IS学園にもう一人男を追加した 〜 61話 @
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【キャノンボール・ファスト 会場】

 

 

フィールド内部。

そこでぶつかる ちんまい少女達。

 

鈴・R 「"ちんまい"言うなっ!!」

 

・・・失敬

 

鈴 「つか、アンタ! さっきから、全然攻めて来ないじゃない! 真面目にやる気あんの?」

R 「真面目にっていったって、相手が弱かったら、やる気なんかおこるわけないじゃん」

鈴 「へ〜、それって、あたしが弱いって言いたいのね・・・上等じゃないのよっ!」

 

怒号を叫ぶ鈴が、双天牙月で斬りかかる。

その動きは、一切、手加減無しの攻撃。

 

R 「アンタも、キレると強くなるタイプなんだ・・・でも、こっちには!」

鈴 「っ!?」

 

『R』が手をかざすと、AICが発動し、鈴の動きがピタッと止まる。

 

鈴 「な、何で、アンタが・・・ドイツの・・・」

R 「・・・」

 

鈴の質問には答えずに、何かを考え始める『R』

この状況なら、『R』の勝ちは確定なのだが・・・

 

R 「・・・や〜めたっ」

 

だが、『R』はAICを解除し、鈴の拘束を解く。

 

鈴 「どういうつもりよ・・・?」

R 「べっつに〜。ただ、自分から"つまらない喧嘩"にしたくないだけ・・・ほらほら、本気を出すんだから、構えなさいよ」

鈴 「・・・ははっ、アンタ、面白い奴ね」

R 「一応、褒め言葉として、もらっておくけど・・・死んで文句は言わないでね」

 

もちろん、殺す気はない『R』はショルダーから引き抜いたENワイヤーブレードを構え、鈴は双天牙月と衝撃砲の砲口を前方に向ける。

 

鈴 「・・・っ」

 

試合開始の合図は、鈴の拡散衝撃砲によって始まった。

 

R 「・・・」

 

ラビィーネのごつい体で軽やかに衝撃砲の攻撃範囲から離脱し、前腕のグレネードを連射。

鈴はそのグレネードを衝撃砲で破壊し、『R』は破壊されたグレネードの爆煙から瞬時加速(イグニッションブースト)で接近し、斬りかかる。

 

[ガキィンッ!]

 

双天牙月とENワイヤーがぶつかり合う。

すると、ラビィーネのショルダーから4本のENワイヤーが飛び出し、『甲龍』の衝撃砲の砲口を潰す。

 

鈴 「それで、封じたつもり!?」

R 「っ!」

 

潰されたはずの砲口から、不安定な衝撃砲が放たれ、ENワイヤーをかき消し『R』に直撃。

それと同時に、衝撃砲の球体が爆散し、その衝撃で鈴もダメージを負う。

 

R 「はあっ!」

鈴 「ぐっ・・・」

 

衝撃砲を耐え抜いた『R』が、"衝撃砲"使用不能となった鈴を双天牙月ごと吹き飛ばす。

壁に叩きつけられた鈴は、近くに落ちた双天牙月を拾おうとするが、鈴の周りにラビィーネのグレネードが降り注いだ。

 

R 「・・・」

 

ガシャ、ガシャと、オートで弾を装填する前腕のグレネードを降ろし、回復したレーダーで鈴の生存を確認する。

 

R 「・・・へ〜、まだ生きてる」

鈴 「はぁ、はぁ・・・あ、当たり前でしょ」

 

間一髪、双天牙月を拾い上げた鈴がすべてのグレネードを弾いて、直撃を避けていたのだ。

だが、双天牙月は刀身がボロボロになり、もう使い物にならず、心身ともにボロボロな鈴が尻餅をつく。

 

R 「・・・」

鈴 「どうして撃たないのよ?・・・情けでもかけるつもり?」

R 「まさか・・・じゃあ、これで終わりね」

 

装填された片腕のグレネードを鈴に向け、心の中でトリガーを・・・

 

本 「わぁああああっ、どいてどいて〜〜!!」

R 「え?」

 

『R』が上を向くと、上空から降って来る一機のIS。

まさかの事態に、『R』は咄嗟に動く事が出来ず、本音の頭とゴッツンコ。

 

[ゴン!・・・ドタッ!]

本 「いった〜い・・・」

R 「"いった〜い"じゃないわよ! 何なのよ、アンタっ!?」

本 「え、えへへ〜・・・ごめんなさ〜い」

 

頭を掻いて謝る本音。

 

鈴 「な、何でアンタが!?」

本 「あ! 凰凰(ファンファン)だ〜!」

鈴 「だーーっ! その呼び方やめなさいよねっ!」

本 「え〜、いいじゃん〜」

 

尻餅をついている鈴に、本音はしゃがんで笑う。

 

R 「・・・お取り込み中で、悪いけど」

本 「わっ!」

 

横一閃に振られたENワイヤーを上に飛んで避ける本音。

 

R 「逃がさないよ」

本 「へっへ〜ん。当たんないよ〜だ!」

 

ヒラヒラと、『R』の攻撃を避け続け、徐々に苛立ち始める『R』

 

R 「あ〜! 腹立つっ!」

本 「こんなの、ギリーに比べれば、全然対した事ないね〜」

[ブチッ!]

R 「・・・じゃあ、何? 私はその"ギリー"とやらに劣ると?・・・舐めんなよっ、クソガキがぁ!!」

本 「っ!」

 

『R』の気迫が変わったのを察知して、後退する本音であったが、ラビィーネのENワイヤーが打鉄(うちがね)の足に絡みつき、投げ飛ばされる。

 

R 「そういえば、学園祭で会った事があったわね・・・何で、私と背も変わらないくせに!」

 

地面に落ちた本音にグレネードの銃口を向けて・・・

 

R 「そんなに"胸が大きい"のよーっ!!!」

 

ドガッドガッと、本音の一帯が爆発し、黒煙が立ち込めるが、それでも怒りが収まらない『R』は弾切れを起こすまで撃ち続けた。

 

鈴 「・・・あー、納得・・・」

 

 

 

 

 

 

 

【海上】

 

 

W 「・・・」

簪 「・・・」

 

上空で互いに向かい合う2機。

だが、この状態が続いて、もう5分が経過しており、簪は痺れを切らして、『W』に話しかける。

 

簪 「あ、あの・・・」

W 「?・・・な、に?」

簪 「"なに?"、じゃなくて・・・えと、戦わないんですか?」

W 「・・・たた、かうの?」

簪 「いや、さっき"始める"とか、言ってませんでした?」

W 「・・・・・・・・・空気、読んだ、だけ・・・」

簪 「・・・」

 

『W』のマイペースについていけない簪は、敵を目の前に唖然とし、ため息をつく。

 

W 「でも・・・戦う、なら・・・っ」

簪 「っ!?」

 

殴りかかってきた『W』の拳を、簪は超振動薙刀『夢現(ゆめうつつ)』で受け止めた。

ちなみに、今の『打鉄弐式』の武装は、この『夢現』のみ。

連射型荷電粒子砲『春雷(しゅんらい)』は、"キャノンボール・ファスト"用に装備から外され、『山嵐(やまあらし)』は、完全に完成が近づいていて、完成するまで装備から外していた。

 

W 「・・・『海神(わだつみ)』」

簪 「っ!?」

 

『W』が自分のISの名を呟くと、海水が竜巻を作り出し、その竜巻が簪と『W』を飲み込む。

 

簪 「うっ・・・」

W 「・・・」

 

ISのおかげで溺れる事はないが、竜巻の遠心力で、竜巻の回転自体を操っているのか、簪は海底に吸い込まれていく。

だが、簪とは逆に『W』はケロッとして竜巻の遠心力の影響を受けず、簪を見下ろしていた。

 

簪 (ここじゃ、まともに戦闘が出来ない・・・早く、海から出ないと)

 

水中専用にカスタマイズされていない機体で、竜巻の影響から脱し・・・

 

W 「・・・はろー」

簪 「っ!」

 

突如、簪の目の前に現れた『W』

簪は驚いて身を引くが、『海神』から放たれる水圧カッターが直撃し、またもや竜巻の水流に飲まれ、今度は上へと上がっていく。

 

W 「とんで、けー・・・」

 

簪が海から脱したところで水竜巻が消滅し、簪は回転の勢いで吹っ飛ばされる。

 

簪 「うぅ、気持ち悪い・・・」

 

飛ばされながらも、機体の体制を戻して、小島に到着。

簪は竜巻やらの回転で酔ったのか、顔が青い。

 

簪 (あの人、お姉ちゃんのISと同じ能力を持ってる・・・となると、このフィールドじゃ、明らかに相手が有利。だけど・・・)

 

ここは海のど真ん中。

打鉄弐式なら、最大加速なら陸までそう遠くないが、相手は"水を操る事ができるIS"、海の上を渡ろうとする簪をそう簡単に行かせはしないだろう。

 

簪 「・・・?」

[・・・ズズッ、ズズズズズズッ!]

簪 「じ、地震・・・?」

 

震度3ぐらいの揺れ。

だが、揺れていたのは簪がいる小島だけ。

 

[ズンッ!!]

簪 「きゃあっ!」

 

その瞬間、噴水のように上がった海水が小島を空高く押し上げて、簪は危険と感じ、空飛ぶ島から飛び出す。

 

W 「わぁ・・・空の、島・・・」

簪 (いや、それやったの、あなたじゃ・・・)

 

いまいち、緊張感の欠ける『W』に、どうも良い策が思いつかない簪。

だが、空に押し上がった島が海に落ち、デカイ波が大蛇(オロチ)の姿に変わり、簪を襲い始める。

 

簪 (姿は大蛇でも、所詮、海水で出来た物体・・・当たっても意味は)

W 「ばーん・・・」

簪 「っ!?」

 

大蛇が簪にぶつかる瞬間、大蛇の姿は消え、『W』が指を鳴らすと・・・

 

簪 「・・・酸素濃度が・・・まさかっ!」

 

簪が気づいた時には、辺り一帯は爆発し、簪は爆発に飲み込まれた・・・に、見えた

 

簪 「けほっ、けほっ・・・」

W 「ごめ、ん・・・やり、すぎた」

簪 「っ!?」

 

何故か、爆発から簪に助け出したのは、爆発を引き起こした『W』本人だった。

簪はすぐに、『W』から離れて、頭の中で敵ISの分析を始める。

 

簪 (水を分解して、酸素を敵の周りに漂わせて爆発させる・・・もしかしたら、あの人のISの能力は、水じゃなくて、酸素を操るの?)

W 「ううん・・・水素・・・」

 

心を読んだ『W』の発言。

 

簪 「・・・え?」

W 「水素・・・を、あつかえ、る・・・っぽい」

 

まさか、本人からのネタバラし・・・本人も、良く分かってなさそうだが。

 

簪 「・・・でも、だったら、水素を逃がさないで、水素爆発させた方が、効果的じゃ・・・」

W 「でも、危険・・・博士、も・・・使わな、い方が、良いって・・・だ、から、酸素・・・で、爆発させ、た・・・・・・ふぅ」

 

長く喋りすぎたか、話の途中に深呼吸。

 

W 「でも、酸素、も危険・・・だった・・・から、ごめん、なさい」

 

ペコッと、頭を下げる『W』

謝られた簪自身も、反応に困るわけで・・・

 

簪 (この人・・・本当に、悪い人なの?)

 

フィールドにジェット機で突っ込んできたら、誰でも敵の襲撃と思ってしまう。

学園祭の件もあるから、なおさら。

だが、簪から見て『W』は、素顔は見えずとも悪人とは思えないでいた。

 

簪 「何で、貴方は戦うの?」

W 「・・・にんぎょう・・・だか、ら」

簪 「人形? でも、貴方は貴方でしょ?」

W 「そう、だけど・・・私・・・私を、生んでくれ、た人・・・力、なりたい」

簪 「だから、戦うの?」

W 「博士・・・見たがって・・・る・・・色々、な・・・『進化』」

簪 「進化・・・?」

W 「しゃべ、るの・・・つかれ、た・・・」

 

『W』が片腕を上にかざすと、四つの海水柱が簪を間にそびえ立つ。

 

W 「みんな、終わる、まで・・・動き、止める」

簪 「あっ」

 

四つの柱が簪に近づく、簪は海水の大柱に閉じ込められる。

 

簪 「くっ・・・」

 

簪は柱から出ようと試みるも、柱の中心以外は様々な水流が流れており、何度も中心点に戻されてしまう。

『夢現』を持ってしても、水流を突破できず、ただただ柱の中心で頭を悩ませる簪だった。

 

 

 

 

 

 

 

【市街地】

 

 

市街地上空。

2機の青いISが鍔(つば)迫り合いを繰り広げていた。

 

マ 「どうした、その程度か? イギリスの代表候補生」

セ 「くっ・・・」

 

余裕な顔を見せるマドカはナイフで、セシリアの顔面を狙う。

セシリアも負けじと、『インターセプター』の刃でナイフの軌道を頬スレスレで逸らしていた。

 

市1 「何だ? デモンストレーションか?」

市2 「でも、そんな行事やるって、言われてたっけ?」

 

市街地では、上空で戦闘を行う2機を見て、集まり始めている野次馬達。

その様子を見たマドカは、さらに苛立つ。

 

市3 「やれやれ〜!」

市4 「どっちも頑張ってー!」

マ 「・・・」

 

ナイフを振りかぶって、セシリアから距離を取り、『スター・ブレイカー』の実弾で野次馬に威嚇射撃。

 

市5 「きゃああああっ!」

市6 「う、撃ってきやがったぁ!」

 

野次馬はその場から逃げ走り、マドカは満足そうに野次馬を見下ろす。

 

マ 「ふん・・・」

セ 「ちょ、ちょっと、あなたっ! 何をしていますのっ!?」

マ 「見ての通りだ。貴様だって、野次馬(あいつら)が邪魔な存在だろう? それを取り除いたまでだ」

 

確かに、セシリアは周りに被害が及ばないよう、得意 射撃戦は捨てて、接近戦で挑んでいた。

もちろん、マドかもそうなのだが、スコールの"命令"により、我慢はしていたのだが・・・

 

マ 「さっきも言ったが、私は機嫌が悪い。さっさと終わらせるぞ」

セ 「・・・いいですわっ! わたくし、セシリア・オルコットとBT1号機『ブルー・ティアーズ』の力、存分に見せてあげましてよ!」

 

『ブルー・ピアス』の銃口をマドカに向け、大出力のレーザーを放たれたが、シールドビットによって防がれる。

 

マ 「・・・」

 

マドカは逆に必要最低限の攻撃しかしないが、火力と正確な射撃でセシリアを圧倒。

しかも、セシリアが一度も成功した事のない『偏向射撃(フレキシブル)』を使えている事に、セシリアは驚きを隠せないが避けるのに集中がいき、対策を考える余裕もない。

攻撃の合間を狙って、ライフルで攻撃しようともシールドビットで防がれ、またもやレーザーの餌食に。

そのループが続き、セシリアのSEがどんどん削られてゆく。

 

セ (やはり、こちらが不利ですわ・・・ですけど、わたくしだって、ただ『偏向射撃』だけの特訓をしていたわけではありませんわ)

 

 

 

 

 

ダ 「いいか? 分かってると思うが、お前のISは接近戦じゃ、確実に不利だ。だが、もし相手も同じ『遠距離型』タイプの兵器で相手の技量が高ければ、お前は絶対に勝ち目はない」

セ 「そ、そんなのやってみなければ分からないですわ!」

ダ 「いいや、分かる。織斑に負けている時点でな」

セ(ダ 「で、ですから、一生懸命『偏向射撃』を扱えるようにと 「確かに、それも1つの手だ。だが、それだけじゃ足りないんだよ」・・・足りない・・・」

ダ 「まぁ、安心しな。可愛い後輩のために、私が人肌 脱いでやるよ」

 

 

 

 

 

セ 「ふっ・・・まったく、面倒事は嫌いと言ってるくせに、お節介な先輩ですわ」

 

戦闘中だというのに、笑みを零すセシリア。

だが、そこに降り注いでくるレーザーの雨をスルリと避ける。

 

マ 「っ!?」

セ 「さぁ、舞踏会の始まりですわ」

マ 「チッ!」

 

マドカの射撃が続く中、セシリアはまるで踊る様に避け続け、手元の『ブルー・ピアス』を収納。

 

セ 「主役はわたくし、セシリア・オルコット」

 

日の下で活気に動く蝶の様に、レーザーを避けながら、マドカに近づいていく。

 

マ 「な、何だ? いきなり動きが・・・」

 

今まで何かが違うと感じたマドカは、初めて身を引く事に。

だが、セシリアはマドカを逃がさない。

 

セ 「せっかくの舞踏会、楽しみましょう。共に・・・」

 

瞬時加速でマドカの手を取ったセシリアが、マドカの目を見つめる。

 

マ 「は、離れろっ!」

セ 「ふふふっ」

マ 「がっ!」

 

マドカが手を振り解くと、『インターセプター』で斬り付けられる。

その後も、横から、後ろから、上から下からと一方的にマドカが斬りつけられて・・・

 

セ 「ラストですわ」

マ 「っ!」

 

構えたライフルを至近距離で放ち、マドカは衝撃で市街地に落とされる。

 

セ 「・・・しぶといお方ですわね」

マ 「・・・」

 

"ガラガラ"と建物が崩れる中、そこから出てくるマドカ。

 

マ 「・・・まずは謝礼を言おう。正直、お前を侮っていた」

 

PICで徐々に浮遊し、セシリアと同じ目線の高さに。

 

マ 「名前を聞こう・・・」

 

マドカが尋ねると、"ふふん"と鼻を鳴らしたセシリアは、腰に手を当てて胸を張り・・・

 

セ 「わたくしは、名門オルコット家の長女でイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ!」

マ 「オルコット・・・覚えておこう」

セ 「あなたは? まさか、相手が名乗っているのに、自分は名乗らないとなると、とんだ無礼者ですわね」

マ 「ふっ、そうだな・・・だが、私には"本当の名"はない。そちらで勝手に作っておいてくれ」

セ 「そんな勝手な・・・」

 

お互いに笑みを零しながら、セシリアは武器を構え、マドカは逆に体をリラックスさせる。

 

マ 「オルコット。敬意として、ここからは本気でいかせてもらう」

セ 「それは、楽しみですわね」

マ 「・・・っ」

セ 「っ!?」

 

セシリアが瞬き一回しただけで、前にいたはずのマドカは姿を消し、頭上で『スター・ブレイカー』の銃剣を振りかぶる。

セシリアはさっきいたフィールドで不調で使えなかったレーダーのおかげで、咄嗟に『インターセプター』で防ぐ事が出来たのだが、『インターセプター』は真っ二つに斬られ、迎え撃とうとした『ブルー・ピアス』も弾き飛ばされ、そして、武器を失ったセシリアの右腕に銃剣が貫く。

 

セ 「あああああっ!」

 

耐え難い苦痛の叫びが響き、銃剣を引き抜いたマドカが銃口を落ちていくセシリアに向ける。

 

マ 「終わりだ」

セ 「ま、まだ・・・まだ、終わりじゃありませんわっ!」

 

砲口が装甲に塞がれ、推進力に回しているビットの四門同時射撃を行う。

装甲のパーツを吹き飛ばして、射撃体勢を取っているマドカに不意打ち射撃。

 

マ 「いや、終わりだ」

 

ライフルを構えたまま、全てのレーザーを高速ロールで避けて見せ、撃たれた実弾入りのレーザーがセシリアに直撃し、市街地の地面に埋まる。

 

セ 「・・・」

 

セシリアは薄れる意識の中、止めを入れるために再度、ライフルを構えるマドカより向こう側に映る青い矢光を見て、銃剣に貫かれた右腕を空に掲げる。

 

セ 「バーン・・・」

 

手をピストルの形にして、発砲音を声でする。

もちろん、手からは何も出て来ないが、青い矢光がUターンして、マドカの背中から撃ち抜いた。

 

マ 「っ!?」

 

『偏向射撃(フレキシブル)』。

それを土壇場でものにしたセシリアは、この危機的状況で"一矢報いた"事に微笑む。

マドカは撃ち抜かれた一箇所を抑えながら、今度こそセシリアに止めを刺すため、ライフルを発砲した。

 

 

 

 

 

 

 

【篠ノ之神社 上空】

 

 

一 「箒、回復を!」

箒 「あ、ああ・・・」

 

紅椿が黄金の輝きを放ち、白式のSEを回復させる。

 

B 「まだやる気か?」

一 「当たり前だっ!」

 

回復し終えた一夏が『零落白夜』を発動させて、雪片弐型で『B』に斬りかかる・・・のだが、『B』は頭の後ろに手を組みながら、ニタニタと笑われながら避けられてしまう。

 

B 「ほらほら、エネルギーの無駄使いするなよ。さっきから、突っ込んでばっかだぞ?」

一 「チッ、くそっ!」

 

『雪羅』の荷電粒子砲を至近距離で放つ。

特訓した甲斐もあって、タイミングは完璧。

 

B 「ほぅ・・・」

一 [ビクっ!?]

 

確実に一撃は入ったと確信した一夏であったが、すでに敵は一夏の後ろ。

 

B 「今の攻撃は良かったな。"並みの相手"なら一撃でやられてたかも」

一 「このっ!」

B 「おっとっと・・・」

箒 「後ろ、もらったっ!」

B 「ん?」

 

『B』が振り向くと、そこには箒が『雨月(あまづき)』を振り上げ、展開装甲の機動力で接近していた。

 

一 「俺だって!」

 

箒とは逆の方向から、雪羅のクローで切りかかる。

 

B 「・・・っ」

 

『B』は箒を真正面に捉え、雨月を白刃取り。

その取った体制から、前に倒れるように回転し、上がった かかとで白式の左腕『雪羅』を弾く。

箒は回転の反動で、神社近くの茂みに落とされ、一夏は落ちた箒に気がいってしまって、『B』にボディーブローを決められしまう。

 

箒 「くっ、このっ!」

 

茂みから『空烈(からわれ)』のエネルギー刃を放つのだが、『雷神』に取り巻く"特殊な磁場"がエネルギー刃をかき消した。

さらには、この時『紅椿』は、スラスターが落ちた時の衝撃で、一時故障となっていた。

 

B 「あ〜・・・何か、飽きてきたな」

一 「っ・・・こいつっ」

B 「第4世代機っつっても、操縦者がまだ未熟じゃなぁ」

箒 「っ・・・」

 

『B』の言葉に言い返せない箒は、唇を噛みしめ、一夏もさすがに相手が悪いと理解しているため、必死に心の中で堪える。

 

B 「まぁ、まだ先は長いからさ。気楽に鍛えていけばいいさ・・・それにしても、ここも懐かしいな」

一 「・・・お前、ここに場所に住んでた事があるのか?」

B 「小学生ぐらいの時かな? でも、すぐに辞めちまって、子供らしい生活はそこで終わったんだが・・・あの頃は今の俺と違って"物静か"だったし、授業もだるかったし、あんま楽しくなかったなぁ」

 

1人で昔の思い出に浸る『B』

 

箒 「っ!」

 

その隙を狙って、箒が『穿千(うがち)』を構え、紅い閃光が『B』に向かって直進。

だが、『B』は避ける事無く、左拳に磁場を集束させ、穿千のレーザーを迎え打つ。

 

箒 「受け止めらた・・・だと」

B 「・・・それに比べて、今はっ!」

 

右拳も磁場を纏わせて、下から上に拳を上げて、穿千のレーザーは空彼方へと飛んでいく。

 

B 「楽しくて仕方がない。この力で、色んな強い奴と戦いてぇんだ」

一 「っ!」

 

後ろから斬りかかろうとした一夏の頭を鷲掴みにした『B』は、箒めがけて投げつけて、箒は一夏の下敷きに。

 

B 「・・・でもまぁ、今、戦いたい奴は決まってるんだがな」

 

『B』は少し笑った後、人指し指を立てて・・・

 

B 「俺も面倒になってきたから、本気を出すぞ。1分で終わらしてやる」

 

そう宣言し、胸中央に両手を置き、手と手の間にビリビリと磁気が1つの塊として集束されていく。

その塊はドンドン大きくなり、もうすでに篠ノ之神社を飲み込むほどの大きさになっていた。

 

一 「やめろっ! この一帯が吹き飛んじまう!」

B 「悪いな。本気を出すからには、情けはかけない・・・文句があるなら、お前が守ってみせろ」

一(箒 「この野朗っ 「待て、一夏っ! 死にたいのかっ!?」・・・じゃあ、箒はこの場所が無くなっても良いのか!?」

箒 「だが、私は・・・また、お前を守れなかったら・・・私は・・・」

 

臨海学校の自分の不甲斐なさを思い出し、一夏の腕をぎゅっと掴む。

 

一 「・・・箒」

箒 「ぅぇ・・・?」

 

一夏は泣きべそをかいている箒の頭をそっと手を置き、優しい目で見つめる。

 

箒 「いち、か・・・?」

一 「夏休みの時に言ってくれたんじゃないか。俺の"背中を守りたい"って」

 

『夏休み 2話 その2』 ←参照

 

箒 「き、聞いていたのかっ!?」

一 「あんな大声で叫んでたら、嫌でも聞こえるって」

箒 [カァァァァ・・・///]

一 「だからさ、箒・・・俺の背中は任したぞ」

 

そう言い残し、一夏は飛び立つ。

 

B 「よぉ・・・別れは、終わったのか?」

一 「別れ? まさか・・・そっちこそ、俺達を待っててくれたのか?」

B 「"情けはかけない"って言ったぜ、俺は。お前らが何をしようと、無意味になるまで"こいつ"強化させただけだ」

 

すでに、先までの大きさより2倍大きくなっている塊。

『B』自身も、その塊を手の内に留めていくのに限界があるのか、額に汗を浮かべていた。

 

B 「じゃあ、次に戦えるのを楽しみにしてる、なっ!」

一 「"次"なんてない。ここで、お前を倒すっ!」

 

『B』の手から離れた"塊"がゆっくりと地上へと降下し、一夏は雪片弐型で"塊"と迎え撃つ。

 

一 「ぐっ・・・うぉおおおお!!」

 

気合の入った一夏の声。

それでも、完全に"塊"を止める事が出来ず、徐々に地上と近づく一夏と"塊"。

 

箒 「一夏っ!」

 

だが、『穿千』の矢が地上から放たれ、"塊"の動きを止める。

 

B 「おっ、すごいな・・・だけど、いつまで持つか・・・」

一・箒 「・・・」

 

『B』の指摘どうり、白式の『零落白夜』 紅椿『穿千』は確かに強力な武器だが、いずれはエネルギー切れを起こしてしまう。

紅椿の『絢爛舞踏』を使おうにも、箒の技量では攻撃中と同時進行で使用できない。

 

箒 (もっと・・・『穿千』よりも、強力な武器があれば!)

 

そう強く願う箒。

すると、箒の目の前に呼び出してもいないウィンドウが出現する。

 

[経験値が一定に達しました。新装備の構築完了]

箒 「これは、『穿千』の時と同じ・・・」

 

ウィンドウの下に出現する確認ボタン。

そのボタンを箒は注意書きを読まずに、叩くように押す。

すると、両腕部の展開装甲が外れ、外れた展開装甲が空中で構成されていき、2本の"千鳥十文字槍"の形に。

 

箒 「・・・『飛湾(ひえん)』」

 

手に取った『飛湾』を、すぐさま『穿千』の矢のかわりとして装填。

 

[『穿千』のエネルギーを『飛湾』へと移行します。その後は5分間の・・・]

箒 「ええーいっ! 長ったらしい説明はいいっ!! 一夏っ!」

一 「っ!」

 

箒は切れ気味に叫び、『穿千』に強化された『飛湾』が二門のブラスターライフルから金色の閃光とともに、一夏がいた場所を通過し"塊"を貫いた。

 

B 「っ!? 『雷神(らいこう)』!!」

 

"塊"を貫いた金色の閃光を『B』は咄嗟に両手で2本の『飛湾』の刃を掴む。

 

B 「ぐぅ・・・がぁあああっ!」

 

だが、磁場を纏わした手でも、『飛湾』の勢いを止める事が出来ず、『B』の肩に『飛湾』が突き刺さり、遠い彼方に吹っ飛ばされた。

 

一 「す、すげぇ・・・すげぇぜ、箒!」

箒 「あ、ああ///・・・あれ、紅椿?」

[急激なエネルギー消費により、5分間の回復作業に移ります]

一・箒 「・・・」

 

どうやら、『飛湾』を使用すると、紅椿は5分間の間、展開装甲と単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)が使用不能になるようだ。

 

一 「で、でもさ、アイツを倒せたんだから、結果的には」

B 「勝手に決めてんじゃねえよ・・・」

一・箒 「っ!?」

 

一夏と箒の上空に、『雷神』を纏っている『B』の姿。

その手には、十手の様に『飛湾』を弄んでいた。

 

箒 「そんな、馬鹿な・・・あの攻撃を、堪えた?」

B 「悪いな。この機体は、半永久的にエネルギーを補給できるんだ・・・ほら、返すよ」

 

ポンっと投げた『飛湾』が一夏と箒の横の地面に突き刺さり、自動で紅椿の装甲に戻る。

 

B 「まさか、あの土壇場で新たな力を手に入れたか・・・これが、ジジィの言っていた『進化』って奴なのかね・・・んじゃ、またな」

 

呟いた『B』は一夏達に背を向けて、その場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B 「さぁて、どこで暇を潰すか・・・」

 

空を切るほどのスピードで、雲の上を通過中。

 

B 「ん?」

 

距離はまだ遠いが、空の向こう側に黒い物体。

良く見ると・・・

 

B 「は、ははっ・・・良い暇つぶしがあるじゃねぇか」

獅 「・・・」

 

 

 

 

 

【市街地】

 

 

セ 「・・・え?」

 

マドカが撃ったレーザーはセシリアに当たる事無く、その間に入った"黄色い球体"によって、防がれていた。

 

マ 「・・・何者だ?」

ダ 「こいつの先輩だ・・・ただの、な」

 

 

 

 

 

【海上】

 

 

[ザッパァァン!!]

簪 「え?」

W 「・・・?」

 

簪が捕らえていた水柱が何者かの介入によって"ただの海水"に戻り、簪の拘束は解かれる。

 

楯 「ごめんね、遅れちゃった・・・」

 

 

 

 

 

【キャノンボール・ファスト 会場】

 

 

[フィッティング、フラグメントマップの再構築完了。これより、量産型『打鉄』二次移行(セカンドシフト)を開始します]

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インフィニット・ストラトス 朝霧獅苑 のほほんさん 

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