乱世を歩む武人〜第十七話(前)〜 |
桂花
「ちょっと桂枝。それとって」
桂枝
「それ?えーと・・・ああ、はいはいコレね」
桂花
「ありがと」
今は執務室。私は今姉とともに政務の真っ最中だ。
姉が基本、街の改正案や軍の編成などをやり私が案に対する予算の見積り、国の税管理や国庫の在庫計算などをやっている。
オマケに張遼隊副将なので武具の補充や予算の計算も私の仕事だ。全力でやると決めた以上本気でやろう。しかし・・・
桂枝
「おし、終わり。姉貴、確認頼む」
桂花
「どれどれ・・・うん。大丈夫そうね。じゃあ次、コレね。」
桂枝
「え〜まだあるの・・・?」
随分と多くないか?
桂花
「何よ。華琳さまのためにやってるのよ・・・アンタ何が不満なの?」
桂枝
「ん〜・・・ソレに関しては別にいいんだけどさ・・・でも多いとおも」
桂花
「アラ、この書簡・・・この前アンタが殺した賊の処分についてなんだけど」
桂枝
「はい、申し訳ないです。全力でやるんでそろそろ許して下さい。」
桂花
「・・・もう金輪際やらない?」
桂枝
「はい・・・モウシマセン」
命の危機にならない限りは
桂花
「じゃあ・・・これもやったら許してあげる」
桂枝
「・・・何この山?」
桂花
「春蘭や季衣達は書類整理できないからね。・・・文句あるの?」
桂枝
「・・・アリマセン」
あきらめてさっさと片付けようとした時だ。
華琳
「桂花、これのことなんだけど・・・あら、桂枝もいたのね」
主人が執務室にやってきたのは。
桂花
「華琳さま!」
桂花
「お疲れ様です。主人。」
案件で聞きたいことがあったのか?姉の目がものすごく輝いている。
華琳
「どう?ココにはもう慣れた?」
桂枝
「ええ、食材事情も把握しましたし治安も良い。さらには姉貴がこんなに幸せそうに働いているのですから私がやる気にならない理由がありません。ただひとつ言うのならば・・・仕事の量が多いですかね。かなり。」
華琳
「それは仕方ないわね。今現在、我軍には使える軍師が桂花しかいないのだもの。それに・・・その大変な仕事を私の指定した時間の2刻も先回ってやってくれる優秀な補佐が着いたのよ?ついつい頼っちゃうのも仕方ないでしょう。」
といいながらこちらを見やってくる。やれやれ・・・人使いがうまいなぁ。
桂枝
「へぇ・・・その補佐も大変でしょうに」
だがやはりそのままでは癪だったのでちょっと苦笑気味に返してしまった。
桂花
「ちょっと桂枝!申し訳ありません華琳さま。」
華琳
「いいのよ桂花。わかる?私はね、とても嬉しいの。」
桂花
「華琳さま・・・?」
華琳
「「王佐の才」と呼ばれる我が子房、荀文若がその才を認めた己の弟であり神速の張遼がその武を認めた張遼隊の副将である徐栄、そんな人材を従えたのだもの。少しくらいは頭の回る解答をしてくれないと逆につまらないわ。」
桂枝
「それはそれは・・・随分と高い評価を頂いておりますね。」
華琳
「あら?アナタはそんな力はない。とでもいうの?」
桂枝
「まさか。そんなことをいったら姉と霞さん両方の見る目を下げるじゃないですか。なら・・・その評価は間違えていないと結果で証明するだけですよ。」
華琳
「フフ・・・本当に面白い子。これで可愛い女の子であれば最高だったのだけれどね。」
桂枝
「そればかりはどうにもなりませんねぇ・・・まぁ「閨に呼ぶ価値のある功績」と判断なされた場合はそれを姉貴にしてやってくださいな。そうすると自分の心労的にとても助かりますので。」
桂花
「ちょっと桂枝!何言ってるのよ!」
口調は怒っているがその目は雄弁に語っている。「よくいった!」と。本当にわかりやすい姉だ。
華琳
「そうね、考えておきましょう。ところで桂枝、先ほどの言葉の中で私が直接見ていないものが一つあるのだけれど・・・わかる?」
その言葉を聞いた瞬間思わず逃げ出したい衝動に駆られる。しかし私は知っている。覇王からは逃げられない。
桂枝
「ええ・・・そうですね。私の予想が正しければ「神速の張遼が認めた武」ですかね?」
華琳
「正解。なので桂枝。私にアナタの武を示しなさい。」
桂枝
「はぁ・・・正直嫌ですが・・・主人の要望とあれば是非もなし。お受けしましょう」
華琳
「決まりね。相手は・・・桂花。」
桂花
「はい。私は春蘭を推薦します」
華琳
「へぇ・・・」
主人は少し驚いた顔でこちらに向き直す。確か春蘭って・・・
桂枝
「姉貴。もしかして夏侯惇さんか?」
桂花
「ええ。あなたならいけるでしょう?」
桂枝
「え〜・・・」
露骨に嫌な顔をする。「できること」と「すること」は別物だ。正直めんどくさい。
華琳
「あら。嫌そうね桂枝。そんな顔をされたら・・・ますます見てみたくなるじゃない。」
その顔をみて主人は面白そうに笑った。そこで気づく。この人は多分姉の同類だと。
桂花
「いやね主人。たかが部隊の副将ごときに曹操軍筆頭の相手をさせるのはいかがなものですか?」
華琳
「だ、そうだけど。どうなの桂花?」
桂花
「はい。確かに春蘭は馬鹿ではありますが間違いなく我軍最強の兵士でしょう。本来ならば男ごときが相手になるとはいえません。」
桂枝
「そうおもうなら提案するなって「しかし・・・」」
姉の言葉を使って何とか逃げ切れないかなぁと思ったが姉は更にこう続けた。
桂花
「桂枝は私の弟であり我が半身。私と同程度の才能を持ちながら私が軍師として政治、軍略を学んできた全ての時間を「計算と武」に費やした男。
ーーーーーーーー桂枝が負けるのであれば。私は華琳さまの臣下として春蘭に及ばない存在ということになるでしょう。」
・・・・・・・・・全く。本当に卑怯だなぁウチの姉は
華琳
「できる弟とはきいていたけれど・・・桂花がそこまでの評価をしているとはね・・・さて、どうするの桂枝?」
そんなことを言われてしまったら・・・・
桂枝
「もし私が「徐栄」であるのならばお断り・・・なんですがね。姉、荀ケにそこまで言わせてなおも黙っている弟は「荀公達」ではないんですよ。」
ーーーーーーーーーーーーーー本気を出すしかないじゃないか。
〜一刀side〜
一刀
「はぁ・・・はぁ・・・よし。ここだよな」
俺はある話を華琳から聞き慌ててある部屋へと向かっていった。バタンと勢い良くドアを開ける。
目的の人間はこちらに体を向け座禅のような体勢で迎えてくれた。
桂枝
「何かが慌ててくるなぁとは思っていたが・・・北郷か。どうした?」
一刀
「荀攸!聞いたぞ!明日春蘭と模擬戦をするんだって!?」
桂枝
「ああ。耳が早いんだな。」
一刀
「耳が早いって・・・そんなこと言ってる場合じゃないだろう!相手は春蘭なんだぞ!?」
桂枝
「ああ、らしいな。」
一刀
「らしいって・・・ああ〜もう!なんでお前そんなに余裕なんだよ!春蘭だぞ春蘭!わかってるのか!?」
桂枝
「・・・ああ。とりあえず最低限は理解しているよ。」
そういった後、一度間を置き荀攸はこう続ける
桂枝
「性は夏侯、名は惇、字は元譲、曹操軍の精鋭部隊の隊長にして軍事部門の統括者。性格は一言で言うならば単純一途で向こう見ず。
使う獲物は剣である業物「七星餓狼」。戦闘では直感と本能で押し切る天才型で速度よりかは破壊力を重点的に込める・・・こんなところか。」
一刀
「おお・・・」
俺は荀攸の話を聞いて驚いた。おそらくこいつは明日春蘭と戦うためにここまでデータを揃えてきたんだろう。しかし・・・
桂枝
「驚く程度のことか?「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」戦う相手の情報はもてるだけもって置くのが基本だろう。」
一刀
「それはそうだが・・・しかしどうしても心配で。」
そう、荀攸がいくら相手を調べているとはいえ相手はあの春蘭。せっかくできた男友達がむざむざボロボロになるのを見たくはない。
桂枝
「心配・・・ねぇ。俺のことなんて心配せんでもいいだろうに。」
一刀
「だって相手はあの春蘭だぞ。俺もその強さはよく知っている。そんな奴と戦う友達の心配をしないほうが無理ってもんだ」
桂枝
「友達・・・?友達・・・俺のことか?」
一刀
「ああ。他に誰がいるっていうんだ?」
当たり前のことをいったつもりなんだが荀攸はなにか驚いているようだ。なんか変なこと言ったかな?
桂枝
「友達・・・ねぇ。まぁ心配をかけているみたいだが・・・そうだな。ならばいくつか質問をしていいか?」
一刀
「え?ああ。俺に答えられることなら。」
そういって荀攸は春蘭に対する質問をしてきた。例えば好きな食べ物だったり特技だったり一番喜ぶことだったりと内容は様々だ。
桂枝
「ん〜なるほど・・・戦闘狂の心酔型か。ならば応援一つで相当力が跳ね上がることまでは視野に入れないとなぁ・・・」
何やらブツブツといっているが小さすぎて聞こえなかった。
桂枝
「あの時と・・・して・・・一応・・・だから・・・よし。十全だ、礼を言うぞ北郷。
ーーーーーーおかげである程度勝つ見込みも増えた。」
一刀
「いや、礼を言うって・・・っていうか勝つ!?お前勝つっていったのか?あの春蘭に!?」
桂枝
「ああ。そうだが?なにか変なこと言ったか?」
荀攸はいたって真面目な顔をしている。その顔に冗談やハッタリの気配はない。
一刀
「・・・本気なんだな?」
桂枝
「ああ、最初からな。こちらも理由があって負けるわけにはいかない。なぁに、みているといいさ。
ーーーーーーーーーーーきっと面白くするから」
そういった彼の表情はいつもと変わらないがなんだろう、どこか自身のようなものを感じた。春蘭に男が勝つなんてあるわけがない。だがもしかしたら・・・彼の表情はそんな期待をさせてくれた。
桂枝
「ああ、そうだ。このあと暇か?」
一刀
「え?ああ、暇だけど・・・」
桂枝
「そうか。もしよければ天の国ではどんな武術や格闘術があるのか教えてくれないか?正直すごく興味がある。」
一刀
「あ・・・ああ、正直少ししか覚えていないけどそれでいいのなら」
桂枝
「知っている限りでいいさ。で、まずは無手での戦術についてを教えて欲しいんだが・・・」
一刀
「ああ。いいよ、そうだな・・・俺達のいた世界では・・・」
そういってその晩、俺は柔道やボクシング。八極拳などの漫画やテレビで得た知識なんかを荀攸に話した。
荀攸はその話に驚いたり感心したりしながら真面目に聞いてくれた。時折「・・・ソレいいな」とかいったりしながら。
そうしてその夜は過ぎていった。俺は彼を心配しながらも少しの期待を持ち、その日は眠るのであった・・・
次回、VS春蘭戦。こっそり格闘術を教えてもらっているが果たして意味はあるのか?
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長くなるので3分割。ついに桂枝の本気がみれる・・・? | ||
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剣である業者「七星餓狼」。⇒業物(黄金拍車) ボクシングとあるから・・・・・・カシアス・クレイのようにビッグマウスで挑発しつつ蝶の様に舞い蜂の様に刺す。友人と言った一刀との距離が徐々に縮まっていくような期待もしております。(shirou) どの武術に興味を覚えたんだろう・・・・・・(アルヤ) |
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