魔法少女リリカルなのは光と闇と真実を求める者 第二話
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それから二日後。

 

 キトの本隊からの要請を受け本局から事件の早期解決に向け執務官が派遣された。

 

 

「本局から来ました、ティアナ・ランスター執務官です」

 

 

 ティアナは本隊の事件担当者に敬礼した。

 事件の担当官もそれに返礼し部屋へと案内する。

 

 

「ご苦労様です。早速で悪いんですがこちらへ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 案内された部屋は、小会議室のような部屋の中を五、六人の捜査官が慌しく動き回っている。

 

 

「こちらが事件の概要です」

 

 

 展開したウィンドウを見た。

 

 概要は、大型の魔力反応が出現し調査に向かった陸戦魔導師隊と連絡が途絶えたので、近隣の部隊が確認に向かったら殺害されていた。

 そのような事件がラタクンガ全体で起きているというものだ。

 事件の共通点は、目立って戦闘の形跡がなく殺害された局員のデバイスが完全に破壊されている。

 

 

「以上が頻発している事件の概要です…」

 

 

 ティアナは、説明を受け愕然とした。

 ここに来る前、少しだけフェイトさんから聞かされていたが改めて聞くと不可解な点が、多すぎる。

 

 

「まず、どうして犯人はデバイスを破壊したのかという点が気になりますね」

 

「はい…」

 

 

 報告した捜査官はうなだれる。

 二十人に近い隊員が殺害されたのだから無理もない。

 

 

「心中お察しします」

 

「いえ……でもさすがに皆、堪えてるみたいで…」

 

「いえ、最初の現場に行ってみたいのですが…?」

 

「わかりました、ではラスティ」

 

 

 室内にいた一人の捜査官が呼ばれた。

 

 

「何でしょうか?」

 

「ランスター執務官だ。彼女をクリールの現場に案内して欲しいのだが、行ってくれるか?」

 

「わかりました。ラスティ・モリス捜査官です、よろしくお願いしますランスター執務官」

 

「こちらこそ」

 

 

 差し出された手をにぎり軽く握手を交わす。

 ラスティは、赤毛をまとめた整った顔立ちの二十代後半だろう。

 

 

「では、ランスター執務官道中お気をつけて」

 

「ありがとうございました」

 

「ランスター執務官こちらです」

 

 

 ラスティ捜査官に案内されキトの中央駅に来た。

 流石にキト中央駅は各地に行くためのターミナル駅だけあって大きい。

 ティアナ達は目的地を経由する列車に乗り込むキトからクリールまでは約2時間かかる道のりだ。

 

 

 

 ティアナはこの事件の不可解さを改めて考える。

 

 

    ――なぜ、犯人はデバイスを完全破壊したの? 単独犯それとも複数犯?

 

 

「スター…執務官…ランスター執務官?」

 

「あっ、なに?モリス捜査官?」

 

「いえ、少しお疲れではないかと…?」

 

「あたしは大丈夫、少し考え事していただけだから。モリス捜査官こそ疲れているみたいだけど?」

 

「自分は…最初の事件で友人を亡くしていているので……だから絶対犯人だけは、許さない!」

 

 

 重苦しい空気が二人の間に流れる。

 

 

「そう…、辛いわね……」

 

「すいません、こんな話ししてしまって…」

 

「いいのよ、わたしだって絶対に犯人は捕まえるから」

 

 

 そうこうしているうちに列車はクリールの駅に到着した。

 駅に降り立った二人は今後の行動方針を決めた。

 

 

「クリールの駐留部隊に連絡しているので、現地で合流します」

 

「わかりました」

 

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クリールから三キロ地点。

 

 最初の犠牲者のカイトの第121小隊が、倒れていた場所だ。

 その近くには献花台があり、多くの花が供えられている。

 ティアナもそこに短く黙祷をした。

 

 

「ご苦労様です。クリール駐屯第133小隊隊長マッドだ」

 

「いえ、マッド隊長早速現場の案内」

 

 

 ラスティを連れてマッドの案内を受ける。

 二つの砲撃の跡以外目立った、他に目立った痕跡が見られない。

 

 

「では、今日の所は」

 

「いえランスター執務官今日は、ゆっくり休んで下さい」

 

「ありがとうございます」

 

 

 現場を離れようとしたその時。

 ラスティ捜査官が叫んだ。

 

 

「ランスター執務官!外部との連絡が、取れません!!」

 

「なに!?」

 

 マッドも念話と通信機で外部の部隊に呼び掛けるが、通じない。

 ティアナは冷静に状況分析をした。

 

 

「完全に敵に囲まれましたね。とにかく警戒を・・・」

 

 

 途中まで言った瞬間、一番離れていた133小隊の隊員がランスに貫かれた。

 

 

「散開!」

 

 

 マッドは素早く指示を飛ばす。

 マッド達が居た所に二体のランスを持った白騎士が現れる。

 

 

「クロスミラージュ、セットアップ!」

 

『Standbyready,Setup』

 

 

 ティアナはバリアジャケットを身にまとうとクロスミラージュを白騎士に向ける。

 

 

「こいつらが、レオを殺った奴らか!!」

 

 

 ラスティは、すでにデバイスを向け砲撃を放つ。

 しかし、翼が変形し大盾になりラスティが放った砲撃を受け止め、霧散させる。

 

 

「魔法が…消えた…!?」

 

 

 ラスティは驚愕した。

 

 

「AMFなの……?」

 

「AMF反応はありません」

 

「ならなんで!?」

 

「わかりません、しかしあの盾にはなにかあります、防がれないようにすれば」

 

 

 ティアナは盾による防御をしていないことから、他に防御ができないと仮定した。

 クロスミラージュを構えカートリッジロードをして。

 

 

「クロスファイヤーシュート!」

 

『CrossFireShoot Shoot』

 

 

 六つの光弾は、中央の白騎士に目掛け左右から突き進む。

 白騎士は慌てるそぶりを見せず大盾を構え飛んでくるスフィアを受け止め、霧散させる。

 

 

「やはり、あの盾にはAMFと同じ働きがあるようです。白騎士一人に対して二人で対処しましょう」

 

 

 ティアナはマッド達に簡単に作戦を伝え。

 行動を開始する。

 

 

「「了解しました」」

 

 

ティアナは自然にラスティとペアを組んだ。

 

 

「モリス捜査官。わたしが合図したら白騎士を撃って」

 

「わかりました、ランスター執務官」

 

「クロスミラージュ、ヴァリアブルシュート行くわよ」

 

『Yes』

 

 

 クロスミラージュの銃口に光弾が、生成される。

 狙いを付けた白騎士が、接近しないようにラスティが足止めをする。

 

「モリス捜査官!」

 

 

その一言でラスティは、ティアナの前から下がる。

 

「ヴァリアブルシュート!」

 

 

 放たれた光弾は、まっすぐ足止めされていた白騎士に向かう。

 白騎士は、大盾を構え受け止める。

 光弾は盾の前で拮抗し徐々に表層が消えていく、内包していた光弾が霧散する前に炸裂した。

 炸裂した衝撃を受けた白騎士が空中で盾を弾かれた格好になった。

 

 

「今よ、モリス捜査官!」

 

「はい!」

 

 

 ラスティは構えていた杖から光弾を放った。

 盾を弾かれた体勢で空中を滞空している白騎士に向かう。

 

しかし、マッド隊長が足止めしていた白騎士が射線上に割って入った。

 

 

「くそ!」

 

「落ち着いて、もう一度…」

 

 

 と、言いかけたところで体勢を崩していた白騎士が((突撃|チャージ))をしてきた。

 それは、ティアナに届かず横からの砲撃に阻まれ白騎士は後退した。

 

 

「大丈夫ですか、ランスター執務官?」

 

「ありがとう、大丈夫です」

 

「それよりどうしますか?」

 

「作戦は、一体を三人で拘束して盾の死角から攻撃しましょう」

 

 

 三体の白騎士が翼を展開し飛び上がろうとする。

 ティアナは飛び上がろうとする白騎士を拘束するように指示を飛ばした。

 

 

   ―縛!―

 

 

 一体の白騎士が、バインドで拘束された。

 ティアナは素早くクロスミラージュを構えて光弾を放つ。 

 

 

「クロスファイヤーシュート!」

 

 

 拘束されていた白騎士の救出に向かった白騎士をオレンジの光弾が進路上に割って入る。

 ティアナを潰しに来る白騎士をラスティとマッドが、砲撃でそれを阻む。

 

 

    ―撃・撃・撃!―

 

 

 ティアナに足止めされ回避行動を取っていた白騎士の翼にスフィアが命中する。

 魔力スフィアは背部に展開していた翼を打ち砕く、打ち砕かれた白騎士は為す術なく地上に激突した。

 

 

「お見事です!ランスター執務官」

 

 

    ―爆―!

 

 

 喜びもつかの間。

 バインドで拘束されていた白騎士が集束魔法を放ち三人の隊員を吹き飛ばしティアナに向かう。

 

 

『Tow−hand DaggerMode』

 

 

 クロスミラージュの機転でとっさにダガーモードになりティアナは上段から振り下ろされたランスを受け止める。

 

 

「ランスター執務官!」

 

「…ッ!」

 

 

 蒼く光り出したランスにティアナは驚いた、光り出したランスを受け止めていたダガーの魔力刃が徐々に打ち消されていく。

 白騎士は畳みかけるように背部に展開した翼から蒼い魔力粒子が吹き出しティアナを押し込んで来る。

 しかし白騎士の背後には十発の魔力スフィアが背中に殺到し、その翼を打ち砕き背部から胴体に貫通する。

 

 

    ―ガガガガガッ!!―

 

 

 頭部の甲冑の隙間から光が消え白騎士の体が崩れ落ち、ガラガラと音を立てて鎧が崩れる。

 中から三つの白い光の球が空に昇っていき消滅した。

 

 

「なにこれ……!?」

 

 

 ティアナは我が目を疑った。甲冑の中身は機械ではなく“空っぽ”なのだ、魔力反応も消えていた。

 

 

「ランスター執務官!」

 

 

 ラスティの叫び声でハッとし横を見ると、翼をなくした白騎士の突きが来るがそれは届くことなく、白騎士の体が吹き飛ぶ。

 

 

「お怪我は?」

 

「大丈夫、ありがとうラスティ捜査官」

 

「いえ…」

 

 最後の一体は飛んで逃げていく。

 マッドは、傷ついた部下の元で回復魔法を施している。

 

 

「とにかく、けが人もいるし応援を呼ぶわ」

 

「その方がよさそうですね…」

 

 

 応援を呼ぼうと通信機で呼び掛けるが雑音ばかりで応答は返ってはこない。

 

 

 

「マッドさん……ッ!?」

 

 

 ラスティは振り返りマッドを見たしかし体に斜めの走った斬撃の跡から血を吹き出し倒れた姿がその目に映った。

 

 

「マッドさん!!」

 

 

 その声に振り返ったティアナが見たのは、右肩に斬撃を受け、血を出し倒れるラスティの姿だった。

 ラスティに斬撃を加えた敵は、まっすぐティアナに向かって来る。

 それをギリギリでサイドステップをして横に避けた。斬撃を加えたものは、そのままティアナの10メートル前に止まる。

 

 

「援軍、ウソでしょ?」

 

 

 よく見ると持っている右手の武器が、ランスが片刃の剣になっており頭部の鎧には、角の様な飾りがある。

 なにより色が、白を基調としているが薄い金色が入っている。

 鎧には羽をイメージした装甲が追加されていた。

 

 

「クロスファイヤー…」

 

 

 スフィアが展開されるよりも速く角付きの白騎士が、肉迫する。

 

「ッ!早い!」

 

 

 上段から振り下ろされる剣をダガーモードで受け止めるが、ダガーブレード消えかける。

 消える寸前の所で、バックステップで後方に下がる。

 

 

    ――まずい!、魔力攻撃は盾で防がれる。

     ここはヴァリアブルシュートで体勢を崩してスフィアを叩き込むしかない!

 

 

 クロスミラージュの銃口に魔力が集まり発射された。

 放たれた光弾に動じることなく白騎士は盾ではなく剣で受け止めた。

 既に白騎士の背後にスフィアが迫っている背中がガラ空きだ、しかし白騎士の剣が金色に光り出しヴァリアブルシュートを両断した。

 それと同時に背後の翼も光だしスフィアが一斉に霧散してしまった。

 

 

「ウソでしょ!?」

 

 

 両断した姿勢のままティアナに白騎士は迫る。

 ティアナもそれを下がりながらショートバレットで迎撃する――。

 

 

   ―閃!―

 

 

 

   ――が、間合いを詰められダガーブレードよりも速く金色に光る剣で袈裟切りを食らった。

 

 ティアナの意識は食らった瞬間、暗転した。

 薄れゆく意識の中でそれを見た。

 白騎士の傍らに展開した魔法陣から現れた黒衣の男。

 

 

《悪魔の書――テス――です―片――?―――97―――――そうで――すぐに―――》

 

 

 男は、空間モニターで誰かと連絡を取っていた。

 ティアナは、そこに重要な単語を耳にした。

 

「悪魔の……書…?」

 

 

 薄れゆく意識の中でその言葉だけが、耳に残った。

 

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***********

 

 

 

 

 ヴァニタスは、その戦闘を少し離れた丘で見ていた。

 序盤は、カヴァリエーレが押していたがバインドで拘束されてから、完全に流れが変わった。

 特にあのオレンジ髪の執務官を中心に連携して、カヴァリエーレに攻撃をしてくる。

 遂に一体が翼に被弾しオレンジ髪に攻撃を仕掛けた一体が落され被弾した一体もそのあとに続くように落とされた。

 

 

「くそ!ここで白騎士の秘密がばれるのは、計画に支障をきたす。……仕方がない」

 

 

 ヴァニタスは生き残っている白騎士を呼び戻すのと同時に召喚魔法陣を展開する。

 

 

「汝は、兵を統べし者。その力を我が前に……ディソープラ・カヴァリエーレ!」

 

 

 召喚魔法陣から現れたのは、白を基調としているが薄い金色が入っていて鎧には羽をイメージした装甲が追加され、頭部の鎧には角飾りのついた白騎士だった。

 

 

「行け!ディソープラ・カヴァリエーレ、奴らを殲滅して来い!」

 

 

 それを聞いたディソープラ・カヴァリエーレは、盾を変形させ翼にしてティアナ達の方へ飛んで行った。

 

 

 

 

 戦闘が終結してからしばらくの後、ティアナ達の近くに来たヴァニタスは“あの方”から連絡を受けた。

 

 

《ヴァニタス、実験の方は?》

 

《悪魔の書のテストは、成功です》

 

《実は、さっき欠片の存在を観測した》

 

《欠片?》

 

《場所は、第97管理外世界『地球』だ》

 

《わかりました、すぐに向かいます》

 

 

 

 そこで通信は切れ通信用のウィンドウが閉じられる。

 

 

「行くか……」

 

 

 展開していた白騎士を魔法陣の中に呼び戻す。

 

 ヴァニタスの足元にはミッド式でもなければベルカ式でもない魔法陣が展開され、その中にヴァニタスは、消えて行った。

説明
少し間は空きましたが、第二話です。

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