IS学園にもう一人男を追加した 〜 61話 B
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獅苑SIDE

 

 

獅 「ぐっ・・・」

 

腹部に刺さったブレードを抜き捨て、地上に降りて、"白銀のIS"と向き合う。

 

本 『敵操縦者、健在』

獅 「・・・」

 

どうやら、コウの予想が当たっちまったようだ。

 

鈴 『獅苑! 聞こえる?』

獅 「・・・ああ」

 

上を向くと、観察室からこちらを状況を覗いて、通信機を持っている鈴を発見。

 

鈴 『本音(そいつ)は、アンタの彼女と一緒に考えちゃ駄目よ! 1人で、教師陣と侵入者を手玉に取るほどなんだから!』

獅 「・・・」

 

確かに、フィールドには戦闘不能の教師陣が何人か。

そして、ここに入る前に見かけた黒いISが"侵入者"なら、撃退したとも取れる。

 

本 『罠、起動』

獅 「っ!?」

 

突如、地面から出てきたトラバサミによって、両脚を封じられ・・・

 

本 『・・・』

[ブゥン・・・]

 

本音が手を掲げると、白銀のISの背後に数十本のISブレードが出現。

そして、クイッと手首が曲がった瞬間、俺に向かってブレードが降りかかってきた。

だが、対艦刀を即座に構えて、ブレード目前にして、払い落とせたのだが・・・

 

本 『この攻撃法は効果ないと断定。鎖(チェーン)を射出します』

 

白銀のISの背から、4本の鎖が出てきたと思ったら、フィールドや観客席のあらゆる所に鎖を絡ませ、最終的に俺の腕に絡みついてきやがった。

もちろん、ブレードを防いでいた腕は身動きが取れないだけでなく、防御に回せる黒翼は引きちぎられたため、残っていた2本ブレードが肩と足を貫く。

 

獅 「いぎっ・・・!」

 

強烈な痛みが、脳にまで響き、両腕を吊るされたまま、力なく姿勢を保てなくなる。

 

(つうか、いつも俺ばっか、こんな大怪我をしてるような・・・)

本 『再度、攻撃を開始するため、準備を開始』

(って、この状況はマズイ・・・!)

 

また"白銀のIS"の背後にブレードを見た瞬間、冷や汗をかく。

この状況で、また同じ攻撃をされたら、確実に俺は死ぬ。

 

獅 「がぁあああああああああああああああっ!!!!!!」

本 『っ!?』

 

痛みの感覚を叫びでかき消して、両腕を思いっきり胸に引き寄せる。

"ギチギチ"と、鎖が悲鳴を上げ、次の瞬間、腕がふっと軽くなった。

 

獅 「っ!」

[ビュンビュンビュンッ!]

 

すぐさま、健在の小型スラスターでトラバサミをつけたまま飛び出すと、先までいた俺の場所に数十本のブレードが通過した。

 

獅・コ 「『鉄槌!』」

本 『っ・・・」

 

"ズササササァッ"と、地面を引きずる"白銀のIS"

 

獅 「おい、コウ・・・どうやったら、本音は戻る?」

コ 『そんなの分からないよ。"愛の力"とか、なんやらで助けられないの?』

獅 「おまっ///」

 

ヒーロー物を見すぎだ・・・

簪の影響か?

 

本 『敵機のステータスを確認。攻め方を変更』

 

"白銀のIS"の手に、ISブレードが握られる。

 

獅 「真正面から、来るか?」

鈴 『違うわっ!! そいつの戦い方は・・・」

 

鈴が何かを伝えようとする前に、"白銀のIS"が突っ込んでくる。

俺も対艦刀を構えようとすると・・・

 

獅 [ガクッ]

 

足につけられたままだったトラバサミが自動で引っ張られ、ブレードが頭に強打。

その後も、ブレードで叩きつけられ、俺も抵抗のあまり反撃に出ようと・・・

 

本 「獅苑くん?」

獅 「ぁっ・・・」

鈴 『セコイのよ!!』

 

一瞬、本音が見えたと思ったら、"白銀のIS"に顔面にブレードでぶん殴られ、コウが勝手に『死戔』を操作して、後退させ、トラバサミを斬り離す。

 

コ(獅 『もう、戦闘に気を抜いちゃ 「・・・」・・・あ、あれ? どうしたの?」

獅 「は・・・ははっ・・・ははははっ!」

 

自然と笑いが込み上げてきた。

 

獅 「いや〜、俺にとっちゃ、最悪な作戦だけだな〜」

コ(獅 『の、のん気に言う事じゃ 「おい、コウ」・・・な、何・・・?』

獅 「あの"IS(ガラクタ)"・・・ぶっ壊すぞ」

コ(獅 『え!? で、でも、操縦者が 「もちろん、助けるに決まってるだろ」・・・作戦があるの?』

獅 「"愛の力"で」

コ 『・・・』

 

コウは黙り込んでしまったが、俺は本気だ。

あそこまで、本音を使ってここまでされちゃ、ただじゃ済まさない。

 

獅 「ひひひっ・・・ぜってぇ、引きずり出してやる」

本 『[ビクッ!]』

獅 「とりあえずは・・・殴るっ!」

 

相手がセコイ戦い方をするなら、何もさせない。

そして、一方的に殴って、殴って、殴って殴って殴って、殴り続ける。

 

本(獅 『や、やめ 「うるせぇー!! てめぇが、"本音の声"を使うんじゃねぇ!!」』

 

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

本 『SE低下中。これ以上の戦闘の続行は不可能と断定・・・行動を停止します』

獅 「ん?」

 

途端に動かなくなった"白銀のIS"は、地上に降りて、"白銀のIS"が光の粒子となって消えると・・・

 

本 「・・・ん・・・んぅ?」

獅 「ぁ・・・」

 

虚ろな目を擦りながら、まるで今の今まで寝ていたように周りを見渡す本音。

 

本 「あれぇ? どうしたのぉ?」

獅 「・・・うっ、ううっ・・・」

[ガバッ!]

 

ISを解除して、血まみれの制服の事なんか考えずに本音を抱きしめる。

 

本 「え、あれ!? どうしたのぉ!?」

獅 「ううぅ、ひぐっ・・・うぅぅぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【学園の検査室】

 

 

獅 「・・・///」

 

結果的、ものすごい後悔した。

 

(おいおい、まさか、あんな所で大泣きするなんて・・・)

 

あの後、鈴に茶化されながらも、学園に戻った俺達は検査を受けて、俺は検査室の外のイスに腰をかけている。

ほかのみんなも、無事に帰ってきたのだが、セシリアだけが俺と同様に活性化再生治療を受けることになっていて、一週間ほどで傷口は完全に塞ぐらしい。

前みたいに、全身骨折ではないからな、入院する事はない。

 

一 「お、獅苑!」

獅 「ん?」

 

どうやら、本音以外のみんなは検査が終わったらしく、俺の元に集まってきた・・・妙にニタニタしながら。

 

一 「鈴から聞いたぞ。のほほんさんに抱きついて、大泣きしたんだってな」

獅 [ピクッ]

楯 「まぁ、白馬の王子様も人間なんだから、泣きもするわよねぇ」

獅 [ピクピクッ]

鈴 「ぷぷっ・・・」

獅 [ブチッ!]

 

・・・あー、ぶっ殺してぇ。こちとら、痛みをやせ我慢してんのに・・・

 

簪 「え、えと、獅苑さん。本音はまだ・・・?」

獅 「あ、ああ・・・おい、何、笑うの我慢してんだ?」

簪 「え、え〜と、そ、そんな事、ないです・・・」

箒 「そうだぞ、獅苑・・・簪がそんな事・・・ぷっ」

 

言ってる本人が笑ってんじゃ、説得力ねぇよ。

 

ダ 「・・・私、帰っていいか?」

楯 「ん? あ、居たの」

ダ 「"居たの"じゃねぇよ! 検査の時から、楯無(アンタ)の隣にずっと居ただろ!」

楯 「あー、ゴメン。気づかなかった♪」

ダ 「こ、このっ・・・」

 

・・・そういえば、俺、この人の事、よく知らない・・・

 

セ 「あら、どうやら、先輩は影が薄いようですわね」

ダ 「何だとっ!」

 

みんなの後ろから、右腕に包帯を巻いているセシリアが、機嫌よく登場。

 

一 「セシリア、怪我は大丈夫なのか?」

セ 「このくらい怪我の内に入りませんわ。今日は"一夏さんの誕生日パーティ"ですもの。おめおめ休んではいられませんわ!」

 

あ、今日は一夏の誕生日なのか・・・厄日な一日だな。

 

楯 「へぇ〜、今日は一夏君の誕生日なんだ。私達も行こうよ、簪ちゃん」

簪 「う、うん! あ、なら、虚さんや本音にも」

楯 「そうね・・・獅苑君、本音ちゃんに知らせといてくれる?」

獅 [コクッ]

楯 「一夏君もいい?」

一 「え、あ、はい。いいですけど・・・」

楯 「じゃあ、待ってるから、獅苑君」

 

そう言い残して、簪と共に去っていく。

すると、一夏達も寮へと帰っていき、場に残るのは、俺を含めて1人とUMAが2。

 

コ 『UMAって・・・まぁ、否定はしないけど』

? 『そちらで、判断するのは自由ですが、もう少し、可愛らしいあだ名はないものかと』

獅 「いや、別にいいだろ・・・で、お前は何勝手に俺と会話してるんだよ」

 

プラプラと、紐で吊るされている"銀色"と鍵を揺らす。

どうやら、さっきのIS『白鬣犬(ハイエナ)』の待機状態らしく、俺が教員に無理を言って、回収したのだ。

ちなみに、名前は一応、ISと同じ『ハイエナ』らしく、『ハイエナ』じゃ あれなので『ハナ』と、似ても似つかぬ、華のある名前に変えた。

あと、コウみたいにISコアだけが、飛び出すことは出来ないらしい。

 

ハ 『この世には、"昨日の敵は、今日の友"という、ことわざがあると情報が』

獅 「いや、まだ1時間しか経ってないし、"昨日の友は、今日の敵"って、ことわざもあるぞ」

コ・ハ 『へ〜・・・』

獅 「・・・」

 

本当に、握りつぶしてやろうか。このムカつく物体・・・

 

ハ 『それに、今回の件は、彼女のせいでもあります』

獅 「ああぁ?」

ハ 『私自身、体を乗っ取るつもりはありませんでしたが、彼女が"器"にはまりきらず、暴走を起こしてしまった』

獅 「・・・なら、あの演技は?」

 

本音の真似をしてまで、俺に隙を突こうとするのだから、暴走してする事とは思え・・・

 

ハ 『あれは、私の演技です』

獅 「さいなら・・・」

 

ポイッと、近くのゴミ箱に投げ捨てる。

 

ハ 『鍵は可燃ゴミではなく、不燃ゴミですよ』

獅 「・・・そっちかよ」

 

席を立って、紙くずが入ったゴミ箱から、『ハナ』を掘り出す。

 

獅 「それで、これからお前はどうするんだ?」

ハ 『それは、そっちで決めてください。元はといえば、私はあなたから命を授かったのですから』

コ 『じゃあ、やっぱり・・・』

獅 「・・・はぁ、面倒になってきたなぁ・・・とりあえず、本音の傍に居ろ。力は貸さなくていいから、手助けだけで」

ハ 『いいのですか? 手助けだけで』

獅 「ああ。あと、お前の事も話すが、いいか?」

ハ 『マスターの命令ならば』

 

マスターって・・・案外、忠実なのか?

 

獅 「・・・」

コ 『ん、何?』

獅 「いや・・・検査、終わったみたいだな」

 

とりあえずは、『ハナ』の事を話して、一夏の誕生日の事を話して、一夏の家に向かうとして・・・

 

(・・・あ、くーの事、忘れてた・・・ま、大丈夫か)

 

もしかしたら、虚さんぐらい しっかりしてそうだし、面倒事には巻き込まれないだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

く 「・・・そろそろ、時間ですね」

 

この時、寮から出る少女を確認した者はいなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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獅苑SIDE

 

 

獅 「・・・という事なんだが」

本 「ふぅん〜・・・」

 

検査を終え、丸イスに腰掛けている本音に『ハナ』と『コウ』について説明。

だが、今回の事は本音自身、覚えていないため、その場にいた鈴と教師、そしてハナにも詳しい事は黙っておく事にした。

俺の怪我は服に隠れて見えないから、平静を装う事が出来れば、隠し通せるはず。

 

ハ 『・・・』

本 「・・・」

 

そんな事はさて置き、突然、俺が手に持つハナを本音は"貸して"と言ったので、俺はハナを本音に渡すと、ジ〜っと見つめ始めて、約30秒。

 

ハ 『何でしょうか?』

本 「・・・私、布仏本音。よろしくね〜」

ハ 『マスターの命名でハナと言います。よろしく、お願いします』

 

ニコッと笑った本音。

・・・ってか、"マスター"はやめて欲しいんだが・・・

 

本 「コウちゃんも、よろしくぅ〜!」

コ 『コ、コウちゃん?・・・よろしく』

獅 「・・・じゃあ、この話は後はお互いに、で いいか?」

コ 『いいよ』

ハ 『マスターの命であれば』

本 「あ、出来ればぁ、一日だけコウちゃん貸して!」

 

ん〜・・・まぁ、俺はかまわんが。

 

獅 「コウ?」

コ 『うん。別に問題はないよ』

獅 「そうか・・・んじゃ、話を変えるぞ。今日は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

 

シ 「せーのっ!」

全 「お誕生日おめでとうーっ!」

 

フランスから帰ってきたシャルの合図で"パンパンパーン"と、クラッカーが鳴り響く。

 

一 「お、おう。サンキュ・・・」

 

時刻は夕方5時過ぎ。

場所は俺の家・・・は、別にいいのだが。

 

一 「この人数は何事だよ・・・」

 

メンバーを整理しよう。

今日、来る予定になっていた人数は13名

まず、箒とセシリアと鈴とシャルと簪の5人。

それに、五反田兄妹の2人。

生徒会メンバーの3人に、何故かいる新聞部のエース黛 薫子さん。

で、今日来れない 2人しかいない弾の同好会の友達を引いて・・・

 

一 「・・・あれ? 獅苑は?」

箒 「ん? そういえば、いないな」

本 「あ、ギリーは、何か用事が出来たみたいで、来れないってぇ」

一 「そ、そうなのか・・・」

 

う〜ん、出来れば、この場にもう1人 男がいれば、気が楽なんだが・・・

弾は何か、虚先輩と微妙な雰囲気になってるし、鈴と蘭は何が原因なのか、いがみ合ってるし、シャルは今日の事件の事を聞いて、その場にいなかった事を皆に頭下げて謝ってるし。

 

楯 [チョンチョン]

一 「ん? 何ですか?」

 

楯無さんが後ろから指で肩を叩いたので、俺が振り向くと、口元に指を立てる。

内密な話か・・・?

 

楯 「・・・実はね、獅苑君から連絡があって、あの少女がいなくなったんだって」

一(楯 「え? だったら、俺達も 「せっかくの誕生日よ。獅苑君も一夏君の事を思って、今まで伝えないでいたんだから、ちゃんと楽しみなさい・・・ほら、さっそく」・・・ん?」

 

蘭 「一夏さんっ! よ、よよよかったら、ケーキどうぞ!」

鈴 「一夏ぁ! ラーメン作ったから食べてよね! 何せ麺もチャーシューも手作りなんだから!」

一 「あ、ああ・・・」

 

・・・出来れば、獅苑とラウラも一緒に、楽しみたかったな・・・

その後も、プレゼントやらを貰って、少し寂しい感じはしたけど、楽しい一日だった

 

 

獅苑SIDE

 

 

俺は体の痛みを堪えて、学園内部を走る。

 

獅 「・・・」

 

どこに行ったんだ・・・くー。

 

獅 「・・・学園内には、いないのか?」

 

だったら、学園外・・・でも、何故?

織斑先生に用があるとか言ってたけど、今は事件の処理で手が離せない。

例え、くーが織斑先生に会いに行ったとしても、無意味な事はくー自身が判断できるはず。

 

獅 「・・・はぁ、面倒な事になって・・・ん?」

W 「・・・」

獅 「・・・?」

 

 

千冬SIDE

 

 

千 「・・・よし、不備はないな」

真 「お、終わった〜!」

 

両腕をめいいっぱいに上げて、背もたれに寄りかかる真耶。

だが、それを気にしてるよりも、私にはやる事がある。

 

千 「悪いが、ここの資料を片付けておいてくれ。私は行く所がある」

真 「織斑君の所ですか? お誕生日ですよね、今日」

千 「ん、あ、ああ、そうだな・・・」

 

本当は行きたいんだがな・・・今の状況では、そうは言ってられない。

 

千 「では、頼んだぞ」

真 「は〜い!」

 

間延びした真耶の声に、少し口元を緩ませながらも、職員室を出る。

そして、地下に繋がるエレベーターに乗り込み、壁に寄りかかる。

私が行こうとしているのは、以前の学園祭の時に行った場所ではなく、最下層の場所。

そこは、教員はおろか、学園長と私しか知らない秘密の場所。

 

[チーン・・・ウィン]

千 「・・・」

 

エレベーターの扉が開き、"その場所"に一歩踏み入れると、ピカッと室内が明かりに照らされる。

 

千 「・・・『暮桜(くれざくら)』」

 

私が初代ブリュンヒルデに輝かせてくれた愛機。

束が2番目に作り上げた機体。

 

千 「・・・っ? 誰だっ!?」

く 「お待ちしておりました」

 

暮桜の入ったカプセルの陰から出てきたのは、銀髪の少女。

 

く 「束様の使いとして、やって参りました」

千 「束だと・・・?」

く 「とりあえずは、これを・・・」

 

渡されたのは、ただのマイクロチップ。

 

く 「それには、第4世代機の『展開装甲』についての最新データが入っています。"それで『暮桜』は完璧になる"と、束様が」

千 「・・・」

 

アイツはどこから情報を引き出してくるんだ・・・いや、今更か。

 

く 「では、私はこれで・・・」

千 「あ、おい、待、て・・・」

 

少女の方を向いた時には、少女は消えていた。

なるほど、束の傍に居ただけの事はある・・・

 

千 「・・・」

 

とりあえず、チップを機材に差し込んで、中身を確認・・・

 

束 『ハロハローッ! 束さんだよぉ!』

 

空中投影に束の顔がドアップに出現。

 

千 「・・・」

束 『あれあれ? どうしたのかな、ちーちゃん?』

千 「・・・はぁ。今度は何を企んでる?」

束 『企んでるなんて、そんな人聞きの悪い』

千 「・・・まぁいい。それより、あの少女は?」

束 『あ、くーちゃん? 拾ったの、戦地で』

千(束 「それは、どういう 『あーあー! 話すと長いから、その話はまた今度っ!』・・・なら、"朝霧獅苑"について、話してもらおうか?」

 

前から、聞きたかった話。

本当は、最後に聞こうと思ったが、こうなったら今回で全て聞き出す。

 

束 『いいよ。もう隠す意味もないし』

 

隠す・・・?

 

束 『でも、この話をする前に、昔話をする事になるけどいいよね?』

千 「かまわん」

束 『じゃあ、さっそく・・・』

 

 

【回想】

 

話は第2次世界大戦時中の50年前までさかのぼる。

 

この時、『亡国機業(ファントム・タスク)』は闇ルートで武器を売買する役人の集まりだったのだが、ある男の好奇心で"人体兵器"を開発する事になった。

 

その男の名は"フラン・クリン"という、当時20歳で元は医療に携わる開発者だったのだが、彼自身、"人体兵器"を作りたかったのではなく、自分が生んだものが どんな成長を遂げるのかを見たかっただけなのだろう。

 

最初はパチモンのロボットから、人型ロボット。

そこから、クローン実験を行い始め、各国の官僚を取り込み、国の資金を横流しにして開発は進んでいた。

 

だが、どうしても"兵器"となる最強の戦士は出来る事はなく、亡国機業はただ40年以上も時間と金を無駄にしたのだ。

 

【回想終了】

 

 

束 『それで、ここからが話の肝だよ』

 

 

【回想】

 

組織は開発の打ち切りを決め込もうとしたが、フラン・クリン博士は諦めずに打開策を探していた。

 

そして、休憩時に見ていた日本の放送を見て・・・

 

【若干12歳の女子中学生が剣道の世界大会優勝!!】

 

フラン・クリン博士は閃いた。

 

実力の高い子供の遺伝子をクローンに投与し、そこから教育をしていけば、"最強の戦士"になると。

 

【回想終了】

 

 

束 『それが・・・ちーちゃんだよ』

千 「私が? だが、そんな様子はなかったぞ」

束 『さすがに、子供相手に"血を頂く"様な真似をするほど、バカじゃないよ。あのイカレ野朗は・・・だけど、その親だったら?』

千 「っ!」

束 『しかも、失踪中の人だったら、拉致っても世間には問題にならないし、両親(アレ)なら 金でほいほい付いてくるんじゃな〜い?』

千 「あの人達の事はいい・・・話を進めろ」

 

 

【回想】

 

そうして、織斑夫婦の血液を採取し、50体のクローンに投与。

 

すると、今までの結果とは、遥かに凌駕する結果が出て、その中で完成したのが

 

『No.33』、『No.34』、『No.40』、『No.50』の4体。

 

さらに面白い事に、身体能力も成長部位も性別も、それぞれのクローンで異なっていたのだ。

 

こうして、見分けるための目印として、3体には前髪を着色し、各所の研究所に送られたのだ。

 

【回想終了】

 

 

千 「・・・その中に、朝霧が・・・」

束 『そっ。だけど、何か謀反があって、朝霧(アイツ)は人間社会に出たみたいなんだけど、よくはし〜らない・・・じゃあ、次はいっくんの事も話もしちゃおうっかな?』

千 「一夏の、だと?」

束 『まだ、いっくんがISに乗れるかは分かってないけど、"あの誘拐事件"については・・・』

千 「何が分かったっ!? 答えろっ!!」

束 『あ、焦らないでよ、ちーちゃん! ちゃんと、答えるからぁ!』

千 「・・・さっさと、答えろ」

 

 

【回想】

 

研究員の謀反により、『No.40』を奪われて、組織は大騒ぎになったのだが、それよりもクローンに対して、問題が検出された。

 

血を採取した織斑夫婦は、危ない薬に手を出していて、薬物中毒になっていた。

 

それが災いしたのか、クローン一体一体に"欠点"があり、

1つは言語と感情表現、1つは気持ちの主に怒りの制御、1つは固定概念の異常な強さと それ以外に対しての無関心さ。

 

だが、改善しようにも、織斑夫婦はすでに隔離場所で死亡しており、新たな方法を考えるしかなく、そこで見つけたのが・・・

 

織斑千冬の弟・・・織斑一夏。

 

彼なら、心身ともに以上がないと考えた『亡国機業』は、金で人を雇い、第2回モンドグロッソ大会会場に向かう途中だった当時13歳の織斑一夏を誘拐。

 

そして、織斑一夏の血を採取し、報酬として、金と織斑一夏の身柄を渡した。

 

その血は、新たなクローン『No.51』・・・エムの誕生でもあった・・・

 

【回想終了】

 

 

[バンッ!]

千 「何故、すぐに気づけなかった!? お前ほどの奴が、どうしてっ!?」

束 『私だって、感づいてはいたけど、確信が持てなかったっ! 『朝霧獅苑』っていう、キーワードがあったから、確信が持てたのっ!」

千 「・・・くそっ!」

束 『どこいくの?』

千 「朝霧に会いに行ってくる」

束 『今は、駄目だよ・・・無意味だから』

 

・・・無意味?

 

千 「どういう事だ!?」

束 『今、行っても間に合わないって事・・・今頃・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獅苑SIDE

 

 

獅 「ぐふっ・・・」

 

学園外の林帯。

その場で、痛みが響く体を無理矢理 起こそうと・・・

 

W 「うご、い、ちゃ・・・駄目」

 

暗くて良く見えないが、女性に横たわっている俺の腹部を蹴られる。

 

獅 「いっ・・・だ、誰だ・・・お前?」

W 「マド、カに・・・頼まれ、た」

 

学園祭の時の奴か・・・

 

獅 「ぼ、ボコボコにしろとでも・・・頼まれたか?」

W 「[フルフル]・・・あな、た、が・・・ていこ、う・・・するから」

 

いや、確かにしようとはしたけど・・・"やられる前にやる"ってか?

 

W 「学園・・・やめ、て」

獅 「は?」

W 「学園、やめ、て・・・遠く、いって・・・マドカ、の・・・ねがい」

 

いきなり、何を言ってんだ?

 

獅 「何で、あんたらの命令を聞かなくちゃ、ならない?」

W 「きょひ・・・する、の?」

獅 「当たり前だ」

W 「ざん、ねん・・・」

 

すると、女性の足がどかれ、俺は形勢を変えるために起き上がり・・・

 

[プスッ]

獅 「え?」

 

何かが首筋に刺さった気がして、視界がグニャリと歪む。

 

獅 「うっ・・・くそ・・・」

 

手にも足にも力が入らず、地面に倒れる。

 

W 「すぐ・・・らく、に、なる・・・から」

獅 「・・・おま、え・・・その目?」

 

前髪が隠れて見えなかったが、隠れている片目はとても禍々しい"機械の目"だった。

 

W 「いで、んしきょうか・・・しけん、たい・・・α-0000・・・」

獅 「それ、って・・・らう、ら・・と・・・おな、じ・・・・・・・・・」

 

視界がボヤケ、ついに俺の意識は闇へと引きずり込まれていった。

 

 

投稿者SIDE

 

 

B 「・・・終わったみたいだな」

マ 「・・・」

B 「そんなに落ち込むなよ。獅苑(アイツ)が自分で選んだ道なんだ。そして、俺達には"命令"が下っている」

マ 「分かっている・・・それぐらいは、分かっている・・・」

B 「・・・」

 

2人の会話が終了すると、林の方から獅苑を担いだ『W』と、麻酔銃を持つ『R』が歩いてきた。

 

B 「おつかれさん」

R 「おつかれ〜」

W 「・・・おつ〜・・・」

 

麻酔で眠った獅苑は車に積まれ、麻酔銃も車の中に放り込まれた。

 

R 「それにしても、すごいわね、獅苑(コイツ)。どんな凶悪で興奮状態の動物でも瞬時で眠る麻酔なのに、意識を保ってられるなんてね」

B 「ま、いわゆる、それが獅苑(コイツ)の"欠点"なんだろうよ・・・ほら、行くぞ」

R 「了解〜」

W [コクッ]

マ 「・・・」

 

こうして、4人を乗せた車は、スコールに指示されたポイントまで走り去っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

? 「どうだね、計画は?」

ス 「順調に・・・それより、あなたの祖国(ドイツ)の官僚達はどうなりました? ウッド議員・・・」

ウ 「金を積んだら、ホイホイと向こうから来ましたよ。まだ取り込めない奴らはいますが・・・まぁ、"シュヴァルツェ・ハーゼ"の様に、なってもらうだけです」

 

ニヤッと笑う"ウッド"

その笑みが、金歯と合わさり、不気味な雰囲気をかもし出していた・・・

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