真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第8話]
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真・恋姫?無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第8話]

 

 

呂蒙は余り乗馬が得意では無いと言うので、数日をかけて訓練しました。

でも、さすがは名将の原石です。

数日もすると、馬を手足のように使える位になりました。

頃遭いをみて、3度目の司馬徽邸への訪問です。

今回は魏延・呂蒙を伴って館へ行きました。

再び先走りとして呂蒙に行って貰ったところ、今回は在宅のようでした。

良かったです。

 

 

魏延と呂蒙を別室で待機させ、ボクは一人で司馬徽と対談することにしました。

部屋に通されたボクは用意された席に着き、机を挟んで対面するように司馬徽が椅子に座って話しかけてきます。

 

「お初に御意を得ます。姓は司馬、名を徽、字は徳操で御座います。

 先ず、何度もの拙宅への御訪問にたいし不在であった事、お詫び申し上げます」

 

「初めまして。ボクの姓は劉、名を璋、字は季玉と言います。

 前触れも無く訪問したのは((此方|こちら))の非、謝罪には及びません」

 

初めて司馬徽に会って何故この人物を周りが“水鏡”と呼ぶのか、ボクには分かったような気がします。

この人物は“鏡の如く”相手の存在を映すから、そう呼ばれているのでしょう。

自分にヤマしいところがあれば、それを映し。幸せならば、それを映す。

自身を((省|かえり))みるのには、本当に素晴らしい相手だと思います。

ボクはどうしようも無く、これからも供に在って欲しいと思わずには居られませんでした。

 

 

「書簡でお知らせしたように、ボクは司馬徳操さん、諸葛孔明さん、((?|ほう))士元さんを漢中へ招き、ボクの治世の手助けをお願いしたいのです」

 

「はい、それは理解しています。ですが両人とも未熟ゆえ、御希望には添え無いと思うのです」

 

司馬徽は書簡の返事と同じ事を、ボクに返答してきました。

しかし、ここで引き下がっていては何も変わりません。

だからボクは、代案を司馬徽に話していきます。

 

「では。この館ごと漢中へ移転しては、どうでしょうか?」

「館ごと…ですか?」

「はい」

 

ボクは、この館の住人(希望者のみ)を漢中に新しく建設する“学校”の教員や使用人にして連れて行き、その学校の代表兼相談役として司馬徽に仕官して貰いたいと提案しました。

 

「“学校”というのは、どういったモノなのでしょうか?」

「一言でいえば、公が運営する塾ですね。学ぶ意志がある者に公費で学ばせる塾」

 

領民に、読み書きと計算などの基礎を教える初等教室。

見込みのある人物を鍛え上げ、治世・兵法などを学ばせる上級教室。

かかる費用の何割かは払ってもらうが、基本は無料。

上等教室で学んだ者は、ボクの治世の手助けをして貰う。

これ等の事を、ボクは司馬徽に話していきました。

 

「その学び舎の代表に、就任しろと?」

「はい。お弟子さん達が未熟と言うのであれば、学校と掛け持ちでも構いません」

「ふむ……」

 

司馬徽は、ボクの提案を受け熟考し始めました。

 

「領民に知恵を付けさせる事は、治める者に取っては両刃の剣かも知れません。ですが、同時に道徳を学ばせる等をして教育を行い、考えて貰います。

 一人一人が自分で考え、感じて、『どう在りたいか?』を学んで貰いたいのです」

 

司馬徽は、ただ黙ってボクの話しを聞いてくれていました。

ボクは自身の思いを伝えるべく、さらに話していきます。

 

「ボクには、誇れるほどの武力も知力もありはしません。あるのは“幸せを感じていたい”唯その思いだけです。自分だけでなく、周りの人にも感じて貰いたいと思っています。

 ですが、ボクにはその思いを形に変える為の“力”が無いのです。思いを現実にする為の“智慧”を、どうかボクに貸して貰えないでしょうか?」

 

ボクは頭を下げ、懇願しました。

言いたい事は全て言いきった。

後は天に委ねよう。

どんな結末になろうとも、後悔はしない。

 

 

「……お詫び申し上げます」

「え?」

 

暫くした後、司馬徽が謝罪をしてきました。

ボクは少し驚いて顔を上げると、そこには更に驚きが待っていました。

何故なら床に両膝を折って両手を合わせ、((拱手|きょうしゅ))をしながら拝謁している司馬徽の姿があったからです。

司馬徽はそのままの格好で、ボクに話しかけてきました。

 

「当初、貴方様が売名の為に仕官勧誘をしているのだと思っておりました。私は((是|これ))でもそれなりに有名で、配下にすれば名が売れる為だろうと」

 

「……」

 

「ですが。今お考えをお聞きして、私の考え違いと解かりました。重ねてお詫び申し上げます。お許し下さい」

 

司馬徽はボクの許し無く、頭を上げないかのようだった。

 

「理解して貰えたのなら嬉しく思う」

「お許し頂けますか?」

「うん。許す」

「ありがとう御座います。この上は、お仕えさせて頂く事で示させて頂きます」

 

司馬徽はボクに仕えてくれるみたいでした。

良かったです。

顔を上げた司馬徽は、どこか清々しい顔をしていました。

ボクも同じ顔をしているのかも知れません。

奇妙な一体感を感じたボクたちは、どちらともなく『フフッ……』と笑い始めました。

 

 

「朱里、雛里。両人とも、こちらに来なさい」

 

暫く笑い合った後、司馬徽がおもむろに2人の真名らしき名前を呼びました。

どうやら、隣の部屋に((件|くだん))の2人を控えさせていたようです。

ボクたちの居る部屋に入ってきた人物は、小さくて可愛らしい娘たちでした。

 

「はうぅ……はっ、初めまして。しょっ、諸葛孔明でしゅ!」

「あわわっ……ほっ、?士元……です」

「初めまして。劉季玉です」

 

2人が挨拶をしてくれたので、ボクも名乗りを上げました。

挨拶し終わる頃遭いを見て、司馬徽が話し始めます。

 

「2人を隣に待たせていたのは、それぞれに季玉様の人柄を感じて貰う為で御座いました」

「うん。ボクが仕えるに値するか、推し量る為だね?」

「はい。それぞれにも思うところが御座います。それゆえ、対談を聴かせました」

 

ボクは諸葛亮・?統2人に体の向きを変え、彼女たちに問い質します。

 

「それで。ボクは君たち2人が仕え、才を尽くすに値する人物と思って貰えたのかな?」

 

ボクが2人に問うと、諸葛亮に質問があると言います。

 

「何かな?」

「わっ、私たちが、季玉様の、その……命を危ない目に遭わせるかも知れない策を立てたとしたら、どっ、どうしますか?」

「……その策しか無いのかい?」

「はっ、はいっ!」

 

どういう意図が諸葛亮にあるのか分からないけれど、ボクは正直に話します。

 

「正直いって、その時になって見なければ分からない」

「分からない……ですか?」

 

諸葛亮はボクの返答に、少し失望したかのような顔を見せました。

そのままボクは、自身の思っている素直な気持ちを話していきます。

 

「うん。君達は才の限りを尽くして、ボクに献策してくれているのだろう。でもね、ボクは死ねないんだ。ボクの命はボクだけのモノじゃ無いからね。軽々しく粗末に出来ないから、その場になって見なければ分からない。

 それが、今のボクの答えだよ」

 

「そう……ですか」

 

「“信頼”と“感謝”。

 今もその時も、それだけが君達に渡せると約束出来る唯一のものかな?」

 

「あっ、ありがとう御座います。ちゃんと答えて下さって」

 

何が((幸|さいわ))いしたのか分からないけれど、2人はボクに仕えてくれるそうです。

今後の事を簡単に司馬徽と打ち合わせた後、館を辞すことにしました。

用事が終わったので、街に帰る為に待機させている魏延と呂蒙の別室に行くと、そこには。

 

「……フグッ……グシュッ……」

「……ううぅ……ふぇえ……」

 

そこには、顔を真っ赤にして泣き腫らす魏延と呂蒙がいました。

ボクは不思議に思って、彼女たちに問いかけます。

 

「何をしているんだい、2人供?」

「せっ、刹那様。ワ…ワタシは刹那様にお仕え出来て、うっ……嬉しいです」

「わっ…私も……です。うぅ……」

 

どうやら2人供、先ほどの対談の話しを聴いていたようでした。

 

「……ありがとう焔耶、亞莎」

 

ボクは、2人に感謝の言葉を言いながらも心の中で思いました。

 

2人が仕えてくれてボクも嬉しい。

ありがたく思う。

でもね。魏延、呂蒙。

鼻水は拭きなさい、鼻水は。

いくら感動して、涙が止まらないと言ってもね?

鼻水の垂れ流しは不味いとボクは思うんだ。

仮にもさ、両人とも女の子なんだしね。

お嫁の行き先が、無くなっちゃうよ?

 

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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