IS学園にもう一人男を追加した 〜 20話 |
シャルルSIDE
一(ラ 「叩きのめすっ!」
試合開始と同時に一夏が瞬時加速を使い、ボーデヴィッヒさんに向かって雪片を振り下ろそうとする。
一 「おおおっ!」
ラ 「ふん・・・」
だが、ボーデヴィッヒさんが右手を突き出し、AICを発動させ、一夏の動きを止めた。
一 「くっ・・・」
ラ 「開幕直後の先制攻撃。わかりやすいな」
一 「・・・そりゃどうも。以心伝心で何よりだ」
危機的状況でも一夏は笑みを浮かべる。それもそうだろう、ここまでは僕たちの予想どうりなのだから
ラ 「ならば、私が次にどうするか分かるだろう」
シュヴァルツェア・レーゲンの肩に装備されているレールカノンの砲口が一夏のちょうど顔面に向けられ、巨大なリボルバーの回転音が響く。僕はアサルトカノンを展開させ、一夏の頭上からボーデヴィッヒさんに向けて、射撃を行う。
シ 「させないよ!」
ラ 「ちっ・・・」
僕の攻撃でレールカノンの照準がずれ、砲弾は一夏に当たらず、ボーデヴィッヒさんは後退を始める。
シ 「逃がさないよ!」
後退したボーデヴィッヒさんを追撃し、もう片方の手にアサルトライフルを展開する。その展開時間は1秒もかからない。
『高速切替(ラピットスイッチ)』・・・事前に武装をコールせずにリアルタイムで武器を呼び出すことが出来る僕の特技。
一 「シャルル! 獅苑を頼む!」
シ 「わかった!」
僕の横を通り過ぎた一夏がボーデヴィッヒさんに向かっていく。さっきまでとは違い、ちゃんと距離を取って隙あれば攻撃するように戦っている。僕も朝霧君を足止めするため、朝霧君の方を向くが
シ 「あれ?」
そこには朝霧君の姿は無い。周りを見ても朝霧君の姿は無いが、後ろを向いて見ると・・・
獅 「・・・」
シ 「・・・うわぁあぁっ!!?」
朝霧君は僕の後ろで平然と立っていて、つい大きな声を出し、驚いてしまう。ハイパーセンサーを使えばこんな事にはならなかったと今更後悔している。だが、僕はすぐに距離を取り、アサルトライフル二丁の引き金を引く。
シ 「え・・・?」
だが、僕の撃った方向には誰もおらず、目の前にいたはずの朝霧君が僕の隣にいて、僕の肩をポンって叩く。
(嘘・・・こんなにも早く動けるISなんて聞いたことが無い)
おそらく瞬時加速を使ってるのだろうが、ここまで速く動けるISは存在していない。その事に僕は呆気に取られてしまったが、すぐにアサルトライフルを朝霧君の方に向ける。だけども、そこには朝霧君はいず、今度は僕の頭上にいた。だが、そこから動こうとせず、ただそこにいるだけ。
(・・・もしかして、遊ばれてるのかな?)
念のためにもう一度、朝霧君に向けて射撃を行うが、また朝霧君はそこにはおらず、僕の目の前にいた。
(やっぱり・・・そのぐらい余裕って事なのかな)
武器を持っていた手に力が入る。僕はこれでもフランスの代表候補生だ。使っているISが第2世代機といえども、それなりの実力はある。だけど、ISを動かして間もない相手に余裕を持たせるほどの実力差がある事に少し落胆する。
(でも、負けてられない。一夏をサポートしなくちゃいけないんだから)
向こうではシュヴァルツェア・レーゲンのプラズマ手刀とワイヤーブレードの波状攻撃を右手に持っている雪片と左手でプラズマ手刀を、足でワイヤーブレードを器用に捌(さば)いている。だが、その戦い方は集中力が切れたら一気に倒されてしまう。
(なんとしても、動きを封じないと・・・)
片方のアサルトライフルを収納し、ショットガン『レイン・オブ・サタディ』に切り替える。
シ 「行くよ!」
アサルトライフルを多方向に連射し、シャットガンで朝霧君に向けてを撃つ。
獅 「・・・なるほど」
もちろん朝霧君はショットガンの散弾を避ける。だが、避けた先にはアサルトライフルの弾丸が朝霧君を襲う。そこにショットガンを撃つ。
(これでなんとか・・・)
だが、朝霧君は僕が思っているほど甘くはなかった。朝霧君がこちらに見えない速度で近づいてきて、僕からアサルトライフルを奪う。
シ 「あ!」
獅 「・・・もらうぞ」
シ 「人のを盗んじゃ駄目だよ!」
すぐにショットガンを至近距離で撃つ。だが、朝霧君は奪ったアサルトライフルを盾にして、アサルトライフルは爆発し、僕の周りに煙がたつ。朝霧君はすぐにこの場から離れ、実際、僕がカウンターを受けた形になった。煙の中でどうすれば朝霧君を止められるかを考えていると煙の切れ目からAICに捕らわれた一夏の姿が見えた。
シ 「一夏!」
煙から飛び出し、ショットガンをボーデヴィッヒさんに向けて撃つ。
ラ 「くっ・・・!」
一 「シャルル!」
突然の強襲により、距離を取ったボーデヴィッヒさんと一夏の間に入る。
一 「助かったぜ、シャルル」
シ 「大丈夫?」
一 「ああ、なんとかな・・・それで獅苑は?」
一夏の質問に首を横に振って答えた。すると、一夏は「まぁ、しかたないか」と言って、立ち上がる。朝霧君の方を見るといつの間にかフィールドの端っこにいて動こうとはしない。
一 「さすがに獅苑がいたら、ラウラを倒せないな」
シ 「・・・たぶん、大丈夫だと思うよ。朝霧君、僕が攻撃した時しか動かなかったから」
なんとなく、そう思った。この言葉に一夏は
一 「ん〜、やっぱりそう思うか。実は俺もそう思うんだよな。つか、獅苑がラウラと組む自体、おかしいと思ってたし」
どうやら、一夏も同じ事を思っていたらしい。しかも、試合が始まる前から。
ラ 「何をごちゃごちゃ喋っている!」
ボーデヴィッヒさんがワイヤーブレードをこちらに向けて射出。それを一夏と左右に分かれて避ける。
シ 「じゃあ、ここからが本番って事で良いよね」
一 「あぁ。見せてやるとしようぜ、俺たちのコンビネーションをな」
千冬SIDE
同時刻、私は観察室のモニターに映し出されている一夏たちの戦闘を真耶と共に見ている。
真 「すごいですねぇ織斑君。二週間ちょっとの訓練であそこまでの連携が取れるなんて。やっぱり才能なんですかね」
千 「あれはデュノアが合わせて成り立つんだ。あいつ自体は大して連携の役には立っていない」
真 「それでも、誰かがそこまで合わしてくれる織斑君自身がすごいじゃないですか。魅力の無い人間には誰も力を貸してくれないものですよ」
千 「まあ、そうかもしれないな」
ぶすっとした感じに答えたものの、やはり弟が褒められていると自分のようにうれしく感じてしまう。真耶はそんな私を見てちょっとニヤけている。どうせ、弟思いだとか、ブラコンとか思っているのだろう。
(あとで仕事でも押し付けてやろうか)
ブラックな事を考えていると真耶が今回のトーナメントについて疑問を話し始めた。
真 「それにしても、いきなり形式変更は、やっぱり先月の事件のせいなんですか?」
先月の事件・・・黒い全身装甲ISの襲撃事件だ。生徒たちには研究中のISの暴走、各国の政府には反政府組織の仕業という事になっている。
千 「おそらくそうだろう。より実戦的な戦闘経験を積ませるのが目的でツーマンセルにしたんだろうな」
真 「でも、一年生は入学してまだ三ヶ月ですよ。戦争が起こるわけでもないのに、今の状況で実戦的な戦闘訓練は必要ない気がするんですけど・・・」
千 「そこで先月の事件が出てくる。特に今年の新入生には第三世代型兵器のテストモデルが多い。そこに謎の敵が現れた時、何を心配すべきだ?」
真 「ん〜〜〜・・・」
真耶は大きすぎる胸をすくい上げるように腕を組んで考え始めた。一応、日本の代表候補生だったのだから、スッと答えてほしいものだと私は思ったが、まぁ、真耶ならしかたないのだろう。そして、ナゾナゾを解いた子供のように答えを元気良く答える。
真 「・・・あ! 自衛のためですね!」
千 「そうだ。操縦者はもちろん、自分の第三世代型兵器を守らなければならない。教師たちの数は無限ではない以上、原則自分自身で守るしかない。そのための実戦的な戦闘経験が必要なのさ」
真 「なるほど〜」
真耶の疑問が解決して再び、モニターに目が移る。そして、また真耶の頭に?マークが浮かぶ。
真 「なんで朝霧君は戦わないのでしょうか?」
千 「・・・さぁな」
大方、ラウラに手を出すな、と言われているのだろう。
真 「さぁなって、それじゃあ、さっき話したこのトーナメントの目的が成されないじゃないですか」
千 「別に大丈夫だろ。あいつはおそらく一年、いや、この学園の生徒の誰よりも強いだろう」
真 「ええっ! で、でも、それじゃあ、更識さんより強いって事じゃ・・・」
千 「実際、もう倒してしまったかもな」
それだと、朝霧が生徒会長か・・・それも面白そうだな。真耶は私が言った事に驚いて頭が混乱しているようだが、そんな真耶をほっぽいてモニターに写っているラウラの姿を見る。
(変わらないな。強さを攻撃力と同一している考え方は昔から・・・それでは一夏には勝てないぞ)
会場 『ワアアアッ!』
会場が一気に熱気に包まれ、その歓声が観察室にも伝わってきた。
真 「あ! 織斑君、零落白夜を出しましたね!」
歓声の声に我に返った真耶がモニターを見て声を上げる。
真 「一気に勝負をかけるつもりでしょうか」
千 「さて、上手くいくかな」
真(千 「またまた〜、そんな気にしてないような態度をしなくてもバレバレ「山田先生、今度久しぶりに組み手でもしようか。せっかくだ、十本ほどで良いだろう」
そう言うと、真耶はさっきまでのニヤけ笑いが消え、慌てて首と手をブンブンと振る。
真 「い、いえいえっ! 私はその、ええと、生徒たちが使う訓練機を見ないといけませんから!」
千 「・・・私は身内で弄られるのが嫌いだ。そろそろ覚えるように」
真 「は、はい・・・すみません」
しょんぼりとうなだれる真耶を見て、可哀想と思い、頭を撫でる。
千 「さて、試合の続きだ。どう転がるか見物だぞ」
真 「は、はい!」
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