無表情と無邪気と無我夢中 |
【無表情と無邪気と無我夢中】
―――prologue―――
数年前、娘が亡くなった。
そして数ヶ月前、親友が亡くなった。
殺されたとか、事故に遭ったとかではない。
病死。
二人ともクローン人間だったために発症した。
よくクローン技術で生まれた命は寿命が短いだとか免疫力が弱いとか。
話では聞いていたが実際目の当たりにするとなかなか納得出来ないものだ。
そしてもう一人の親友とは働く部署が違う所為と自らの仕事の関係で暫く会わなかった。
二人が亡くなった後に会ったその親友は……いややめておこう。
これ以上は辛くなるだけ。
走馬灯のように流れていく数々の思い出。
初めて魔法と出会ったドキドキ感。
自分の持てる力を全て出し切って事をやり遂げた達成感。
なによりも魔法というものにワクワクしていて、夢と希望に満ち溢れていた10年間。
でもいつしか魔法を使って仕事をすることに楽しみは無くなってきていた。
前線に立って仕事し続けていれば知ってしまう裏側の黒い部分。
その所為なのか、久し振りに実家に帰ったら表情の作り方が昔の兄みたいだと言われた。
もうあの笑顔に溢れた家に戻ることもないのだろう。
長年酷使し続けてきたリンカーコアは限界を迎え、つい先程破裂してしまった。
私は今、全身を駆け巡る痛みに耐えながら朦朧とする意識の中、広い草原を歩いている。
自分の身体を支えている杖は私の愛機であるはずなのに何を問いかけても何も応えてくれない。
―――ああ、壊れてしまったのか。
話しかけてはそれを思い出すという行為を何度も繰り返している。
「あ……」
躓いた。転んだ。
持ち直そうとして足をもたつかせたが結局倒れてしまった。
仰向けになって青い空を見上げている。
起き上がる気力もない。
魔法を使おうとすれば比にならない激しい痛みが全身を蹂躙するし、もうダメなんだろうなとわかってしまっているからだ。
私は任務で辺境世界の調査を行っていた。
その途中で古い研究所を発見。
軽く立ち入ってまた詳しく調べるのは後でと考えながら歩を進める。
しかし、何の、本当に何の前触れもなく、研究所は地下からの大爆発により一気に崩壊した。
その際に発生した強烈な魔力をその身に受けてしまった。
今までの戦闘と比ベたら大したことなかったはずなのに、それに耐えられなかったということは、ずっとギリギリだったのだろう。
暴発した自身の魔力は不純物と化し身体を内側から、つまり内臓器官に計り知れないダメージを与えていた。
普通であればショック死してしまう程の衝撃だというのに、今彼女に意識がありしかも歩けているのは、彼女の心の在り方が起因しているのかもしれない。
だがそれもここまでだ。
最後に約二十年間共に走ってきた相棒にお礼を言おうと顔を手元の杖に向けた。
「今までありがとう、レイジングハート」
掠れるような声。杖は返答しない。
当たり前である。
彼女は気付いていないが、その杖はただの鉄の棒だ。
デバイスだったものとかそういう事ではなくどちらかといえば鉄骨に近い。
ずっと握っていたのが愛機であると勘違いしたまま今に至り、悲しいことにまだ気付いていない。
いや気付かない方が逆にいいのかもしれない。
彼女は魔法という未知の力に魅せられ、捕らわれ、翻弄されながらも突き進んできた約二十年間に後悔はないのだから。
ただずっと心配してくれていた家族を想うとどうしても、最後の最後に欲が出てきてしまう。
会いたい。
あの温もり、あの優しさ、あの柔らかい空間。
戻りたい。
戻れない。
帰りたい。
帰れない。
会いたい。
会えない。
心が痛い。
涙が止まらない。
嗚咽が漏れるたびに身体が悲鳴を上げていた。
いつしか目が霞みはじめていた。
カも抜けていき指も動かせないくらい。
心の痛みや身体の痛みも軽くなり、少し楽になった。
同時に、意識が遠くなる。
夢を見た。
抱かれている。
ゆっくりと目を開けてその人の顔を見ます。
―――あ、お母さん―――
母である人から私はまた別の人に抱かれます。
―――お父さん……お父さんだ―――
安心したのか、それだけで心が満たされそのまま目を閉じました。
説明 | ||
リリカルなのはによる高町なのは逆行モノ、から始まっていますが半オリキャラに近くなってしまっていたり、いろんな要素を組み込ませていたり…… 遅筆ですけど完結目指してがんばります。 |
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