IS -インフィニット・ストラトス- 〜恋夢交響曲〜 第四話
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「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する」

 

教壇で織斑先生がそういった。今までの授業は、副担任である山田先生が行っていたのだが、今回の授業は織斑先生がメインで行う授業らしい。

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

と思い出したように織斑先生が言った。

どうやらクラスの代表者を決め、クラス同士の対抗戦に出場して向上心を高めること。さらにその代表者は、生徒会の開く会議や委員会の出席など、いわゆるクラス委員長の仕事も兼任しているらしい。

クラス対抗戦に出るだけでなく、委員長の仕事があるのか・・・さすがにめんどくさいなぁ・・・

ざわざわとクラスが騒がしくなる。一夏にいたってはよくわかってないようだった。

 

「はいっ。織斑君を推薦します!」

 

そんな中でクラスの一人が一夏を推薦する。

 

「では候補者は織斑一夏・・・他に誰かいないか? 自薦他薦は問わないぞ」

 

これはまずい雰囲気になってきた・・・一夏が選ばれたのは男子だからという面白半分の推薦だ。つまり、

 

「はいっ。私は天加瀬くんを推薦しまーす!」

 

案の定俺も推薦される。みんな無責任だなぁ・・・

しかし俺もさすがに委員長みたいな仕事はパスだ。なので、

 

「はい。俺は一夏を推薦します」

 

推薦されたもの同士なので譲るという意味で一夏を推薦しておく。こういったときは先手を取っておかなければ。

 

「お、俺!?」

 

どうやら俺が推薦するのは予想外だったらしい。一夏は驚いて立ち上がってしまった。

 

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、二人以外にいないのか? いないなら天加瀬からも推薦されている織斑にやってもらう」

 

「ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな」

 

そこまで言って一夏は織斑先生に言葉を続けることを許さなかった。

 

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

かなり厳しいお言葉である。まあ俺はもう関係ない。

 

「お前もだ、天加瀬」

 

どうやら俺も見逃してくれないらしい。誰だよ、最初に推薦したの・・・

そんな中一人の女子が声をあげた。

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

勢いよく机を叩き立ち上がるその子は、先ほどの時間でつっかかって来たセシリア・オルコットさんであった。

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

どうやら彼女は、俺たちが選ばれて自分が選ばれなかったのが気に食わないらしい。まぁ俺としては、やってくれるのはありがたいが。

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

猿呼ばわりは少しひどい気がするがとりあえず黙っておく。

 

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

どんどん白熱するオルコットさん。それは収まることなくさらにヒートアップしていった。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなければいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で」

 

そこまで言った時、たぶん我慢できなくなったであろう一夏が、

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

と思わず口にしてしまった。

一夏はしまったという顔をしている。やはり一夏の言葉は彼女の琴線に触れたようで、

 

「あっ、あっ、あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

とさらに熱を上げていく。

これはまずい事態になって来た。

 

「ま、まぁまぁ落ち着いて。オルコットさんだって俺らの国を馬鹿にしてたんだし、これでおあいこってことでいいだろ、なっ?」

 

とこれ以上ヒートアップしないように俺は止めに入った。しかし、

 

「邪魔しないでくださる!? 大体あなただってこんな国の出身のくせにISの設計者になれるとでもお思いなの!?」

 

とまるで聞く耳を持っていない。

 

「わかった、わかったから落ち着いて!」

 

俺はオルコットさんの言葉に少しイラつきながらもなだめようとした。

 

「いつ頃から設計者を目指しているのか知りませんが、無駄な努力ですわ! 貴方達極東の猿が、そんなこと望むだけ無駄ね!」

 

しかし、俺と彼女の夢を否定する言葉を聞こえた瞬間、俺の中で綱の様に太かった何かが切れた。

 

バツン!

 

音に例えるとそんな音。

 

「お前にそんなこと言われる筋合いはない!!」

 

今まで下手に出ていたせいか、俺がいきなり大声をあげたので彼女を含めたクラスのみんなは驚いていた。

 

「大体こんな後進的な国で暮らすのがいやならこの学園に来なければよかったじゃないか! イギリスでだってISの技術くらい学べるだろう! まずい飯でも食べながらISについて先進的な文化の中で学べばいい!」

 

「い、い、い、言いましたわね!!」

 

周りがだいぶ引いてるような気がする。先に喧嘩を売った一夏ですら引いていたが今は周りを気にする余裕はない。

 

「ああ、こんなことでいいなら何でも言ってやるよ! 大体英国貴族のくせにnoblesse obligeって言葉知らないのか!? 君からは全然感じられないぞ!」

 

そして、彼女の怒りは頂点に達したのであろう。机を思いっきり叩いた後、

 

「決闘ですわ!!」

 

と言い放った。

 

「望むところだ! 手袋でも投げつければいいのか!?」

 

もちろん受けて立つに決まっている。俺の、彼女の夢を馬鹿にされてこのまま引き下がる気は毛頭なかった。

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い、いえ、奴隷にしますわよ?」

 

「大丈夫だ。徹底的にやる気でいるから安心しろ」

 

そんな心配をされても、あんなこといわれて手を抜く気は最初からない。

 

「そう? 何にせよちょうどいい機会ですわ。イギリスの代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

 

にらみ合う俺たち。そんな中、一夏が彼女にこう尋ねた。

 

「ちょっといいか? ちなみにどれくらいハンデをつけるんだ?」

 

「あら、それはあなたじゃなくこの方がお願いすることじゃないかしら?」

 

「えっ? いや、奏羅がどのくらいハンデをつけたらいいのかなーと」

 

一夏がそういった瞬間、クラスに爆笑が巻き起こった。

まぁ予想はしていたが、女尊男卑の世の中である。俺たち男の立場は極端に悪いのだ。女性は潜在的にISを使える時点で立場が強いのだから。

 

「いや、ハンデはいらない。正々堂々イーブンでやろう」

 

この俺の言葉に彼女は、

 

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、わたくしがハンデをつけなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークのセンスがあるのね」

 

と明らかな嘲笑を感じさせる笑みを浮かべていた。

 

「ねー、天加瀬君。今からでも遅くないよ? セシリアに言って、ハンデをつけてもらったら?」

 

ちょうど近くにいた女の子が気さくに話しかけてくる。しかし、その表情はあきらかに苦笑のような失笑のような顔で、俺は余計ムキになってしまった。

 

「いや、構わない。問題はない」

 

「えー? 代表候補生を舐めすぎだよ。それとも知らないの?」

 

「いや、それくらいなら何度も見てきた」

 

事実、俺は彼女が使うISを何度も間近で見てきたし、代表候補生の実力は知っているつもりだ。

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑、天加瀬、オルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

 

「ちょっ! 千冬姉、俺も!?」

 

と抗議する一夏。しかしその抗議もむなしく、

 

「授業の邪魔をするな。それに織斑先生だ」

 

とまた出席簿で頭を叩かれていた。

 

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「うう・・・」

 

放課後、一夏は机に突っ伏してうめき声をあげていた。どうやら三時間目以降の授業もあまり理解できなかったらしい。

 

「い、意味がわからん・・・。どうしてこんなにややこしいんだ・・・」

 

「ま、まぁ、俺も今度手伝ってやるんだからなんとかなるさ」

 

少なからず一夏にフォローを入れる。結構な専門用語だらけだから前々からやってないと理解はできないだろう。

 

「しかし・・・」

 

そう言いながら顔をあげ、周りを見渡す。周りには少し距離を置いた位置で、俺たちを見ながら、何事か小声で喋っている。

 

「勘弁してほしいよなぁ・・・」

 

俺の言葉の後を一夏が続ける。この状況は放課後だけというわけではなく、授業の合間の休憩時間や、昼休みの間でも続いていた。昼休みはことさらにひどく、 あろうことか学食に移動する俺たちの後を、大多数の女子がぞろぞろとついて来て、学食の中では、混んでいようが、俺と一夏が進むとそこに道ができるという 状態だった。歩いていくとさっと人が避けて道ができる事に、少し感動したのは内緒だが。

 

「ああ、織斑君に天加瀬君。まだ教室にいたんですね。よかったです」

 

声のほうを向くと、そこには書類を片手に持った山田先生が教室に入ってきたところだった。

 

「えっとですね、お二人の寮の部屋が決まりました」

 

実は、ここIS学園は全寮制で、生徒は全員寮で生活することが義務付けられている。これは、IS操縦者を保護する目的も兼ねているため、休みに入るまでは寮で学校の日々を過ごすのだ。

 

「俺たちの部屋って決まってないんじゃなかったんですか? 前に聞いた話だと、俺の場合は一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

 

確かに一夏の言うとおりだ。かくいう俺も、一週間は自宅からと聞いていた。

 

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいんです。・・・お二人とも、そのあたりのことって政府から聞いています?」

 

最後のあたりは俺たち二人にしか聞こえないように尋ねてくる。しかし俺も一夏も心当たりはなく、その処置にしたがうことにした。

 

「そう言うわけで、政府特例もあって、とにかく寮に入れるのを最優先したみたいです。個室一つと、相部屋一つなので、二人で相談して決めてくださいね」

 

山田先生、そこは耳打ちしなくてもいいと思うのだが。正直言ってなんか息が当たってか、耳がくすぐったい。

 

「・・・あの、山田先生、耳に息がかかってくすぐったいんですが・・・」

 

我慢できなくなったのか、一夏がつっこむ。さっきから俺たちと山田先生の距離が近かったせいか、周りの女子達が興味津々の様子だった。

 

「あっ、いやっ、これはそのっ、別にわざととかではなくてですねっ・・・!」

 

と少しパニックになっている先生。朝からこの人を見る限り、ドジで天然な所があるのだろう。

 

「いや、わかってますけど・・・。それで、部屋は分かりましたけど、荷物はいったん帰らないと準備できないですし、今日はもう帰っていいですか?」

 

と一夏が尋ねる。俺も今日は帰るつもりだったので、荷物を持ち出してはいないし、まとめてもいない。

 

「あ、いえ、お二人の荷物なら」

 

「織斑の荷物なら私が手配しておいてやった。ありがたく思え」

 

山田先生が言い終わる前に、織斑先生が説明をした。あれ、じゃあ俺の荷物は?

 

「天加瀬の荷物はお前の身内に持ってきてもらった」

 

おかしい。俺の両親は中学時代に、交通事故で亡くなっている。親の遺してくれたお金で、専門学校を卒業し、今は国の生活保護などの援助を受けながらIS学園に通っている身だ。いったい誰が・・・と思いながら、織斑先生の方を見やると、

 

「やっほー」

 

「げっ・・・旭・・・」

 

してやったりという顔をしている俺の幼馴染が織斑先生の後ろから出てきていた。

誰あれ? 天加瀬君の妹? 彼女? など女子が噂をし始める。

やめてくれ、あいつは断じて俺の彼女ではない。

 

「お、お前、なんでここにいる!? いや、ていうかなんで入れた!?」

 

IS学園には機密事項の塊が多数存在するので、めったに人は入れないはずなのだが。

 

「お前の荷物をまとめるために一役買ってくれたからな。それにここまで荷物を運ぶのを手伝ってもらった。なに、私の判断だ。問題はない」

 

と答える織斑先生。その言葉通り、旭の腕には入場許可書ともいえる腕章が巻かれていた。確かにこの人が白と言えば、黒も白に変わる気がする。はぁ・・・なんかもう考えるのがめんどくさくなってきた。

 

「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時、寮の一年生用の食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間は違いますけど・・・えっと、その、お二人はまだ使えません」

 

「え、なんでですか?」

 

相変わらずこいつはどこか抜けているような気がする・・・少し考えればわからないのだろうか。

 

「お前なぁ・・・女子と風呂に入りたいのか?」

 

と俺がつっこむ。

 

「あー・・・」

 

今更ながら気付いたのかよ・・・ここには俺らしか男がいないんだぞ・・・。

そしてそんな一夏の答えに山田先生の想像、いや妄想がだんだん激しくなっていく。「女子と一緒に入りたいんですか!?」と尋ねて、一夏がNOと答えると、 今度は「女の子に興味がないんですか!?」と斜め上の方向に進んでいき、周りの女子もそれにつられて、「織斑君、男にしか興味ないのかしら・・・?」や ら、「それもそれで・・・いいかも・・・」やら、「織斑君と天加瀬君って・・・もしかして・・・?」とか、さらに変な方向に飛躍していった。

 

「あははは・・・奏君もいろいろと大変なんだねぇ・・・」

 

俺に至っては、いつもからかわれる旭に同情されていた。なんかだんだんこの場に居たくない気分になってきたのだが。

 

「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。二人とも、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ。身内の方も、荷物を運び終わったら、できるだけ早く学園から出てくださいね」

 

山田先生、同じ学園内なのに道草もないと思うんですが・・・

教室から出ていく二人を見送った後、旭を含む俺たちは、寮へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、この子って天加瀬の兄妹(きょうだい)なのか?」

 

寮へと向かう道、一夏は俺と旭の関係について尋ねてきた。

 

「いや違うぞ。こいつは、」

 

そこまでいった後、

 

「一万二千年前から隣に住むことを誓った、永遠の隣人なんだよ」

 

と旭の根拠などひとかけらもないたとえで遮られてしまった。

 

「まぁ・・・ようは幼馴染だ」

 

「なるほど・・・ていうかおもしろいたとえだな」

 

まぁこんな言い回しをするやつは珍しい、ってかいないだろうな。

そんな感じで他愛もないこと話しているうちに、寮の前に着いていた。

 

「じゃあ私は帰るから、足らないものとかあったら自分で取りに帰ってね」

 

「お前が荷造りしたんだから、お前が責任とって持ってきてくれよ」

 

しかしこの言葉に、旭は珍しく困ったような顔をしながら、

 

「あー・・・ そうしたいのはやまやまなんだけど、私最近忙しくて・・・ 今日は珍しくオフの日だったんだよね」

 

と答えた。

 

「まぁ、都合が悪いなら仕方ないけど・・・」

 

旭にも用事があるのはわかるので、追求するのはやめておく。

 

「じゃあ、奏君も、一夏君も、がんばってね〜」

 

いつもの口調で、手をひらひらさせながら旭はさっさと帰ってしまった。

旭が帰ったことで、俺は今まで放置していたある問題を会話に取り上げる。

 

「さて、一夏。俺たちには一つ問題がある。」

 

「あぁ・・・ わかっている」

 

どうやら一夏も気付いていたらしいこの問題。

 

「どっちが、女子と、相部屋に、なるかだ」

 

そしてその決定方法は至極簡単、

 

「じゃんけんで決めるぞ!」

 

「いいぜ、奏羅。かかってこい!」

 

そう、これはこの一カ月の平和を手に入れるための戦い。

 

「「最初はグー・・・ジャン、ケン、ホイ!」」

 

結果・・・俺はグー、一夏はチョキ。

 

「じゃあな、一夏。がんばれよ〜」

 

勝者の俺は、放心状態の一夏にむかって『1025』と書かれた鍵を投げ渡し、意気揚々と自分の部屋である、『1026』の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが俺の部屋か・・・」

 

さっぱりした大きい個室、どうやら二人部屋の大きさなのだが、ベッドが足りないのだろう。横にかなりのスペースが空いていた。

ため息混じりの息を吐きながらベッドに座り、荷物を確認する。携帯電話の充電器や、設計のためによく使うパソコンなど、俺の必要なものはあらかた入っていた。

 

「まったく完璧だな旭のやつ・・・今度なんかおごってやるか・・・」

 

俺の事を理解してくれている幼馴染に感謝しながら、しばらく荷物を整理していると、隣の、そう一夏の部屋からズドンというものすごい音が聞こえてきた。

 

「な、なんだ、なんだ?」

 

予想外の出来事に動揺しながら、隣の部屋の壁をみる。ほどなくして二発目のズドンが聞こえてきた。

これは何か大変なことが起こっていると思って部屋を出ると、すでに一夏の部屋の前に人だかりができていた。

 

「・・・箒、箒さん、部屋に入れてください。すぐに。まずいことになるので。というか謝るので。頼みます。頼む。この通り」

 

とたぶん部屋から閉め出されたのであろう一夏が頭の上で合掌していた。なんかあまり関わっちゃちゃいけないという危機感を感じたので、できるだけ遠目で見ていることにする。一夏の言葉から推測するに、どうやら、ルームメイトは篠ノ之さんらしい。まぁなにかやって怒らせてしまったのだろう。

しばらくすると、部屋のドアが開き、剣道着姿の篠ノ之さんが部屋から出てきた。どうやら、一件落着のようだ。多分。

俺は自分の部屋に戻ると、パソコンを開き、メールのチェックなどを行う作業をしながら、今日のことを思い出していた。

 

「入学初日から、なんか大変な一日だったな・・・一夏に会うし、鬼教官とドジな先生にも会うし、篠ノ之さんにも会うし、旭がここに来るし・・・」

 

あれ、なんか一つ忘れているような・・・

あっ、思い出した。

 

「オルコットさんと・・・決闘・・・」

 

あの時、俺がいくら頭にきてたとは言え、なんで決闘なんか受けたのだろう・・・。できるだけ平穏に暮らしたかった俺の希望とは逆に、どんどん厄介事が増えていく現状。

俺は、自分のこれからの事に軽く絶望しながら、荷物の整理を行うのであった。

 

しばらくして、一夏の部屋から、爆発音とも打撃音ともいえるような音が聞こえてきたが、もう気にしないことにした。

 

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