テイルズオブエクシリア〜転生者はイレギュラー |
〜第三者SIDE〜
――――人間と精霊の世を逝きかう流れに、身をゆだねし者よ――――
――――我が魂の洗浄を経て、新たな生へと進むがよい――――
どこかの空間で声が響く。
【あなたは生きるべき存在。私たちが手を貸します!】
【意識を保て……!お前であれば消されはしない!】
【急ぐでし!時間がないでし……あれ?レオンがいないでし】
【仕方ない!こいつだけは……!さあ、もっと!気を緩めないで!】
【今です、さあ、こちらへ!】
4つの光は1つの光を囲みながらどこかへと導いていった。
どこかの湖を見つめるミラ……いや、今はミラとは言えない存在か。ミラは四大達に話しかける。
〜ノームと〜
【ノームでし。また会えてうれしいでしー。いつものアレやてでし〜】
ノームはミラがいつもどおりであると思っている。しかし、
【あれれ……?覚えてるでしよね?と、とぼけてるだけでしよね?】
何もしゃべらないミラを見てノームは落ち込む。
【僕たち……失敗したでしか……】
〜ウンディーネと〜
【何やら雰囲気が……】
ウンディーネはミラの纏う雰囲気が違うことにすぐに気付いた。
【まさかとは思いますが……私たちやレオンとニ・アケリアで過ごした頃の記憶はありますか?】
何もしゃべらないミラを見てウンディーネは困っている。
【記憶がないのですね……これからどうしたものでしょう。いえ、すみません。あなたが悪いわけではないのです】
〜イフリートと〜
【その姿……】
イフリートはミラの姿を見て驚き、さらに驚くことを聞く。
【何?名前を思い出せない……?うぬ……】
イフリートはノームと同じように落ち込む。
【俺たちは失敗したのか……?すまぬ。お前に尋ねたところで答えられるわけもないな……】
〜シルフと〜
【僕は他の三人の話しに乗っただけ。仕方なくね】
シルフはミラから視線を逸らすが、ミラの異変に気づく。
【ん、どうしたの?】
【待ってよ。ひょっとして君……】
シルフもミラの身に起きたことに気づく。
四大達と会話したミラはここからどこかへ行こうとすると、
【待て。どこへ行くというのだ】
イフリートが呼びとめる。シルフはミラに近づきいう。
【やっぱ様子が変だよ。自分が誰だかわかってないみたいな……】
【ニ・アケリアでレオンと一緒に遊んだでし。お、覚えてるでしよね?】
ノームはミラの身に起きている事実を信じたくなく、そう聞く。
【答えてくれ。俺とレオンの勝負で勝ったのはどちらだ?】
【では、槍に囚われた私たちを助け出したのはどうです?】
イフリートとウンディーネの言うことに無言のまま、首を振るミラ。
【レオンのことも忘れている……記憶がほとんど残っていないのですね……】
ウンディーネは悲しそうにミラを見る。
【あの機に魂をすくいあげれば、完全に記憶を残しているはずだ……】
【僕たちが何か間違えたのかもしれない。いや、待てよ……】
シルフはウンディーネとイフリートの前に出て言う。
【……僕たちが知らない何かがあったとしたら……その原因がわかれば……】
ミラの記憶が戻るかも……と、シルフが言いかけるが、
【やめてでし!】
【ノーム……】
シルフは自分の話しを止めるノームを見る。
【もう、あの方に逆らう真似なんてできないでし……】
【ノームの言うとおりだ。それに、ニ・アケリアに戻るなど、今さらできぬ】
【ああ、そう!どうせ、記憶のない中途半端なこんなのならいらないしね】
【シルフ、受け入れましょう。私たちの計画は失敗したのです……せめて私たちの傍にいることを幸福と思いましょう】
四大達は黙ってミラを見る。
ノームとシルフは落ち込んでいる。
【俺たちのせいだ。お前をこれからどうしたらいいものか……。すまぬ】
【行きたいところがあれば、せめて私たちにお供させてください。それで何か少しでも思い出せればいいのですが……】
ウンディーネの案にノームが落ち込みから戻る。
【そうでし 思い出の場所へ行くでし。それなら!】
【それが二・アケリアじゃないの?】
シルフの指摘に固まるノーム。
【でし……】
【もしかしたら、俺たちが囚われていた時に、レオンと一緒に回ったところを見てみればいいのではないか?】
シルフが、ふっとイフリートを見る。
【確かにそうだね。レオンがこいつと一緒に回った場所をいくつか見れば……】
レオン……この名前を何度も聞いたミラが微かに体が反応する。
【レオンのこと……覚えてるでしか?】
ミラは首を振る。わからないと。
【どうやら、頭が覚えてなくとも、体が覚えているのかもしれませんね】
【じゃあ、ちゃちゃっと行こうか】
四大達はミラの行きたい場所へ……思い出のある場所へと向かった。
精霊界のキジル海瀑からハ・ミルに来たミラは、小屋を見て立ち止まる。
【どうしたでしか?知てる場所なんでしか?】
【俺たちが囚われている間に、訪れでもしたのだろう】
【ふんっ】
四大達が話をしていると、
バサ…バサ…バサ
魔物が人(精霊)を襲っている。
【襲われそうになてるでし】
【俺に任せろ】
【お願いします】
そういい、イフリートは魔物達を追っていった。
果樹園の奥にミラは他の四大を連れてやってきた。
【何のつもりだ!俺がやると言っただろう】
怒ったように言うイフリートを無視し、ミラは前に出る。
【誰がやろうと関係ない、とでも言いたそうですね】
【なっ……!】
驚くイフリートを余所に、ミラは魔物に向かって走る。
【今はこの者たちを助けるのです】
【でしー!】
戦闘が始まった。
戦闘はすぐに終わった。四大の力を使うミラの前に普通の魔物はただの弱いものでしかなかった。
「助かりました。ありがとうございます」
「村に私たちの家があります。ぜひ、休んでいってください!」
助けられた親子(精霊)は家にミラ達を招待しようとするが、
シュウゥゥゥゥゥ〜〜〜
音がする方を見ると、何か黒いモヤモヤが発生している。
【ちょちょ、この感じ!】
いち早く、それに気づいたシルフが慌てる。
黒いモヤモヤはエレンピオス兵の姿を形造り、何かをすると音が鳴りだし、ミラ達は苦しいのか頭を……胸を抑える。
そして、親子(精霊)は死んで、塵となった。
音が止みむと、イフリートが皆に聞く。
【みな、無事か?】
そう聞いたら、皆は先ほどまでいた親子(精霊)のところを見ると、精霊の化石が落ちていた。
【……だめだたでし】
ミラは精霊の化石に触れようとするが、手が通り抜けてしまう。
【こうなっては触れることはできません】
【今のはどうしようもなかった。仕方ないよ】
【ミラのせいじゃないでし】
【…………行きましょう】
ミラはそのまま、ハ・ミル(精霊界)の家に入る。
【果樹園の二人のことは忘れろ】
【あなたはもう安らぎの中で生きるべきなのかもしれません】
【戦う必要なんてないでしよ】
【ええ。あなたは自分の幸せだけを考えればよいのです】
四大達に言われた後、ミラは家のベットで眠りについた。
――――どうしたんだ……私。安らぎ……あの者にはあったのだろうか……どうして私が心配する……戦う必要がないといわれただろう……――――
どこかを歩くミラ。だが、ふっとした瞬間、歩くのをやめる。
――――守ってやれなかった……――――
そして、ミラは目を閉じた。
目を覚ましたミラはハ・ミルから出て、イラート海停に来ていた。
イラート海停についたミラは二人の男(精霊)を見ていた。
「何、見てる!あっちへ行け」
そういう二人の男(精霊)であったが、四大達が姿を現すと態度が急変した。
「ま、まさか……四大精霊様っ!」
【……貴様ら、何をしてる?】
イフリートが腕を組みながらそう言っていると、男たちは後ろに下がる。
「ひぃ!?」
「あ、これはその……」
言いにくいのか、躊躇う二人。
すると、一人の女性(精霊)が宿に入っていくのが見えた。
「あ、待て!」
「申し訳ありません。これはあなた様方にも話せないことです!」
「おい、行くぞ!」
一人は四大達にお辞儀をしてからこの場から去って行った。
宿に入ると先ほどの女性が子どもと一緒に椅子に座っていた。
【さっきの男たちに憶えある?】
「私を……監視していたんだと思います。逃げ出した人間じゃないかと」
それを見いて、イフリートは女性がどこから逃げてきたのかが見当がついた。
【まさか、ニ・アケリアからか?】
女性は頷いた。
「はい。私、ニ・アケリアで聞いてはいけない話を聞いてしまったようで、それで……」
【詳しく教えてくれますか?】
ウンディーネが聞いてみると女性は四大達を見る。
「……はい。四大精霊様になら。なんでも……不正に生まれ変わった者がいて、それを捜している人がいるようなんです」
ギクッ
【不正、ね 】
ドキッ
【そ、その捜しているというのは誰なんでしかねー?】
シルフとノームは心の中ではかなり焦っていたりする。
「壁越しに聞いたので、誰だったのかまではわかりません。ですが、その者を見つけだして抹殺しなければならないとも言っていました」
それを聞いた四大達の反応は、
【(ヤバ……)】
【(ヤバいでし……)】
【(……ヤバいな)】
【(ちょっと……ヤバですね……)】
上からシルフ・ノーム・イフリート・ウンディーネである。
「その話を聞いて、私たちはその疑いをかけられたんだと気付いたから……」
【そうだったのか】
【お話ありがとう。助かりました。気をつけて、お行きなさい】
女性は子どもを連れて、宿を出て行った。
その日、ミラはその宿で眠ることにした。
――――!――――
「……ん?」
「?……ああ、これは手を手を握って握手をするんだよ。よろしくって意味だ」
「ああ、なるほど、そういうことか。こちらもよろしく。そして、ありがとう。村の者たちを守ってくれて」
幼い頃のミラと……そして、レオンの姿があった。
パアァ!
光を発し、次は、
「またか?」
「ああ。やはり、黒匣(ジン)の力かもしれない。確かめる必要があるな」
「しっかし、黒匣(ジン)か。6年ぶりじゃないか?」
「ああ、そうだ。6年ぶりだな……久しぶりだな」
「全くだな。ここ6年間は静かだったのは案外、嵐の前触れかもしれないぜ?」
「まさにその通りだな」
「「行こう。イル・ファンへ」」
次に移ったのはそれから10年後のミラとレオン。だが、ミラはレオンのことを覚えていない。
――――誰だ……お前は……私は……知っている……だが……――――
また、場面が変わり、再び10年前の姿の二人が映る。
「俺は――――。―――――――――だ。よろしくな、―――」
――――私は……マクスウェル……そうだ、私はミラ・マクスウェル。私は自ら死を選んだ……――――と共に――――
――――だが、なぜ……その誰と死んだのか……どのような理由で死んだのか思い出せない……彼はいったい私の……――――
そして、ミラは目を覚ました。
次の日、ミラはイラート海停の出入り口前にいると、四大達が話を始める。
【いい加減、離してもいいんじゃない?記憶がないから無駄かもしれないけどさ】
【僕もシルフに賛成でし】
二人はイフリートを見ながら言った。
【うぬ……わかった】
イフリートはミラを見て言う。
【俺たちがお前に何をしたのか話しておこう。お前は以前、ミラという名の存在であり、ニ・アケリアでレオンと俺たちと過ごしていた】
【そして、あなたはレオンと共に死にました。そこまでは憶えているのでしょう。その後です。私たちはミラとレオンの魂が洗浄され、生まれ変わる前に回収しようとしたのです】
【ミラのまま生まれ変わると思たんでし】
【だけど、失敗。ははっ!記憶の大半が消えて、レオンの魂はなくて回収できなかったってオチ】
【そういうことだ】
イラート海停からニ・アケリアに戻ってきたミラ達。
だが、
ボオォォォォオォォ―――!
風が吹く。
【……風が変わった】
風の大精霊であるシルフがいち早く感知する。
【やつか?】
イフリートに言われ、頷くシルフ。
シルフはノームの方を見て言う。
【ノーム、彼女を隠せ】
【がてんでし〜】
ノームはミラの方を向く。
【ちょと、我慢するでしよ】
そう、ノームがいうと、ミラの足元に地の術式が展開されると同時に、ミラが地面の中に隠される。
【やはり……ミュゼですね】
そう、ウンディーネが言うと、遠くにいたミュゼが現れる。
【ミュゼよ……ここにいた者たちはどうした?お前が集めていたのだろう?】
「もちろん、疑わしき者ですもの。死んで頂くことになります」
【やはり、お前の目的はミラを探し出すことだったのか】
「ええ。あなたたちもわかっていたじゃない。私は断界殻(シェル)という存在とその秘密に気付いた者を、消し去らなければならない」
【ああ、それがあんたの使命だもんな】
「ふふ、けど、意外。ミラをかばって私のところに顔を出すなんてないと思ってたわどうなっているの?」
ミュゼに問われ、目を閉じていたウンディーネが話を始める。
【ミラの記憶は完璧に失われていました】
【ミラはもうどこを捜してもいないでし】
ウンディーネとノームの話を聞いたミュゼは、
「そう、だったの……では……あなたたちの役目も終わったのですね」
役目の終わり……それはつまり、四大達の……死んで生まれ変わることを意味するものである。
【ええ、そうなりますね】
「主のお望みはわかっているんでしょう?あなたたちは知りすぎています。生まれ変わるべきです」
【死んで、次の四大精霊に……か】
「ええ。マクスウェル様の分体は社におられるわ。待っているわね」
そういい、飛び立とうとするミュゼを、
【ちょっと待ってくれないか?】
イフリートが止める。
「なんでしょう?」
【ミラと共に死んだ……レオンを知らないか?】
【そうですね。……ミュゼ、レオンについて何か知りませんか?】
四大達はミラと同様にレオンのことも心配していた。
ミラと一緒に死んだはずなの魂がなかったことに疑問をもっていたからだ。
「レオン?……ああ、ミラの男だったあの……彼、本当に死んでいるの?」
【どういうことでしか?】
「死んでいれば私にだって感知できるわ。でも……彼の魂も何もこの世界からは感じない。彼は……生きているんじゃないの?」
ミュゼの返答に驚く四大達。ミラと共に消えたはずのレオンが……生きているはずはないと思っている。
【……そうか。すまないな、呼びとめてしまって】
「そう?じゃあ、私は行くわね」
そういって、今度こそ、ミュゼはここから離れて行った。
それを見送ると、
【みな、いいな】
【そうですね】
ノームは後ろを見ると、先ほどの術式を出し、ミラを出す。
【ここでお別れでし】
【私たちのやりとりは聞こえていましたね。ミュゼの言葉は正しいのです。断界殻(シェル)の存在を知りすぎた我々は、危険な存在です】
【こうなる覚悟はしていた】
【でし】
【僕たち四大精霊にとって大事なのは、その存在さ。わかったら、さっさとここから去れよ】
【それじゃ、僕たち行くでしね】
【ミラ……いや、ミラではないな。お前はお前自身だ。ミラの名は忘れて生きてくれ】
【もし次の次第に会うことがあれば、よろしく伝えてください……そして、もしレオンに会ったら……あなたと共に過ごした日々を誇りに思いますと伝えてください】
そういい、四大達は移動しようとするがミラを見る。
【もういいだろう。早く、行こ】
見かねたシルフが他の四大達にいい、四大達はミラの前から去って言った。
四大が去った後。ミラはニ・アケリア参道に来ていた。
そこには四大達もいる。
【そんな!?……来てしまうなんて】
【この!まさか僕たちが消えるのを許せない、なんてつもりじゃないよな!】
【待て、シルフ。姿が変わり、記憶がなくとも、やはりお前はミラということなのかもしれんな】
【ええ。それであれば、仕方ありません】
【あのね、僕、ミラの記憶が還ってこなくて、ミラに戻れなくても……大好きでしよ】
【ちっ、こんなのミラかよ】
シルフが今のミラについて言う。
【ミラなら、もっと合理的にかんがえるはずさ。僕たちのところに来るもんか】
【シルフ……】
そんなシルフを見て、悲しくなるウンディーネ。
【お前の覚悟があれば、俺たちは何も言うつもりはない。この先を進もうが、引き返そうがお前の判断に従おう】
【でし!】
【ええ】
【ったく、わーったよ】
再び、四大達はミラにつくことにした。
社に行くとミュゼがいた。
ミュゼはミラを見て驚いていた。
「あら……?ひょっとして、あなた……!」
ミラから四大達に目を向けるミュゼ。
「……私をだましたのか、それとも気が変わったのか。この際、問いただすなんて不粋な真似をするつもりはないわ」
ミュゼはミラを見ながら言う。
「ふふふ……けど、あなたに一つだけ質問があるの。あなた、本当にこの者たちを信用できる?」
今のミラにはミュゼが何を言っているのかがわからない。
「わからないようなら、教えてあげる。私に使命があるように、あなたにも、そう言ってもミラだけど、使命があったわ」
【ミュゼ、それ以上話す必要はありません】
ミュゼの話しをウンディーネは終わりにさせようとする。だが、
「あら、あなたたちが手を貸したことなのに、口を閉じるなんて都合がよすぎない?」
ミュゼは止まらない。
【そ、それはでし……】
戸惑うノーム。
「私が従うべき最優先の命令は、アルクノアの殲滅だったわ。そしてミラはね、その為に……マクスウェル様がアルクノアを引きずりだすために用意された餌だったの。マクスウェル様はアルクノアが自分の命を狙っていることに気づいていたからあなたをマクスウェルに仕立て上げた。予定通り、アルクノアはあなたの命を狙って必死になっていたでしょ。つまり……何が言いたいのかわかる?」
【ミュゼ!】
今まで隠していた事実をミュゼがすべて言い、さらに話そうとするミュゼをシルフは睨む。
「残念だけど、ミラはマクスウェルとして貫こうとしていた使命は、ウソなの。まやかしよ。あなたはマクスウェルではなかった」
そう言いきるミュゼ。
さらに、話を進めるミュゼ。
「いい、よく聞きなさい。この四大精霊はマクスウェル様の命で元素の力で生み出した人間ミラをマクスウェルとして育て、教育したのよ。ミラは……マクスウェル様には最初から見捨てられ、頼みの四大精霊にも騙されていたの!」
なにやら、嬉しそうに言うミュゼ。
【……認めましょう。私たちは全員であなたを騙していた】
【それ故に魂の洗浄の最中、俺たちはお前の魂をすくいあげた】
【私たちにとっても、マクスウェル様を欺く行為でした。……言い訳にすぎませんね】
「そうね」
【ですが、ミュゼ!この方は、私たちに生きて欲しいと思ってくださった!】
【僕たち、まだ彼女と……ここにいないレオンと一緒にいたくなっちゃったんだよね】
【生まれ変わるという話は改めて、断らせてもらう】
【そうでし!僕たちはまだ。ミラやレオンと一緒にいたいでし!】
四大達の言ったことを聞いたミュゼは四大達をあり得ないと言わんばかりに見る。
「……どうして。私には使命がある!なさなくては私に生きる意味はない!あなたたちを生かしておくわけにはいかないの!」
ミュゼとの戦闘が始まった。
ミュゼは髪を自在に操ってミラ達を翻弄し、ミラ達は巧く動けずにいた。
【面倒ない〜もうぅ!】
シルフはミュゼの髪をうざったく感じて来ていた。
【……ミラ?どうしたのですか?】
ウンディーネは先ほどから動かないミラを見る。他の四大達もミラを見る。
そのミラはというと……
「フリーズランサー!」
シュシュシュシュン!
「なっ!」
ミュゼはミラが使った精霊術を見て驚きながらも避ける。
そして、四大達もミラを見て驚く。
【バカな……ミラは俺たちの四大の加護を受けた属性の精霊術しか使えないはずだぞ!】
【……まさか、レオン?】
シルフがそういうとイフリート達はシルフを見る。
【ずっと、レオンと旅をしていたせいで本来使えないはずの精霊術を覚えた……とか?】
【でも、そんなことがあるんでしか〜?】
【……もしかしたら、頭には覚えてなくとも……体が覚えているのかもしれませんね。レオンと共に戦った時のことを……レオンの技を】
四大達はミラを見る。
「食らいなさい!聖なる槍よ、敵を貫け!ホーリィーランス!」
ズガガガガ!
「きゃあああああああ!!!」
ミラはレオンが使っていた精霊術を駆使し、ミュウを倒した。
倒れこむミュゼはミラや四大達を睨む。
「っ……どうして!なぜ、主の意思に逆らおうとするの!」
【僕はミラに還てきて欲しいでし!ミラが僕を大事だと思てくれたのと同じだけ、僕もミラが大事なんでし!】
【ミラの記憶が蘇るかはわかりません。いえ、そのようなことなどまずないのでしょう。ですが、私たちにとって彼女は……!】
【共に過ごした過去など重要ではない。そういうことだったのだろう】
3人の言ったことを聞いたミュゼは言う。
「それはつまり……あなたたちにとって大事なのは……」
【その先はやめてよね。過去じゃなきゃ……クサイ台詞になるよ】
【秘密を知り過ぎたなんて理由で消えるのはいやでしー】
「なら、なぜ逃げなかったの?」
そう、ミュゼの言うとおり、ここに来なければよかったのだ。ここに来ないで逃げていればよかった。なのになぜ、四大達はここに来たのか……ミュゼには到底理解できない。
【変な話でしけど、彼女のためなら、消えてもいいと思たからでし!】
【ミュゼ、俺たちのことは俺たち自身で決める】
【主の命令を聞くのも、聞かないのも、私たちの心のままです】
【な、お前もそう思うだろ?】
四大達はミラを見て笑っている。
「でも、一度消された記憶が戻るなんて、ありえない!ミラにはなれない!」
そう言いながら後ろにある社を見るミュゼ。
「そうですよね!」
ミュゼがそう言うとそこに、本物のマクスウェルの分体が現れる。
【盟主マクスウェル様の分体です】
【分体は死んだ者の魂を洗浄するだけの意識体。安心しろ】
ウンディーネとイフリートの二人が説明をする。
そして、ミュゼの問いにマクスウェルは答える。
「その問いは、否」
そういうと、マクスウェルの体から光が出てきた。
「この光は、かつての魂の情報、つまり記憶と人格を呼び戻す奇跡の術」
「え……」
ミュゼは固まる。そんなこと、私は知らないと。
そう思ったミュゼは空高くに声を上げる。
「なぜ、教えてくださらなかったのですか!マクスウェル様!」
【まずい、マクスウェル様に僕たちまで気取られるよ!】
シルフはそういうが、
何も起こらない。
【どうした?マクスウェル様が応えられない】
「なぜ……また何もお応えになってくださらないのっ!いつになったらお応えくださるのですか!」
嘆いているミュゼを見てイフリートが言う。
【理由はわからぬが、交信を閉じられたのかもしれぬ】
「いやっ……どうしてこんな!」
そういい、猛スピードでこの場を去るミュゼ。
【おい、待て!】
シルフは追おうとするが、
【いいわ、シルフ】
【今は優先することがある】
そういい、ウンディーネはマクスウェル(分体)からミラの記憶と人格の情報の光を受け取り、ミラに手渡す。
【なにはともあれ、やりましたね。これで、ミラ、あなたの記憶は戻ります】
「ニ・アケリア霊山の山頂にて、その光をふるうがいい」
そういい、マクスウェル(分体)は消えていった。
ミラは一度、戦いの疲れを癒すために一旦、ニ・アケリアで休むことにした。
【――――あなた、何か変わりましたね】
「私はマクスウェルとして生きたいだけだ……」
【――――それで自分から死のっての?】
「矛盾してるのはわかっているよ」
【――――だたらヤメるでしよ】
「みなを……今まで関わった仲間を守りたい。――――を守りたい」
「そして、俺がそんなミラを守りたいんだがな」
【――――マクスウェルが何を恐れる?】
「……私は――――との……絆を……共に生きていくことを失うのが……恐かったのか。……失うことを……」
「俺もさ。だから、俺が代わりにマナを槍に注ごうと思ったのに……俺の想いを無駄にしやがって」
「だが……ここで一緒に死ぬのも……いいかもな……」
目を覚ましたミラは社に向かい、社にある扉から霊山へと向かったのであった。
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第54話 精霊界 | ||
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