英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 127 |
〜グランアリーナ・観客席〜
「やったーーー!!また、ママ達が勝った!!」
エステル達の勝利にミントは大喜びをした。
「カルナさん達に勝つなんて凄いね、エステルさん達。」
エステル達の強さに頷いたツーヤは真剣な表情で空を見ているリフィアとエヴリーヌに気付いた。
(………エヴリーヌ、気付いているか?)
(ん。この気配は”天使”だね。しかも結構力のある奴だね。……なんで、この世界にいるのかな?)
(ああ。………!どうやら行ったようだな。何をしに来たのだ??)
2人は天使が何をしに来たのかわからず、揃って首を傾げていた。
「あの………どうかしたんですか?」
「ん?ああ。プリネ達の相手の事を考えると………な。」
「残っているのはエヴリーヌ達に勝ったあいつとあの変な仮面を被った隊長のチームだけだからね。」
「あ…………」
話を誤魔化すリフィアとエヴリーヌの言葉にツーヤはプリネ達の相手が簡単に勝てない事を悟った。
「そんな顔をするな。カーリアンはともかく、情報部相手ならプリネ達の敵ではない!」
「ん。エヴリーヌやお兄ちゃん達が一杯鍛えてあげたから、大丈夫だよ。」
心配そうな顔をしているツーヤにリフィアとエヴリーヌは元気づけた。
「ツーヤちゃん。ツーヤちゃんがそんな顔をしていたら、プリネさんに心配をかけてしまうよ?」
「………そうだね。ありがとう、ミントちゃん。リフィアさんとエヴリーヌさんもありがとうございます。」
ミントの言葉にツーヤは表情を和らげ、笑顔でミント達にお礼を言った。
「えへへ、お友達を元気づけるなんて当たり前だよ。」
「うむ!パートナーとしてプリネの事を、しっかり応援してやれ!」
「はいっ!」
そしてリフィア達はプリネ達の出番を待った。
〜グランアリーナ〜
「クッ……見事だ。」
「『不動のジン』……まさかここまでの凄腕とは……」
跪きながらクルツとグラッツはジンに称賛の言葉を贈った。
「お前さん達もさすがに手強かったぜ。エステル達がいなかったら俺も勝ち目は無かっただろうな。」
称賛の言葉を贈られたジンは逆にクルツ達を称賛した。
「はあはあ……。あたしたち、勝ったの……?」
「うん、何とか……。足を引っ張らずにすんだね。」
エステルは息を切らせながら自分達がクルツ達に勝った事に信じられないでいないところを、ヨシュアが肯定した。
「ふふ……。謙遜するんじゃないよ……。ジンの旦那もそうだがあんた達も充分手強かった。特にエステル。魔術の腕だけならシェラザードと並ぶと思うよ。」
「あはは………あたしはシェラ姉みたいな強力な魔術は使えないわよ。使える属性の数でカバーしているようなもんだし。」
カルナの称賛にエステルは謙遜した。
「ふう、さすがはシェラ先輩の教え子だなぁ……。それに、そこのお兄さんがそこまでやるとは思わなかったよ……」
「フッ、お嬢さんの方もなかなか痺れさせてもらったよ。よければ試合の後にお互いの強さを讃えて乾杯でも……」
「えーかげんにしときなさい!」
場所を考えず、いつものようにアネラスをナンパしようとするオリビエをエステルは注意した。そしてエステル達は控室へ戻って行った。
一方グランアリーナの空高くから、リフィア達が感づいた天使――ニル・デュナミスがエステル達の試合を観戦し、試合が終わり退場して行くエステルを注視していた。
「…………あの子がエステル・ブライトか………あの年齢にしては中々の腕を持っているようだけど……フフ、明日の決勝戦後、折りを見てニル自らあの子に挑んででニルを従える器であるかどうかを見極めさせてもらいましょう。」
ニルは口元に笑みを浮かべた後、どこかへ飛び去った。
〜グランアリーナ・選手控室〜
「みなさん、決勝進出おめでとうございます!」
「おめでとう……ございます………」
「おめでとう!」
「………中々やるではありませんか。”炎狐”が認めるだけの強さはありますね。」
エステル達が控室に戻るとプリネ達が称賛の言葉を贈った。
「ありがとう、みんな!……あれ?そう言えばプリネ達を含めて試合をしていないのは3チームになっちゃったけど、どうなるんだろう??」
「その事は私も気になって、受付の方に聞いたら今から行われる私達と当たるチームの試合が終わって、休憩の時間をしばらく入れて、私達と当たったチームの勝者のチームが残りのチームと試合をするそうです。」
プリネは首を傾げているエステルの疑問に答えた。
「という事はプリネ達が勝ったら、1日の間に2試合する事になるのか………体力とか大丈夫なのかい?」
「フフ、心配をしてくれてありがとうございます、ヨシュアさん。……でも大丈夫ですよ。体力も十分鍛えていますから。」
ヨシュアの心配をプリネは微笑みながら答えた。
「ハハ……連戦の心配をするのも結構だが、とりあえず、まずは一勝する事だ。」
「貴女達の勝利を祈っているよ、レディ。」
「フフ、ありがとうございます。」
「絶対勝とうね、プリネ!」
「プリネ様の勝利のために……全力を……出させて……頂きます………」
「精霊王女であるこの私(わたくし)がいるのです!敗北なんて、ありえませんわ!」
その時、次の試合のアナウンスが入った。
「続きまして、第六試合のカードを発表させていただきます。南、蒼の組―――メンフィル帝国出身。旅人プリネ以下4名のチーム!北、紅の組―――王国軍情報部、特務部隊所属。ロランス少尉以下4名のチーム!」
「あいつらが相手か……プリネ達が相手にするのは初めてだけど、大丈夫と思うわ!」
「隊長にだけは気を付けて。彼さえ自由にさせなかったら勝機は必ずあると思う。」
「ええ。他の特務兵達はペルル達に任せて、あの仮面の方には私自ら相手します。」
ヨシュアの忠告にプリネは真剣な表情で頷いた。そしてプリネの号令を待っているペルル達の方に向いた。
「みなさん、行きますよ!」
「うん!」
「了解です……」
「ええ!」
そしてプリネ達はアリーナに向かった。
〜グランアリーナ〜
「「「…………………………」」」
(…………?殺気……?何か恨まれるような事をしたかしら?)
プリネ達と顔を合わせた特務兵達はロランスを除いて、殺気を纏った怒りの表情でプリネ達を睨んでいた。特務兵達の殺気にプリネは首を傾げていた。
(お前達、気持ちはわかるがそう殺気立つな。あの少女が何者か知っているだろう?)
(ですが、少尉!奴らは我らが同士の仇の娘なんですよ!?)
(だからだ。よしんばここでお前達の恨みがはらせても、その後はどうする。大佐が事を為すまで、メンフィル帝国に睨まれる訳にはいかないだろう?)
(((!…………了解!!)))
(………なるほど。そう言えばルーアンの時の特務兵達は拷問で………)
ロランスと特務兵達の小声の会話が聞こえたプリネは納得した。
「……部下達が無礼を働いてしまって、申し訳ない。姫の中の姫(プリンセスオブプリンセス)。」
「………いえ。事情は察していますので気にしないで下さい。……それに”その程度”の殺気ぐらいでは恐怖は感じませんので、ご安心を。」
ロランスの言葉にプリネは微笑みながら特務兵達を挑発した。
「なんだと……!」
「我等を侮辱するか……!」
「どうやら痛い目に遭いたいようだな……!」
プリネの言葉に特務兵達は逆上して、プリネを睨んだ。
「やめろ、お前達。………フフ、”剣聖”の上をも行く”剣皇”のご息女である貴女との手合わせも楽しみにさせて頂きました。」
「………私をお父様と同じに見られても困るのですが。………期待に沿えるよう、全力で行かせて頂きます。それより一つ聞いていいですか?」
「なんなりと。私で答えられるような事でなら。」
プリネに尋ねられたロランスは口元に笑みを浮かべながら頷いた。
「貴方、私とどこかで……………………………いえ、今の質問はなかった事にして下さい。」
「わかりました。…………………(何故だ。何故、”あいつ”と同じ雰囲気を…………!)」
ロランスはプリネが纏っている雰囲気に表情に出さないよう、驚いていた。
「これより武術大会、本戦第六試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷き、プリネ達とロランス達両チームはそれぞれ、開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そしてプリネ達とロランス達は試合を始めた!
この戦いが修羅の道を行く青年と優しき闇の少女の、運命の邂逅となった………!
説明 | ||
第127話 | ||
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