「ウィンガルたちは敗れたか」

「すごい衝撃だったよ」

「まだ交戦中さ」

「うおおおおおお！！」

ガイアスが力を入れる。

「やっぱりまだ力持ってたか」

「クルスニクの槍は必ず手に入れる！」

「ちっ……まだかよ……」

アルヴィンは何かを待っていた。

「さらばだ！」

ガイアスが力を放とうとした時であった。突然ガイアスに向かって剣が投げられたのだ。

ガイアスはそれを簡単に弾くが、先ほどまでの力は消えた。

「何者だ！」

上にはワイバーンがおり、そこから一人の男が降りてきた。

「そこまでだ！」

「イバル？　何故ここに……」

降りてきたのはニ・アケリアにいるはずのイバルだった。

「ミラ様！　本来のお力を取り戻し、その者を打ち倒してください！」

イバルは『カギ』を取り出し、展開させてしまう。

「貴様！」

ガイアスはそれが『カギ』だとすぐに察知した。

ミラは何も言えなくて頭が痛くなりそうな気分だった。

「はははっ！　どうだ偽者！　お前との違いを見せつけてやる！」

そのままイバルはクルスニクの槍の装置に『カギ』を差し込んでしまった。

そしてクルスニクの槍は起動してしまう。

「どうだジュード！　この俺が本物の巫子だっ！　四大様のお力が、今よみがえる！」

「させるか！　ゼペリオン光線！！」

秋山がゼペリオン光線を放つもクルスニクの槍はビクともしない。

「くそ！　思ったより固い」

秋山はいくらほぼ不死身とは言っても疲れはある。

だがその疲れもすぐになくなってしまう回復力を持っているために、先ほどのゼペリオン光線はこの世界における全力であった。

それなのにもかかわらず槍は壊れなかった。

クルスニクの槍が展開されると、皆のマナが吸収されてしまった。

「大丈夫か？」

秋山にはマナという概念がないどころか、エネルギー吸収は無効化されるために秋山は対象にはなっていなかった。

「ストナー……」

秋山が新しい技を繰り出そうとしたが、それよりも先にクルスニクの槍からエネルギーが空へ向かって放たれた。

「間に合わなかった！」

クルスニクの槍のエネルギーが、空を割った。

「どう、なったの……？」

「そんな……破られてしまった。

そうか……そういうことだったのか！　槍は兵器などではなかった！」

すると割れた空から突然炎の弾がファイザバード沼野を襲い、兵士達はそれに当たり、死んでいく。

そしてそこから巨大な戦艦が見た限り、十数隻現れた。

「なっ……！　どういうことだ……！」

アルヴィンも信じられない顔をしていた。

しかしその空中戦艦の何隻かは突然出来た空間の歪みに飲み込まれていった。

（あれは……）

秋山には空間を歪めたものが見えた。

その歪めたものは何処かへと消えて行った。

「な、何あれ……」

「こわいよー！めっちゃこわいよー！」

「空を駆ける船だと……」

「ついにやった。くくくく……くはははは！」

そこにオールバックの男がいた。

「ジランド！　どうなってる」

アルヴィンがそのオールバックの男、ジランドの名前を叫んだ。

「あれが、ジランド！？」

ミラには信じられない様子だった。

自分達の知ってるジランドはかなりのへっぺりごしだったが、そこにいるジランドにはその面影がまったくなかった。

「ジランド……お前！」

アルヴィンがジランドに銃を向けようとした時、氷の槍がアルヴィンを襲った。

「！？」

秋山以外の全員が驚いた。

「ハ・ミルをやったのは貴様らか？」

「そう俺の精霊、このセルシウスがな」

ジランドが何らかの装置から精霊のセルシウスを出した。

「精霊セルシウスだと……？　そのような名、聞いたことも……」

「見た目からして氷の大精霊ってところだな」

「我が民を手にかけたこと……許しはせん」

ガイアスが再び攻撃態勢を取るが、空中戦艦からの砲撃が秋山達を襲う。

そしてその戦艦から大勢の人間が降りてくる。

「なんなの……この人たち……」

「アルクノアのジランドさんですね？」

「ああ、そうだ。あれが例の女だ」

「……アルクノアだと……？　貴様がナハティガルに黒匣(ジン)を伝えたのか？」

「くくくく。その女は殺すなよ。台無しになる」

「装甲機動兵、前へ！」

『はっ！』

呼ばれた機動兵が崖を滑り降りようとした時、降りようとした兵達は突然剣に刺されて死んだ。

「何！？」

ジランドたちがその剣の飛んできた方を見た。

その方向には一番後ろにいた秋山が金色の壁『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』を展開させていた。

「こいつは隠したかったが、仕方ない。

……貴様ら万死に値する！」

「あの男から殺（や）れ！」

兵達は秋山を襲うおうとするが、それよりも先に秋山の『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』から飛んでくる剣や槍の方が早かった。

「言ったはずだ。貴様ら、万死に値すると！！」

今の秋山は『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』の本来の使い手と似たような性格になっていた。

しかし、『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』は正確性がなかったので、剣の一つが崖の壁にぶつかってしまい、その爆風がエリーゼを襲ってしまった。

「エリー！」

「しまった！」

「エリーゼ！」

ミラがすぐにエリーゼのところに行こうとしたが、ガイアスがミラを気絶させてしまった。

「ガイ……アス……」

「……寝ていろ。事態が複雑になる。

お前たちとの決着は後だ。

やつらの狙いはマクスウェルのようだ。ここは退け」

ガイアスがミラをジュードに投げ渡し、去るように言う。

「レイア！　ローエン！　ドロッセルさん！　ミラをお願い！」

ジュードとアルヴィンは残ってしまう。

「お前たちも先に行け！

ここは俺一人で十分だ！」

秋山はなおも『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』して敵を倒していく。

しかしそれでも『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』には穴があるので、下に降りてくる兵士達も出てきた。

その兵士達がガイアスも襲うが……。

「陛下！」

そこにウィンガルたち四象刃(フォーヴ)が現れ、兵達を倒していく。

そして気絶したエリーゼの元にジャオが行った。

「これ、娘っ子。目をあけろ」

「う……あっ！」

「な、なんだよー！　やるかー！　エリーを離せー！」

ジャオは抱いていたエリーゼを地面に降ろす。

「わしは謝らなければならないことがある」

その時、ジャオを襲おうとした後ろの兵士達が不意打ちをかけようとした。

「ぐああああああ！！」

しかしその兵士達も秋山に見つかり、『王の財宝（ゲート・オブ・バビロン）』の餌食となった。

「お前の殺された両親だが……殺した野盗ってのは……わしだ」

「え？」

「エリーゼ！」

ジュードがエリーゼの元に駆け寄る。

その間にもガイアスと秋山が敵兵を倒していく。

「これ以上お前を見守ることはできないだろう……だから、生きてくれ」

「……ジャオ……さん」

「エリーゼのこと、頼んだぞ」

ジャオは死ぬ気であった。

ジャオはガイアスのところに行く。

ジャオは黙る。しかしガイアスは何が言いたいのか分かった。

「長年、世話になった」

「みなを頼みます」

ガイアスとウィンガルとプレザは撤退していった。

そしてジュード、アルヴィン、エリーゼも逃げていく。

「お前はいかんのか？」

残っている秋山にジャオは問う。

「俺が一番生存率が高い。だから……」

秋山がジャオを気絶させた。

「お前も行けや。それにエリーゼにきちんと真実言ってないだろ」

秋山がジャオの腕をつかむ。

「さっさと逃げな！」

秋山がものすごい速さでジャオを後方に投げ飛ばした。