【獣機特警K-9】雨【交流】 |
フィアンマのフロントガラスを、滝のように雨水が流れ落ちている。せわしなく動くワイパーが、何の役にも立たないほどの土砂降りの雨だ。
「雨、やみませんね」
助手席のフィーアがため息をつく。アレクは、ハンドルにもたれかかったまま、黙っていた。
「…アレクさん?」
「ああ。聞こえてるよ」
それから数分間、二人は黙ったままだった。
「…なあ。俺の話、聞くか? あんま楽しい話じゃないけど」
「はい」
フィーアはうなずいた。
「3年前だから、フィーアちゃんはまだ生まれてないな。シュネードルフオリンピック選手村占拠事件、って知ってるか?」
世間話でもするような口調で、アレクは話しかけた。
「はい。警察のデータベースで見たことはあります」
「そうか。ひと通りのことは知ってるんだな」
アレクは続ける。
「あの時、俺と、ダチのヴァシーリ、そしてヴァシーリの妹で…」
一瞬、アレクは何かをためらうかのように言葉を切った。
「…俺の元カノ、ナタリアはそこにいたんだ。俺とヴァシーリは選手として泊まってた。ナタリアはその付き添い。で、テロリストに人質に取られたってワケ。
俺も、後で色々調べたよ。
あの時、現場の警察は、ちゃんとネゴシエイター(交渉役)を立てて、犯人を刺激しないように人質解放に持って行こうとしてたんだ。
でも、どっかのお偉いさんが、手柄焦ったんだろうな。強引な突入命令を出した。交渉がまとまるかまとまらないか、そんな最悪のタイミングでね。
お陰で犯人側はマジギレ。泥沼の銃撃戦になった、ってわけさ」
「その突入命令を出した人って…」
フィーアが尋ねる。
「笑うぜ。かのアルジャン・コション警視長殿さ。あいつ、世渡りめちゃめちゃ上手いんだな。この事件の突入失敗の責任もきっちり逃れて、一度は警視総監まで上りつめたんだからな。ま、それはともかく…」
アレクは話し続ける。
「俺たちは、混乱のドサクサにまぎれて、何とか建物を脱出しようと走り回ってたんだ。でも、焦ってたしテロリストもウヨウヨいるしでなかなか外に出られなくてな。で…」
次の言葉はなかなか出てこなかった。ワイパーがフロントガラスをこする音だけが響く。
「どこかの角を曲がった時、ナタリアが突然俺を突き飛ばした。振り返った俺は…彼女が撃たれるのを見たんだ」
「アレクさんを…かばって…?」
「軍用のマシンガンで至近距離から蜂の巣だ。助かるわけがない。俺の目の前で…ナタリアは死んだ」
周囲が一瞬激しく光り、数秒遅れて雷鳴が轟いた。
「…ま、こんなわけで、正直、女の子が俺のそばにいるの、ちょっと怖かったんだよな。『彼女欲しい〜』とかわめいてたの、アレ実は演技[フリ]だったりしたわけ。ピエロやってたほうが気が楽だったんだ」
わざと冗談めかしてみるアレク。
「…また、ナタリアみたいに目の前で女の子に死なれるの、嫌だし。被害妄想ってのはわかってるけどさ」
フィーアは静かに聞いていた。
「…でも。それって、結局逃げてるだけだって気づいた。女の子が死ぬのが嫌なら、自分が守ればいい。今の俺には、そのための力だってある。単純なことなんだ。それをフィーア…君が教えてくれた」
アレクはフィーアに向き直った。雨音が遠ざかる。
「フィーア。俺は、君が、好きだ」
説明 | ||
主にアレクがくっちゃべってるだけ。 アレク http://www.tinami.com/view/376898 フィーアちゃん http://www.tinami.com/view/372570 フィアンマ http://www.tinami.com/view/406870 |
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コメント | ||
>>古淵工機さん もう「残念なイケメン」とは呼ばせない…! 素で残念な部分もあったりしますけども!!(尾岸 元) こんなにも格好いいアレク…!(古淵工機) >>Dr.Nさん で、ドサクサに紛れて告っちゃったわけですけれども(チラチラッ)(尾岸 元) 続編キタ! 笑顔の下に隠された悲しい過去。遠ざかっていった雨と一緒に彼のつらい過去も消えていきますように(Ν) |
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