IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「いらっしゃいませ。@クルーズへようこそ」

 

「あ・・・はい・・・・・」

 

「ど・・・・・どうも」

 

俺に出迎えられたお客さんは、みんなこんな反応をする。

 

「二名様ですね? こちらへ」

 

お客さん二人をテーブルへ案内する。

 

テーブルへ着くと、お冷を出して、メニューを差し出す。

 

「ご注文がお決まりになられましたら、店員をお呼びください」

 

一礼して、テーブルを離れる。

 

「ねぇねぇ! 今の彼、すっごくカッコよかったわね!」

 

「もしかしたら、本物の執事さんだったりして! きゃー!」

 

俺がテーブルから離れると、お客さんがキャッキャと騒ぐ。

 

そのテーブル以外のお客さんからも、なんだか視線を感じる。

 

「桐野君! これ三番テーブルのお客様へお願い!」

 

「あ、はい」

 

店長さんの指示を受け、ケーキセットの載ったトレーを三番テーブルに運ぶ。

 

「お待たせいたしました。ケーキセットでございます」

 

「は、はい」

 

テーブルにケーキを紅茶をカップに注ぐ。

 

「また何かありましたら、店員をお呼びください」

 

「あの!」

 

立ち去ろうとしたら引き留められた。

 

「はい?」

 

「よ、良かったらメアド教えてくれませんか!? あ、コレ私のメアドです!」

 

「え・・・・・」

 

そして、本日四回目のコレだ。三回目までは何とかやんわりと断ってきたが、このお客さん、目が必死だ・・・!

 

「お友達から始めましょう!」

 

「え〜と・・・・・」

 

困っていると、奥の方からメイド服姿のシャルがヘルプに来た。

 

「申し訳ございませんお客様。当店ではそのようなサービスはしておりませんので」

 

「うわっと! 背中押すなって。で、ではごゆっくり」

 

「あ、待ってぇ〜!」

 

シャルに押されて、店の奥の方へ退避する。

 

「サンキュ。助かった」

 

「ううん。気にしないで」

 

シャルはニコッと笑った。

 

「似合ってるな。それ」

 

シャルのメイド服姿を褒める。シャルのメイド服姿は学園祭で見たことがあるが、この店の衣装もよく似合っている。

男性客の視線を釘づけにしているのも頷ける。

 

「そ、そう? 本当に?」

 

シャルはスカートの裾を弄りながら上目使いで見てくる。

 

「ああ。そこらのメイドさんより可愛い。って、身近にメイドさんがいないけどな」

 

「ありがとう。瑛斗もよく似合ってるよ」

 

「マジで? お客さんからの視線が凄くて変なんじゃないかと思ってた」

 

「それは瑛斗がカッコいいからだよ」

 

「お、おう。ありがとう」

 

カッコいいと言われて、少しばかり照れる。

 

「デュノアちゃーん、桐野くーん! こっちお願いできるー?」

 

「あ、店長さんが呼んでる。行こうぜ」

 

「う、うん」

 

そしてまた接客に戻る。

 

それから小一時間くらいたったころだろうか、俺の悪い予感が的中した。

 

 

 

バン!

 

 

 

一際大きい音を立てて、店の入り口のドアが開いた。

 

「全員! 大人しくしやがれ!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

覆面を被った大柄の男が、ズンズンと入ってきて大声で叫んだ。その手には黒光りする拳銃が握られている。

 

そして、その大柄の男の後ろから三人、また別の覆面を被った男たちが入ってくる。

 

「大人しくしろっつってんだろ!!」

 

パン! パリン!

 

男が銃口を天井へ向け引き金を引くと、弾丸が飛び出して電球が割れた。

 

そこでザワザワと騒いでいた店内が一斉に静まる。

 

「いいか。全員店の中央に集まれ! さっさとしろ!」

 

大柄の男の命令で、俺たちは店の中央で座らされる。

 

「・・・・・え、瑛斗。これって・・・・・・・」

 

シャルが声を潜めて耳打ちしてくる。

 

「ああ・・・・・。ドラマチックな展開だよ・・・・・・・」

 

俺とシャルは、入ってきた四人を観察する。

 

「でけえ鞄を持った男が一人、拳銃を持った男が一人・・・・・パッと見は・・・・・・・」

 

「・・・・・強盗の帰りに、警察に追われてここに立て籠もったってところか・・・・・・・」

 

ひそひそと耳打ちしていると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

 

「ちっ! もうサツが来やがったか!」

 

「ま、不味いっすよ兄貴! ここって伝説の強盗撃退メイドと執事がいる店ですぜ!」

 

「るせえ! 執事だろうがメイドだろうがなんでも来いってんだ!」

 

リーダー格なのであろう男は意気込む。

 

『えー、立て籠もっている強盗団に告ぐ。お前たちは完全に包囲されている。大人しく出て来なさーい。田舎のおっか

さんも泣いてるぞー』

 

ドラマでしか聞いたことのない警察からの説得の声が聞こえてくる。

 

「瑛斗・・・・・、目がキラキラしてるよ?」

 

「いやぁ、まさかこういう現場に立ち会えるとは思ってなかったんでな」

 

不謹慎とはわかっていても、ドラマみたいな展開で面白い。

 

「そこのメイド!」

 

なぜかシャルがご指名を食らった。

 

「え? 僕?」

 

「・・・・・みたいだな」

 

「お前はこっちへ来い! 俺様の第六感が嫌な予感を告げてる。早くしろ! 他の連中がどうなってもいいのか!?」

 

銃を向けられ、悲鳴を上げる客たち。

 

「シャル・・・・・」

 

「・・・・・ここは従うしかないみたいだね」

 

シャルが立ち上がり、椅子に座らされて、手足を縛られた。

 

「さあて、残りの連中も大人しくしててもらうぜ? 頭ぶち抜かれたくなかったらな。ハハハ!」

 

男の高笑いを最後に、しばらく強盗団と警察のにらみ合いが続いた。

 

それから三十分ほど経って、強盗団のメンバーの一人がリーダー格の男に話しかけた。

 

「ねえボス・・・・・私お腹空いちゃったんだけど」

 

「んだよ。そんなもん我慢しろ」

 

話し方からすぐわかった。アイツ、あっち系の人だ。

 

「だってぇ、食べてみたいのよぉ。あ・の・こ♪」

 

なぜかこっちを見てそんなことを言うあっち系の人。

 

「・・・・・ハァ。好きにしろ」

 

「あはん。ありがとぉ」

 

身をくねらせてから、俺の方へ近づいてくる覆面あっち系。略して『ふくあち』。

 

「ねえ坊や? 私といいことしなぁい?」

 

俺の顔に触れながら、自分の顔をこっちに近づけてくる『ふくあち』。

 

「・・・・・・・・・!」

 

俺は一瞬考え、ピコンと頭の豆電球が光った。

 

「いいですよ。こんな俺でよかったら」

 

「きゃっ。もう上手なんだからぁ」

 

立ち上がって、店の奥へ歩き出す。

 

「瑛斗・・・・・・・」

 

去り際シャルの心配そうな瞳が見えた。

 

(俺に任せろ)

 

そんな意味を込めたウインクして、俺は『ふくあち』と共に店の奥へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「うふふ・・・・・さあて、どこからいただこうかしら?」

 

覆面をとった『ふくあち』は、思った通りあっち系の人だった。化粧がケバいことケバいこと。

 

「悪いな。あんたがいただくのは・・・・・・・」

 

「へ?」

 

「鉄拳です」

 

ゴギャッ!

 

G−soulを腕だけ展開し、グーパンチを顔面に食らわせる。

 

「ぶぎゃあ!?」

 

もろに入ったその拳は、『ふくあち』を壁にメリ込ませた。

 

「なんだ!? どうした!?」

 

大きな音に気付いたのか、メンバーの男の一人が様子を見に来た。

 

「ふんっ!」

 

「がはっ!?」

 

脇腹に肘鉄を叩きこみ、その男も気絶させる。

 

「さてと・・・・・」

 

俺は気絶させた男の服を剥ぎはじめ、それを執事の衣装から着替えて覆面を被った。

 

「これでよし。待ってろシャル!」

 

俺は意気揚々と強盗団のいる場所へ戻った。

 

「おう。何があった?」

 

「いえ。特に異常はありませんでした。アイツがあの執事を物色してるだけです」

 

「そうか・・・・・ん?」

 

大柄の男が異変に気付いた。

 

「お前・・・・・縮んだか?」

 

「元からこのくらいだ!」

 

ガッ!

 

足を思いっきり上にあげ、男の顎に一発蹴りを入れる。

 

「・・・・・・・・・」

 

クリーンヒットした蹴りで、男は仰向けにぶっ倒れた。

 

「あ、兄貴! てめえよくも!」

 

小柄な覆面の男が、拳銃を拾って俺に向ける。

 

バン!

 

「うっ!?」

 

男の手から拳銃が吹き飛んだ。

 

「瑛斗はやらせないよ」

 

見れば、シャルの手には小型マグナムが握られている。その頭にはラファールのヘッドギアが

 

「あんな軽い拘束なんて、あっという間に解けちゃうんだから」

 

ニッと笑ってさらに銃口を向ける。

 

俺も落ちた拳銃を拾って、男の頭に突きつける。

 

「じゃ、これで王手だな」

 

「ご、ごめんなさいぃ!」

 

男の土下座で、事件は終息した。

説明
@クルーズ事件再び!
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