Fate/The black truth 第6話 「撤退」
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第6話 撤退

 

 

※時間はバーサーカーとアーチャーが激突する前まで遡ります。

 

side 切嗣

 

「・・・・舞弥。そっちから中を確認することが出来るか。」

 

「いいえ。確認出来ません。」

 

インカム越しの返答に歯を食いしばる。そう、さっきまで自分の手駒であるセイバーとランサーの戦いをスコープを使って自分の手駒の力量を見極めていたのだ。

敵マスターが倉庫街の屋上にいることは熱感知スコープを使い、隣の光量増幅スコープを使って確認することは出来た。

本来なら、発見したらすぐに射殺するのが僕のスタイルだ。だが、自分たち以外にも戦闘を覗いていくると予測し、最良の監視ポイントを放棄して別のポイントで待ち伏せした。新たに監視するであろうマスターをこのまま纏めて殺そうと判断したからである。

ここで思わぬ誤算が入る。そのポイントに出現したのが死んだアサシンである。

使い魔が録った画像に釈然としなかったため、ことさら驚きの念はなかった。だが“アサシン”が監視してきたため魔術師である自分が戦っても殺されるだけなのでランサーのマスターを射殺したら自らの場所をアサシンに教えてしまうので迂闊に動くことが出来なくなったが問題はそこじゃない。

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・           

切嗣のスコープで先程まで見えていた戦場が見えない状態になっている。

遠坂のサーヴァントが現れ、少し話をしていたところまでは確認することは出来た。だが、突然戦場を囲むような結界が敷かれたことにより戦場が見えなくなってしまった。

迂闊だった。熱感知スコープを使っても見ることが出来ない。完全に遮断されてしまった。

 

「結界を敷くということは恐らく“キャスター”のサーヴァント。戦場を見えなくすることで情報を与えないようにするためか。舞弥、その位置から他のマスターが視認出来るか。」

 

自分のスコープから覗いた範囲には発見出来なかった。

 

「いいえ。こちらからも視認することが出来ません。」

 

結界内で何かが起きているのは間違いない。中から爆発音等が何度も聞こえるからだ。改めて結界の全体を見ると、鍵箱の形として構成されている。スコープを使いランサーのマスターを見る。先程まではランサーのマスターは冷静な戦闘を観察していたのだが、今では嘘のように取り乱している。恐らく自分と同じように中の様子が見れない状況だろう。

 

「この結界は恐らく宝具。厄介だな。」

 

アサシンを見てみると、誰かと念話をしている。恐らくマスター“言峰 綺礼”だろう。アサシンの様子を確認していたら、突如大きな爆発音が発生した。確認すると発生源は結界内からだ。

 

「アイリ・・・」

 

妻の無事を祈る事しか出来ない自分に腹が立つ。僕は煮え滾る想いを胸に戦場を見守ることを続けた。

 

 

 

 

 

side 時臣

 

遠坂邸から宝石通信を用いて弟子の綺礼にアサシンの視覚聴覚を通じて戦場の様子を実況してもらっていた。

 

「それで、戦場は結界に覆われて見えなくなってしまったんだね。」

 

「はい。突如結界に覆われてしまったのでアサシンをもってしても見ることは出来ません。恐らく敵サーヴァントの宝具かと思われます。」

 

その内容に頭を抱えてしまう。本来はアサシンを使って諜報活動の時期の筈だが

 

「聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」

 

ライダーの挑発を聞いてギルガメッシュがこの類の挑発だけは、断じて見過ごさないだろうと確信していた。

ギルガメッシュが戦闘を開始しようとしたと聞いたときは頭痛が起きそうになった。アーチャーの単独行動スキルを有し、マスターを尊重する心掛けを欠片も持ち合わせていないギルガメッシュは自分の考えた策を当然無視するだろう。

令呪はたった三度の強制命令権だ。そう簡単に使用することは出来ない。

 

「導師(マスター)、アサシンから報告です。結界内から爆発音が出ていることから中で戦闘が発生しています。」

 

宝石通信から綺礼が報告をしてくれたので聞く。中で何が起きているのかが分からないため、ギルガメッシュが宝具を使用してないか焦りだす。その焦りも、体の体調の変化により一変する。

 

「くっ!・・魔力がギルガメッシュに吸い取られていく。」

 

突如自分の体に含まれる魔力が吸い取られていく。魔力を吸われていることから中で戦闘をしているのはギルガメッシュだと分かった。このままでは策が台無しになる上に、ギルガメッシュの正体が敵マスターに知られてしまう。一体何のために策を練ったのだ。

このまま最初にリタイヤするのは遠坂になるなど冗談ではない。やむを得ず、何が起きているのか分からない状態だが、右手の甲に宿る令呪に力を入れ“撤退”の命令を発動させるがここで時臣が想像もしない意外な問題が発生する。

 

「な・何だと。・・・ れ・・令呪が・・・発動しないだと・・・」

 

右手の甲に宿る令呪に改めて力を入れても、いつまでも発動しないことに呆然としてしまい

 

「中で何が起こっているのだ・・・」

 

ただただ報告を待つだけの状態になってしまった。

 

 

 

 

 

side 戦人

 

“殺せ。奴を殺すんだ。バーーサーーカーーーーーーー”

 

遠坂邸に出現した黄金のサーヴァントが戦場に現れた途端、俺に憎しみに満ちた命令が出る。

 

“いい響きだ。その想いをもっと充たしてくれ。”

 

雁夜の憎しみに満ちた命令を心地よい音楽のように感じながら、俺は雁夜の憎しみを奴にプレゼントしようと戦場に出陣するが、その前に確認しなければいけない。

 

「雁夜、宝具を使うが構わないな。」

 

雁夜の体内に「刻印虫」を宿すという処置によって即席の魔術師となった体は他の魔術師と違って脆弱だ。宝具を使用して死にましたでは話にならない。幸い俺には“単独行動”スキルがあるので奴の負担はかなり減っているが、さすがに発動にマスターを必要とする猫箱の宝具の使用はそれなりの負担を雁夜に掛ける。

 

“構わない。アイツに会うまでは絶対に負ける訳にはいかない。俺の魔力をいくらでも使え!”

 

念話を聞く限り奴を殺すことに集中しているため問題はなさそうだ。さて、残りのサーヴァント“キャスター”および“アサシン”と戦場の外から監視しているマスターに俺の情報を与えるのは愚かなことだ。気配を限りなく消している俺の存在に気付いている者はまだいない。ここは情報隠蔽に持って来いの宝具を使うか。

 

 

この時の俺は気づかなかったが、アサシンが戦場の監視を始めた後に到着していたら、例え気配を限りなく消していたとしても見つかっていただろう。

 

 

「さあ俺の世界に招待してやるよ英雄(サーヴァント)。“魔女世界”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※時間をアーチャーが壊れた幻想(ブロークンファンタズム)を発動したところに戻します。

 

 

 

 

 

 

side 戦人

 

まさかアーチャーが宝具を破壊するとは思わなかった。最後エネルギー弾で奴にダメージを入れていなかったらやばかった。何故なら、宝具“魔女世界”を発動させていることにより、相手にダメージを与えることによって回復する事が出来る。

見た目や服同様にそれなりのダメージを食らったが、なんとか直撃をさけたことと、最後の一撃による回復のおかげで致命傷をさけることができた。そして「戦闘続行:A」のスキルのおかげで問題なく動くことができる。

 

 

 

 

                                           

種明かしをするとこの宝具の特徴は外側にいる人は中に干渉することが出来ない。

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

そのため“令呪”も宝具の外側からは使用することが出来なくなるのだ。この宝具は様々な幻想を行うことが出来るので、自分のステータスを隠す事も出来るが自分の素性を隠蔽すればするほど魔力を沢山使うので、雁夜に負担を掛けないように最低限の部分のみ隠蔽を行うことで、敵マスターと敵サーヴァントに自分の正体を誤魔化す事も出来る。

そしてこの猫箱の中ではバーサーカーのスキル「犯人幻想」と「魔女幻想」もそれぞれ1ランクアップするのだ。アーチャーが慢心して油断していたこともあるが、最初の一撃が防御されたり、かわされたりせずにアーチャーの顔にあたったのも、その攻撃が他のマスターやサーヴァント達にきちんと認識されなかったのも1ランクアップした「犯人幻想」によるものだ。

また、猫箱の中にいる者たちは、自分たちが猫箱の中にいることを自覚できなくなるので、目の前で宝具を発動させても、この異常が宝具の能力のせいだとは猫箱の中にいる者たちには認識できない。

 

 

 

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)で俺の周りが煙で見えなくなっている。アーチャーを探すとまだ街灯の頂上にいる。馬鹿と煙は高いところが好きだが奴も同類だな。

 

「さっきは危なかったぜ。宝具を破壊するとは勿体ないことをするもんだ。」

 

皮肉を込めて奴に言う。奴は俺が生きていることに苛立っているが俺のボロボロな姿を見て怒りが若干収まりかけている様子だ。

 

「ふん!地を這う姿がお似合いだな狗が!これ以上薄汚い姿を我に見せるでない!」

 

奴の状態を見ると、“黒き真実”により耐久・対魔力がランクダウンしているにも関わらず、最初に一撃を入れた顔以外には大した傷が見えない。ダメージを与えたが鎧を破壊するどころか罅を入れることも出来ていない。奴を殺すにはまず邪魔なあの鎧を破壊するべく再び仕掛けるが

 

 

 

“ぐ・・・・・が、ぐぁ・・・・・・ッ!!”

 

 

 

突如頭の中に悲鳴の声が響いて動きを止めた。

 

 

 

“がぁぁぁぁぁ・・・ッ!!”

 

 

 

「ちッ!!」

 

 

聞き間違いではなかった。恐らく雁夜の体に限界が来たのだろう。そう判断した俺はこのまま撤退行動をする。だが、奴の注意を一瞬でもいいので他に向けなければ撤退することが出来ない。そこで俺は奴の目を他に向けさせる案を思いついたので実行する。

 

「ふん、そんな所にいないで落ちな!」

 

俺のエネルギー弾の攻撃が奴の射出攻撃よりも早いことがさっきので確認できたので、奴の辺り一面に攻撃を放ち一つの攻撃が街灯に当たり奴は飛びのいた。奴は俺の攻撃を察知して躱したが俺の目的は別にある。他のサーヴァントは俺とアーチャーの戦いに巻き込まれないように遠くに避難しているため俺を追うことは出来ない。俺はそのまま闇と化して姿を消し戦場から撤退した。

 

説明
倉庫街の見張るマスター達、戦場で激突する戦人とギルガメッシュ。両者はまだまだ余裕の状態だが・・・・・
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