おや?五周目の一刀君の様子が……5 |
「ふーん……へー……ほー……」
俺は兵に案内されて三姉妹のいる天幕に入ったんだが……
張角が俺を下から上まで舐めるように見てくる。
何だってんだ一体。
「うーん……いいよー。ギリギリで合格にしてあげるね」
「えー。ちぃはちょっと物足りないかなぁ」
「天和姉さんが良いなら、予定通りに話は進めるわよ。ちぃ姉さんは我慢して」
「あん?」
俺抜きで進められていく話。
どうしたもんかと立ち尽くしていると、張梁がこちらに寄ってきた。
「ありがとうございます。貴方のおかげで今のところ私達の軍は勝つ事ができてるわ」
「そりゃどうも」
あまり感激の念が見られない俺に、張宝が訝しげに睨み付けるが気にしない。
張梁は気にした様子無く続ける。
「褒美として、貴方を私達の親衛隊に任命します」
「親衛隊?」
「私達の身辺の警護が仕事よ。光栄に思いなさい!」
張宝は威勢よく俺に向かい指をさす。
なるほどね。武将をも退けられる俺を近くに置いて、安全を図ろうってことか。
「そいつは重畳。これで話が終わりなら失礼すんよ」
後ろからの呼び声を無視し、天幕を出る。
親衛隊か。接する機会も少なからずあるってこったな。
なら正攻法でいってみるかな。
「待ってください」
と、思案を固めると同時に声がかけられる。
振り向くとそこには張梁が立っていた。
「まだ話があったのか?」
「……何を企んでるんですか?」
脅えるように両手を胸に当て話す張梁。
あぁなるほどねぇ。俺を見た限り三姉妹を妄信してるわけでもないのも明白か。
「人和」
公演の時に名乗ってるし真名で呼んでもかまわんだろう。
俺は張梁の真名を呼びながらその頭を優しく撫でる。
「企んでるか?と言われるとそうなるな。だが安心していい。俺は何があろうとお前等を守るさ」
まだ抱いてもいない良い女を骸にされたら堪らんからな。
張梁は少し呆けていたが、すぐに俺の手を払いのけ距離をとる。
「せ、責務をしっかりこなしてくれるのなら文句はありません。ではまた」
急いで踵返す張梁。嫌われたもんだねぇ。
まぁいいさ、とりあえずは張角狙いでいくかな。あの中じゃあいつが一番楽に落とせそうだ。
「だりーなおい」
あれから結構経ったが、親衛隊といっても張梁と事務的な事ばかり。
それ以外の触れ合いなど皆無だった。
さらに、俺等の連絡隊が敵に捕まったらしく本陣がばれてしまった。
おかげで今まさに奇襲を受けている。兵共は慌てふためいて戦どころではない。
まったく、思い通りにいかないもんだ。
周りを見渡すが、こりゃ負け戦だ。あの三人は早々に逃げ出したらしい。
手際の速さに呆気にとられたが、生きているならいい。そのうちまた会えるだろうよ。
「兄貴!ここにいましたか!」
「んだよ、俺は今からずらかるんだが?」
「張角様達が敵将に追われております!」
何だって?
「すぐに案内しろ!俺が行く!」
守ってやるって言っちまったからな。最後くらいちゃんと働いてやるよ。
戦場から離れた荒野に人影が4人。
三姉妹と手甲をつけた物々しい傷だらけの女。
「……諦めましょう、姉さん。このままこの人から逃げ切れるわけ無いわ」
顔を伏せ沈んだ面持ちで投降しようとする三人。
まぁさせねぇけどな。
「おらよ!!」
走りながら勢いを乗せて剣を振り下ろす。
敵の女は両手で防いだが、勢いで数メートル後方に吹き飛んだ。
「一刀さん!?」
「よぉ、無事か?」
三人に怪我した様子は無い。なら大丈夫だな。
「ここは俺が抑えるからお前等は早く逃げな」
「……はい、でも一刀さんも無事で……!」
急いで走り去る三人。俺は視線を敵の女へ戻す。
「……逃げた主をなお庇うか。なかなか見上げた根性だな」
「まぁ、約束しちまったからなぁ」
何があろうと守るってな。一度くらい守らねぇと目覚めがわりぃ。
相手は見た感じ将に上がりきってないひよっこだな。華雄以下だろう。
「我が名は楽進。曹操様の覇道を支える家臣の一人だ」
「北郷だ。ついでにお前も俺の女にしてやるよ」
「なっ!……前言撤回させてもらうぞ、下種め。はああああっ!」
顔を真っ赤にする楽進。初心だねぇ。
俺の首を刈り取ろうとする上段蹴り。
筋はいいが読みやすい。首を少し傾け避ける。
攻勢に転じようと構えるが、楽進の後方から砂塵が見えた。
「増援か。流石に分が悪いな」
袈裟切りからの柄当て、そして流れるように足払う。
楽進は何とか防ぐが足払いには対応できなかった。
こける楽進を一瞥し、その場を走り去る。
はぁ、この時代にきてからまだ星しか抱いてねぇじゃねぇか。
本当、思い通りにいかないもんだねぇ。
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一刀の口調が安定しない……違和感あったらごめんなさい。 | ||
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