魔法幽霊ソウルフル田中 〜魔法少年? 初めから死んでます。〜 海鳴防衛大作戦、始動な19話 |
『それじゃあ皆さん、配置につきましたか?』
暴走体出現地点から東に離れた場所、原作ではなのはちゃんが来るビルの辺りに俺はいた。
現在の時刻は3時ぐらい、俺は予定通り都市伝説のみんなが配置についているか確認のため、各所へラップ音で同時に呼びかける。
ちなみに、ラップ音は鳴らす位置、数を自由に設定できるため場所さえ特定できればスピーカーと同じ役割ができるのだ。
無意味に自分の声をステレオボイスなんかもできるよ!
『こっちの準備は整ったよ。北はアタイにまかせな』
『テケテケさん達も準備オッケーだよ! ああ……! 早くヤりたい……!』
『わたしも準備完了だよぉ……! あ、そこのお兄さん足はいらんかねぇ?』
『あたしは大丈夫よ。まあ、瞬間移動できるから場所はあまり関係ないけど』
『同じくわたくしも準備できました。……何名か暴走しそうな方達がいますが大丈夫ですか?』
思い思いの返事が返ってきた。
が、返事の中に幾分か不安しかないものが含まれていた。
おいおい!? ちょっと目を離したらこれかよ!
俺は右を向いてある奴に呼びかけた。
「ティー、南のテケテケさんと南東の足売りさんの頭を冷やしてやってくれ」
「マカセロ、タナカ。……1バンカラ15バン! オシオキターイム!」
俺のとなりを飛ぶティーがカラス仲間に大声で呼び掛ける。
凄いことに海鳴のどこにいてもカラス同士聞こえてるようだ。
『きゃぁぁぁぁっ!? 鳥の!? 鳥のフンが!?』
『あだだだだぁ!? こらカラスどもつつくんじゃないよぉ! ちょ、目を狙うなぁ!?』
「ご苦労だった」
「レイニハ、オヨバン」
ティーに向かってサムズアップする。
少々やりすぎた気がするが問題なしだろう。
何故カラス達がいるのかというと俺達幽霊が、海鳴防衛作戦の準備をしてる最中に「オレタチニモ、テツダワセロ」とティー自らが志願してくれたのだった。
同じ海鳴を守る同士として、今回はカラス達には現状把握のため常に海鳴の街の様子をリアルタイムで伝えて貰う役目を引き受けてくれた。
カラス達が危険な状況にある人達の位置を、一番近い都市伝説に伝言で伝えるというわけ。
あいにく俺は都市伝説じゃないから、必然的に幽霊が見えるティーがバディになる。
「……ここまで戦力が整ったなら間違いなく大丈夫なんだろうが……」
「……マダ、ナニカフアンガ、アルノカ?」
心配そうに呟く俺を、ティーが不思議そうに見ていた。
……実の所、ティーの言うとおり不安要素がたった一つだけあるにはある。
「まあ、気にするな。まさかこんな肝心な場面でイレギュラーなんてでるわけないだろう」
「オイ! ヨクワカランガ、フラグタテルナ!?」
まっさかー、初めの暴走体みたいにおかしな奴なんてありえんわー。
海鳴のとある場所、そこには少年と少女が仲睦まじく並んで歩いている光景があった。
少女は少年と話すのが楽しいらしく顔に笑みを浮かべているが、少年の方は少し緊張気味だ。
(だっ……大丈夫だよな……? 上手くいくよな……?)
少年の内心は見た目以上に穏やかではない、心臓はバクバクと脈打ち顔は赤くなっていないだろうかと冷や汗をかく姿を見れば、一目でこれから少女に告白を行おうとしているのが分かる。
少年と少女の付き合いも、幼いころから随分とある。
それに、今回は『きっかけ』だってあるのだ。
(サッカーの試合も、いいとこ見せて勝ったんだ! それに『プレゼント』もある、今日こそ想いを伝えるんだ!)
そう、少年の所属しているサッカーチームは今日の試合少年のゴールによって勝利を収めた。
そして今朝道端で拾った『青いきれいな宝石』もある。
あとは、自分の気持ちを正直に、実直に伝えるのみ、少年は手の中にある宝石を握りしめる。
「あ、あのさっ!」
「? なあに?」
振り向く少女、少年はその無邪気な表情に一瞬だけ怯みそうになる。
だが、そんな弱気を勇気で抑えつけて、少年は両手を差し出した。
「こ、これっ! 受け取って欲しいんだ! それと、俺、君のことが……!」
「えっ?」
『想いよ届け』思わずそう少年が願おうとした『直前』
『ジュエルシードをみつケタ……! おレガフウインする。ははハはハハは……!』
「「えっ?」」
邪悪な声に、全てが台無しになる。
光の柱が、海鳴の街の中心で轟音と共に出現した。
「来たか!」
「アレハ!?」
初めてジュエルシードの発動を目にするティーは驚いていた。
一方俺は注意深く暴走体を観察する。
(どうなんだ……? 原作通りか『イレギュラー』か……?)
光の柱の中から、一本の樹がどんどん巨大化していく様子が分かる。
原作通りなら一気に森が広がる……。
いや、待て。
『一本』しかない?
「ッ! 違う!?」
見れば周りのビルを遥かに超える高さの『大木』が、枝や根を鞭のように振り回し始めた。
間違いない、原作とは違う『イレギュラー』だ。
ちくしょう! フラグ建てた途端にこれかよ!
言うもんじゃなかった。
「ティー! 作戦内容を少し変更するからみんなに伝えてくれ! 『イレギュラー発生、市民の救助だけでなく、倒さない程度に攻撃を加えて迎撃せよ』!」
「ワカッタ、マカセロ!」
俺はとなりのティーに指示を出す。
都市伝説のみんなはジュエルシード発動と同時に既に動き出している。
ラップ音は場所が確認できないから移動しているみんなに伝えるのはティー達にしかできないのだ。
「頼む……! なのはちゃんが来るまで誰も傷つかないでくれよ!」
俺にも何かできるかもしれない、そう思い暴走体の下へ向かっていった。
〜被害にあった人々〜
その1
「はあ……な〜んであたしがこんなことしなくちゃなんないんだろうね……」
リーゼロッテは海鳴の街でため息をついていた。
もちろん、猫形態ではなく人間体で、ネコミミは帽子で隠し、尻尾は服の中にしまっている。
普段は八神家を監視している彼女が、どうして街をうろついてるのかというと。
「お父様……。ばあさんから『ニンポー』の技術を盗んでこいって……。本当になんであたしが……」
そう、グレアムおじさんはまだ『ニンジャ部隊』設立を諦めてなかったのだ!
『直接、『ニンジャ』らしい人物にニンポーを教わることができないなら技術を見て盗めばいい! よし、そうと決まればロッテ! まかせたぞ! なあに一度君はニンポーをその身で受けているんだから大丈夫だろう!』という謎理論の下でロッテは足売りばあさんを監視しているのだが……。
「どこいった、あのばあさん! 突然スーツのおじさんと一緒に消えちゃうし、アリアは八神家の監視で手が放せないし、散々だよホント……」
はあ〜と本日何度目か分からないため息をつくロッテ。
ちなみに足売りばあさんがいきなり消えたのは、異次元おじさんの仕業である。
「ッ!? この気配は……ジュエルシード?」
と、突然現れた『嫌な予感』にロッテは身構える。
以前から地球にいるため、この街にロストロギアであるジュエルシードが散らばっていることは知っていた。
ついでに言うと、現地人らしき少女がスクライアの少年と共に回収しまわっていることも知っている。
「あちゃー、ずいぶん規模がでかいね。あの女の子大丈夫かな」
グングン巨大化していく大木をみてロッテは手伝おうか、と考えをよぎらすが本来自分たちが地球にいることは内密であることを思い出す。
迂闊に手を出すのは躊躇われた。
結論、『ホントに、本当に危なくなったら手助けしよう』というところに落ち着いた。
「あたしも暇じゃないしね。さっさとあのばあさんを見つけ――――
「アハハハハッ! やっぱり木ならチェーンソーだよね!!!」
「ブフゥゥゥッ!?」
さあ足売りばあさんを探しにいこうと足を踏み出したロッテは見てしまった。
『上半身だけ』のランドセル背負った女の子が、肘だけで動いてチェーンソーでバッサバッサと木の暴走体の枝を切り刻む姿を。
あんまりにも異様すぎる光景に思考と体がフリーズする。
それがいけなかった。
シュンッ!
「きゃああっ!? しまった!?」
両足首をツルで縛られ、思いっ切りつり上げられてしまった。
体勢を崩してしまい、思うように抵抗できないロッテに次々とツルが巻きついてゆき――――
シュンッ! シュルンッ! シュルシュルッ!
「ちょっ、こらどこを、あんっ、くすぐったいって! っていやあぁぁああっ!!?」
――――見事な『亀甲縛り』の完成である。
「もう嫌ぁっ! 最近こんなのばっかしいいぃぃ!」
やっぱりロッテさんエロい。
その2
同時刻、海鳴図書館前。
暴走体のツルが迫る中、そこには二人の男女が言い争っていた。
「もうっ! 館長早く逃げますよ!」
「それは出来ないんだ! 分かってくれ司書くん!」
そう、この海鳴図書館の館長とその司書である。
突然現れた大木は、街をそのツルで破壊しながら着実に自らの領土を広げていく。
もうすぐこの図書館も被害に遭いかねないために非難をしようとしているのだが、この通り館長が動かないのだ。
「館長! 命あっての物種なんですよ!? 死んでしまったら何も残らないんです! 逃げて下さい!」
司書は館長の手を掴むが、パチンとその手を弾かれてしまう。
「館長!!!」
「司書くん、((図書館|ココ))は私の夢なんだ」
館長は唐突に語る。
自らが何故動かないのかを。
「よくある話だが、私は貧乏な家に生まれたんだ」
「小さいころは碌に食べられないほど貧しくてね……、おかげで昔から病弱で、外に出て元気よく遊ぶことも出来なかった」
「友達も出来なかった私の唯一の友達が『本』だ」
「彼らは私にあらゆる物語を、知識を、感動を私に教えてくれた。本は私にとってかけがえのない親友でもあり先生でもあったんだ」
「しかし、さっきも言った通り私の家は貧しい。本なんて買う金なんてありもしなかった、私が読んでいた本は大概はゴミ捨て場で拾ったりした物だからね」
「だから、初めて図書館に来たときは感動で涙が出たよ。『タダで、こんなにたくさんの本が読めるの!?』ってね」
「それからだ。私はいつしか館長になって『私と同じような子供たちにこの((素晴らしい場所|図書館))で((最高の友達|本たち))とふれあって欲しい』と」
「か、館長……!」
海鳴図書館長まさかの重い過去に触れ、思わず感動の涙を浮かべる司書。
館長は更に語る、己が秘めし強き意志を。
「この図書館は、私の夢であり子供たちの大切な出会いの場所なんだ」
「こんなわけのわからない木なんかに壊されやしない、守り抜く。小説を、漫画を、絵本を、そして――――――――
――――((エ ロ 雑 誌|紳士のロマン))を !!!」
「ちくしょうやっぱりそんなオチだと思ってましたよ!!! 図書館にあんな不謹慎なコーナー作るような人ですし!!!」
「ええい離せ司書君! 私の苦労して集めたコレクションが! 10年前に廃刊になった『超快天〜素人だらけでヌッキヌキ〜』最終巻があああああああああ!!!」
「感動して大損しましたっ! さっさと逃げますよ!!!」
「タナカ! 『イジゲンオジサン、エキマエニテ、6メイキュウジョ』! トコトコサンブタイカラ、『ソノフキンニテ3メイ、『ツル』ニヨリヒナンデキズ、ヒトダマデ、ヤケ』ダソウダ!」
「オーケー分かった! すぐ行く!」
暴走体により大混乱に陥る海鳴の街を、俺とティーは飛び回っていた。
時折、ティーが他の都市伝説の人たちの活躍をほぼ生中継で教えてくれるし、送られてくる情報を頼りにお互いをサポートし合っていた。
「いた! 待っててくれ、すぐ助ける! 爆ぜ散れっ、人魂シュート!」
下をみるとボクシングのリングロープみたいな感じで3人ほど取り囲まれていた。
すぐさま人魂を打ち込み、爆風を『外側だけ』にするイメージで人を傷つけずツルの壁に脱出口を作り出す。
「な、なんだ今の爆発は!」
「みて! 穴が開いてるわ、今のうちに逃げましょう!」
「やったぞー! 助かった!」
突然のことに驚いてはいるが、逃げられると気づいて嬉々として駆け出す人々。
俺は隣にいるティーに呼びかける。
「『こちら東側の田中、報告通り3名の救助に成功した』、伝えてくれ! あと、ほかの都市伝説の人達の様子は!?」
「リョウカイダ。『メリーサン、テケテケサン、トコトコサン、ボウソウタイノケイゲキニシュウチュウ、イジョウナシ』『イジゲンオジサン、アシウリバアサン、シミンノキュウジョニシュウチュウ、イジョウナシ』ケガニンハ、ダレモイナイ!」
よかった! まだ誰も怪我をしていない!
街は少し被害をうけて幾つか崩れた建物もあるが、俺はほっと胸をなでおろす。
正直言って、今回の暴走体は予想以上に危険だ。1本の木だから原作より範囲が狭くなっているとはいえ、攻撃性が段違いなのである。
無数に生えている枝を無差別に振り回し、巨大な根っこで栄養を吸っていまだ巨大化し続けるそのすがたは、まるで自分の力に酔っているかのようであった。
一体、どんな願いをしたらこんな某魔法使い映画の『暴れ柳』的な木が生まれるのか見当がつかない。
「ッ!? タナカ! ハナコサンカラ、『キンキュウジタイ』ダ!」
「なに!?」
考えていると、ティーが突然大声をだした。
花子さんから、それも『緊急事態』だって……!?
「『ボウソウタイノ『ネモト』ニ、ショウガクセイノ、ダンジョ2メイハッケン。タダチニムカエ』!」
「なっ、なにいいいいいいい!!?」
俺は全力で高速飛行を行い、一気に暴走体との距離を詰めていく。
ティーを置き去りにしてしまったが、後で追いついてくれるだろうから心配はしていない。
ただ、俺が不安になっているのは『小学生の男女2名』がよりによって暴走体の根元にいることである。
危険なのは間違いないのだが、疑問を感じずにはいられないのだ。
なぜなら、今回の暴走体は原作ならばおそらく――――
ガラガラガラ!!!
「見つけってうわああああ!? 瓦礫が!?」
辿り着いた途端大ピンチだった!
確かに暴走体の根元には少年と少女が2人、ただし暴走体が振り回したツルがビルに当たり、砕けたビルの残骸が正に二人を押しつぶさんとしている!
(ヤバイヤバイヤバイ!? どうする! ポルターガイストじゃあんなでかい瓦礫支えきれん! ――――ええい!)
一瞬だけ思考に入ろうとした頭を一蹴、考えるより先に本能で人魂を両手で作りそのままのスピードで『瓦礫』に突っ込む。
「うおおおおおおおおっ!!! 吹き飛べ! 吹き飛べっ!! 吹き飛べええぇええぇええぇっ!!!」
落ちてくる瓦礫を側面からありったけ吹き飛ばすイメージの人魂を最高速で押し付ける!
結果、ズドン!!! と轟音と共に瓦礫は暴走体に打ち込まれた、メシメシメシ! とめり込んでいる。
真下にいる2人は無事だ。
「はぁ、はぁ……。よ、よかった〜」
今度こそほっと一息ついて俺は2人のもとへ飛び寄った。
どうやら気絶しているみたいだ、しかしやはりこの2人は――――――
「間違いない……! この子たちは『発動者』だ」
そう、原作ならこの二人が今回のジュエルシードを発動させてしまう『張本人』達のはず。
見たことのある顔だから間違いはない。
しかし、この子たちは『ジュエルシードに取り込まれていない』。
ジュエルシードは発動者を取り込む性質がある、ということはこの子たちは今回『なにもしていない』のだ。
「じゃあ一体、『誰』が暴走体を――――――
シュンッ!
そう考えた瞬間、俺の腹に強烈な衝撃が叩き込まれた。
「がっ!?」
鈍い痛みに、少しだけ後ろに後退してしまう。
見てみると、暴走体のツルが俺の腹に『めりこんでいた』。
「そん、な。こいつもっ……!?」
『触れている』、都市伝説でもない実体を持たない俺に。
初めの暴走体と同じように。
『おおオオおオオオおおッ!!!』
「『顔』が!?」
直後に雄叫びを上げる暴走体、その表面にはまるでRPGのモンスターを思わせるような『顔』が映し出されていた。
しかも、その目は明らかに『俺を睨みつけている』。
『田中! しっかりしな!』
「花子さん、一体、こいつは……!?」
花子さんのラップ音が聞こえる、どうやら花子さんの位置からこちらは見えているらしい。
そのまま花子さんは続ける。
『今のアンタへの攻撃で確信した、そいつの正体がわかったよ!』
『アンタみたいな『都市伝説じゃない幽霊』も認識できるのは一種類だけ。つまりそいつは――――
まさか、薄々感づいていたがこの暴走体は。
『アタイらと同じ『幽霊』だ。木にとりつくタイプの『妖木』、しかもジュエルシードで力を増した『悪霊』だよ!』
説明 | ||
VS暴走体です、ただし少し違う。 そして増えていく新キャラ、この人たちは特に本筋とは関係ありません、でもこれからも出す予定。 |
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