真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第7話] |
真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜
[第7話]
不気味な声が聞こえていた次の日。
魏延は長旅の疲労からか、今度は風邪をひいてダウンしてしまいました。
でも、風邪の所為で熱があるというのに、何故だかとても嬉しそうです。
2日ほど看病したら魏延の熱は大分下がり、快復の兆しをみせました。
この調子なら大丈夫だと判断し、ボクは再び呂蒙を護衛に司馬徽邸へ向かったのですが、又もや不在。
仕方が無いので、また手ぶらで街へ向かって歩いていました。
「刹那様。今回も会えませんでしたね」
「そうですねぇ」
(まあ。いつ会えるのか分からないのも又、楽しいものですしね)
そう思いながら街へ歩いて行くと、小川の近くに立派な体格をした大きな白馬が居ました。
馬は川辺で水を飲んでいるようです。
何故にこんな立派な体格をした馬が居るのかと不思議に思って馬に近づいて行くと、馬は気配を察知したのか首をボクの方へ向けてきました。
馬は暫くボクを見詰めた後、おもむろにパカッパカッと近づいて来ます。
お馬さんの瞳は澄んでいたので危険は無いと判断し、ボクは馬の顔をナデナデしてあげました。
ボクに撫でられてか、馬は気持ち良さげな表情を見せます。
立派な体格の割には、大人しい性質の馬さんでした。
「刹那様。立派で大きな馬さんですねぇ」
「そうだねぇ。何故こんな所にいるのですかね? 不思議です」
ボクと呂蒙が馬を批評していると、街の方角から2人ほどやって来るのが見て取れました。
呂蒙が2人を認識すると、疑問の声を発します。
「あれ? 張さん?」
「知り合いですか?」
「え? はっ、はい。襄陽まで護衛して来た商人さんです」
「あぁ、あの……」
呂蒙の知り合いの素性を聞いたりしていると、2人がボクたちの((傍|そば))までやって来ました。
2人が近づいて来た為か、お馬さんは息を荒くして威嚇しはじめます。
「おやおや。これは呂さん。馬を捕まえて下さったようで、ありがとう御座います」
商人風の人物が知り合いなのか、呂蒙に話しかけて来ました。
「いいえ、張さん。どう致しまして」
「この馬は手前が市場でセリに賭けているところ、いきなり逃げ出してしまいましてね。探していたのですよ」
ボク達にお礼を言って、もう片方の人物が馬に手綱を仕掛けようとします。
すると馬は、いきなり暴れ出しました。
今まで大人しかったのに豹変です。
慌てて商人達が馬から離れると、馬はボクの後ろに隠れるように来てしまいました。
「……好かれているのですかね?」
「そうみたいです。良かったですね、刹那様」
馬の行動を好意の表れかと呂蒙に問いかけると、彼女は同意してくれました。
その後、商人たちは馬の捕獲を2〜3度ほど試みましたが、やはり手が付けられません。
「……どうやら((此|こ))の馬は、あなた様のところへ行きたいそうですな」
「そうなのかい? 馬くん」
張という名の商人は、溜め息をつくように話しかけてきました。
ボクは確かめるべく馬に問いかけると、馬は肯定するかのように『ブルッ』と鳴きます。
どうやら、そのようでした。
「どうでしょう。この馬を、買っては貰えないでしょうか?」
「う〜ん。でも、高いのだろう? この体格だもの」
「はい。お安くはありません」
商人に話しを聞くと、白馬は北方の匈奴の産らしくて結構な御値段でした。
さすがは商人ですね。さっそく商談を持ちかけてきました。
馬を連れ帰るのを諦めても、ただでは起きないと云ったところでしょう。
(でもまあ、良いか。何かの((縁|えにし))かもしれないしね)
ボクはこれも何かの縁と思い、馬を買う事に決めました。
何故だか分かりませんが、馬さんの目が懇願しているように感じられたからです。
買い取り交渉をしようと思っていたら、商人の方から話しかけて来ました。
「申し遅れました。手前、馬などを商っております張世平と申します」
「そうか。ボクの姓は劉。漢中の太守をやっているよ」
「え?! そっ、そうで御座いましたか、漢中の劉太守様で。これは、これは。ご無礼を致しました」
「気にしないで良いよ。お忍びだしね」
張世平はボクの素性を知ってか、少し恐縮して仕舞いました。
今迄、どこかの裕福な御曹司とでも思っていたのかも知れません。
それとも、御令嬢かな?(苦笑)
「では。呂さんは、太守様に仕官なさったのですか?」
「はい。ご縁があって仕官出来ました」
張世平は、呂蒙が仕官先を探していた事を知っているらしく確認していました。
そのあと張世平は、何かを思案してから話しかけてきます。
「……そうでしたか。では、この馬は献上品とさせて頂きます。お代は要りません」
「良いのかい?」
「はい。これを機に御縁頂けますならば、嬉しく思います」
「ふ〜ん、そう。ありがとう」
張世平は、あっさりと高価な馬をボクに献上すると言い放ちます。
意外と先を見越す事が出来る人物なのかも知れません。
そんな商人ならば伝手を持っても問題ないと判断し、ボクは好意を受け入れました。
「漢中に来る事があったら、城に来ると良い。待っているよ」
「はい。その時には、是非」
「それと。随行人が亞莎ともう一人居るのだけれど、他に良い馬はあるのかな?」
「はい。希望に添える馬があると自負致します」
こうしてボクは、これから愛馬となる立派な白馬(命名:調和)と出会いました。
街に戻り張世平の商い場に行くと、早速に馬を見せて貰います。
言うだけあって、どの馬も一級品ばかり。
そこで馬2頭を購入すると、ボクたちは宿に帰りました。
「お帰りなさい、刹那様。亞莎」
「ああ、焔耶。ただいま」
「焔耶さん、ただいまです」
ボクと呂蒙が宿の馬小屋に馬をしまっていると、風邪引きの後に大事を取って休ませていた魏延がやって来ます。
交換し合ったのか、魏延と呂蒙は真名を呼び合っていました。
仲良く成ってくれて、良かったです。
それと、最近なぜだか言葉が丁寧になっていました。
何かあったのでしょうかね?
「ところで刹那様。何故に人では無く、馬が増えたのですか?」
「あー、うん。今日もね、訪ね人に出会えなかったんだ。でもね、代りに調和と出会えたんだよ」
「調和?」
「そう。この馬さ」
ボクは魏延の疑問に答えると、そのまま新しく愛馬になった調和の所に彼女を連れて行きました。
暫くその体格や毛並みを眺めていた魏延は、調和の前に仁王立ちして言い放ちます。
「ワタシは魏文長だ。お前は調和と言うそうだな? これからは、チャンと刹那様をお守りしろ。良いな!」
調和は魏延の言葉に耳を傾けず、プイッと横を向いて小憎らしく『ブヒッ』と鳴き声を上げました。
「お前! 馬の癖に生意気だぞ?!」
調和の態度に腹を立てた魏延は、馬小屋の仕切りの取手に身を乗り出しました。
「へぶぅっ?!」
調和は頭が良いのでしょうね。
魏延が顔を乗り出すタイミングに合わせて、頭でカウンターの頭突きをかましました。
頭突きを無警戒で顔面に喰らった魏延は、地面に横たわって((痙攣|けいれん))しながら気絶しています。
大丈夫でしょうかね?
「……あのね、調和。なるべく仲良くしてあげてね? 仲間なんだからさ」
ボクが調和にそう言うと、『ヒヒンッ』と肯定するかのような鳴き声を上げました。
本当に分かってくれたのでしょうか?
心配です。
「あっ?! 刹那様、この子メスみたいですよ?」
ちゃっかり避難していた呂蒙さんが、調和を下から覗き込んで言いました。
だから何? 何なの?!
誰か教えて下さい、お願いします!
説明 | ||
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。 皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。 でも、どうなるのか分からない。 涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。 『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。 *この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。 |
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