篠ノ之家の長男は正義の味方 第4話
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 それは、突然起こったことだった。

 束と千冬が、久しぶりに公園に寄ったときに起こった。

 黒い服に見を包み、見るからに暴力団やヤクザのような奴らが公園にたかっていたのだった。なので、直ぐに帰ったほうが言いと進言する千冬だったが、束はあんな奴等無視すればいいと言った。

 千冬は、仕方なく束の意見を採用し公園に寄る事にしたのだった。

 だが、それがいけなかったのだろう。束も千冬も他の子供と比べれば可愛らしい容姿をしているのだ。そのての趣味の奴から見れば、放っておけないだろう。そして、黒服の奴等にはそのての趣味を持った奴もいたのだった。

 しつこく話しかけてくる黒服に対し、千冬は徹底的に無視をし、束も無視をしているが少しずつ苛立っていた。そして、ついに苛立ちは限界に達しキレるのだった。

 束の罵詈雑言に苛立ちを高めた黒服たちは、ついに束に暴行をくわえようとし始める。だが、篠ノ之道場に行っている千冬が、木の棒を拾い迎撃するも子供対大人ではいくら剣の才能を持っている千冬でも、打ち勝つ事はできなかった。一人が千冬の相手をする間、残ったメンバーは束を同じく黒い車に連れ込んでしまった。千冬もこのままではいけないと思い、心の中で束に謝罪をしその場を離れ、誰か頼れる人に伝える事にしたのだった。

 千冬が頼れそうな人がいそうな場所は束の家か学校のどちらかだ。そして、公園から最も近いのは学校だ。そこには、いるのかも分からない。でも、もしいるのならばかなりの時間短縮にもなるだろう。だが、もしいなかったら…そんな事を考えながら、千冬は走った。

 そして、学校で…千冬が頼れる男、士郎を見つけるのだった。

 

side out

 

 

 

side 士郎

 

 俺は走る。魔術の秘匿など気にせずに、強化の魔術を最大限に使い千冬から聞いた特徴の車を探すのだった。

 一刻も早く、束を助けるために。俺は、この平和な世界で何処か油断をしていたのだろう。

 こんなに平和なら、きっと大丈夫。そう、考え込んでしまったのだろう。

 くそっ!俺の失態だ!だから、絶対に俺が束を助けるんだ!

 千冬には、柳韻さんたちに伝えるように頼んである。そうすれば、きっと柳韻さんたちが警察に連絡してくれるだろう。

 ここから約3kmくらい離れた所だろうか、そこに黒塗りの車が海の方へ向かって行くのが見えた。

(あの車か!)

 千冬から聞いた特徴通りの車を発見し、見失わないようについて行く。

 くそっ…此処が人前じゃなかったら黒鍵や弓で車の足を止める事は出来るんだがな…だが、そんなIfを考えてもしょうがないか…

 そう考えていると、目の前の車は海に近くの倉庫に止まっていた。…なるほど、ここが奴等の本拠地か?

 まだ俺と倉庫まで距離がある…くっ、無事でいてくれ束!

 

side out

 

 

 

 束が眼を覚ますと、そこは何処かの倉庫のようだった。

 眼が覚めたばかりであまり頭が回らないで何が起きているのか思い出していると、自分が黒服の男たちに攫われ、何かの薬品で眠らされたことを思い出す。

 束は、何とか此処から抜け出そうと試みるも、両腕と両足がロープで縛られている事にやっと気付いた。

 

「やっと眼が覚めたか?」

「…私に何するつもり?放してよ!」

「断る。貴様には、身代金をたっぷり貰うために犠牲になってもらう」

 

 束が黒服たちのリーダーらしき男に抗議をするが、軽く流されてしまう。

 捕らわれている中、束は考えてしまう。もしこのまま帰れなかったら…千冬や父親、母親に会うことができなくなったら…妹の箒と会えなくなくなったら…そして、大抵誘拐されればその子は殺されてしまう…

(ヤダ…ちーちゃん達と会えなくなるなんて…このまま、死んじゃうなんてヤダ!)

 

「……けて…」

「あ?」

「たすけて…!」

「かっはは、助けなんてこねぇよ」

 

 束の呟きは、大きくなる事に力強い声となっていく。

 そして、束の頭の中には、何故かいつも自分のことを心配してくれていて、そして自分が嫉妬して憎んでいる兄の顔が浮かんだ。束自身、何故真っ先に士郎の顔が浮かんだか判らない。

 だが、束は士郎ならばきっと助けに来てくれる、そう思ったのだった。

 

「たすけて…士郎!!」

---パリィン!パリィンパリィン!

「な、なんだ!?」

 

 束が叫ぶと同時に、倉庫のガラスが何枚も割れると同時に何本かの黒鍵が入り込んできた。そして一拍空けて、人影が入り込んできた。

 謎の人影は、赤い外装のような服を見に纏い、黒と白の短剣を持っていた。

 

「フッ…お前の望み通り、助けに来たぞ。束」

「し…ろう…?」

「て、テメェ何者だ!」

 

 入り込んできた人影は、前世の頃正義の味方として戦場を駆け抜けた相棒とも言える双剣の干将・莫耶を持ち、自身の対魔力の低さを補うために着込んでいた聖骸布を身に纏った篠ノ之 士郎であった。

 士郎は、リーダーと思わしき男の発言を無視し、強化した足で近くにいる黒服に近づき柄を黒服の鳩尾に叩き込んだ。

 

「ガフッ!!」

 

 黒服は予想外の痛みに、気絶してしまう。士郎は、それだけで止まる事は無く、そのまま干将・莫耶で近くの黒服たちを切り裂き始める。

 もちろん、刃は潰してあるので死ぬ事は無いが切り裂かれた黒服たちは、気絶していく。

 

「なっ!?こんな餓鬼に…テメェら!袋叩きにしてやれ!」

「「「オォォーーーー!!」」」

「フッ…壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」

「「「「なぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」

 

 急に、さっきまで刺さっていた黒鍵が小規模の爆発を起こした。

 それにより、黒鍵の近くにいた黒服はその足を止めてしまう。士郎にとって、一瞬でも足が止まれば充分だった。

 士郎は、足を止めず近づいてきた黒服に干将・莫耶を投げつけ、爆発させた。

 黒服たちは、いきなり爆発した双剣に驚きながらも気絶してしまう。残った黒服たちも、士郎の行動に警戒をし動く事が出来なくなっていた。

 

「何してやがる!餓鬼はもう何も持ってすらいねぇんだぞ!」

「「「「は、はい!」」」」

 

 残った4人の黒服たちが襲い掛かってくる。

 だが、士郎もそのまま手ぶらでいるつもりも無かった。

 

「投影開始(トレース・オン)。くらえ!」

「なん…だとぉ!?」

「えっ…!?」

 

 士郎は、投げたはずの干将・莫耶を再び投影した。

 それにより、士郎以外は投げて爆発したはずの武器が再び士郎の手に戻っていたことに驚いた。

 

「驚いてる暇があるのかね?」

「な、何も無い所から剣を…化け物だぁぁぁぁ!」

「「「に、逃げろぉぉぉ」」」

 

 士郎の魔術を知らない残った黒服たちは、士郎の魔術に恐れ逃げてしまった。

 これで、残ったのは士郎と黒服のリーダー、そして束だけだった。

 

「さて、どうするかね?残ったのはお前だけだぞ?」

「くっ…だが、こっちには人質がいるんだぞ!」

「…きゃっ」

「束! くっ、束に手を出すな!」

 

 黒服のリーダーは、束にナイフを向け始める。

 束を人質にされ、士郎は身動き取れなくなってしまった。士郎の目的は、束を無事に救い出す事だ。そのため、束に傷一つ付けさせる訳にはいかなった。

 

「かっはは。なら、その剣を捨てるんだな」

「くっ…」

 

 士郎は、言われた通りに干将・莫耶を投げ捨てた。

 

「士郎! なんで…」

「フッ…そう言えば、お前が俺の名前を言うのは初めてだな」

「士郎…」

「ハッ、な〜に人前でイチャついてんだぁ。まぁいい、これでテメェも終いだ!」

 

 傍から見れば、士郎と束はあまり似てない為一目見ただけでは兄妹と見抜けないだろう。

 黒服のリーダーが取り出したのは、拳銃だった。

 照準を士郎にあわせ、いつでも撃てるようにしている。

 

「さぁ、糞餓鬼。この嬢ちゃんに別れでも告げな」

「悪いが、その必要は無い」

「なんだと!?」

「フッ!」

---キィン!キィン!

「がっ!?な、なんだ」

 

 突然、男の持っていた拳銃とナイフが何かに弾かれた。

 拳銃とナイフを弾いた何かは、そのまま音をたてながら地面に落ちる。ナイフを弾かれた事で、黒服のリーダーは束の拘束を解いてしまった。

 黒服のリーダーは、その何かを確認し驚愕する。

 

「なっ!?こ、コインだと!?」

 

 そう、拳銃とナイフを弾いたのはゲームセンター等でありそうなコインだった。

 これは、羅漢銭と呼ばれる暗器の一種で平たく言えば銭投げである。

 士郎は、相手が油断している内に少しだけ空けておいた手の中に2枚のコインを投影し、相手の拳銃とナイフに飛ばしたのだった。

 

「驚くのはいいが、油断のし過ぎだ!」

「ガッ!」

 

 自分の切り札である銃と人質が、たかだかコイン2枚で防がれた事に驚く事しかできなかった。

 士郎は、その隙に黒服のリーダーに向かって回し蹴りを放ち、黒服のリーダーはその蹴りにより気絶してしまった。

 

「ふぅ………大丈夫だったか、束?」

「え、あ……うん…」

「それじゃ、帰ろう。俺たちの家に」

 

 拘束から解放され、座り込んでしまっている束に手を差し伸べる士郎。

 束は、戸惑いながらも差し伸べられた手を握るが、一向に立ち上がる事をしない。

 

「? どうした」

「…………………た」

「へ?」

「……腰が抜けて…立てないの///」

 

 いくら束が、他の子供と違い大人びた思考を持っていても、さすがに自分が誘拐され人質にされれば、その恐怖で腰が抜けるのも当然だろう。

 顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに言う束を見て、士郎は笑いながら背を向けてしゃがむ。

 

「ほら」

「?」

「おんぶしてやるから。乗れよ」

「うん///」

 

 士郎は、束をおんぶしそのまま工場を後にするのだった。

 ちなみにだが、黒服たちは士郎たちが去った後に警察たちに逮捕され、壊滅したそうだ。

 束を助け出し、帰宅する二人。その姿は、仲の良い兄妹にしか見えなかった。

 束は、士郎に背負われながらひとつだけ士郎に尋ねた。

 

「ねぇ…」

「ん? どうした」

「なんで…私のこと、助けに来てくれたの?」

「………なんでさ…妹を助けようとしない兄がいると思うか?」

「でも! 私は、お父さんたちがずっと士郎のこと構ってるから、お父さんたちは私のことはどうでもよくて…士郎だけ居ればいいのか、って思ってて…それで、士郎のことずっと…嫉妬して、無視して、いないものだと思って接してたら…」

「…だから束は俺のこと無視してたのか…それでもだよ、束。俺は束のことを家族だと考えてる。それに、俺にはなりたいものがあるんだ」

「なりたい…もの?」

「そう。正義の味方さ」

 

 いままで笑顔を見せても、それは苦笑だったり作り物のような笑顔をみしていた士郎。だが、このときの笑顔は自分の本当の笑顔を束に見せていた。

 それを見て束は、自分の顔が赤くなるのを感じた。恥ずかしさから顔を士郎の背中に埋めて見えないようにした。

 

「それにな、束。子供のことをどうでもいい、なんて思う親なんていないさ。いたとしても、父さんたちはそんな人じゃない。だから、安心しろ」

 

 ---今日は疲れただろ?家に着いたら起こしてやるか、今は少し寝てろ。

(うん。そうさせてもらうね、士郎…今日は助けてくれてありがとう、お兄ちゃん)

 束は、幸せそうな顔で眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

説明

第四話「束救出作戦」
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束がツンデレ→束がデレた イインフィニット・ストラトス Fate 

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