特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション
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Extra Episode.04 グレート・マジカルパワー

 

「バスコ!!お前の悪運もこれまでだな!!」

 

見滝原市の廃工場の一角にて、壮絶な戦いが巻き起こっていた。戦っているのは、巷で噂の宇宙海賊が変身した、35番目のスーパー戦隊こと『海賊戦隊ゴーカイジャー』。片やその宿敵たる宇宙帝国ザンギャックのフリージョーカー、バスコ・ダ・ジョロキア。

宇宙海賊の船長、キャプテン・マーベラスことゴーカイレッドの言葉に、しかしバスコは全く動じず飄々とした態度を崩さない。

 

「あ〜らら〜、魔法少女の力も結局手に入らなかったか・・・」

 

「観念するのね。魔法少女のキーも既に私達が手に入れたわ。」

 

「正確には、“貰った”んだがな。」

 

「それに、僕達も大いなる力は手に入れてないんじゃ・・・」

 

「ええい、余計な事は言わなくていいから!!」

 

「皆さん、今はそれどころではございません!!」

 

バスコを追い詰めて自分達が優勢である事をアピールするルカ・ミルフィことゴーカイイエローの台詞に対し、その仲間であるジョー・ギブケンことゴーカイブルー、ドン・ドッゴイヤーことゴーカイグリーンが全くありがたくない捕捉を付け加える。そして、そんな緊張感の無い三人に、アイム・ド・ファミーユことゴーカイピンクがツッコミを入れた。

対するバスコは、そんな軽口を叩くゴーカイジャーを鼻で笑いながら続ける。

 

「ま、仕方ないか。今日はここらで失礼させてもらうよ。それじゃ、恒例の・・・いらっしゃませ〜!!」

 

「ウッキ!!」

 

バスコの相棒、宇宙猿サリーの腹部に付いているハッチを開く。それに対し、ゴーカイジャーは先程とは一転して緊張感をもって身構える。サリーの腹部のハッチは、バスコが管理する巨大な人型生命体を召喚するための扉である。そして今回も、逃げを討つための囮として件の巨大生命体が姿を現すと思われたが、ハッチからは、別なものが噴き出した。

 

「なんだこいつは!?」

 

サリーの腹部のハッチから噴き出したのは、どす黒い煙。凄まじい勢いで大量に噴き出すそれは、たちまち工場の天井を埋め尽くす。

 

「フフン、流石のマベちゃんでも、今回ばかりは拙いかもね〜・・・ま、頑張ってね!!行くよ、サリー。」

 

「ウキッキ!」

 

そう言いながら廃工場を去っていくバスコとサリー。ゴーカイジャーはそれを追うどころではない。煙が工場内部に満ちようとしている今、彼等も脱出を余儀なくされる。

 

「皆、逃げるぞ!!」

 

ゴーカイレッドの言葉と共に、廃工場から窓を突き破って脱出するゴーカイジャー一同。すると数秒後、工場内に見ていた黒い煙が屋根を突き破って空を覆う。先程まで晴れ渡っていた天候は一変して雷雲渦巻く嵐となった。

 

「一体、何が出てきたの!?」

 

「何だか分かんないけど、とんでもないものってのは間違い無さそうね。」

 

空に渦巻く雷雲。そしてその中から、巨大な影が姿を現す。巨大な歯車に、ドレスを纏った人形を逆さに吊るした異形の存在。

 

「何なんだあれは!?」

 

「凄く・・・嫌な感じがします・・・」

 

雷雲から出現した異形の巨大さと威圧感に、いつもクールなゴーカイブルーも動揺を隠せない。ゴーカイピンクは、目の前の存在に言い知れぬ不安と恐怖を感じていた。

バスコが使っている人型巨大生命体とは違う雰囲気を纏った存在に、戦々恐々とするゴーカイジャー一同。そんな彼らに話しかける存在が居た。

 

「あれは、ワルプルギスの夜だな。」

 

「?・・・お前は、ジュゥべえ!」

 

突如としてゴーカイジャーの前に現れたのは、首周りがファーのようなもので包まれた、耳と体が黒い猫の様な生物――ジュゥべえだった。

 

「お前、あの怪物の事知ってるのか?」

 

「ああ、知ってるとも。あれはワルプルギスの夜っつう魔女だな。それも、史上最悪の。」

 

「魔女と申しますと、魔法少女が戦っていたと言う禍を撒き散らす存在ですか?」

 

ゴーカイピンクの問いかけに、ジュゥべえはそうだと肯定する。彼等、ゴーカイジャーが見滝原市に来たのは、スーパー戦隊の大いなる力と同等以上の力を持つとされる、“魔法少女の大いなる力”を探すためだった。そして、見滝原市に来て早々、彼等を出迎えたがジュゥべえだったのだ。そこでゴーカイジャーは、かつてこの場所で起きた魔法少女事件についての詳細を聞いたのだった。

 

「だが、奴は所詮作りもの・・・恐らく、かつてのワルプルギスの夜のデータを元に作りだしたコピーだろう。大きさと力こそ本物には及ばねえが、町一つ消し飛ばすくらいワケ無いだろうな。」

 

「あれでまだフルサイズじゃないんですか!?」

 

「ったく!バスコの野郎、そんなもん作ってやがったのか!!」

 

「とにかく、このままアレを野放しにするわけにはいかないよ。」

 

「ゴーカイオーで行くよ!!」

 

「よし、行くぜ!」

 

巨大な敵に対抗するべく、ゴーカイレッドがヘンシンアイテム・モバイレーツを取り出し、「5501」と入力する。

 

『ゴーカイガレオン!!』

 

すると、そらの彼方より赤い海賊船が飛んでくる。この海賊船こそ、ゴーカイジャーの活動拠点にして巨大兵器、ゴーカイガレオンである。

 

「皆行くぞ!!」

 

『おう!!』

 

ゴーカイレッドの掛け声と共に、ガレオンから吊るされたロープへと飛び付くゴーカイジャー一同。五人全員乗り込むと同時に、ガレオンから四代のマシンが飛び出す。

 

『海賊合体!!!』

 

一同の掛け声と同時に、ガレオン含めた五台のマシンが変形合体する。ガレオンが胴体を、青い戦闘機型マシン・ゴーカイジェットが右腕に、黄色いトレーラー型マシン・ゴーカートレーラーが左足に、緑色のレーシングカー型マシン・ゴーカイレーサーが左腕に、桃色の潜水艦型マシン・ゴーカイマリンが右足に変形し、合体する。

 

『完成!!ゴーカイオー!!』

 

現れたのは、2本のサーベル・ゴーカイケンを携えた、ゴーカイジャーの主力となる巨大ロボット、ゴーカイオー。地上に降り立つと共に、目の前に存在するワルプルギスの夜に向けて構えを取る。

 

「どうする?敵はかなりデカいぞ。」

 

「フン、的がデカいなら、こいつで行くぜ!!」

 

ゴーカイレッドが取り出したのは、スーパー戦隊の力が宿った鍵、レンジャーキー。34ある仲からゴーカイレッドが選んだのは、デカレンジャーのレンジャーキーだった。それに応じて、他の四人も同様に同種のキーを手に取り、操舵輪の鍵穴にセットする。

 

『レンジャーキー・セット!!』

 

それと同時に、ゴーカイオーの両腕・両足・胸部のハッチが開き、ガトリング砲が装備され、両腕のパーツが二丁拳銃に変形する。

 

『完成!!デカゴーカイオー!!』

 

現れたのは、デカレンジャーの大いなる力によって変形した、特捜変形形態、デカゴーカイオー。

変形完了と同時に、ワルプルギスの夜から七色の火炎が振り掛る。だが、デカゴーカイオーはその巨体に似合わぬ俊敏なアクションで火炎を回避し、ワルプルギスの夜目掛けて銃撃を行う。的が巨大なため、弾丸は一発も外れる事無く命中するが、ダメージらしいダメージは与えられた様子が無い。

 

「チッ!頑丈な野郎だ!!一気に決めるぞ!!」

 

操舵輪に挿したレンジャーキーを捻り、必殺技発動の体勢に入る。

 

『レッツゴー!ゴーカイフルブラスト!!』

 

ゴーカイジャーの掛け声と共に、デカゴーカイオーの両腕両足のガトリング砲から無数の弾丸が放たれる。張られた弾幕は、ワルプルギスの夜に全弾命中し、巨大な爆発を引き起こす。

 

「ざっとこんなもんか。」

 

勝負が着いたとばかりに勝ち誇った態度を取るゴーカイレッド。だが次の瞬間、爆炎の中から、無数の紫色の突起物が放たれた。

 

「何っ!?」

 

「危ない!!」

 

「避けろ!!」

 

降り注ぐ突起物の雨の中、デカゴーカイオーは転がる様にして回避に移る。ゴーカイブルーとゴーカイイエローの咄嗟の判断で、急所への直撃は免れたデカゴーカイオーだったが何発かは手足に命中していた。倒れた体勢から立ち上がりつつ、ゴーカイレッドは悪態を吐く。

 

「クソ・・・あれだけの攻撃を受けてビクともしねえってのか!!」

 

「やはり、偽物といえども史上最悪の魔女だけの事はあるな。」

 

「感心してる場合じゃないよ!!デカゴーカイオーじゃ太刀打ちできないんだよ!?」

 

「焦るな。弾幕で駄目なら、ぶった切るだけだ!!」

 

そう言ってゴーカイレッドと、その言葉の意味を理解した四人が取り出したのは、百獣戦隊ガオレンジャーのレンジャーキー。先のデカレンジャーのキーと同様に、操舵輪の鍵穴に挿入する。

 

『レンジャーキー・セット!!』

 

『牙吠!!!』

 

ガオレンジャーのレンジャーキーを挿入した途端、空の彼方にある天空島から、赤く強大なライオンが姿を現す。

 

『ガオライオン!!』

 

「行くぜ、ガオライオン!!」

 

続いてゴーカイジャーが取り出したのは、侍戦隊シンケンジャーのレンジャーキー。これも操舵輪にセットし、今度は合体を図る。

 

『レンジャーキー・セット!!レッツゴー!!』

 

シンケンジャーキーの挿入と共に、ガオライオンの身体が分裂し、ゴーカイオーの四肢に合体・変形する。

 

『完成!!シンケンゴーカイオー!!』

 

現れたのは、天・土・木・水の文字を両肩・両膝に刻み、顎に火の文字を刻んだ獅子の頭部を胸部に備え、薙刀を持った、ゴーカイジャーの侍先頭形態、シンケンゴーカイオー。

 

「一撃で真っ二つにしてやるぜ!!」

 

『烈火大斬刀!!!』

 

掛け声と共に、シンケンゴーカイオーの手に、火の文字が刻まれた巨大な刀が現れる。炎を宿した、刃渡りだけならワルプルギスの夜を優に超えるその刃を、振りかざす。

 

『ゴーカイ侍斬り!!!』

 

巨大な刃から繰り出される豪快な斬撃が、ワルプルギスの夜を真っ二つに斬らんと迫る。炎を纏った破壊力に溢れるその一撃を・・・しかし、

 

「何だと!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

ワルプルギスの夜は、防御も無しに耐えて見せた。否、刃がワルプルギスの夜に傷を与える事すら叶わなかったのだ。史上最悪の魔女は、シンケンゴーカイオーは放った一撃を、そよ風の様に受け流したのだ。

斬撃を止めたワルプルギスの夜は、自身に触れていた刃を振り払い、シンケンゴーカイオーへ炎と共に瓦礫の礫を見舞う。

 

『キシャァァアアア!!!』

 

『うわぁああああああ!!!』

 

けたたましい咆哮と共に、ワルプルギスの夜の猛攻に為す術なく晒されるシンケンゴーカイオー。どうにかギリギリのところで踏みとどまる事が出来たが、ダメージはピークを迎えつつあった。

 

「まさか、シンケンゴーカイオーの斬撃が通らんとは・・・」

 

「マズいよ、これ!!」

 

焦燥を露にするゴーカイジャー一同。スーパー戦隊から受け継いだ大いなる力をもってしても、傷一つ付けられない敵を前に、為す術が無い。

 

「あきらめんな!!まだ終わったわけじゃねえ!!次は空中戦だ!!!」

 

敗北を認めるには早すぎると、仲間を叱咤するゴーカイレッド。空中に居る敵を倒すべく、魔法戦隊マジレンジャーのレンジャーキーを手に大いなる力を発動する。

 

『レンジャーキー・セット!!レッツゴー!!』

 

マジレンジャーのキーが挿入されると共に、ゴーカイオーの両肩のハッチが開き翼が、両足のハッチが開き爪が、胸部のハッチが開き赤い竜頭が姿を現す。

 

『完成!!マジゴーカイオー!!』

 

マジレンジャーの大いなる力を得て、マジドラゴンと合体した魔法戦闘形態、マジゴーカイオーが姿を現す。

 

「敵は空中だ!!飛んで行くぜ!!」

 

ゴーカイレッドの言葉と共に、飛翔するマジゴーカイオー。マジゴーカイオーは、マジドラゴンと合体した事により、その翼をもって飛行する事が出来るのだ。

だが、ワルプルギスの夜もそれを黙って見ているだけではない。マジゴーカイオー目掛けて巨大な火球や建物を投げつける。

 

「避けるぞ!!」

 

「当らないよ!!」

 

だが、マッハ1の高軌道飛行能力を持つマジゴーカイオーは、向かってくる攻撃の全てを回避し、ワルプルギスの夜の上空へ進出する。

 

「これでも食らえ!!」

 

『キシャァア!!キシャァァァアアア!!!』

 

マジドラゴンの口から、炎のブレスが発せられる。猛烈な勢いで燃え上がるそれは、ワルプルギスの夜を形成していた歯車に亀裂を発生させる。ワルプルギスの夜本体からも、苦痛にもがく悲鳴の様な叫びが上がっている。

 

「効いてる!!やっぱり、魔法の力なら有効なんだ!!」

 

「フン!手古摺らせやがって・・・これで終わりだ!!」

 

マジドラゴンの炎で粗方ダメージを与えると、マジゴーカイオーは再び地に降り立つ。そして、ゴーカイジャーは止めを刺すべくレンジャーキーを再び捻る。

 

『レッツゴー!!ゴーカイマジバインド!!!』

 

必殺技の発動を受諾したマジドラゴンが、ゴーカイオーから分離し、ワルプルギスの夜を囲むように巨大な魔法陣を描く。三重に描かれたそれでワルプルギスを拘束・粉砕する必殺技、ゴーカイマジバインドである。

魔法陣を張り終わると共に、ゴーカイオーの元へ戻って合体し、再びマジゴーカイオーへと変形合体する。そして、魔法陣はワルプルギスの夜を締め上げ、粉砕される―――筈だった。

 

『キシャァァァアアアアア!!!』

 

ワルプルギスの夜を囲んでいた魔法陣の一つに、突如歪が入る。同時に、他の魔法陣も、至る場所から亀裂が入っていく。

 

「何っ!!」

 

「嘘でしょ!?」

 

「まさか、アレを破ったというのか!?」

 

ゴーカイマジバインドをものともせず、打ち破ろうとしているワルプルギスの夜。流石のゴーカイジャーも誰ひとりとして驚きを隠せない。

魔法陣に入った亀裂は瞬く間に全体に広がり、遂にワルプルギスの夜はゴーカイマジバインドを打ち破る。

 

「そんな・・・!」

 

「まさか、マジレンジャーから頂いた大いなる力でも対抗できないなんて・・・!!」

 

デカレンジャー、ガオレンジャー、シンケンジャー、マジレンジャー・・・今まで手に入れたスーパー戦隊の大いなる力を持ってしても倒せない強敵に、ゴーカイジャーは久しく恐怖に似た感情を抱いていた。

 

『キシャァァアアアァァアア!!』

 

そんなゴーカイジャーが見せた心の隙を突いたのか、ワルプルギスの夜がマジゴーカイオー向けて極太のビームを放つ。

 

「くっ避けろ!!」

 

「駄目だ!!直撃する!!」

 

「ぐぅっ!!」

 

一瞬の判断の遅れで、ビームの直撃を受けるマジゴーカイオー。当りの建物を巻き添えに、瓦礫の山に倒れ伏すこととなった。

 

「くっ・・・スーパー戦隊の大いなる力では、奴に勝つ事は出来ないのか!?」

 

「でも・・・そしたら、僕達にはもう戦う術は残っていないよ!!」

 

「もう、駄目なの!?・・・終わりなの?」

 

「この星も・・・私の星の様に・・・滅ぼされてしまうのでしょうか・・・?」

 

絶望に満ちるマジゴーカイオーのコクピットの中。目の前の、スーパー戦隊の力を全く寄せ付けない史上最悪の敵に、一同は心が折られそうになっていた。もとより、自分達はこの星の人間ではない。そして、自分達は海賊である。ならば、これを潮時として自分達は退散する・・・逃げの手を打つべきかとさえ思い始めたが・・・

 

「お前等!!諦めるんじゃねえ!!」

 

そんな一同の弱気を叱咤したのは、やはりゴーカイレッドだった。彼の言葉に、しかし他のゴーカイジャーは心を強く持てない。

 

「でも!!アイツにはどんな攻撃も通じなかった!!僕達の力じゃ、勝てないんだよ!!」

 

「馬鹿野郎!!そんな弱気になってどうすんだ!!俺達の目指すもの、忘れたのかよ!!?」

 

その一言に、ゴーカイジャー四人はハッとしたように顔を上げる。宇宙海賊であるゴーカイジャーが、この星に来た理由。それは・・・

 

「宇宙最大のお宝を手に入れる!!俺達はそのために戦ってんだろ!!ここで逃げたら、手に入るもんも入らなくなっちまうんだよ!!!」

 

冒険とロマンを求める宇宙海賊が掲げた野望、“宇宙最大のお宝”は、未だ手に入っていない。自分達は、未だ中途半端なままで物事を諦めようとしているのだ。ゴーカイレッドの言葉によってそれに気付かされた四人は、再び拳を握り立ち上がる。

 

「そうだ・・・俺達は、まだ戦える!!」

 

「宇宙最大のお宝を・・・絶対に手に入れる!!」

 

「こんな所で、足踏みしてる・・・暇は無い!!」

 

「絶対に・・・勝ちましょう!!!」

 

蘇る闘志を胸に立ちあがる仲間達を横目に、ゴーカイレッドはマスクの下で笑みを浮かべる。

 

「ジュゥべえの言ってた、魔法少女の話、覚えてるか?」

 

「確か、何年か前にこの街で起こったという・・・魔法少女とスーパー戦隊が力を合わせて、インキュベーターと呼ばれる存在との戦い、でしたね。」

 

「そうだ・・・確かその時も、今の僕たちみたいな絶体絶命のピンチだったって言ってたね・・・」

 

「戦いの果てに、魔法少女とスーパー戦隊が掴んだもの・・・」

 

「それは・・・自分達の手で切り開く、未来・・・そうだったな、マーベラス!!」

 

四人の言葉に、マーベラスは満足そうに首を縦に振る。ここまで言えば、自分の意思は伝わったも同然だった。

 

「そうだ・・・そしてそれは、俺達にとっても変わらねえ。奇跡だの魔法だのを頼りにするんじゃねえ・・・未来は、俺達の手で切り開くものだ!!絶望の運命があるなら、この手で打ち砕く!!!」

 

握りしめた拳を振り上げたマーベラスの言葉に、ゴーカイジャー一同は強い意志を持って頷く。そして、その時だった。

 

「これは・・・!!」

 

五人の手の中に、突如光り輝く卵型の宝石が姿を現す。それは、見滝原市に来て早々、ジュゥべえから渡された、魔法少女のキーと称されるものだった。宝石と言う事で、ルカは大喜びだったが、実際にモバイレーツに挿入しても何の反応も無かった鍵が、今は光を放っているのだ。それはまさしく、スーパー戦隊の大いなる力を手に入れた時に発せられる光そのものだった。

 

「ホウ・・・お前達も、遂に覚醒したか。」

 

「ジュゥべえ!?」

 

「いつの間にここに入っていたのですか?」

 

ふと足元を見ると、そこには地上に取り残して来た筈の小動物、ジュゥべえが姿を見せていた。

 

「今のお前達なら、今はもう失われた、魔法少女の大いなる力、即ち万能の奇跡を使える筈だ。これを使えば、スーパー戦隊の大いなる力を集めなくても、宇宙最大のお宝は手に入るだろう。」

 

「それ、本当!?」

 

「だが、この力は使えるのは一回きり。どうする?何でも願いが叶う千載一遇のチャンスを、お前は何のために使う?」

 

魔法少女の力を覚醒させたお陰で手に入った万能の奇跡だが、それが使えるのは一度きり。海賊として宇宙一のお宝を求めるゴーカイジャーは、キャプテンであるゴーカイレッド――マーベラスに決断を委ねた。

 

「答えは既に決まっている・・・この力を使って、アイツを倒す!!行くぜ皆!!」

 

『マジカルキー・セット!!!』

 

ゴーカイレッドの掛け声と共に、魔法少女の鍵――マジカルキーを操舵輪にセットし、ダイヤルを回す。

 

「やれやれ・・・お前達人間は、本当に予測できない・・・だが、これが同胞――キュウべえが言っていた、知的生命体の可能性に繋がるんだろうな・・・」

 

ゴーカイジャーの取った決断に、呆れや感心、様々な感情を織り交ぜたかのような言葉を漏らすジュゥべえ。そんな彼の言葉を余所に、ゴーカイジャーは魔法少女の大いなる力を発動する。

 

『レッツゴー!!』

 

ゴーカイジャーの掛け声と共に、マジゴーカイオーと合体していたマジドラゴンが分離し、新たな姿へと変形する。

翼は弓の様にワイドに広がり、翼の先端から魔力で編まれた弦が出現する。そして、竜の頭は、槍もしくは矢を連想させる鋭角なフォルムへと変形する。現れたのは、弓矢の形態をなした、マジドラゴンの変形した新たな、武器としての姿。そしてそれをゴーカイオーが手に取る事で、魔法少女の大いなる力は発揮される。

 

『完成!!マギカゴーカイオー!!!』

 

マジドラゴンの弓矢形態――マギカアローを手に、マギカゴーカイオーはその照準をワルプルギスの夜に合わせる。

 

「凄い・・・これが、魔法少女の、奇跡の力・・・!!」

 

「マジレンジャーの大いなる力に似ているが・・・これほど凄まじい力は初めてだ!!」

 

「これなら行ける・・・あの魔女にも、勝てる!!」

 

「宝石が消えちゃうのは残念だけど、それ相応のものは見られたし、良しとするか。それじゃ、マーベラス!!」

 

「ド派手に行くぜ!!!」

 

ゴーカイレッドの言葉と共に、マギカゴーカイオーは矢を射る体勢に入る。矢の先端には、魔法少女の奇跡の力が集中し、凄まじいエネルギーを発生させる。

 

『ゴーカイサークルオブロジック!!!』

 

放たれた奇跡の矢は、全てを貫き、ワルプルギスの夜へと命中する。だが、予想していた様な爆発は一切起こらない。代わりに、ワルプルギスの夜は放たれた矢から発せられる穏やかな力に包まれ、消滅していく。これこそがマギカゴーカイオーの必殺技、ゴーカイサークルオブロジックの力である。

その効果は、“破壊”ではなく、“救済”。力を使い果たし消滅した魔法少女を導くための光、“円環の理”を召喚するものである。円環の理によって発せられた光は、魔女が溜めこんだ穢れ全てを浄化し、その魂を本来行くべき場所へと誘うのだ。

 

「温かな・・・光・・・」

 

「これが・・・魔法少女の大いなる力なのか・・・」

 

魔法少女の大いなる力に驚愕するゴーカイジャー。光に晒されたワルプルギスの夜は、その闇を浄化され、一つの魂のみを残して消滅する。

 

「あ!あの子は・・・!!」

 

光に包まれる空の中、ゴーカイグリーンが一人の少女を発見する。白いドレスに身を包んだ、女神を想わせる様な少女――

 

「魔法少女・・・なのかな?」

 

「かもしれないな・・・・・」

 

実際のところ、あれが魔法少女であるかは分からない。魔法少女の大いなる力によって現れたことは間違いないのだろうが。

ゴーカイジャーが見守る中、光の中の少女は、ワルプルギスの夜から開放された魂の光をその手に納め、愛おしげに、優しくそれを掌で包み込む。そしてそのまま、天使の如く光輝く空の彼方へと飛び立つ。

そしてその間際、少女はマギカゴーカイオーの中から様子を見守るゴーカイジャーに顔を向け、微笑みかける。そしてその口は、“ありがとう”と呟いていた。

 

 

 

あれから一月ほど経った頃。ゴーカイジャー一同は、見滝原市を再び訪れていた。その中には、見滝原市の戦いには参戦していなかった仲間、伊狩鎧の姿もある。

 

「見滝原市ですか・・・魔法少女の伝説については、俺も知ってます。はぁ〜・・・見たかったなぁ。魔法少女の大いなる力・・・」

 

「ま、結局俺達の手からは離れちまったがな。」

 

魔法少女の大いなる力をその目で見る事が出来なかった鎧が、残念そうに呟く。対するマーベラスは、既に無くなった宝を追い求めるのは意味が無いと暗に示し、鎧を諭していた。

 

「でも、どうしてまたこの町に行こうなんて言い出したの?」

 

ルカの言葉に、見滝原市行きを決定したマーベラスは、そっけなく答える。

 

「別に・・・ただ、なんとなくな。」

 

「はぁ・・・スーパー戦隊の大いなる力を集めないといけないのに、こんな事していて良いの?」

 

「ま、たまには悪くないんじゃないか?」

 

「そうですよ。たまには骨休めも必要です。」

 

お宝探しを一時中断し、久しぶりの休息に胸を馳せるゴーカイジャー達。そんな中、ドン・ドッゴイヤーことハカセが、マーベラスにある問いを投げる。

 

「そういえば、魔法少女の大いなる力だけど・・・本当に消えちゃったんだよね。」

 

「・・・何度も同じことを言わせるな。無くなっちまったもんはしょうがねえだろ。」

 

ハカセの言葉に、少なからずの喪失感の様な物を感じるマーベラス。あの日、ワルプルギスの夜が消滅した後、魔法少女のマジカルキーは全て消滅していた。ジュゥべえの言った通り、魔法少女の大いなる力の発動は一度きり。力を使い終えた鍵は、消滅したのだ。はじめから分かり切っていた事だけに、ゴーカイジャーはルカを除いて大した落胆を見せなかった。

 

「でも、本当に良かったんですか?あの力を使えば、宇宙最大のお宝が手に入ったかもしれないのに・・・」

 

「そんなもんで手に入れたお宝に、意味なんて無いだろ?」

 

「そうね・・・なんたって私達は、海賊だもんね。」

 

「そして、俺達にはまだ見ぬスーパー戦隊の大いなる力っていうお宝が待っているんですから!!」

 

ルカと鎧の言葉に、マーベラスは笑みを浮かべて頷く。

 

「そういうことだ。欲しい者は腕ずくで奪う、それが俺達の流儀だ。奇跡だの魔法だのにたよるのは、邪道ってもんだ。」

 

「あれ?・・・でも、あの幽霊船の時は、願いを叶えるゴッドアイを手に入れるために行ったんじゃ・・・」

 

「そういえば・・・俺ってあの時も除け者にされてましたよね・・・?」

 

「細かい事は聞くな。」

 

ハカセと鎧の言葉を遮る形で、ジョーが割り込んで黙らせる。

その後はまた全員で他愛も無い話しで盛り上がりながら、見滝原市の町並みを歩いていった。そんな中、マーベラスは考えに耽る。骨休めのためとはいえ、何故この町――見滝原市を選んだのかは、自分でも分からない。ただ、なんとなく行きたかったというだけの話。大した理由も無く、とりあえず仲間達と町を見て歩くだけ。そんな時だった。

 

「―――っ!!」

 

マーベラスの視界に、一人の少女が入る。ツインテールにした桃色の髪に、青い学生服。ゴーカイジャーは知らないが、それは隣町の天ノ川学園高校の制服だった。

 

(あれは・・・まさか・・・)

 

道の向こうにいる少女に、弓矢を持った桃色の魔法少女の姿を幻視するマーベラス。

少女の顔を、マーベラスはつい最近見た事があった。あれは、魔法少女の大いなる力を使った時に現れた、魔女から開放された魂を円環の理に導いた少女―――

 

「・・・・・違う運命を辿った世界、ってことか。」

 

知らず、マーベラスはそんなことを呟いていた。視界に入った少女があの少女とは、別人であって別人でない・・・そんな矛盾を、何故かマーベラスは素直に受け入れる事が出来た。道理に基づいた考えではなく、ただそう感じただけのこと。だが、マーベラスはお宝の真実を垣間見る事が出来た事で、知らず満ち足りていた。

 

「フッ・・・だが、まだだ。」

 

「マーベラス、何がまだなの。」

 

不意に掛けられる声。振り返って見ると、仲間達が自分の後ろに集まっていた。

 

「いや、何でもねえよ・・・それより、もう戻るぞ。」

 

「え?今来たばかりなのに!?」

 

「宇宙最大のお宝が俺達を待ってるんだ。こうしちゃいられねえぜ!!」

 

「ちょ、ちょっとー!!まだ私達買い物とか全然してないんだけど!!」

 

「アイツがいきなり走りだすのは今に始まった事じゃないだろう。さ、行くぞ!!」

 

「参りましょう、皆さん!!」

 

「今度は俺も、絶対に付いて行きますよ!!」

 

見滝原市を駆け抜け、新たなスーパー戦隊の大いなる力を手にするべく、再び冒険に出るゴーカイジャー。海賊として、己の夢に忠実に、真っ直ぐに生きる彼らの足取りに、迷いは一遍も感じられなかった。

 

説明
見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。
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