武装神姫「tw×in」 第五話 高速走行×高機動= |
「ふは?……」
『ルミア、そろそろ良いかな?』
うらに勝った直後、緊張の糸が切れたルミアはその場に寝転んで落ち着きモードになってしまった。
けど、まだ落ち着くのは少し早いんだよね。
「あ! す、すみません! まだ終わってませんでしたね!」
そう、今はタッグバトル。
相手神姫二人の体力をゼロにしないと勝利にならない。仮に一人を倒しても、もう一人に二人倒されてしまったらこちらの負けになる。もし勝ちならうらを倒した時に分かる筈だけど、まだ時間は進んでいるのを見るに、木部の氷李は負けてないみたいだ。
多分、もうミズナと戦ってるとは思うけど。
『二人を探そう、ミズナの援護をするんだ』
「はい!」
ルミアは元気よく起き上がる。
瞬間、ルミアの背中に何かが刺さった。
「うわ!?」
『ルミア!?』
今のは投擲武器……ということは。
ルミアは慌てて振り返る、するとそこには、
「うらさんに勝ちましたか、ですが、これで一対一になっただけです」
氷李がクナイを指の間に挟んでこちらへ歩いてくるところだった。やはり今のはアレか。
「い、一対一ということは、ミズナさんは……」
「少々時間は掛かりましたが、この勝敗で本当の勝者が決まります」
クナイの先がこちらを向いた。
相手はすでにやる気だ。こちらはうらとのダメージが残っているけど、ブーストは回復済み、スキルポイントは……今の投擲の不意打ちで少し削られたが、アタックチェインかレールアクション一つずつなら使えるくらいにはまだある。氷李だってミズナとの戦いでダメージは受けてるだろう。
つまり、条件は五分五分の筈だ。
『行くよルミア、勝ちを掴むんだ』
「了解です!」
ルミアが構えたのを見て、
「いきます」
氷李は手に持ったクナイを投げつけた。
対抗してチャクラムを投げ、相殺する。互いに二投目も投げるが、再び相殺。
ならばと思い、爆弾を投げつける。
だが、ルミアが投げのモーションを取った時、
「覚悟して下さい」
言葉と共に、氷李がレールアクションの構えを取り、爆弾が落ちる頃にはすでにルミアの真横に来ていた。
『ガードだ!』
慌てて指示を出す。
しかし、
ガギィン!
「ごめんねー宗哉、ゆいちゃんが強すぎて」
「大丈夫だよ、予想はしてたから」
「マスターのロングレンジ固めも原因だとは思いますけどね……結局全然当たったんなかったし」
「ちょ、ミズナー、それは言わない約束でしょー」
「してませんよ、そんな約束……はぁ」
筐体を離れ、オレ達は先ほどのバトルを振り返っていた。
結果は、天野達の勝ち、いや、木部の一人勝ちと言った方がいいか。木部と氷李がミズナとルミアに勝利した。
ガードが間に合わないくらいの高速レールアクションが勝利の一手だったな。
「はぁ……負けちゃいました……せっかく、エンルさんのポイントを……」
その一撃を喰らったルミアは体育座りで落ち込んでいる。
「る、ルミアさん、そんなに気にしないで下さい」
「エンルちゃんもそう言ってるんだから、立ち直りなさい」
「うぅ……」
「はぁ……ダメか」
「ルミアさん……」
エンルとスレイニの言葉も届いてないみたいだ。
「かなり落ち込んでるね、ルミアちゃん」
「マスター? あたしも一応落ち込んではいるんですよ?」
「うん、まぁあれだけ張り切ってたからね」
でもあのままは他の二人に悪いかな。
オレはルミアに声をかける。
「ルミア、さすがに二人を相手にしてそう簡単に勝てるものじゃないって」
「ま、マスター……」
「氷李に負けたことを悲しむより、うらに勝ったことを喜ぼうよ」
言ってルミアの頭を撫でた。
「マスター…………そうですね! ありがとうございます!」
元気いっぱいに立ち上がるルミア。良かった、機嫌は治ったみたいだ。
「そっちも治ったみたいね」
天野と木部がやって来た。天野の手には、
「うら?」
頭を撫でられて本物の猫のように寝転んだうらがいた。あちらも機嫌治しに時間が掛かったらしい。
「ルミアさん」
木部の肩に乗っていた氷李がルミアの前へ降り立つ。
「良い勝負でした。次はお互い万全の体制で勝負致しましょう」
すっ、と右手を伸ばす。
「氷李さん……はい! 次は負けませんよ!」
ルミアはその手を取り、固い握手を交わした。
「次を、楽しみにしてる」
「うん、次は一対一でね」
オレと木部もいつかの再戦を約束した。
「ところで宗哉、かなちゃん、目的は果たせた?」
「えぇ、アタシは一応」
「オレも多分、詳しい値段は忘れたけどきっと足りると…」
その時、
「あぁいたいた、おーい!」
こちらへと駆け寄る声に振り向くと、
「よっす、まだ居てくれて助かったぜ」
「東太、もう用事は済んだの?」
「おぅ、即効で終わらせて来たぜ」
「普段からあの勢いで行えればよろしいんですけどね」
「うっ」
肩に乗るカレンに痛いところを突かれてびくりと振るえる。
「そ、そういや天野達も一緒だったんだな」
話題を変えるように天野達を見た。
「偶然会ったんだけどね」
「もうバトルしたのか?」
「えぇ、今さっきタッグでね、結果は、アタシ達の勝ち」
「じゃあ宗哉、ポイント足りてねぇんじゃね?」
「いや、多分足りてるとは思うけど」
改めてポイントを確認する、先ほどのバトル分を含めた今の数なら多分足りると思うが。
「なら保険と思って、俺とバトルしねぇか?」
東太ということは、カレンとのバトルか……
確かに保険にもなるし、それに、ナイスタイミングだ。
「いいよ、やろう」
承諾した後、オレは三人を見て、
「スレイニ、出番だ」
スレイニに声をかけた。
「あ、アタシですか?」
選ばれことに驚いて目を丸くするスレイニ。
「うん、昨日約束したからね」
「や、約束したのはルミアちゃんで、アタシはただご無沙汰だと言っただけですから……」
「だからだよ、久しぶりに、一緒にバトルをしよう」
「う……は、はい、マスター。ありがとうございます」
「それに、相手はあのカレンだよ」
「! カレン……」
スレイニは東太の肩に乗るカレンを見た。
「ごきげんようスレイニさん」
東太の肩からひらりと飛び降り、スレイニの前へ。
「ご無沙汰なバトルのお相手、してあげなくもないですわ」
「そうか……なら、いざ勝負!」
ビシッ! と指を突きつけてカレンに宣戦布告をした。
スレイニとカレン、つまりアーク型とイーダ型は、そのどことなく似る見かけから分かるように、同じ会社、オーメストラーダで造られた神姫だ。
アークは((高速走行|ハイスピード))型、イーダは((高機動|ハイマニューバ))型のトライク―――三輪バイク型神姫。ハウリン型やゼルノグラード型よりも新しい神姫だ。
ただ、オレは変わり者で、その新しいアーク型のスレイニの後に、ハウリン型のルミアを得ている。
それにはちょっとした理由があるんだけど……それはまた、いつかの話。
「スレイニさん、頑張ってください!」
「応援してますよ!」
「ありがとうエンルちゃん、ルミア、頑張ってくるね」
スレイニの武装を取り出して渡すと、慣れた手つきで自ら付けていく。
真紅のボディを覆うのは、同じく真紅色の武装、アーク型用の武装だ。
「その姿を見るのも久しぶりだね」
それだけ、スレイニとバトルしていないということか。
「マスター、久しぶり過ぎてアタシの扱い方忘れてるんじゃないですか?」
イヤミのような言葉だが、その言い方とスレイニの表情でそうではないと分かる。
明らかに、喜び楽しんでいる表情だ。
「大丈夫さ、きっと」
オレはスレイニの武器を確認した。
小剣:フォーディングナイフ
ライフル:OS―35 AライフルEx
そして、ランチャー:スーパーシルバーストーン
近接1に対して射撃2と、エンルの装備比率に似ているが、これらの扱い方はかなり異なる。
「宗哉ー、筐体空いたよー」
「行きましょう、マスター」
呼びに来た真南を見て、スレイニはヘッド武装のバイザーを下げてヘルメットのように被った。
Ride on!
バトルフィールドは廃墟。
廃ビルを中心としてそこから左右の、8の字型にある道路がフィールドだ。
その道路の正面に、東太のライドしたカレンが立っていた。
動作確認も兼ねて前へと歩き、カレンへと近づく、あちらも同様にこちらへと歩いてきた。
「カレン、久しぶりね」
「そうですわね、貴女がバトルしていなかったのもそうですが、私も少々バトルはご無沙汰でしたので、条件は同じですわ」
互いにすれ違う。まだ開始の合図がないのでバトルは開始されない。
すれ違ってから少し進み、互いに背を向けて止まる。
「絶対に負けないよ」
「その言葉、そっくりお返ししますわ」
そして、合図が聞こえる―――
Ready…………GO!
振り返り様、スレイニはライフルを構えて引き金を引く。
それはカレンも同じだった。
パァン!
互いのライフル弾が相殺。こうして、戦いの火蓋が切って下ろされた。
説明 | ||
人と神姫達の会話→バトル→人と神姫達の会話→バトル 基本はこう進むと思います。実際のゲームもそうですので。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
457 | 453 | 0 |
タグ | ||
「tw×in」 BattleMasters 武装神姫 | ||
風麦梟さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |