英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 外伝〜異世界に降り立つ天使〜 |
リフィア達が天使について話していたその頃、一人の天使がある場所でくしゃみをした。
〜メンフィル大使館・執務室〜
「ハックション!う〜ん?誰かニルの噂でもしているのかな?霊気で構造されている天使のニルが風邪なんて引くわけないのに。」
その天使はラウマカールで3対の翼のファーミシルスとは違い、一対の翼を持ち全身の到る所にに光の輪を纏い、濃い撫子色の髪を腰まで伸ばしていた。また、容姿も街を歩けば十人中十人が振り向くような整った容姿をしており、女性としての体型も一般の女性より優れた体型をしていた。
「………さて、そろそろいいか?」
独り言をつぶやいている上級天使――能天使ニル・デュナミスにリウイは話しかけた。
「はい。なんでも聞いていいですよ。」
「………シルヴァンから天使が俺に面会と異世界に出る許可を求めたと聞いて、一瞬耳を疑ったがまさか神殺しの使い魔を務めていた変わり種の天使であるお前が尋ねてくるとは思わなかったぞ。それでわざわざ、異世界に何の用だ?」
「そろそろ新しい主を探そうと思って噂になっていた異世界に来るために貴方に面会と異世界に出る許可を求めました。」
「新しい主だと?お前は神殺しの使い魔だったはずだろう?」
ニルの答えにリウイは首を傾げながら尋ねた。
「知っているとは思いますけど、セリカは邪竜との戦いで力を失ったからニルを含めて、今まで契約していた子達と解除しましたの。あの戦いの後、ニルはしばらく世界中を廻って旅していたけど噂でメンフィルは魔導技術とは異なった技術を手に入れたって聞きまして、気になってメンフィルの王都のミルスに近付きましたら、ブレア―ド迷宮?でしたね。そこからディル・リフィーナとは異なる空気が感じられたから、それが気になって貴方に会えるように、もし異世界と繋がっているのならそこに行けるように今のメンフィル皇帝に頼んだんです。それにしても王城に行った時、門番の兵や周りの人達はどうしてニルを驚いた表情で見ていたんでしょう?」
ニルは王城でシルヴァンに会う事を望んだ時、門番の兵達やシルヴァンの臣下達が驚きの表情で自分を見ていた事を思い出し、リウイに言った。
「………俺達を忌み嫌っている光側の存在である天使が堂々と正面から会話を望む等、メンフィルでは前代未聞だからな。驚かれて当然だ。」
「あ、そうでしたね。セリカの使い魔をしていたから、そういう事は気にしなくなったんですよね〜。」
「…………まあいい。メンフィルは光にも闇にも属さず中立を貫いている。断る理由もないし、異世界での活動を許可する。……ちなみにこれは邪竜を倒した仲間としての餞別だ。この土地の持ち主――リベール王国の地図だ。持って行くがいい。」
ニルの答えに半分呆れていたリウイだったが、気を取り直して答えた後リベールの各都市が書かれてある地図をニルに渡した。
「ありがとうございます♪ところでさっきの話の続きになりますけど、魔力があって強い人間の女性とか知りませんか?ニル、今度の契約者は女性にしようと思っていますから。」
「………お前が認めるほどの強さかどうかわからんが、一人だけ心当たりがある。」
「え!本当ですか!?どんな人ですか!?」
「リウイ?」
リウイの答えにニルは驚き、天使であるニルがリウイとの会見を望んだ事に興味があってその場に同席したカーリアンも目を丸くして驚いた。
「……その者は風の守護精霊、炎狐、そしてかつて神殺しが使い魔にしていたユイチリと契約している。また、竜の幼子がその者の事を”母”と慕い、竜の幼子がいた孤児院から引き取ってその幼子を育てているらしい。ユイチリに関しては恐らくお前も知っているのはないか?」
「セリカが使い魔にしていたユイチリって……もしかしてテトリ!どうしてこちらに……まあいいですわ!竜の幼子に慕われ、誇り高い性格をしている炎狐まで契約している人間……フフ、興味が沸いて来ましたわ!名前はなんという方ですか?」
「エステル・ブライト。異世界の者でありながら俺達”闇夜の眷属”を”友”と呼ぶ変わった娘だ。今は恐らくツァイスにいるだろうが……かの者の修行の終点であるグランセルに先回りした方がいいかもしれんな。ちなみにこれがエステル・ブライトだ。」
リウイは机の中から報告書に貼ってあるエステルの写真をニルに見せた。
「この子が………ありがとうございます!それでは、失礼します!」
そしてニルはリウイ達にお辞儀をした後、部屋の窓から飛び去った。
「リウイ?なんであの天使にエステルって娘の事を教えたの?」
「ルーアンで楽しませてもらった礼だ。遊撃士をやっていく上で万能な戦いができる天使の力があれば、さらに戦力は充実するだろうしな。まあ、あの変わり者の天使に認められるかどうかはあの者次第だ。奴はあれでも上級天使だ………それより、また武術大会に出るのか?」
リウイは呆れた表情でカーリアンに尋ねた。
「当ったり前じゃない!ここ最近、戦がないんだから凄っごく暇だもん!別に殺しはしていなんだから、いいでしょう?」
呆れた表情になっているリウイにカーリアンは悪びれもなく答えた後、ある事に気付いた。
「そういえばエステル、だっけ?その娘も闘技大会に出るのかな?」
「……さあな。ただ過去の参加者を見る限り、遊撃士達も腕試しとして参加しているから、かの娘も参加する可能性はあるかもしれんが。………まさか。」
カーリアンの疑問に答えた後、リウイはある事に気付き、カーリアンを見た。
「そのまさかよ♪あの娘の父親も結構楽しませてもらえたから、期待できるしね♪じゃあ明日、グランセルに行くわね♪飛行船のチケットの手配、よろしく♪」
「おい、カーリアン。今のリベールの状況がわかってて………まあ、あのじゃじゃ馬娘に言った所で無駄か。」
リウイの制止の声を無視してカーリアンは部屋を出て行き、リウイは溜息をついた後、ペテレーネを呼んで一人分の飛行船のチケットの手配を頼み、政務に戻った………
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