがカイトに言う。
「手がちょっと痛いかな? って」
「うわっとごめん」
必死になっていたせいか、なのはの手を必要以上に、強く握ってしまっていたらしい。手を離した後も、まだ手が痛いらしく、手をさすっている。
「ごめん。ちょっと手を貸して」
「ふぇ? うん……」
カイトはなのはの手を取ると、回復魔法『ディア』を唱える。
癒しの光が、なのはの手を包み、手の痛みを癒していく。
「あれ? 痛くなくなった?」
「…なら、良かった」
なのはの手を離し、一息ついた所でクロノが地上に降り立った。
「大丈夫かい? 君たち」
「あ、はい。カイトくんのおかげで、傷も無いですし」
だまり、視線を下にむけているカイトに代わり、なのはが応える。
「そうか。なら良かった」
「それで、何だったんですか? アレ……」
なのはが指をさしているのは、ゴーレムだ。
「なんか、私の砲撃魔法が、全然効いてなかったような気がして……」
「さて、ね。そこは色々と調べなきゃ、ならないんだろうけど。今は僕の言うことに従ってくれないかな?」
「はい?」
なのはが可愛らしく、首をかしげる。
そんな反応が来るのも、予測済みなのか、クロノは落ち着いた様子で。
「あの少女と、あの男。それと、君達が関わってきた。経緯を知りたいんだ。ついてきてくれるかな?」
「あ、はい! わかりました」
「それじゃぁ、きみは?」
未だに俯いている、カイトをクロノは見る。
その視線に気づいたのか、カイトはクロノを見ると。
「……分かったよ。俺も色々と知りたいし。ケツアルコアトル、キクリヒメ。今日はありがとう」
「うむ」
「それじゃ、またね」
二柱の方を向き、COMPを操作、魔界へと送還した。
「これで俺は、いつでも行けるよ」
「うん。分かった、暫く待っていてくれ」
クロノは何処かへと、通信をしている。
数分後、話し終えたクロノは、改めてカイトとなのはの方を向く。
「それじゃ、案内するよ。僕が乗っている艦。時空航空艦アースラへ」
これが二つ目の出会い。
なのは、フェイト、クロノ、カイト。
これから起きる、様々な出来事の中心人物が、出会った瞬間でもあった。
説明 | ||
3rd Day FIRST CONTACT ん〜、サーバに負荷があまりかかっていない時間って、何時ぐらいになるんですかね? サーバに負荷がかかっているという話を聞いたので、あまり負荷がかかるような時間には投稿したくないのですけど。 |
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