英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 〜武術大会・1回戦〜前篇 |
〜グランアリーナ・観客席〜
「あ、ママ達だ!」
観客席でプリネやツーヤといっしょに観戦していたミントは片方の門から入場して来るエステル達を見て、声をあげた。
「ツーヤ。エステルさん達の戦い方は傍で見るのと、外から見るのとでは見える視点が違ってくるわ。よく見ておきなさい。」
「はい、ご主人様。」
プリネの言葉にツーヤは頷いた後、エステル達の動きを逃さないように、しっかりと見た。
〜グランアリーナ〜
「へへ……。早速リベンジの機会とはな。」
「たまには女神も粋なことをするもんだよな〜。」
「この前の事件で力不足を思い知った俺たちは死にものぐるいで特訓した……。その成果を見せてやるよ!」
エステル達と顔を合わせたルーアンの不良集団――レイヴンを率いるロッコ達は好戦的な目でエステル達を見て、言った。
「フフン、その意気やよし!あたしたちも手加減ぬきで思いっきり行かせてもらうわ!」
ロッコ達の言葉を聞いたエステルはいきいきとした表情で答えた。
(うーん、エステル君てばいつになく活き活きしてるねぇ。男らしいというか何と言うか。)
(エステルに聞かれたらまた、はたかれますよ……)
オリビエの呟きが聞こえたヨシュアは呆れた表情で忠告した。
「さて、そろそろ時間だな。」
ジンは自分達とレイヴン達の腕時計を見て顔を上げた審判を見て、もうすぐ試合が始まる事を悟った。
「これより武術大会、本戦第二試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷いた両チームはそれぞれ、開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そしてエステル達とレイヴン達は試合を始めた!
「行くぞ、お前等っ!気合いれていけよ!」
「へいっ!」
「へへっ、当たり前だ!」
「俺達の力をあいつらに見せてやろうぜ!」
ロッコの号令にディンやレイスは不敵な笑みを浮かべて答え、下っ端は元気よく返事をした。
「威勢は相変わらずいいわね〜。みんな、行くわよ!」
「了解!」
「おう!」
「フッ……援護は任せたまえ!」
エステルの掛け声を合図に戦闘を開始した!
「「オラァッ!!」」
レイスと下っ端は同時にエステルに攻撃をしかけたが
「よっと!」
エステルは棒で2人の攻撃を防御した。
「横がガラ空きだぜっ!」
防御しているエステルを狙ってロッコはエステルの横から攻撃を仕掛けようとしたが
「せいっ!」
「チッ!」
ヨシュアの双剣に阻まれた。
「フッ!」
オリビエは銃で一番弱そうな下っ端を狙って、攻撃した。
「ぐわっ!」
「せいっ!」
「ぐえっ!?」
オリビエの攻撃でのけ反った下っ端を狙ってジンは籠手で重い一撃を腹に打ち込んだ。ジンの一撃により下っ端は崩れ落ちて、立ちあがらなくなった。
「おぉぉぉ!」
「「「グッ……体が……!」」」
さらにヨシュアはクラフト――魔眼でロッコ達の動きを止めた。そこを狙って、エステルとジンはそれぞれクラフトを放った!
「とりゃっ!雷神脚!」
「はぁぁぁぁぁぁ!旋風輪!」
「「「グワァッ!?」」」
2人のクラフトを防御もできずに受けてしまい、大きなダメージを受けたロッコ達はその場で膝をついたが
「まだ……だっ!」
「へっ…………そんな簡単に………やられて……たまるかっ!」
「お前等にリベンジするために今まで……鍛えて……来たんだからなっ!」
ロッコ達は痛む体を無視して、気合で立ちあがって武器を構えた。
「へ〜…………以前より打たれ強くなっているじゃないの!」
「うん。それに以前と比べれば戦い方も少しよくなっている。」
立ちあがったロッコ達を見てエステルとヨシュアは感心した。
「ハッハッハ!中々男気がある人達だねぇ。だったらこれはどうかな!?そぉれっ!クイックドロウ!!」
ロッコ達の根性に感心したオリビエは正確かつ、素早く指を動かして銃でロッコ達を攻撃した。
「「「グッ………!」」」
オリビエの攻撃にロッコ達は呻いて、武器を落とした。
「これで決めるっ!はっ!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!桜花!無双撃!」
「マジ………かよ………」
「いくよ!ふん!断………骨………剣!」
「ぐえっ………」
「もらったぁ!奥義!でやあぁぁぁ!はぁっ!でやっ!龍閃脚!」
「ち……くしょう……」
さらにそこにエステル達はそれぞれ強力なクラフトをロッコ達に放った。強力なクラフトを受けたロッコ達もさすがに気合だけでは立ち上がれず、その場に蹲った。
「勝負あり!蒼の組、ジンチームの勝ち!」
そしてロッコ達の様子を見て、審判は試合終了の宣言をした。
「やったーーーー!!ママ達が勝った!」
エステル達の勝利に観客席から応援していたミントははしゃいだ。
「ツーヤ、あれがチームワークというものよ。仲間と戦えばあのように連携や補助と色々な利点があるんです。」
「はい!いつか私も、ご主人様達に背中を預けられるような存在になるよう、がんばります!」
「フフ、楽しみにしているわね。(……それにしても以前にも思いましたが、あのオリビエさんという方……何者でしょう?銃の腕といい、立ち振舞いといい、一般市民には見えないんですよね……もしかして、どこかの貴族かしら?)」
さらなる精進を決意にしているツーヤを微笑ましそうに見たプリネはアリーナに目をやって、オリビエの強さや会った時からオリビエ自身が出している雰囲気を感じて、首を傾げた。
「はあはあ……。やっぱり負けちまったか……」
「き、キツイっす〜……」
一方負けたディンやレイスは結果をあらかじめ予想していたかのように、諦めていた。
「クソッ、クソクソクソ……」
ロッコだけは負けた悔しさで地面を何度も叩いていた。
「まあまあ……。そう気を落とさないでよ。正直、驚いたわ。まともに強くなってるから。」
「僕も同感です。バレンヌ灯台で戦った時よりもはるかに手強く感じました。」
「そ、そうか……?」
しかしエステルとヨシュアに褒められ、地面を叩くのをやめて以外そうな表情でロッコはエステル達を見た。
「あの時のことはあんま覚えてないんだけどね〜。」
「何だか知らんがお互い、全力を出したんだ。胸を張って控室に戻るとしようや。」
そしてエステル達は控室に戻って行った…………
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