魔法少女リリカルなのはmemories 第二章 再開するまでの記憶(メモリー) 第十九話 |
応接間であるこの部屋に突然入ってきたある研究員の言った事に、なのは、エメリア、デュナは言葉を失った。
三者三様、言葉を失った意味は違うのだが、同じことを思っていたのはどうして突然という事だ。
なのははどうして私がこの場所に居るのかという事を知られて驚いていた。誰にもこの場所に来るとは一言も言ってなかったし、そもそもここに来たのだって偶然だというのに自分の居場所がばれた事に何かあると思っていた。
エメリアも今まで従って行動していたのに、どこからばれるような所があったのかと思った。研究員にも実験で使用する人間の行方は全て自分がやっていたし、検体の処分や実験も全て自分が一人が担当していたのだから気づかれるはずがないと思っていた。不振がられるかと最初は思ったが、そんな様子無く二年以上そのようにやって来たのに、今になって気づかれるとは思いもしなかったのだ。しかし管理局がやって来たという事は自分の行動に管理局が気づかれたと言っても過言ではないのだ。
そしてデュナも、ここに連れてくるまでは連れてきた研究員とエメリアだけしか実は知らなかったりする。応接間に連れてこられる前に、エメリアがそんな事を言っていたので、デュアもその事は知っている。『上』から頼まれて連れてきた人間ではないのに、どうしてここに居るかとなのは同様に驚いていたのだ。
しかし、そのなのはとデュアがここに居る事を知っており、尚且つエメリアの行動に気づかれるという事は、誰かが情報を提供していたという事だ。それが出来るのはここで働いていた研究員だけであった。
「――応接間、いやこのラボすべてに盗聴器が仕込まれていたという事か」
エメリアはそんな事をぼやいた。二年以上気づかれないように警戒しながら行動していたが、今回の事が盗聴されている可能性をすっかり考えていなかったのだ。この応接間はエメリアが人を呼んだ時か、休憩に入った時しか使わないし、エメリア以外の研究員は一応は入れないようになっているのだ。その事もあって盗聴されているという事を全く懸念していなかったのだ。それが仇となったのだ。多分、先ほどの会話を聞いた瞬間に『上』の人間が盗聴しており、すぐさまこの場所に管理局員を連れてきたのだろう。そしてエメリアがデュアとなのはを勧誘し、仲間になると言った瞬間に一斉に捕えるという魂胆だったのだろうとエメリアは思った。
「ここは、大人しく従った方が良さそうですね」
その言葉になのはとデュアも頷く。下手に逆らって虐殺されもすれば面倒な事になりかねないからだ。大人しく従った方が面倒にはならないだろうと思っての行動だった。
「では、一応入り口までついて来てください。私が連れて来いと言われていますので」
なのは、エメリア、デュアの三人は黙って研究員に従って後について行く。が、何故か途中で研究員の足が止まる。
「あ、念のためバインド掛けて貰っていいですか? そう言われておりましたので。高町なのは二等空佐には簡単に解かれるとは思いますが」
その事に三人は黙って頷き、研究員は苦笑いをしながら三人にバインド掛ける。エメリアが思うに、この連れてくるように言われた研究員は何がなんだがさっぱり分かっておらず、とりあえず管理局の事に従って行動しているだけだと思った。また、この研究員はエメリアがこの場所に移動するときも一緒だった研究員で、エメリアとは仲が良い研究員でもあった。
それからまた歩き始め、なのはが入ってきたラボの出入り口の方へ向かう。
〈高町なのは二等空佐。今のうちに一つだけ話しておきたい事がある〉
〈なに?〉
歩いている途中、エメリアは突然なのはに念話を始めてきた。管理局が待っている所に行けば念話を遮られる可能性があったので、今のうちに話しておこうというエメリアの考えだった。
一方なのはは多分エメリアが話す事はこの先の事に関わる事だろうと思って、理由を聞かずに聞く。
〈多分、管理局の連中は私たちを捕えるために来たのだろう。AMFなどの魔法を封じるジェイル・スカリエッティが作ったガジェットドローンなども居るかもしれない。だからそれを一番早く突破できるであろう君に一つだけ聞いてほしい〉
〈勿体ぶる暇などいらないから、本題を言って〉
エメリアが言っている事にはなのはも分かっていたが、そんな事はなんとなく察しているので本題を言って欲しかったのだ。
エメリアは状況を把握できているようだと思い、本題を言い始める。
〈もし、AMFに対処できるようになったらすぐにその本体を破壊してくれ。そして、それが終わったら殺傷設定にして管理局員を全員殺せ〉
〈で、でもそれは!?〉
なのははその事に驚いてた。管理局員の中には無関係の人間もいるのではないかと思ってさすがにそれは出来ないと思ったのだ。また、なのはには人を殺めるという事自体した事がないので、なのはにとって気が重い事でもあった。この先、人を殺さなければならないという事はなのはも分かっているのだが、それがなのはにとって辛い事であったのだ。
しかし、エメリアはそんななのはに言うのだ。エメリアもなのはが殺せない事はなんとなく察しがつき、躊躇ってしまうかもしれないという事は分かっていた。しかしこの事態を何とかするにはこの中で魔力ランクが一番高いなのはしかいなかったのだ。
〈分かってる。しかし、今回の件は君しか頼めないのだ。それに、君だってこの先自分が人を殺す事になるという事は分かっているだろう〉
〈た、確かにそうだけど……〉
〈なら今のうちに慣れておけ。躊躇った時点で逆に君が殺される。それに、多分今回来た管理局員に無関係者は誰も居ないだろう。そんな人間が『上』が選ぶわけがないからな〉
〈……分かった。私も覚悟を決めたんだから、それくらいの事をしないといけないのは分かってる。だから実行してみる〉
なのはは自分も人を殺めないといけない事は分かっていたので、覚悟することにした。管理局員として取り締まったり、教導したりするような平穏な事は今日で終わりで、今度からは人を躊躇せずに殺さないといけないという事は分かっていた。今の管理局を変えるにはそこまでしないといけないのだと。
しかし、そうはいっても内心では人を殺したくなんてなかった。誰だって人を殺したいとは思わないだろう。しかし、そうでもしなければならないという事は自覚しているのだ。だからなのははかなり緊張するのだった。
そして、念話を終えて少し歩くと、ラボの出入り口の近くまで来ていた。そこには出入り口であるあの大きな扉が開いており、その付近に管理局員がたくさんいた。その付近にはジェイル・スカリエッティが作ったガジェットドローンIII型が近くにあり、AMFが発動している事が分かった。そのおかげで途中でバインドも外れる。
連れてきた研究員が管理局員の近くまで連れて行くと、そこで止まって座るように言って一人だけ歩いて管理局員の方へ向かい、連れてきたという事を報告し始める。
「言われた通り、ラスティル・エメリア研究長、高町なのは二等空佐、デュア・シルフィア連れてきました」
「ご苦労。それでは君にはここでおさらばだ」
そう言って管理局員の一人が銃を持ち出し、すぐさまその研究員に発砲した。銃を使っているのはAMFが発動中なので、自分達もAMFの影響を受けてしまう為に用意してあったのだ。
AMFが発動してあるため、魔法で防御できるはずがなく、その研究員は何もできずに心臓に銃弾を放たれた。その場に倒れ、銃を撃った管理局員が足で意識があるか確認してみるが、動く気配はなく即死だった。
その光景になのは、エメリア、デュアは目を開き、その光景に驚いていた。連れてきただけなのに、なぜ殺す必要があったのかと思ったのだ。しかし管理局員はそんな中笑っていた。
「わざわざそう簡単に騙されるとは思わなかったな。おい、お前ら出てこい」
銃を発砲した管理局員が言うと、なのはたちの後ろからエメリアの研究員たちが一斉に現れた。先ほどまで一体どこに行ったのだろうかとエメリアは思っていたのだが、どうやら隠れていたようだ。
彼らは『上』の命令に従ってここに居るので、今回の事が『上』と関わっているのならば、なのはたちを捕えるという事を従うに決まっていたのだ。
なので、この状況はなのはたちにとって不利な状況であった――
説明 | ||
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。 その青年はなのはに関わりがある人物だった。 だがなのはにはその記憶が消されていた。 消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。 二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。 それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。 魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。 |
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