IS学園にもう一人男を追加した 〜 19話
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一夏SIDE

 

 

今日は学年別トーナメント初日。つまり、トーナメント1回戦。俺はシャルルとISスーツを着用せず、制服のままでいる獅苑と一緒に無駄に広い更衣室にいる。

 

一 「すごいなこりゃ・・・」

 

更衣室に設置されているモニターから観客席に埋め尽くされた大勢の人々を見て感想が口に出てしまう。その中にはテレビで見た顔もチラホラあった

 

シ 「三年にはスカウト、二年には一年間の成果を確認にそれぞれ来ているからね。一年には関係ないと思うけど、トーナメント上位者にはチェックが入ると思うよ」

一 「ふーん、ご苦労なことだ」

獅 「・・・ふわあぁぁん(アクビ)」

 

獅苑が大きなアクビをする。滅多に見ない獅苑の仕草にシャルルと共に目が釘付けになる。

 

獅 「・・・なに?」

 

見すぎたせいか、目を擦っている状態で獅苑がたずねてきた。

 

シ 「え、え〜と、可愛らしいアクビだな〜て・・・」

獅 「・・・」

 

シャルルの思い切った発言に獅苑の目から感情が消える。

 

シ 「ご、ごめんっ! そ、そうじゃなくてね。え、えっと・・・」

 

次の言葉が思い出せず、目で俺に助けを求めてくる。俺も目で返事を返す。

 

一 (無理)

シ (い、一夏〜・・・)

獅 「別に・・・」

一・シ 「え!?」

獅 「別に気にしていない」

 

いきなり獅苑が喋りかけてきて、シャルルと気の抜けた声を出してしまう。獅苑の目にはさっきまでの冷たい感じはなかった。

 

シ 「ほ、ほんと?」

 

手が震えていながらも勇気を出して聞いてみるシャルル。獅苑はズボンのポケットから飴を取り出し、舐め始める。

 

獅 「・・・慣れてるから別に気にしなくていい。でも、直球であんな事を言われたのは初めてだ・・・」

シ 「え、えへへ・・・ごめん」

 

場の空気が重くなる。俺はその空気には堪えられず、話題を無理矢理変える。

 

一 「そ、そういえばさ、獅苑は誰と組むんだ?」

獅 「ん?」

 

顔を上げ、首を傾げる。今更だけど、こいつの一つ一つの動作がたまに女みたいなんだよな。初めて会った電車の時もそうだし、さっきのアクビも・・・そんな事を考えているうちに獅苑がモニターの方に指を指す。シャルルと同時にモニターを見ると、画面にはトーナメント表の一覧が並んでいる。

 

シ 「一夏、あれ・・・」

一 「どうし・・・マジか」

 

Aブロック 一回戦一組目

『織斑一夏・シャルル・デュノア VS ラウラ・ボーデヴィッヒ・朝霧獅苑』

 

 

獅苑SIDE

 

 

ラ 「一戦目で当たるとは待つ手間が省けたものだ」

一 「こっちも同じ気持ちだぜ・・・[チラッ]」

 

一夏が視線がこちらを向いた。まぁ、俺がラウラと組むことになったって事を話さなかったとはいえ、俺の肩を掴んで「なんで! お前がラウラと組むことになってんだよ!?」って、揺さぶるのはさすがにヒドイと思う。ただでさえ、眠いんだから・・・

 

【回想】

 

トーナメント前日、深夜

俺のベットで規則正しい寝息をたてている本音を起こさないようにベットから抜ける。

 

(・・・眠れない)

 

心のモヤモヤが取れず、バレないように寮の外に出る。ベンチに座り、ケータイのコールを鳴らす。その相手は

 

? 『はーい、あなた専用のオナ[ブツッ]・・・ツーツー』

獅 「・・・」

 

もう一度かけなおす

 

? 『[プルルルルル、プルルル]もうっ! いきなり切るなんてひどいじゃない!』

獅 「楯無さんが変な事を言おうとしたからでしょう」

楯 『期待してたくせに』

獅 「もう一回切りますよ」

 

電話の相手は楯無さんである。一ヶ月前から暇な時には何度か電話をかけていたので、今回は気分転換に電話をかけてみた。

 

楯 『それで、体の方はもう平気なの?』

獅 「ええ、ISも問題なく動かせますよ」

楯 『そう。良かった』

 

ほっとしたように、楯無さんが安堵する。

 

楯 『それにしても、今、日本って夜中よね? そんな時間に電話をかけてくるなんて、どうしたの?」

獅 「・・・眠れなくて」

楯 『じゃあ私が子守唄でも歌ってあげましょう』

獅 「・・・それもいいかもしれませんね」

楯 『・・・何か、気になるの?』

 

いつもと違う態度に気づいたのか、真面目生徒会長の顔が出る(電話だから顔は見えないけど・・・)。

 

獅 「なんて言うか、嫌な予感がするんです」

楯 『ふ〜ん』

 

興味無さげに言葉を返してきた。

 

獅 「ふ〜んって、真面目に聞いてるんですか?」

楯 『聞いてるわよ。でも、獅苑君には関係ないでしょ』

獅 「なんでです?」

楯 『だって、獅苑君なら何が起きても大丈夫でしょ』

獅(楯 「・・・それってただ単に俺の事はどうでもい『違うわよっ!』・・・すみません」

 

さすがの楯無さんでもここまでひどい人じゃない。仕事中にちょっかい出すとか、寝てる時にベットの中に異物を入れたりするくらいだ。でも、勘違いした俺が悪いけど、ここまで楯無さんが怒るなんて・・・疑問に思いながらも、ちょっと身を引いた感じで理由を尋ねてみる。

 

獅 「そ、その、何が大丈夫なんですか?」

楯 『獅苑君は強いんだから、何があっても対処できるって事よ』

 

まだ楯無さんの声に少し怒気を感じる。

 

獅 「俺、強いんですか?」

楯 『それ嫌味?』

 

俺の発言がさらに楯無さんをイライラさせていく。

 

獅 「え、その、ごめんなさい。そう意味で言ったわけじゃなくて」

楯 『はぁ、獅苑君って意外と抜けてるんだね』

 

グサッと心に傷を負う。自分としてはそのような事が無いように注意しているのだが、やはり相手が相手だとここまで変わるものなのだろうか。

 

楯 『・・・まぁ、そんな獅苑君も可愛いんだけどね』

獅 「? なんか言いました?」

楯 『なんでもないわ。それより、あなたは一応、ロシア代表と対等に戦えるんだから、強いに決まってるでしょ』

獅 「あ、そういう事ですか」

楯 『だから、心配する事なんて無いわ。あるとすれば、無理をしてまた保健室で寝泊りしないかって事ぐらいね』

 

そう言い切った楯無さんはスッキリしたようで、さっきまでの怒気が消え、いつもの楯無さんに戻っていた。

 

楯 『で? 子守唄はいる?』

獅 「・・・もういりません」

楯 『そう、残念』

 

話はこれでもう終わったと思ったら、楯無さんから愚痴やらなんやらを聞かされ、結局、寝不足になったのは言うまでもない。

 

【回想終了】

 

そんなこんなで、試合開始前も俺は平然とアクビをしている。ちなみに、銀髪から「私の邪魔をするなよ」と、前もって言われているため、そこまで気を張る必要が無い。そして、ついに試合開始のカウントダウンが始まり・・・

 

『・・・試合開始!』

一(ラ 「叩きのめすっ!」

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