IS学園にもう一人男を追加した 〜 64話
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投稿者SIDE

 

 

「これは・・・分かれて、捜索したほうがいいかも」

 

セシリア

「被害がこれだけ大きければ、そうした方が良さそうですわね」

 

という訳で、専用機持ち達は3手に分かれる事になった。

状況が状況なので、一夏の争奪口論がおっぱじめる訳もなく、

一夏と簪が正面から。

箒とセシリアが被害のない場所から侵入。

鈴とシャルロットが内部から消化活動を行いつつ、救出作業を行って一夏達の後方から進行。

 

 

 

 

 

 

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【鈴・シャルロット、視点】

 

[ドガァン!]

「ふぅ・・・これは、酷いわね」

 

瓦礫(がれき)を衝撃砲で吹き飛ばした鈴は手の甲で額を拭い、シャルロットは"イメージトランサー"で出現させた疑似手で瓦礫を処理し、災害用の装備でさらなる被害を防いでいる。

 

「そのシステム、便利ね」

 

シャルロット

「そ、そうでもないよ。集中力を結構使うし、使いすぎると貧血、起きるから・・・」

 

「便利さある分、負担もあるわけね・・・それにしても、全然被害が収まらないわね」

 

シャルロット

「たぶん、更識さんが言ってた通り、飛来物がISだったなら、そのISを止めない限り、被害は収まらない」

 

「他の4人に任せるしかない・・・って訳ね」

 

シャルロット

「そうだね。僕達はここでこれ以上、被害が広がらないように抑えないt」

 

[ピーピーピーピーピーピーピーピー!]

 

鈴・シャルロット

「っ!」

 

甲龍と暴風(ミストラル)に警告の警報が。

 

炎犬

「ぐるるるるっ・・・」

 

炎の渦から出てくる"発火している犬"

体長は小型犬より少し大きく、燃える体に逞しい角。

だが、それ以外の部分は普通の犬と変わらない。

 

シャルロット

「・・・鈴」

 

「分かってる・・・」

 

そんな中、国家代表候補生である2人は、その犬から危険性を感じ取ったようだ。

 

「アンタは被害を抑える事だけに集中して。コイツをアタシが倒す」

 

炎犬

「ぐるるるる・・・がぁうっ!」

 

「っ!」

 

ガキィン!と、双天牙月の刃と、炎犬の角がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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【箒・セシリア、視点】

 

[ガラガラ・・・]

 

「ここまで、被害が出てるとは・・・いや、と言うよりも」

 

セシリア

「被害が浸食している・・・ですわね?」

 

周囲に警戒しつつ、飛来物が激突した場所まで前進する"紅と青のIS"

 

「・・・ん? この反応は・・・」

 

セシリア

「ISの反応ですわね・・・しかし、展開はされていないようですわ」

 

箒・セシリア

「・・・」

 

どうやら、反応は2人の目の前の曲がり角にあるようだ。

2人はその場で立ち止まり、それぞれ武器を構えて、曲がり角から反応の根源が出るのを待つ。

 

箒・セシリア

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

[スゥ・・・]

 

セシリア

「っ、今ですわっ!!」

 

本音

「あっ! ホーホーとセッシーだぁ!」

 

箒・セシリア

[ズゴォー・・・!]

 

曲がり角から出てきたのは、ISスーツを着用した本音だった。

 

本音

「わぁ! 息ピッタリだね〜!」

 

箒・セシリア

「・・・」

 

この状況下で、今までの雰囲気を崩さない本音に対して、2人は呆れる。

 

「と、とりあえず、早く非難し」

 

[ピーピーピーピーピーピーピーピー!]

 

箒・セシリア

「っ!」

 

2機のISから出る警告を伝える警報。

そして、その反応は・・・

 

「上だっ!」

 

炎犬

「っ・・・」

 

すぐさま本音の居る場所に飛びのいた2人。

2人の居た場所は、シュンッという風切り音と同時に、爪の跡が刻まれる。

 

炎犬

「・・・」

 

犬は静かな瞳で3人を見つめる。

 

セシリア

「生き物・・・ですの?」

 

「分からない・・・セシリア、布仏を非難させてくれないか? 私がコイツの相手をする」

 

セシリア

「なっ!? わたくしも一緒n」

 

「相手の力量が分からない以上、即時万能対応機の"紅椿"の方が戦いやすい。それに、建物内で"ブルー・ティアーズ"は十分に力を発揮できんだろう?」

 

セシリア

「うっ・・・分かりましたわ。さっ、行きますわよ」

 

本音

「は〜い!」

 

間の抜けた返事にため息をつきながら、セシリアと本音は通ってきた道を戻る。

その様子を、犬は妨害する事無く見届けていた。

 

[・・・ゴクッ]

 

炎犬

「・・・がう」

 

「っ!」

 

犬がピクリと動いた瞬間、箒は2本の刀を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

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【一夏・簪、視点】

 

一夏

「うわぁ、ここが落下場所か」

 

「みたい・・・」

 

2人が居る場所は、保健室があった場所。

だが、そこはもう、ただの瓦礫の山と化している。

 

一夏

「・・・ん? あれって・・・」

 

「どうしたの?」

 

ガラガラと瓦礫をどかす一夏。

そこから、上着の制服が出てきた。

 

「こ、これって・・・」

 

タボタボな袖・・・それが、誰の制服なのかはすぐに分かった。

 

「うそ・・・ほ、本音が・・・」

 

一夏

「いや、まだ決まったわけじゃない! 気をしっかり持て!」

 

コウ

『そうだよそうだよ!』

 

「で、でも・・・・・・」

 

一夏・簪

「え!?」

 

コウ

『御二方、お久〜!』

 

「え?・・・何で、ここに『コウ』さんが?」

 

一夏

「簪は知ってるのか、『コウ』の事?」

 

「え、あ、一夏君も?」

 

一夏

「ああ・・・って、何でのほほんさんの上着に『死戔』と『コウ』がいるんだ!?」

 

コウ

『その事なんだけどさ・・・後にした方がいいと思うよ』

 

[ボワァッ!!]

 

一夏・簪

「っ!?」

 

一夏と簪を囲むように、炎がさらに増して燃え上がる。

 

「・・・」

 

炎犬

「くぅん〜・・・」

 

一夏達の前に、瓦礫の山にアグラをかく"血染め色のIS"と、その足の上で優しく撫でられて気持ち良さそうにしている炎犬が現れた。

 

一夏

「あ、アイツ、いつの間に!」

 

炎犬

[ピクッ!]

「うぅ〜! ワンッ!」

 

"自分の安らぎを邪魔にしに来た"と思い込んだ炎犬が、一夏達に吠える。

だが、バイザーを被る"血染め色のIS"が炎犬を静止させ、炎犬は再度、膝の上に乗る。

 

「・・・」

 

一夏

「お前は、『亡国機業(あいつら)』の仲間か?」

 

「・・・」

 

一夏

「会話にならないらしいな・・・だったら!」

 

雪片弐型を構えた一夏が、"血染め色のIS"に飛び掛る。

 

[ギラッ!!]

 

一夏

「っ!」

 

だが、一夏は雪片弐型を振り上げたまま動きを止めた。

いや、"血染め色のIS"操縦者のバイザー越しからの眼が、一夏の筋肉を硬直させたのだ。

 

一夏

(な、何だ・・・筋肉の筋1本も動かせない・・・まさか、AIC?)

 

「・・・」

 

一夏

[ガクッ]

 

"血染め色のIS"が一夏から炎犬に目を移すと、一夏は膝から崩れる。

 

「一夏君!」

 

コウ

『大丈夫!?』

 

一夏

「あ、ああ・・・」

(いや、あれはAICじゃない・・・アイツ自身の、眼が俺を・・・)

 

「データにない機体・・・でも!」

 

ガシャと、背中に搭載された連射型荷電粒子砲『春雷(しゅんらい)』の砲口が"血染め色のIS"に向けられて、2門からそれぞれ3発の粒子砲が放たれた。

 

「"ラン"」

 

ラン ←炎犬

「ワンッ!」

 

名を呼ばれた炎犬は、操縦者の膝元を離れて、前に立つ。

すると、『ラン』に纏われた炎が膨れ上がり、大きな炎の壁が出来上がる。

その炎の壁が荷電粒子砲を包み込み、炎に浄化された。

 

一夏

「ま、マジか・・・?」

 

ラン

「ワンッ!」

 

一夏が驚いている中、『ラン』は尻尾を振って、"褒めて"と言っているかのように、操縦者に飛びつき、操縦者は飛び込んできた『ラン』を優しく撫でていた。

 

一夏

「お、おい、簪? 今のは楯無さんの『ミステリアス・レイディ』と同じ・・・」

 

「うん。ナノマシンで、操作しているのは、分かる・・・でも、あの犬の解析が・・・『コウ』さんは、何か分かった?」

 

コウ

『・・・』

 

一夏

「? おい、コウ?」

 

コウ

『え・・・あ、何?』

 

一夏

「いや、呼んでも反応がなかったから」

 

コウ

『あ、ゴメン・・・』

 

「何か、引っかかるの?」

 

コウ

『・・・ううん。たぶん、僕の勘違い。それより、敵を何とかしないと、被害は広がる一方だよ』

 

一夏

「だったら、"零落白夜"の一撃で」

 

「でも、さっきみたいに・・・」

 

一夏

「大丈夫さ。ちゃんと楯無さんに鍛えられているんだ、2度も同じ目には合わない」

 

「なら、あの犬を何とかしないと・・・」

 

[ナデナデ・・・]

 

ラン

「くぅん〜・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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[消火活動組]

 

 

現在、消化活動組は演習中だった1年を含め、後から駆けつけてくれた2年と3年が何手に別れて、被害を防いでいた。

IS学園に置かれているISは、数に限度があり、ISに搭乗していない生徒達は、消火器を手に消火活動を行っている。

 

[ガラッ!]

 

作業中、消火活動をやっていた女生徒達の上に崩れた天井が降って来た。

 

フォルテ

「っ」

 

だが、その落石は大鎌"スィンズ"によって、細かく斬り刻まれた。

 

女生徒

「あ、ありがとうございます・・・」

 

フォルテ

「なんのなんのッスよ。じゃ、ここは任せたッス」

 

女生徒

「は、はい!」

 

スィンズを仕舞ったフォルテは、別の班の下へと向かう。

 

フォルテ

(それにしても、会長とダリル先輩はどこに行ったんッスか? こっちは必死に働いてるっていうのに・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

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[鈴・シャルロット、視点]

 

炎犬

「がうっ! がうっ!」

 

「まだ、倒れない・・・相当なタフね」

 

ビュンッと、衝撃砲が炎犬に何発も直撃し、小柄な炎犬は勢い良く吹き飛ばされる。

傍から見たら、動物虐待にも見えなくもないが・・・

 

炎犬

「ぐるるるる・・・!」

 

この通り、炎犬は元気。

 

炎犬

「ぐぅ・・・!」

 

すると、炎犬は前足後ろ足を踏ん張って、角を先端を鈴に向ける。

 

「?」

 

炎犬

「ぐるるるる・・・」

 

辺りの炎が炎犬の角に纏わり始め、その炎は徐々に圧縮していき・・・

 

炎犬

「がぁっ!」

 

[ビュンッ!!]

 

「わっ!?」

 

危険を察知して横に避けた鈴。

だが、超音速で通り過ぎる"見えない弾"が衝撃砲の1機を消し去り、その後ろの校舎も消し飛ばした。

 

シャルロット

「・・・え、何? 今の・・・」

 

ポカーンと、呆けているシャルロット。

被害を食い止めていたシャルロットの鼻の先は、炎犬の攻撃によって消し飛んでいた。

 

炎犬

「がうっ!」

 

「や、やるわね・・・」

 

炎犬はまだ元気が有り余っているようで、再度唸り始める。

鈴も双天牙月を構えて、迎え撃つ体制を取る・・・のだが

 

千冬

『生徒全員! 今すぐ、校舎から離れろっ!」

 

鈴・シャルロット

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

-7ページ-

[箒、視点]

 

「このっ!」

 

炎犬

[ヒョイ]

 

「逃げるなっ!」

 

炎犬

[ヒョイヒョイ]

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

炎犬

「・・・ふぁあああ・・・」

 

「くっ・・・」

 

完全に箒が遊ばれている。

 

(どうする・・・"穿千"を使えば、一発で仕留められるのだが、ここではマズイ)

 

思考を巡らせる箒。

 

「それなら・・・懸けてみるか」

 

炎犬

「?」

 

刀2本を廊下に突き刺し、『紅椿』の両腕部が空中で変形し、2本の千鳥十文字槍『飛湾(ひえん)』が箒の手に持つ箒。

 

「はっ!」

 

1本の『飛湾』を投げ、炎犬の背後に突き刺し、さらに背部の展開装甲を射出して、刀と『飛湾』とビットで星型の形を作る。

 

炎犬

「・・・?」

 

「っ!」

 

ラストの『飛湾』を地面に突き刺して、展開装甲のエネルギーが刀からビットへ、ビットから『飛湾』へと移り、星形の面だけの廊下が崩れだす。

 

炎犬

「っ!?」

 

当然、炎犬はその場から離れようと跳躍する。

だが、跳躍ポイントを計算していた箒が、最後に突き刺した『飛湾』を構えていた。

 

「終わりだ!」

 

炎犬

「っ!」

 

完全に決まる攻撃・・・いや、決まるはずだった攻撃。

 

「っ・・・?」

 

だが、先までいた炎犬はいなかった。

 

炎犬

「がう・・・」

 

「後ろかっ!」

 

箒の後ろには、炎の渦の中心で"勇ましく"佇んでいる炎犬。

良く見ると、廊下、そして廊下の壁にレールの様な焦げた跡が確認できる。

 

(まさか、急激に機動力を上げたのか・・・それで、焦げた跡が・・・)

 

炎犬

「オオオゥ!」

 

炎犬の雄叫びとともに、纏われていた炎がさらに質量を増し、"火の粉の弾丸"が箒を襲う。

 

「くっ・・・」

(何とか、展開装甲のエネルギーを防御に回しているが、いつまで持つか・・・ならっ)

 

意を決して、捨て身の攻撃をしようとしたその瞬間・・・

 

千冬

『生徒全員! 今すぐ、校舎から離れろっ!』

 

炎犬

「?」

 

「っ? 千冬さん・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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[一夏・簪、視点]

 

「っ!」

 

ラン

「がうっ!」

 

荷電粒子砲の熱線の雨が炎の壁がぶつかり合う。

 

(一夏君っ!)

 

一夏

「オオオッ!」

 

その隙に、一夏が"零落白夜"を発動して"血染め色のIS"の横から切りかかる・・・のだが、

 

「よっと・・・」

 

一夏

「え・・・?」

 

アグラをかいていた姿勢から、突然立ち上がられたため、一夏は勢い余って瓦礫に激突した。

 

?・ラン

「・・・(がうっ)?」

 

「一夏君っ」

 

簪が瓦礫に近づくと、ガラガラと瓦礫をどかして出てくる一夏。

 

一夏

「あ、あの、簪さん? これで10回目ですけど・・・」

 

「うっ・・・」

 

あの"犬"の正体がナノマシンで構成されたものだと分かり、ナノマシンである犬が行動しているうちは、意識がそっちに向いている。

そう思った簪は、この単純な作戦を考えた。

 

一夏

「この作戦しかないのか?」

 

「だって、相手の情報が、少なすぎる。だったら、相手の隙を狙うしかない」

 

一夏

「狙うっていったって・・・」

 

「・・・」

 

ラン

「ワンッワンッ!」

 

一夏

「どう考えても、アイツ自信が操作してるようには見えないんだけどな・・・」

 

「わ、私も思うけど・・・なら、あの犬は"自我"あるっていうの?」

 

コウ

『っ!』

 

一夏

「まるで、『コウ』みたいだな・・・なぁ、『コウ』?」

 

コウ

『・・・そうだね』

 

一夏

「ん? どうした?」

 

コウ

『・・・ちょっとさ、頭に被ってるの外してくれない?』

 

「?」

 

一夏

「お、おい、急にどうしたんだよ・・・?」

 

「相手が、そんな素直に」

 

「分かった」

 

「い、良いんだ・・・」

 

膝元にいた『ラン』が離れると、操縦者は頭のバイザーに手をかける。

 

一夏・簪

[・・・ゴクッ]

 

すると、外れかけたバイザーと頭の隙間から長髪の黒髪が溢れ、完全にバイザーが外されると・・・

 

一夏・簪

「・・・え?」

 

コウ

『・・・』

 

獅苑?

「これで、良いのか?」

 

特徴的な緑色の前髪。

それだけでも、今まで一緒に学園生活を過ごして来た2人には、すぐに目の前の人物が"朝霧獅苑"だと分かった。

 

一夏

「な、何でお前がここにいるんだよっ!?」

 

「そ、そうです! どうしてですか!?」

 

獅苑?

「? 別に、俺の勝手だが」

 

一夏

「おい! ふざけてるのか!?」

 

獅苑?

「???」

 

一夏

「っ! お前のせいで!」

 

「一夏君、駄目」

 

一夏

「離せ、簪! 俺は獅苑をぶん殴る! そして、目を覚まさせてやる!」

 

コウ

『無駄だよ』

 

一夏

「・・・何?」

 

コウ

『彼の精神状態には以上が見られない。もちろん、記憶を改ざんされた部分も見当たらない。あれは、彼の"素"だよ』

 

一夏

「そんなのが、見ただけで分かる訳が!」

 

コウ

『分かるよっ!! だって、僕のパートナーだよっ!!』

 

一夏

「あっ・・・悪い・・・」

 

「・・・え、えっと」

 

獅苑?

「・・・もう被っていいか?」

 

[ブチッ!]

一夏

「こ、この野朗っ!!」

 

「一夏君っ!」

 

のん気にバイザーを指で回していた獅苑?に殴りかかる一夏。

 

ラン

「がうっ!」

 

一夏

「くっ!」

 

だが、炎の壁に阻まれて、一夏は後退。

次は雪羅のクローと雪片弐型で・・・

 

一夏

「オオオッ!」

 

獅苑?

「ラン」

 

ラン

「ワンッ!」

 

一夏

「喰らえぇ!!」

 

獅苑?

「お前がなっ」

 

一夏

「がっ!」

 

『ラン』を下がらせた獅苑?が雪片弐型の刃をいなし、クローを手掴みで押さえつけ、一夏の腹部にカウンターの鉄拳を入れる。

 

一夏

「ぐっ・・・このっ!」

 

獅苑?

「っ!?」

 

だが、一夏も負けじと、いなされた雪片弐型の"零落白夜"で、獅苑?の横っ腹を斬りつけた。

獅苑?は、すぐに掴んでいた雪羅のクローを『白式』ごと投げ飛ばし、一夏は瓦礫に衝突して埋まる。

 

「だ、大丈夫・・・?」

 

一夏

「これで、瓦礫に埋まるのも11回目か・・・それでも、一発は入れてやったぜ。デカイやつをな」

 

獅苑?

「うっ・・・」

 

さすがに、零落白夜をモロに喰らって、無事で居る訳もなく、その場にへたり込む獅苑?

『ラン』が近くに寄って、心配そうに見つめているが、獅苑?は『ラン』に微笑み返して、周りに満ちている炎・・・もとい、"熱気"を"左手"から吸収し始める。

 

「あ、あれって・・・」

 

以前に"水素"を吸収した機体を見た事のある簪は、獅苑?が今、行っている行動が何が分かった。

 

「一夏君っ! 一気に、攻める!」

 

一夏

「お、おお!・・・『コウ』もいいな?」

 

コウ

『当たり前だよ。とっ捕まえて、縛り付けないと!』

 

一夏

「そうだな・・・行くz」

 

千冬

『生徒全員! 今すぐ、校舎から離れろっ!』

 

一夏

「ち、千冬姉・・・?」

 

「一体、何が・・・」

 

獅苑?

「・・・ラン」

 

ラン

「ワンッ!」

 

一夏

「あ、待て、獅苑!」

 

コウ

『一夏君! 今は、ここから離れよ! 僕の予想が正しければ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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楯無

「じゃ、消火活動を開始しま〜す!!」

 

ダリル

「へ〜い・・・」

 

校舎の上空、生徒会長こと"更識楯無"が手をかざし、振り下ろす。

その瞬間、『片思い』12機に運び出された海水の大半が、校舎に降りかかった。

もちろん、大量の水が校舎に激突して、さらに被害が増えるが、無尽蔵に燃え続けていた炎が完全に消化された。

 

楯無

「う〜ん・・・うん、みんな無事みたい」

 

校舎から、状況が読み込めていない専用機持ち達が脱出しているのを確認。

 

ダリル

「つかさ、これぐらいの水量なら、会長さんのISで作り出せるだろ?」

 

楯無

「ここで、エネルギーを消費するわけにはいかないの・・・ほら、ダリル先輩。もう一働き♪」

 

ダリル

「へいへい。生徒達と先生方を誘導させますよ・・・約束、忘れるなよ?」

 

楯無

「分かってますよ・・・あ、虚ちゃんには、内緒にしといてくださいね」

 

楯無の返事を聞いたダリルは、生徒達が密集している場所へ向かう。

それとは入れ違いに、校舎内から飛び出してくる"血染め色のIS"に炎犬3匹。

 

楯無

「さぁて、説明・・・は、してくれる状態じゃないのかな? 獅苑君・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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獅苑?SIDE

 

 

まさか、この一帯全てに水を降らす・・・というより、落とすとはな。

 

獅苑?

「水は被ってないか? "ラン"、"ルン"、"ロン"」

 

ラン

「ワンッ!」(大丈夫!)

 

ルン

[コクッ]

 

ロン

「がうっ!」(当たり前!)

 

よし。なら・・・

 

獅苑?

("客"の相手をしないとな・・・)

 

 

 

 

楯無SIDE

 

 

楯無

(ふぅん・・・威圧感は変わらず、か・・・)

 

予想はしていた・・・いや、普通では信じがたい話ではあるけど、お父さんとお母さんの話が事実なら・・・

 

 

 

『夕・・・実はな、獅苑君のご両親は存在しないんだ』

 

楯無

『存在しないって? それに獅苑君の家には"家族の写真がある"って、本音ちゃんが・・・』

 

『その事なんだけどね・・・』

 

『確かに、その"家族"が獅苑君を育てたのは間違いない・・・だけど、その2人を調べている内に・・・』

 

 

 

『亡国機業(ファントム・タスク)』・・・その組織に結びついたのだ。

何故、組織を脱退したのかは不明だが、それと同時にとんでもない事実が分かった。

"朝霧獅苑"という名の人物が、実際にはこの世に存在してない事が。

では、彼は何者か?

 

楯無

「どうでもいいわよ。そんなの・・・」

 

どうでもいい・・・そう、どうでもいい。

今更、そんな事を気にしたって、やるべき事は変わらないし、私の気持ちも変わらない。

 

獅苑?

「・・・仕掛けてこないのか?」

 

楯無

「まぁ、待ちなさいよ・・・そうね、場所を移しましょう。第3アリーナでいいかしら?」

 

獅苑?

「・・・[コクッ]」

 

あら、素直に従ってくれた・・・

 

 

 

 

 

 

-11ページ-

一夏SIDE

 

 

一夏

「や、やりすぎだろ・・・」

 

背後に、水圧に押しつぶされた校舎の残骸が広がっている。

だけども、何とか原型を留めている感じだ。

 

「っ・・・一夏君、あれ」

 

一夏

「ん?」

 

空を見上げると、第3アリーナに向かう楯無さんと獅苑の姿があった。

 

一夏

「アイツっ・・・」

 

ダリル

「おーっと、行かせないぜ」

 

すぐさま、飛び出そうとした俺の目の前に、ダリル・ケイシー先輩が立ち塞がる。

 

一夏

「退いて下さい」

 

ダリル

「駄目だ・・・」

 

一夏

「お願いします!」

 

ダリル

「駄目だっつうのっ!」

 

このままじゃ、埒が明かない・・・

 

一夏

「だったら、力ずくで!」

 

ダリル

「やってみろ」

 

一夏

「っ・・・雪羅!」

 

左手を先輩に向け、荷電粒子砲を発射。

 

ダリル

「ふん・・・」

 

俺と先輩の間に入った球体が荷電粒子砲を跳ね返す。

だけど・・・

 

一夏

「その隙に!」

 

ダリル

「行かせないって・・・」

 

[ガシッ!]

一夏

「っ!」

 

瞬時加速で加速した白式の足を掴まれた。

 

一夏

(嘘だろ? 先輩とは、結構距離が離れていたはずなのに・・・)

 

ダリル

「ほ〜らよっと!」

 

思いっきり、投げ飛ばされた。

 

ダリル

「もう面倒だから、止め刺すか・・・」

 

"瓜爪(うりづめ)"をチラつかせて、次の瞬間には俺の目の前に・・・

 

[ガキィン・・・]

 

一夏

「・・・え?」

 

ダリル

「ほう・・・お前も私とやり合う気か? 会長の妹」

 

「一夏君を、傷つかせない・・・」

 

ダリル

「へいへい。ご執心な事で・・・」

 

呆れた風に、俺達から距離をとる先輩。

 

「ご、ごしゅっ・・・///」

 

ダリル

「あ〜、顔真っ赤にしちゃってまぁ・・・」

 

セシリア

「な、何事ですの!?」

 

「何故、一夏達と先輩が・・・?」

 

簪が顔を手で隠しているところに、ほかの専用機持ち達が集合する。

 

シャルロット

「一夏、どういう状況で、こうなったの?」

 

一夏

「あ、ああ、実はな・・・獅苑がここに来ている」

 

全員

「・・・」

 

一夏

「しかも、俺達の事を忘れていたみたいだった」

 

「一夏・・・アンタ、おかしくなった?」

 

一夏

「本当なんだって!! なぁ、簪?」

 

「わ、私が・・・いちかくんに、ごしゅう・・・///」

 

全員

「・・・」

 

何をやってるんだ? 簪は・・・

 

シャルロット

「・・・で、獅苑君は?」

 

一夏

「この先の、第3アリーナに行ったよ。

 

セシリア

「一夏さんのお話が本当ならば・・・ダリル先輩? あなたは何故、一夏さんの邪魔をなさるんですか?」

 

ダリル

「そりゃ、会長さんに頼まれたからだ。報酬に"授業無断欠席許可"が下りるからな」

 

全員

「・・・」

 

これで、三回目の絶句だな・・・

 

ダリル

「という訳で、フォルテー!! 会長さんがお前にも"許可を出す"とか言ってるから、出てこーい!!」

 

・・・・・・・・・・・・

 

フォルテ

「マジッスかーー!?」

 

「うわぁあっ!?」

 

突然、箒の後ろから飛び出したフォルテ・サファイア先輩。

 

ダリル

「おう、マジだ・・・だから、こっちにつけ」

 

フォルテ

「分かったッス!」

 

一夏

「くっ・・・」

 

これで、2対2か・・・

 

「手を貸すぞ。一夏」

 

一夏

「え?」

 

「良く分かんないけど、獅苑がここに居るんでしょ? なら、一発ぶん殴らないと気がすまないの!」

 

セシリア

「それに、ここで先輩方に一泡吹かせる、良い機会ですわ」

 

シャルロット

「ほら、夢から覚めて、更識さん」

 

「え!? あ、はい・・・」

 

フォルテ

「あんま、先輩を舐めちゃ駄目ッスよ」

 

ダリル

「先生達が来る前に片付けるか・・・来いよ、一年生(ルーキー)共」

 

一夏

「絶対、通らしてもらいますよ・・・先輩っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

-12ページ-

楯無SIDE

 

 

獅苑?

「・・・良い場所だ」

 

楯無

「そうでしょ?」

 

ラン

「ワンッ!」

 

ルン

「zzz・・・」

 

ロン

「・・・」

 

どうやら、あの犬達もこの場所が嫌いじゃないのか、『ラン』という犬はフィールドを駆け、『ルン』という犬は獅苑君の頭でベタ〜と寝ていて、血の気の多そうな『ロン』という犬は大人しく座っている。

 

獅苑?

「すぅ・・・やるか」

 

炎犬3匹

[ピクッ]

 

楯無

「お〜!」

 

獅苑君の背後から、炎が燃え上がる。

 

楯無

「じゃ、"生徒会長"としての責務を果たしましょうか・・・」

 

風紀委員長を粛清するってのも、おかしい話だけどね・・・

 

楯無

「最初はジャブで・・・」

 

『蒼流旋(そうりゅうせん)』の4門ガトリングを発砲。

 

獅苑?

「ラン」

 

ラン

「ワンッ!」

 

[ボワッ!]

 

獅苑君の前に犬が飛び出してきたと思ったら、犬の背から炎が膨れ上がり、ガトリングの弾丸を飲み込む。

 

獅苑?

「ルン」

 

ルン

「っ」

 

向こうから、サブマシンガン並みの火の弾が飛んできた。

 

楯無

「あなたが"飛び道具"を使うなんてね・・・」

 

何て言ってるうちに、弾丸は水のヴェールで消火され、次の攻撃に備えようとした瞬間・・・

 

[ビュンッ!]

 

楯無

「わっ!?」

 

衝撃砲・・・?

いや、衝撃砲の威力じゃないよね、あれ・・・

 

[ガラガラ・・・]

 

アリーナの壁をブッ飛ばしてるし・・・

 

ロン

「ぐるるるる・・・」

 

攻撃が当たらなかったからだろうか、とても不機嫌なご様子。

 

獅苑?

「不機嫌になるな・・・なっ」

 

ロン

「・・・[ふんっ]」

 

楯無

「・・・」

 

今更だけど、反応が生き物みたい・・・

本当にナノマシンなのかしら?

 

ルン

[ちょんちょん]

「がう・・・」

 

獅苑?

「ん?・・・ああ、相手は強いみたいだな」

 

会話してる・・・

 

ルン

「わん、わん・・・?」[本気、出せば・・・?]

 

獅苑?

「"本気"って、言われても、初めての実戦だぞ?」

 

ロン

「がうっ!」[弱気になんなよ!]

 

ラン

「わふわふっ」[ご主人様なら、大丈夫!]

 

獅苑?

「・・・んじゃ、やってみるか?」

 

炎犬3匹

[コクッ]

 

何か、微笑ましい光景ね・・・

公園でよく見そう・・・

 

楯無

「って、観賞してる場合じゃなかった・・・」

 

ロン

「ワウッ」[ほら、来るぞ]

 

獅苑?

「あ・・・」

 

楯無

「もう遅いわよ!」

 

次は、ガトリングじゃなくて、槍で突貫して来たか・・・

 

獅苑?

「ラン!」

 

ラン

「ワンッ!」

 

さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・

 

[シュー・・・ガッ!]

 

楯無

「えっ?」

 

身の丈ほどあるマントが出た・・・

 

獅苑?

「へ〜、こうなるのか・・・」

 

ペラッペラのマントではあったが、防御面に優れているようで、槍の切っ先すらもマントを通過できていない。

 

獅苑?

(そういえば、"ユウキ"さんが言ってたな・・・確か、どっかのアニメだと)

 

・・・形態変化(カンビオ・フォルマ)って、言うんだっけ?

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インフィニット・ストラトス 朝霧獅苑 のほほんさん 

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