IS学園にもう一人男を追加した 〜 5話 |
一夏SIDE
時は飛んで翌週、月曜日。セシリアとの決闘の日。俺は今、千冬姉、山田先生、箒、そして獅苑と一緒にAピットにいた。
「なぁ、箒」
「なんだ」
「ISの事、教えてくれる話はどうなったんだ?」
「・・・」
「目 を そ ら す な」
あれから六日、箒は剣道の稽古をみっちりつけてくれた。問題なのは、それしかやっていないということだ。
「し、仕方ないだろう、お前のISがまだ届いてないのだから」
「それでも知識とか基本的なこととかあっただろ!」
「・・・」
「目 を そ ら す なっ」
今、俺たちは俺と獅苑の専用機とやらを待ってるわけだが、来ていない。千冬姉はイライラして、山田先生はオロオロしている。
「遅い! いったい何分待たせる気だ!」
「お、お、織斑先生、お、落ち着いてく、ください」
ついに千冬姉がキレる。なんとか山田先生が抑えているが時間の問題だ。すると獅苑がキレている千冬姉に話しかける。
「織斑先生、[打鉄]出せますか?」
「・・・出せると思うが、どうする気だ」
千冬姉、目が怖い、目が怖い。
「さすがにこれ以上、相手を待たせるのも・・・」
「・・・いいだろう。山田君、朝霧を案内してくれ」
「は、はい。わかりました。朝霧君、こっちです・・・」
山田先生と獅苑はAピットから出て行ってしまった。
「織斑、お前は控え室で待機だ。専用機が着き次第、朝霧と代わり試合を行え。なお、戦闘中の映像は見るな。仮にも試合をする相手だ、手の内を見られるかも知れないからな。ハンデは必要ないのだろう?」
「も、もちろんだ!」
「篠ノ之、お前はどうする?」
「私は・・・私はここに残ります」
「そうか・・・織斑、何をしている。早く行け!」
「は、はい!」
俺はダッシュで控え室に向かった。
獅苑SIDE
〜〜〜IS倉庫〜〜〜
俺は[打鉄]を装備して山田先生の話を聞いている。
「いいですか、朝霧君。[打鉄]は第二世代型の量産期ですから、無理だけはしないでください。相手はなんていっ「説明しなくても大丈夫です」・・・そ、そうですか」
山田先生は肩を落とす。
「それで、俺はどこからアリーナに入れば?」
「あ、それならアリーナの遮断シールドをカットしますので、そのまま上空から入ってください」
「わかりました。もう行って大丈夫ですか?」
「はい、織斑先生がもうやってくれてると思います」
「わかりました」
「本当に制服で大丈夫ですか?」
「しかたないでしょう。俺のISスーツが女性物だったんですから」
「すみません」
そして俺は飛んでアリーナを目指す。
(あれか・・・)
アリーナ上空から進入すると目の前にイギリスの第三世代型『ブルー・ティアーズ』を装備している金髪がいる。
「あら、ずいぶん遅い登場ですね。尻尾を巻いて逃げたと思いました。それに専用機と聞いてましたのに量産型とは。あなたにはお似合いですわ。それに制服でのIS装備とはなめられたものです」
あいかわらず好き勝手言ってるな。でもこれは時間稼ぎ。
「・・・」
「まあ、無視とは失礼ですわね。ですが、そんなあなたにも優しいわたくしから最後のチャンスをあげますわ」
優しい? あいつが? それだったら、地球上のほとんどの生物が優しいことになるが・・・
「今ここで謝るというなら、許してあげないこともなくってよ」
そう言って、ブルー・ティアーズのセーフティロックが解除された警戒が出る。
「・・・うざい」
「っ!・・・そう、残念ですわ。それなら・・・お別れですわね!」
金髪のISが持っているレーザーライフル『スターライトmkV』が火を噴き、こちらに猛スピードで飛んでくる。それを俺は無駄な動きなく避ける。
「フッ・・・」
「避けられたっ!」
そのあと俺は武器を出さず、上空を飛び続け、レーザーを避ける。
「なんで、当たりませんのっ!」
「・・・」
箒SIDE
(どうなっているんだ・・・?)
箒は戦う姿を見る朝霧を見て疑問に感じる。いや、もとから疑問はあった。剣道場の時、私を倒したあの時から。
「不思議か? ISを三回しか起動していない奴がここまで動けるのかと?」
「・・・はい」
「だろうな。あいつとは入試で一度、やりあったが地上戦において、私の本気の一撃を止められた。
「!!!」
今、千冬さんはなんと言った・・・? 一撃を止められた・・・そんなことがありえるのか
「信じられない顔をしているな」
「・・・信じられません」
「篠ノ之、あいつとは試合をしたか」
「・・・しました。六日前に剣道場で」
「その様子だと、負けたようだな」
「・・・」
「あいつは竹刀を二本持っていたか?」
「い、いえ一本ですが。どうして二本と?」
「あいつは二刀流が得意と言っていてな。現に入試ではブレードを二本使っていた」
「! そうですか・・・」
本気じゃない奴に負けたことを悔やんでいると、山田先生が走ってくる
「織斑先生〜!」
「どうした」
「はぁ、はぁ、はぁ、来ました! 織斑君の専用IS!」
「!」
「そうかやっと来たか・・・篠ノ之、織斑を呼んで来い」
「は、はい!」
「山田君は朝霧に個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)で呼びかけてくれ」
「は、はい。わかりました」
獅苑SIDE
『朝霧君、織斑君のISが来ました。もう戻って大丈夫ですよ」
どうやら、時間稼ぎは成功したようだ。ちなみに俺は一撃ももらっていない。金髪の方は全部避ける俺にイライラしている
「・・・いいですわ。見せてあげましょう、ブルー・ティアーズの本当の力を!」
「時間だ。見せるなら次の奴にしろ」
そして俺は金髪に背を向けピットに戻る。
「お、お待ちなさい! 勝手に戻ることは許しませんわ!」
(無視、無視)
金髪がガミガミ言っているが無視してピットに戻る。そこには白の鎧を装備した一夏の姿だった。
「おつかれ、獅苑」
「早く行け、織斑。アリーナの使用時間は限られてるんだ」
「は、はい。箒」
「な、なんだ?」
「行ってくる」
「あ・・・ああ。勝って来い」
「獅苑」(スッ)
すると一夏が手をかざす。ハイタッチか?
「・・・」(パチンッ)
ハイタッチをすると一夏はそのまま飛び立った。
〜〜〜数十分〜〜〜
結果、一夏の自滅で終わった。
箒SIDE
「よくもまあ、持ち上げてくれたものだ。それでこの結果か、大馬鹿者」
私も同意する。武器の性能を考えずに使い自滅するのだから。
「えっと、ISは今、待機状態になってますけど織斑君が呼び出せば展開できます。規則があるのでちゃんと呼んで置いてくださいね。はい、これ」
山田先生が分厚い本を一夏に渡す。一夏は冷や汗をかいている。私はそんな一夏を見て微笑んでしまう。
(よかった。無事で)
「・・・笑ってるぞ。篠ノ之」
「!」
後ろから声をかけられたのは、黒いISを纏った朝霧だった。
「・・・織斑先生、俺はいつ出れば?」
「あ、それならもう出て大丈夫ですよ。オルコットさんも準備できたみたいですし」
千冬さんではなく山田先生が答える。朝霧は「わかりました」と言って、一夏が話しかける。
「獅苑、勝ってこいよ」
「お前みたいに自滅はしない」
「うっ・・・」
朝霧はアリーナに飛びたった。
獅苑SIDE
俺はアリーナに出て金髪を見ている。だが
「・・・」
ずっと黙っている。いや黙ってはいないな、たまに
「お・・ら・・か」
声が聞こえる。
「おりむらいちか」
どうやら一夏のこと考えてるらしい。
(惚れたか? あいつに)
「織斑先生。いつ始めればいいですか?」
『オルコット! 試合はもう始まっているんだぞ!』
織斑先生の怒涛の声が響く。
「!・・・あ、あら、いらしたのね。準備はいいですの?」
どうやら復活したみたいだ。
「ああ・・・」
「そうですか。では、始めましょう!」
金髪は手に持ったスターライトmkVの銃口をこちらに向け撃ってきた。俺はそれを避けるが
(速い!)
相手の攻撃ではない。俺が乗っているIS(名前はまだない)のスピードが予想以上に速く、俺の身体にGがかかる。
「さぁ、踊りなさい。沸くし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」
((無視)・・・山田先生にはまだ初期設定の状態って言っていたけど、一次形態したらどうなるんだ)
そう考えていると、客席から
「ギリー! 頑張れ〜!」
「!」
ハイパーセンサーで声の元を探る。まぁ答えは分かっているんだが・・・そこには両腕をぶんぶん振っている。本音の姿があった。
(負けられないな、やっぱ)
そう思っていると、ブルー・ティアーズが背中にあるビットを使う。
「では、フィナーレと参りましょう」
(自立起動兵器か・・・)
金髪はビットを操作し、隙を狙ってライフルを撃ってくる。だが、それをなんなく避ける。避ける時、動きが止まったビット一機を袖口のバルカンで打ち落とす。
「なんですって!?」
ビットを落とされて、驚愕する金髪を無視して残り三機のビットをバルカンを落とす。ちなみにISの武装はバルカンしかない。
「くっ・・・」
ビットを三機落とされ、苦渋の顔をしている金髪をよそに、目の前に『フォーマット・フィッティングが終了しました』と、文字が出ているウィンドウが出た。俺は地上に降り、ウィンドウにの下にある『確認』を押す。するとISは光を放ち、俺は光に飲まれた。
セシリアSIDE
対戦相手である、朝霧獅苑は光に飲まれている。だがその現象に覚えがある。
「ま、まさか・・・一次移行!? あなたも初期設定だけの機体で戦っていたって言うの!? あ、ありえませんわ! 初期設定の機体でわたくしの射撃を全部避けるなんて!」
ありえない、そうありえない。初期設定であそこまでのスピードを出せる機体は見たこともない。そう思っていると、光が収まり、ISが姿を現す。さっきとはあまり変わりないが深緑のラインが入っており、背中のスラスターはX型で後ろに傾いている。相手は腰についている棒みたいのを取り出す。
(何をする気ですの・・・)
その棒の先からエネルギーカッターのような刀の形が出てきた。装甲で相手の顔しか露出部分しかないが、相手は顔を上げ
「・・・本気で行くぜ」
その瞬間、相手の姿が消えたと思ったら、地面に叩きつけられ、気絶してしまった。
獅苑SIDE
「こんなものか」
一次移行が終わった俺は高速で金髪の後ろに回りこみ両手に持ったBソードで叩き落した。まわりの観客は何が何だか分からず、唖然している。俺はピットに戻りISを解除する。待機状態はズボンの横にぶら下げた黒いチェーンのようだ。みんなの前に立つと、一夏が一番に話しかけていた。
「す、すげぇよ! 圧勝じゃないか!」
「・・・」
「あ、あの〜朝霧君。大丈夫ですか? か、身体とか・・・」
「問題ありません」
「そ、そうですか・・・」
山田先生は安堵する。すると織斑先生は
「何にしても今日はこれでおしまいだ。帰って休め。あと朝霧、戦闘のあとで悪いが[打鉄]を片しておいてくれ」
「わかりました」
返事をして[打鉄]を装備してIS倉庫に向かおうとするが
「ちょっといいか」
篠ノ之に止められた。
「なんだ?」
「いや、その・・・謝ろうと思っていてな」
「・・・?」
はて、俺は何かされたっけ?
「実は初めてお前を見た時、お前を馬鹿にしててな。一夏よりほっそりしてて、弱そうだと・・・すまなかった!」
そう言って腰を九十度に曲げた。
「別にいい。慣れてる」
「許してくれるのか?」
「許すもなにも、別にいいと言っている」
「あ、ありがとう・・・そういえばちゃんとした自己紹介をしてないな。私は篠ノ之箒だ。箒と呼んでくれ」
手を差し出してきた。俺はISを腕だけ外しその手を握る。
「朝霧獅苑だ。よろしく頼む、箒」
「ああ! こちらからもよろしく頼む、獅苑」
俺はこの学園に来て新しい友達が出来た。
〜〜〜IS倉庫〜〜〜
俺は一夏と箒と別れ、[打鉄]を片付けたのだが、
「すごかったね〜。代表候補生相手に一撃で気絶させるなんて・・・」
倉庫の入り口にいつぞやの二年生の女子がいた。
「・・・今回はただ話しにきたわけではないですね」
「今回はね。ほんとはいつも話したいんだけどね」
「で、本題は」
「うん、実はね・・・
・・・私と勝負してくれない?」
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