魔法少女リリカルなのはmemories 第二章 再開するまでの記憶(メモリー) 第十六話
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 フォルベルクが先ほど居た部屋に戻ってくると、そこは先ほどとかなり変わっていた。

 機材などは壊れており、部屋全体が焦げたようで黒ずんでおり、何もかもが壊れていた。

 一体何があったのか、フォルベルクはそう思い始めると、先ほどこの部屋を任せていた研究員が背中を壁に付けていた。

 

「おい、大丈夫――」

 

 フォルベルクはすぐにその研究員の所に駆けつけて声を掛けるが、途中で言葉が止まってしまった。

 フォルベルクが入ってきた扉からは見えていなかったのだが、近づいて気づいてしまったのだ。全身が火傷し、体の胸辺りから腹辺りまできれいに建てに切り裂かれており、内臓が外に飛び出していたのだ。

 

「うっ、」

 

 余りにもグロすぎる研究員の姿をみて、さすがに吐き気がして胃が逆流し、近くで吐いてしまった。毒ガスで人を殺したりは実験であるが、このように大量の血が溢れ出して内臓が出てくるようなものは初めて見るため、耐性が全くなかったのだ。

 しかし、すぐに冷静さを取り戻し、状況を確認することにする。

 

「一体、私と通話が切った後に何があったのだ? ここに来るまで爆音などは聞こえなかったし、それにここは防音というわけではないから、こんな事があれば何か音が聞こえてきてもおかしくない筈だ。一体何が――」

 

 この部屋を見渡していると、突如ある事に気づく。先ほどまでこの部屋に居た筈の人間が一人居ないのだ。

 確かにこの部屋はフォルベルクが部屋を出る前まではフォルベルクとフォルベルクが任せた研究員の二人しか居なかった。しかしこの部屋にはもう一人居た筈だ。

 そう、ポットの中に居た筈の少女が先ほどから見当たらないのだ。ポットはもはや原型が無いほどの形をしており、ガラス部分はもはや粉々になっていたのだ。

 

「そういえば――」

 

 フォルベルクはここに来るまでの事を思い出した。この部屋に来るのにかなり急いでいたために余り気に留めてなかったのだが、通路に気になる跡があったのだ。

 それは、廊下の通路に血の跡がいくつか続いていたのだ。しかし廊下に血の跡が付くのはこの研究所では、手荒な真似をしてでも実験に使う人間を連れてくるので、余り珍しくなく、何の血の跡か分からなかったため、後で調べれば大丈夫だろうと思っていたくらいだったのだ。

 しかしその跡はこの部屋から続いていた。それがどんな意味を指すのかフォルベルクは今更ながら気づいたのだ。

 多分、ポットあら逃げ出した少女が部屋に居た研究員を殺し、この部屋から逃げて行ったときに、少女の体のどこかに傷があって、そこから血が地面に垂れて付いた跡だろう。それが本当なら大変な事だった。

 もし、フォルベルクが思った通りなら逃げ出した少女が研究員を殺したのなら、他の研究員にも被害が及んで殺されるかねない。いち早く少女を見つけなければいけなかった。

 フォルベルクはすぐに部屋を飛び出し、少女から垂れた血だと推測しながら血の跡が続いている方向に走り出した。

 頭の中では危険信号が鳴りっぱなしだった。嫌な予感しかしてなかった。

 数分走り続けていると、途中で研究員と遭遇した。研究員の方は何か事件が起こった事を全く分かっていないような感じだった。逆にフォルベルクが走ってきている事に気になっているような感じだった。

 

「フォルベルク研究長? 通路を走ってどうしたのですか?」

「おい、こちらに少女が歩いてこなかったか? 今、ポットで実験してた少女なんだが……」

「いえ、私は見てませんよ。私はいつも通りの仕事をこなして、ここを歩いていただけなのですから」

「そうか、分かった」

 

 遭遇した研究員が見てないという事は、もうかなり先まで少女は逃げたという事になる。フォルベルクはそう思うと、先ほどより少しスピードを速めて走る事にした。

 フォルベルクは十代の時に、魔法の鍛錬の他に毎日家があった町の周辺を2時間走っていたおかげか、今でも息切れせずに全然走る事が出来ていた。

 しかし、フォルベルクは先ほど会った研究員に違和感を感じていた。どうしてか分からないが、先ほども会ったような感じがしていたのだ。けどそんな事は後で考えれば良いと思い、まずは少女を捕まえる事を優先するのだった。

 そしてそれから数分して、フォルベルクが通路の角を曲がると、十メートル先くらいに壁に寄りかかってポットの中に居た少女が倒れていた。

 また、少女を見つけた事によってある疑問が思い始めた。

 先ほど会った研究員の所から少女が倒れている所まで、全く離れていないのだ。しかも、ここまでの通りは一本道であるため、先ほどの会った研究員が倒れている少女に気づかないわけがないのだ。

 そしてまた、先ほど感じていた違和感に気づいた。先ほどすれ違った研究員は少女を実験していた部屋で、腹を半分に切り裂かれていた研究員と顔が全く一緒だったのだ。別にその研究員が双子であるというわけでも、唯似ている研究員が二人いるというわけでもない。そうなると一つしか考えられなかった。

 しかし、その事に気づくのが遅すぎた――

 

「動かないでもらえるだろうか? フォルベルク研究長。いやフォルベルク三等陸佐」

「っ!?」

 

 背後から突如声が聞こえてきた。その声は先ほどすれ違った研究員と同じ声だった。

 顔を少し横にして自分の背後を見ると、そこに居たのは予想通り体の真ん中を切り裂かれ、また先ほど遭遇した研究員だった。

 彼の右手には魔法が使える世界にとって場違いに近い拳銃で、それをフォルベルクに向けていた。

 

「それにしても、出来すぎたくらいに俺の術中に引っかかるとは思わなかった。少しぐらい予想外な事態が起こってもおかしくないと思っていたのだがな」

「…………」

「ちなみに、銃が発砲した瞬間に魔法で守ればいいと思っているなよ。銃弾には魔法を貫通するようにある研究員にコーティングさせたからな。どんな魔法でも無意味だ」

「……お前は誰だ?」

 

 フォルベルクは冷や汗を掻きながら、背後に居る彼に聞く。

 しかし、彼はその質問に笑うのだった。

 

「俺が誰だって? おいおい、一週間潜んでいたとはいえ、それにすら気づいていなかったのか? まぁ、俺がそのように魔法で仕向けたのだけどさ。けど、もうその魔法は解いている筈だから気づくと思うのだが」

「……まさかお前、フィルノ・オルデルタかっ!?」

「その通り!! けど、俺を死なせた時から魔法を解いていたのに、今まで思い出せなかった事はさすがにイラついたな。俺の両親を死刑に仕向けた屑どもが、俺の事を簡単に忘れなんてさぁ」

 

 フィルノの言葉にフォルベルクはかなり見覚えがあった。いや、無い方がおかしいくらいだ。なんせ、彼が言った『((件|・))』に、自分はかなり関わっていたのだから――

 

「――お前がフィルノ・オルデルタだという事は分かった。けど一つ聞いて良いか?」

「内容によるがそれくらい構わない。どの道、お前はここで死ぬのだから」

「なら一つ聞きたい。どうしてこれほど回りくどい行動を取った? 今まではその研究所を復興出来ないほどまでに壊していただろ。けど何故この研究所だけこれほど回りくどいやり方をしたのだ?」

「…………」

 

 フォルベルクは彼がフィルノなら疑問に思っていた。どうしてこんな回りくどいやり方をしたのか。

 研究員として本人が忍び込み、不思議に思わせないように研究所に居る人間に『今までいた』という事を思い込ませ、フィルベルクが連絡を取るとして一人になった時に行動を始め、ハッキングされていると嘘を言って急いで戻させると、自分がポットに居た少女によって殺されたと、魔法で幻影まで見せて思い込ませ、少女を運んだのか。魔法の使い方からすればとてつもなく回りくどかった。

 フィルノの得意な魔法が人の脳を魔法で弄り、自分が思った通りに思い込ませる事が得意だという事はフォルベルクは知っていた。魔法の中でも珍しい魔法であり、オルデルタ一族は昔からその魔法に得意なのだ。なのはに昔の思い出を夢のように見せかけていたのも、この魔法によって見せていた。

 ちなみに、この魔法は思い込ませたりする事などは、オルデルタ一族にとっては簡単に出来る事らしいが、人を操る事は魔力総量が多くても、かなり魔力を消費する為に使う人間は誰一人居なかったりする。

 

「やはり私だからか? あの『件』で私がかなり関わっていたか?」

「……なるほどな。それくらいだったら答えても良いだろう。」

 

 フォルベルクの質問を聞いて、フィルノは質問に答える事にした。

 

「一番の理由はお前を殺す事、と言いたいのだが実は違う。それだったら今まで通りのやり方で研究所を壊しているからな。ならなぜ今回はこんな回りくどいやり方をしたのかなんてそんなの簡単だ。今の私には管理局に対抗する力がかなり少ないしまだ私には数人しか人がいないからな。ならどうするかなんて、常識からして仲間を増やす事だと分かるだろう。そして今はその仲間を増やしている段階だという事だ」

「それでもおかしくないか? それだったら別に今まで通りでも構わない筈だ」

「確かにそうだな。けど今回このように行動を取ったのかと言えば、確実にそこに居る少女を手に入れる必要があった。仮に今まで通り研究所を壊して、もしそこの少女が巻き込まれたり、人質にされてたりして死んだとしたらかなり困る。だから確実に手に入れる方法の為に、俺自身が研究所内部に研究員として侵入して、あの部屋に一人になる時間を待っていた訳だ。予想してた以上に早かったが、それなら好都合だったわけで今日行動を移したわけだ。まぁ、お前を殺すのは実はついでだったという事だ。偶然、この少女が居る研究所の研究長がお前だったという事であって、そのついでに親の恨みを少し晴らしてもらう為にお前を殺すという感じにな」

「……結局、今回の事は私は偶然巻き込まれたような感じなのか?」

「そんなところさ。ってなわけでさっさと死ね」

 

 刹那、拳銃の引き金を引き、銃弾はフォルベルクの心臓がある辺りに目がけて飛んでいった。フォルベルクは意味が無い抵抗だろうと分かりながらも魔法で銃弾を回避しようとするが、先ほど言った通り、銃弾には魔法を打ち破るようにコーティングされているため、いとも簡単に打ち破られてフォルベルクの体を貫通するのだった。

 銃弾は心臓を貫通しながら体を通り抜けたため、フォルベルクはその場に倒れるのだった。死んだだろうと分かっていてもフィルノは念のために数発、フォルベルクに発砲した。そして動かない事を確認すると、壁に倒れこんでいる少女を右肩に乗せながら持ち、研究所から脱出することにした。もちろん、他の研究員に少女を運んでいるのを見つかった時の為に、違和感を感じさせないように他の研究員全員に魔法を掛けながら。

 そうやって研究所から出ると、周りは森だらけで、フィルノはその森の中を進んでいった。

 森を歩いて数分くらいすると、フィルノが持っていた携帯から電話が鳴るのだった。画面を見て誰だか分かると、フィルノは左手で形態を取り電話に出るのだった。

 

「一体何の用だ? 一応研究所に忍び込んでいる間は連絡してくるなと言ってあったはずだが」

『そうだけど、フィルノは今森の中にいるでしょ? 念のためフィルノに発信器付けていたの忘れた?』

「そういう事か……」

 

 電話の声は一部の人からすれば、どこからで聞いた事があるような声だった。しかも、ある人物と口調まで少し似ているような感じだった。

 フィルノは溜め息を吐きながらも本題に入る。

 

「それで、一体何の用だ? そっちから連絡があるという事は何かあったという事だろう?」

『その通り。ちょっと予想外な事になってね』

「予想外な事?」

 

 一体何が起こったのだろうと、フィルノは思った。もしかして何か大変な事が起こったのだろうかと思っていた。

 

『いや、そこまで緊張するような事ではないからね。ちょっとラスティルのところであった事だから』

「もしかして管理局に俺たちと繋がっている事がばれたか」

『だから、そういう事じゃないから。なんかね、ラスティルの研究所に高町なのは二等空佐が来たらしいのよ』

「……なのはが?」

 

 それほど大変な事ではなかったが、まさかなのはがラスティルの研究所に来るとは全くもって予想もしてなかった。研究所は森の中にある所だし、なるべく気づかれないような所だった為、なのはがそんな所に偶然行くとは思いもしなかったのだ。

 

『まぁ、ラスティルが丁重におもてなしをしたとか言ってたけど、とりあえずどうするかフィルノに聞きたくて』

「なるほど。確かラスティルの所にはあの少女を捕えるように言っていた筈だよな」

『その筈だけど、それがどうしたの?』

 

 一体何が言いたいのだろうかと電話の女性は思い、その事を聞いていた。

 

「なら丁度その少女をお前に俺たちのラボに運ぶように頼もうと思っていたところだ。ついでだからなのはも連れて行ってくれ。ラスティルから事情は聞いている筈だから」

『別に構わないけど、私がなのはに会っていいの? なのはが混乱すると思うのだけど』

「どの道お前に会うのだから仕方ないだろう。俺は今からラボに戻る所だし、他のみんなも忙しいからお前しか空いてないんだ」

『……フィルノがそれで良いのなら分かった。それなら今すぐ行ってくるね』

「ああ、頼んだぞ」

 

 フィルノはそういって通話を切り、携帯をポケットにしまい、フィルノが行ったラボという所に向かうのだった――

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。
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