ISとエンジェロイド |
第一話 クラスメイトはほぼ女!?
「全員揃ってますねー。それじゃあ((SHR|ショートホームルーム))始めますよー」
黒板の前で女性副担任の山田真耶先生が簡単に自己紹介をしてそう言った。
「それでは皆さん、一年間宜しくお願いしますね」
「……………」
教室の中は変な緊張感に包まれ、誰も反応しない。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
ちょっとうろたえる副担任が可哀相だが、残念ながらそんな余裕は全然ない。なぜなら、俺と目の前にいる男以外のクラスメイトが全員女子だからだ。
しかもこれは、想像以上にきつく席が、真ん中で前から二番目だから、俺等以外の全員からの視線を感じる。目立つ上に注目も浴びてい心地が悪い。
「……君。織斑一夏君っ」
「は、はいっ!?」
考え事でもしていたのか、いきなり大声で名前を呼ばれ声が裏返っている。
「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる? 怒ってるかな? ゴメンね、ゴメンね! でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑君なんだよね。だからね、ご、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな? だ、駄目かな?」
副担任の山田先生がぺこぺこと頭を下げていた。
「いや、あの、そんなに謝らなくても……っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いてください」
「ほ、本当? 本当ですか? 本当ですね? や、約束ですよ。絶対ですよ!」
そう言われ、目の前の男は、また注目を浴びている。やがて立ち上がり、後ろを振り向きクラス中の視線にたじろいていた。
「えー……えっと、織斑一夏です。宜しくお願いします」
と言い、一礼して何か考えているようだ。それもそのはず、この男に『色々期待しています』みたいな雰囲気になっている。
「……………」
未だに黙っていり、やがて観念してのか息を整えて口にした。
「以上です」
がたたっ。思わずずっこける音が複数後ろから聞こえた。
「あ、あのー……」
織斑の背後から山田先生が声を掛け、パアンッ! と頭を叩かれていた。
「いっ―――!?」
何かを言おうとしたが、織斑が振り向くと目の前に千冬さんが居た。
「げえっ、関羽!?」
パアンッ! 失礼なことを言ったから織斑はまた叩かれた。
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけて済まなかったな」
「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」
山田先生は若干熱っぽいくらいの声と視線で織斑先生へと応えている。
「諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
なんというメチャクチャな発言。しかし、教室には困惑のざわめきではなくて黄色い声援が響いた。
「キャ―――――! 千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様のためなら死ねます!」
いくらなんでも騒ぎ過ぎだろう。それと最後の人、それはないと思う。
「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
おそらくそうだろう。嫌なら学園長に相談したらどうだろうか?
「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そして付け上がらないように躾をして〜!」
ここをなんだと思ってるのだろうか。
「で? 挨拶も満足にできんのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は――」
パアンッ! 本日三回目である。
「織斑先生と呼べ」
「……はい、織斑先生」
と、このやりとりを見ているとまたクラスが騒がしくなった。
「え……? 織斑君って、あの千冬様の弟……?」
「それじゃあ、世界で最初の男で『IS』を使えるっていうのも、それが関係して……」
「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」
いくらなんでも代わるのは無理だろう。
暫くして俺に回ってきた。
「俺は山下航。趣味は読書。それに専用機持ちだ。宜しく」
周りから「昨日テレビに映ってた人だ」とか「このクラスに二人も!」とか聞こえるが、今は無視しておこう。
「さあ、SHRは終わりだ。諸君等にはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染みこませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
織斑先生が理不尽なことを言ってる。
「席に着け、馬鹿者」
織斑がまた注意を受けていた。
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