英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 106 |
紅蓮の塔を出たエステル達は帰り道に急にアガットが倒れたところに、エルモ村までの護衛を終えたリフィア達とカルバード共和国の遊撃士、ジンがたまたまその場に居合わせ、ジンにアガットを中央工房の医務室まで運んでもらい、アガットが倒れた原因は黒装束の男が撃った銃弾が原因とわかり、それを治癒するの薬を七曜教会に求めたが、生憎材料を切らしていて、その材料を手に入れるためにたまたまツァイスに泊まる予定だったジンやリフィアとエヴリーヌを加えたエステル達7人は材料があると言われるカルデア隧道の鍾乳洞内の奥に向かって行った。また、アガットの体を蝕む毒を少しでも遅らせるために状態異常回復の魔術が使えるツーヤとツーヤに魔力が供給できるプリネはアガットの看病に残した。
〜カルデア隧道・鍾乳洞内〜
「ここがカルデア鍾乳洞か……神秘的な光景ね。」
エステルは鍾乳洞に入って見た光景に思わず呆けた。
「だが、奥の方から魔獣の気配がプンプンするぞ。なかなか歯ごたえがありそうだな。」
「ん。街道とかにいた雑魚より結構強い気配がするね。少しは楽しめそうかな、キャハッ♪」
ジンとエヴリーヌは魔獣の気配と強さを感じ、警戒心を強めたり強敵の存在に笑みを浮かべた。
「ふ、ふえええ……」
2人の言葉を真に受けたティータは思わずよわよわしい声を出した。
「ティータ、恐かったら戻ってもいいんだからね?あんまり無理しちゃダメよ。ミントもよ?紅蓮の塔の時みたいに無茶したら、今度はさすがに怒るからね?」
「だ、大丈夫だよ……恐いけど無理はしてないから。今は急いで薬の材料をとりに行こう?」
「うん!ミント、アガットさんが元気になるためにがんばる!」
「もし怪我を負ったら、余が傷跡もなく治してやろう!余がいるのだから、安心するがいい!」
「そうね……行くとしますか。」
ティータの様子を見て大丈夫と判断したエステル達は鍾乳洞の奥へ進んで行った。
そして鍾乳洞内を歩きしばらくすると魔獣が現れた。
「みんな行くわよ!」
エステルの掛け声で7人は魔獣に挑んだ。鍾乳洞内の魔獣は手ごわかったがエステルは棒や魔術で万能な戦い方で、ヨシュアは素早い動きで魔獣を翻弄しつつ、着実に敵の急所を狙って対処し、ティータは無理せず後ろからアーツや導力砲で援護し、ジンは体術で一撃で魔獣を沈め、ミントは前衛のエステル達が取り逃がして後衛に襲いかかろうとした魔獣を斬り伏せ、魔術でエステル達を援護した。またエヴリーヌやリフィアは弓技や強力な魔術で援護した。
「闇よ、我が仇なす者を吹き飛ばせ!……黒の衝撃!!」
「行っけ〜!……サンダーボルト!」
「出でよ、烈輝の陣!レイ=ルーン!!」
「消えちゃえ!……贖罪の雷!!」
エステル達が放った魔術で道を塞いでいた魔獣達が消滅し、セピスを落とした。
「相変わらず、凄い威力だな……」
「ふ、ふえええ〜……お姉ちゃん達、凄いな。アーツじゃ、こんな威力は出せないんじゃないかな?」
「………………」
エステル達の魔術の威力にヨシュアは感心し、ティータは魔術の威力に呆け、ジンは驚きの表情で見ていた。
「よ〜し、終わりっ!あれ?どうしたの、みんな?」
戦闘が終了し、武器を仕舞ったエステルはヨシュア達を見て尋ねた。
「いや……魔術の威力にみんな驚いているんだよ。」
「うん。魔術は初めて見たけど、凄いね!オーブメントを使わず、どんな原理であんな事ができるのか、凄く気になっちゃうよ。」
「あはは……ティータらしいわね……」
「ティータちゃん、目が凄く輝いているね。」
興味津々ティータの言葉にエステルは苦笑し、ミントはティータの今の表情を言った。
「えへへ、つい気になっちゃって……」
エステルとミントの言葉にティータは恥ずかしそうに笑った。
「ん?確かジンと言ったな?余やエヴリーヌを見てたようだが、何か用か?」
「いや、少し気になったのだが魔術とアーツは属性に関しては同じかどうか、気になってな。」
「確かにそうですね……リフィア、そっちの世界の魔術は何種類あるんだい?」
「ん?属性の種類か。一般的な攻撃魔術の属性はアーツの属性で例えるなら火は火炎、水は冷却、風は電撃、地は地脈、時は暗黒、空は神聖だ。これに加えて余が使っている無属性の純粋、他には身体能力の強化等をする戦意や強化、そしてイーリュン教の信者達が得意とする再生や治癒だ。他にもあるが……まあ、それは知らなくていいだろう。」
ヨシュアに尋ねられたリフィアは次々とディル・リフィーナにある属性魔術の事を説明したが、ある属性の魔術も思い出し、その属性を言うのをためらって誤魔化した。
「へえ〜……そんなにあるんだ。それだと、今あたしが使えるのは火炎、電撃、地脈、暗黒か……あと2つで全属性の攻撃魔術ができるんだけど、どうやったら使えるようになるのかな?」
「エステル……それだけ使えて、まだ属性を増やしたいのかい?」
「いいじゃない!強くなりたいんだから!それでどうなの?」
「ふむ、エステルのオーブメントや精霊や幻獣達と契約した際の影響の事を考えると、お前はどの属性にも属さない無属性だから、その属性に遭った精霊や幻獣達と契約すれば使えるようになると思うぞ?」
期待した表情で自分を見ているエステルにリフィアは少しの間、考えて言った。
「やっぱり契約か……冷却属性はマーリオンみたいな子と契約すればいいってわかるけど、神聖属性はどんな子と契約すればいいの?」
「む、神聖属性か…………………神聖属性は恐らく天使とでも契約すれば使えるとは思うが………」
期待した表情をしているエステルにリフィアは難しい表情をしながら答えた。
「天使!?そんなのもいるんだ!」
「ふええ〜!?異世界には天使さんまでいるんですね!」
「ママ!ミント、天使さんともお話したい!絶対友達になってね!」
天使の存在を知ったエステルやティータ、ミントは驚いた。
「「………………」」
「2人ともそんなに難しい表情をして、どうしたんだい?」
一方ヨシュアはリフィアやエヴリーヌが難しい表情をしているのに気付き、尋ねた。
「ん?ああ……今から言う事はエステル達には決して言うでないぞ?」
「?うん。」
念を押すようなリフィアの言葉にヨシュアは戸惑いながら頷いた。
「天使達のような光側の者達にとって余達闇側の者達――”闇夜の眷属”は決して相容れない存在なのだ。また、その逆もしかりだ。余は気にしないがたいがいの眷属達は天使を嫌っている。もちろんメンフィルは光と闇の共存を謳っているが、それでもメンフィル建国以来、天使がメンフィルの客として訪れた事はない。」
「そんなに根深い問題なんだ……もしかして、エヴリーヌも天使を嫌っているのかい?」
「…………正直、あんまり好きじゃない。でも昔と比べれば少しはマシになったよ?昔は目にしただけで殺してやりたいぐらい、嫌いだったもん。」
「フム……種族の違いによって争いが起きる点は共和国と変わらないな。共和国は昔から移民を受け入れている分、争いが絶えないからな。」
エヴリーヌの言葉にジンは重々しく頷いた。
「そうなんだ………じゃあ、リフィア達と仲良くしているエステルに天使が契約してくれるなんて事は……」
「恐らくないな。よほり変わり種の天使だったら契約してくれるかもしれんが、そもそも天使がメンフィルを訪れる事など今までなかったのだから、ほぼないと思っていいだろう。」
「そっか………でもなんとなくなんだけど、あの様子のエステルだったら天使と出会った時、契約を頼んで天使が嫌がっても『そんなのお互いの事を知らないからそうなのよ!』って言って、何度でも契約を迫って最後には天使も諦めて契約しそうだけどね。」
「……確かにな。」
「あー、なんとなくそんな光景が思い浮かぶよ。」
ヨシュアの言葉にリフィアは口元に笑みを浮かべ、エヴリーヌは天使に契約を迫るエステルの光景が思い浮かんだ。
「ハハ……さて、おしゃべりはここまでにして先に進むぞ。」
カシウスからエステルの事を聞いていたジンはリフィア達の会話を聞いてカシウスから伝え聞いた通りの娘である事に思わず笑った後、先に進むよう促した。そしてエステル達は奥に向かって進み始めた…………
説明 | ||
第106話 | ||
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